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Project story 10|クリエイティブの力で、企業を導く。経営層と共に取り組んだブランディング支援

原口 貴充
haraguchi takamitsu

~summary~
従業員1,500人、食肉業界で100年の歴史を誇るJ社は、2024年の創業100周年を機に大胆な企業変革に挑むことを決意した。JBAは、長年の社内広報や採用活動の支援で培った信頼関係をもとに、企業ロゴの刷新からブランディング全般までを一貫して支援することとなった。原口は、経営層との対話を通じて、BtoB中心から消費者向けビジネスへのシフトという新たな経営方針を確認。この方針を受け、伝統と革新のバランスを表現した新ロゴを制作。その世界観を起点に、Webサイトや店舗デザイン、従業員のユニフォームまで、企業の視覚的アイデンティティを一新していった。企業の歴史を活かしながら、未来への変革を実現するブランディングを目指したプロジェクトを紹介する。

ブランディングで企業の未来を創り上げる

ロゴ製作から始まった企業全体のブランディング支援

J社との出会いは、社内広報の支援からだった。2年間にわたり、J社の社員に対して経営方針や理念の浸透や、採用活動の支援をしてきた。

そんな中、コンサルクリエイターの原口は、会社が創業100周年を迎える2024年に向けて、企業ロゴを刷新する計画があることを知った。企業ロゴの変更は企業において重要な意味を持つ。それは企業のアイデンティティの再定義であり、未来への新たな決意表明でもある。特に100年もの歴史を持つ企業にとって、長年親しまれてきたロゴを変更することは、経営戦略上の大きな転換点となる。

原口は広報担当者を通じて、会社の戦略策定を担う専務との面談の機会を得た。専務は次のように語った。「私たちは2024年に100周年を迎えます。それを機にビジネスモデルを大きく転換しようと考えています。その第一歩として、まずは100年間使い続けてきたロゴマークを刷新したい」

J社は長年、伝統的な食肉業者として地域や顧客から深い信頼を得てきた。しかし、これからは従来の枠を超えて、多様化する顧客ニーズに応える新しい価値を創造していく必要があると考えていた。

原口は、これまでの支援を通じてJ社の企業理念や目指す未来像を深く理解してきた経験から、その場でロゴリニューアルの提案をした。J社の価値観や未来への展望を深く理解していたからこそ、JBAでなければ、J社の向かう先を体現した新しいロゴを提案できないと確信したのだ。

数日後、担当者から「JBAさんであれば、私たちのことをよく理解してくれている。ぜひお願いしたい」との連絡を受け、J社の未来を創る第一歩となる支援が始まった。

企業の過去・現在・未来を徹底的に理解する

歴史と現在を知るために、あらゆる文献から調査を開始

原口は、これまでの社内広報支援を通じてJ社について深い理解があると自負していた。しかし、100年の歴史を持つ企業のロゴを作り変えるという重責を担うには、より一層深い理解が必要だと考えた。そこで、J社の歴史と現在の事業内容を徹底的に理解するため、リサーチを開始。J社の社史をはじめ、歴史に関する膨大な社内文書を取り寄せ、プロジェクトチーム全員で読み込んでいった。

そこから見えてきたのは、一つの肉屋から始まり、革新的な精神で時代を切り開いてきた企業の姿だった。創業者は当初、家業として食肉の加工事業を営んでいた。毎日、荷車に肉を積んで市場と加工場を往復する日々の中で、「食肉の魅力を届けたい」という強い思いを抱いていた。その情熱が、J社の原点となっていた。

特筆すべきは、当時としては異例の経営判断で卸業者を買収したことだ。M&Aという言葉すら一般的でない時代に、食肉の魅力をより多くの人々に届けるため、販路拡大という視点で決断を下したのである。肉屋が卸業を手がけるというビジネスモデルは、当時としては革新的な発想だった。その先見性が功を奏し、J社は次第に日本有数の食肉業者へと成長していった。

100年以上続く企業として、J社には幾多の困難や危機があった。その度に、社員たちは知恵を絞り、時代の変化に柔軟に対応しながら苦境を乗り越え、今日のJ社の姿を築き上げてきた。原口たちは、この歴史研究を通じて、J社に脈々と受け継がれる革新の精神と、伝統を大切にしながらも新しいことに挑戦し続ける企業文化を深く理解することができた。

専務との対話で、具体的な経営状況を知る

歴史研究の後、原口は社史だけでは見えてこない、現在のJ社が直面している課題や、これからの展望について理解を深める必要があると考えた。そこで再び専務との面談の機会を設けた。

「今、私たちは大きな転換点に立っています」と専務は切り出した。まず、社会環境の大きな変化について説明があった。食肉の仕入れコストの上昇や食文化の変遷により、高品質な食肉を手頃な価格でお客様に届けることが、年々困難になってきているという。

「また、BtoB市場は既に成熟期を迎えています」と専務は続けた。「これまでBtoB中心だった私たちの事業構造も、近年大きく変化してきています。消費者向けの直販事業に力を入れてきた結果、現在では売上の8割がBtoC事業という状況です。この流れは、今後さらに加速していくでしょう」

そして、もう一つの大きな課題として、現代社会におけるライフスタイルの変化を挙げた。「以前は、各家庭で時間をかけて食事を作ることが当たり前でした。しかし、共働き世帯の増加や、生活様式の変化により、手間のかかる料理を避ける消費者が増えてきています。この変化は、消費者と食肉との距離を確実に広げています」

「だからこそ今、私たちは消費者との距離をより近づけていく必要があります。これまで培ってきた食肉に関する知見を活かし、新たに飲食店業態への参入や、調理済みの加工食品の開発など、新しい領域への進出を考えています。100周年は、そのための大きな転換点になるはずです」

その言葉から、原口は、創業以来の「食肉の魅力を届けたい」という思いは変わらずとも、その実現方法を時代に合わせて大胆に変革していこうとするJ社の決意を感じ取った。

クリエイティブの力で企業の行く先を指し示す

社長の言葉をクリエイティブに反映する

専務との対話を経て、原口は最後に、J社の社長へのヒアリングを実施することにした。これからJ社が向かうべき未来と、その覚悟を、トップの言葉として直接聞きたいと考えたからだ。

「このままでは、我々100年の歴史は途絶えてしまう」社長は原口の方に向き直ると、ゆっくりと話し始めた。「私たちはこれまで、良質な食肉を仕入れて、それを届けることに注力してきた。しかし、それだけでは通用しない時代になった。発想を180度転換する必要がある。これからは、まずお客様の視点に立つことから始めよう。どんな食事を望んでいるのか、どんな形なら食肉を日々の食卓に取り入れてもらえるのか。そこから考え始めて、新しいサービスを生み出していく必要があるんです」

「現状に満足することは、衰退への第一歩です。私たちは、全てを変える覚悟で、会社としての意識改革を行わなければならない。食肉をただ届けるだけではなく、お客様一人ひとりのライフスタイルに合わせた形で提供する。そうした、これからの新しい食肉サービスの在り方を追求していく―。それが、100年の歴史を未来につなげていく唯一の道だと確信しています」

その言葉に、原口は創業以来の革新の精神が、確かに受け継がれていることを感じた。そして、その大きな変革の第一歩として、新しいロゴが果たす役割の重要性を、改めて強く認識したのだった。

全てのクリエイティブを刷新し、新たな企業イメージを創り上げる

まず、原口はプロジェクトチームのコンサルタントと、デザイナー、ライターとともに、J社の本質的な価値を言語化することから始めた。100年の歴史の中で脈々と受け継がれてきた想い、そして未来に向けたビジョン。それは社史や資料の中だけでなく、経営陣や従業員との対話の中にこそ存在していた。

チームは、J社が目指す未来のビジネスモデルに着目した。これまでの卸売市場中心から、より生活者の食卓に近い存在へ。その転換を象徴するように、コーポレートカラーは食欲を刺激する赤を採用することを決めた。しかし、伝統ある企業としての信頼感も大切にしたい。そこで、力強さの中にも柔らかさを感じさせるデザインを追求した。

最初の提案から、完成までには5回もの議論を重ねることとなった。経営陣との打ち合わせでは、時に言葉では表現できない微妙なニュアンスについて、何時間も意見を交わすこともあった。例えば、ロゴの曲線の一つひとつが持つ意味、そこから感じ取れる印象、J社の歴史と未来のバランス。それらすべてが、慎重に検討された。

そして議論は次第に、ロゴの範疇を超えていった。「このロゴを見た時に、お客様にどんな印象を持っていただきたいか」「従業員たちは、この新しいシンボルに何を感じるか」。それは自然と、J社全体のコーポレートブランディングの議論へと発展していった。

最終的に完成したロゴは、J社の伝統的な食肉のイメージをモチーフとしながらも、現代的な解釈を加えた洗練されたデザインとなった。真っ赤なコーポレートカラーは、食卓での温かな団らんを想起させる。曲線は力強くも優しく、すべての世代に親しみやすい印象を与える。シンプルでありながら、100年の歴史と、これからの100年への想いが凝縮された象徴的なデザインとなった。

このロゴは単なるマークの変更ではない。それは、J社の新たな挑戦の始まりを告げる、力強い宣言となったのである。

ブランディングの力で、企業が生まれ変わる支援を

このプロジェクトは、ブランディングが持つ本質的な力を示す機会となった。それは単に企業の「顔」を変えることではなく、企業の未来そのものを形作る力を持つものだ。

J社の100年の歴史は、確かに伝統と信頼の証であった。しかし、それを未来へとつなげるには大胆な変革が必要だった。今回、ロゴやデザインの刷新を通じて、J社の精神や使命を新たな形で表現できたことは、その重要な一歩となった。

しかし、ロゴを変えただけでは本質的な変革とはならない。J社が次に着手したのは、企業全体のブランドイメージを一新するための、包括的なクリエイティブ刷新計画だった。

まず手始めに、コーポレートサイトと採用サイトの全面リニューアルに取り掛かった。新しいロゴの世界観を活かしながら、J社のビジョンを社会に伝えるためのコンテンツを一から再構築。会社説明用のパンフレットや動画も、新たに制作される予定となった。さらには、社員の名刺や従業員のユニフォーム、店舗デザインに至るまで、J社の新しいブランドメッセージに沿って順次リニューアルを実施していく。これらすべてのクリエイティブに統一感を持たせることで、J社の革新とビジョンをより力強く表現できるはずだ。

ブランディングとは、企業の成長に不可欠な要素である。それは外見的な変化にとどまらず、企業の魂や価値観を強化し、次のステージに進むための道を切り開く。どんなに長い歴史を持つ企業であっても、適切なブランディングによって未来への扉を開くことができる。J社の事例は、まさにそのことを体現するものとなった。

今回の記事では原口から、プロジェクトを通して感じたことや今後の展望について語ってもらいました。JBAのことが少しでも気になった方、ぜひ以下のリンクから採用情報をのぞいてみてください!

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