「CSは会社の心臓だ。」カスタマーサクセスチームのリーダー、恩田は自分たちの価値をそう定義しました。では、CSの作り出す様々な顧客接点を通じて社内・社外に価値を循環させるモデルは実際にどのように構築可能なのか。
そのヒントは、「顧客への提供価値」と「顧客へのアプローチ数」の2軸で顧客とのタッチモデルを整理するカスタマーマーケティングの手法にありました。
CSチームリーダー恩田とビジネスチームの統括マネージャー川口の対談から始まったCS大特集の第2回では、ロータッチ・テックタッチ領域の施策オーナーである古賀史啓・吉種怜・副島さつきの3名による座談会を実施。その前編となる今回は、エンドユーザーとなる個々のWantedly運用担当者をサポートするために編み出された数々の施策についてスポットを当てます。
古賀史啓(写真左):法学部を卒業後、司法試験に合格。ビジネスへの関心からウォンテッドリーにジョインする。インサイドセールスから現在はCSチームへ。サポートコンテンツなど、テックタッチ施策を担当。
吉種怜(写真中央):証券会社、Fintechスタートアップを経て、ウォンテッドリーにジョイン。CSと採用を担当する。CSチームではヘルススコアの設計に携わる。
副島さつき(写真左):新卒で入社した会社ではマーケティングやWebプロモーションを経験。2018年にウォンテッドリーにジョインする。CSチームでは顧客向けたセミナーなどロータッチ施策を担当。
顧客体験は「契約前」から始まっている。
ーーウォンテッドリーのCSチームでは、顧客体験の流れを「契約・導入・活用・継続」の4つのフェーズに分けていますが、過去において各フェーズの顧客体験にどのような課題感があったのかを聞かせてください。
副島:
もともとCS チームでは、導入〜活用までの支援として1対1のハイタッチサポートを行なっていたんですね。そうする中で、多くのお客様が契約時に「Wantedly Visitは何ができるサービスなのか?」「使うことで何が変わるのか?」について十分に理解できていない状態でプロダクトを利用し始めているという“そもそもの課題”がわかりました。CSとして目指すべき成功にたどり着くためには、そのつまづきを解消することが何よりも先決でした。
吉種:
お客様のジャーニーを時系列順に並べると、契約まではセールス、導入後はCSの担当範囲になります。私たちは契約そのものに関わる事はほとんどありません。ただ、契約時にズレが生まれると、ズレが埋まらないまま解約になってしまうこともあります。
「契約より前のコミュニケーション」はお客様の期待値を形成する大切なプロセスで、導入・活用・継続のすべてのフェーズにインパクトを与えています。特に、トライアル企業様のアップグレードを担っているインサイドセールス(IS)との連携は急務だったので、CSからISへの定期的なフィードバックはもちろんのこと、新規のお客様にプロダクトについて解像度高く説明をしているISメンバーを表彰するなど、コミュニケーション面から整えていきました。これからは、ツールを有効活用してこの連携をさらに洗練させていきたいですね。
古賀:
もうひとつ「お客様の採用を継続的にサポートする仕組み作り」という課題もありました。セミナーやサポートコンテンツを始める前は、導入直後のお客様に直接課題をヒアリングするための面談を行っていたんですね。でも、課題面談をしたからといってお客様の採用が終わるわけではありません。導入時の状況は把握できるけれど、導入から2ヶ月経ったら後のことは何もわからないという状況も生まれていました。だから「採用までフォローしていく」と、サクセスの定義を見直したのです。
吉種:
そうした背景もあって、1対1のサポートで行き当たった課題を解決するためにロータッチ施策やテックタッチ施策を充実させる方向に切り替えることにしたんです。「より少ないコスト・労力でより多くのお客様に価値を届ける」という意味でも、「サポートが必要となったタイミングでお客様が主体的に情報を取得できるコンテンツがある」という意味でも、同じクオリティが出せるならロータッチやテックタッチの方が良い。それが「1対n」のコミュニケーションとしてのカスタマーマーケティングを重視するようになった理由です。
「人事の拠り所」を作る、コミュニティ一体型のセミナー。
ーー カスタマーマーケティングの具体的な施策について知りたいです。
副島:
私はロータッチ施策をメインの担当領域にしており、「導入」段階のお客様を対象にしたセミナーを定期開催しています。セミナー内では「Wantedlyとは何か?」という大枠の概念から解説して、募集ページやフィードの書き方を伝えるセミナーを開催しています。先ほど古賀さんが「採用までフォローしていくことをサクセスの定義にした」と話した通り、セミナーを開催することで「これからもサポートしていきますよ」という姿勢が見せられるので、お客様とのコミュニケーションを良い方向に導くための最初の一歩になると思っています。
吉種:
そういえば、副島さんがセミナーを運営するようになってから、お客様同士の横のつながりが形成されるようになりましたよね。それがすごくいいなと思っていて。
ーー つながりを生むために意識していることはありますか?
副島:
セミナーは基本的に1対nのコミュニケーションで進んでいくので、受講されている方同士の交流は発生しにくいものだと思います。だから私は自己紹介タイムを設けて、受講者同士が交流できるようにしたんです。それ以外にもセミナー参加者が公開した募集ページをシェアすることで「他の担当者さんはこうしています」という情報をお届けしていたり。
言うなれば「コミュニティ化」ですけど、いきなりコミュニティに放り込まれても戸惑ってしまいますよね。だから、まずはセミナーでお互いの顔を知っていただく。次に、受講生がお互いの進捗を共有できる仕組みを作り、Wantedly運用に携わる人たちの横のつながりを作ろうとしています。
吉種:
人事担当者はセンシティブな情報を持っているので、会社の中で誰にでも悩み相談をできる立場ではないんですよね。一方で、会社の垣根を超えて、人事同士で横のつながりがあるかと言われると、それもなかなか難しい。副島さんが試みを始めてからは、様々な会社の人事が、セミナーでペアを組んで話したり、名刺交換をしたりしています。「あの人が募集記事を出してる、私も頑張らなきゃ」とか、「どう運用しよう? 〇〇社の人事さんに聞いてみようかな」とか、刺激しあえる関係が生まれるようになったのがすごくいいなと。
オンラインでのコンテンツ展開、そしてヘルススコアへ。
ーー テックタッチ領域ではどのような施策をしているのですか?
古賀:
テックタッチでは「導入」と「活用」段階をターゲットに、「Learn & Support」というサポートコンテンツをまとめたページを運用しています。
具体的にはセクションが3つありまして、「会社ページの編集」「社員の登録方法」「募集記事の公開方法」な導入後の基礎的なToDoをまとめた導入サポートのセクション(Get Started)。それから募集ページの公開後に「ユーザーを集めるにはどうすればいいか?」「応募してもらうコツ」など、カジュアル面談を実施するまでのTipsをまとめたセクション(Best Practices)。さらには、事例からヒントを得てコンテンツに磨きをかけていただくために、運用に成功している他社事例を紹介するセクション(Customer Stories)があります。
なかでもCustomer Storiesのセクションでは、企業よりも実際の運用を担う人事担当者にスポットを当てました。僕はWantedlyって、担当者が運用してくれることで価値が生まれるし、愛着がわくプラットフォームだと思っていて。だから、頑張っている担当者にスポットを当てたい。他社さんが「この人も頑張ってるから、自分も頑張ろうかな」とか「このテクニックは盗めそうだから明日やってみよう」とか。そういうきっかけを与えるために作りました。
副島:
「Learn & Support」はローンチしたばかりなので、これからはページの存在をもっと知っていただけるといいですよね。私たちがいくら「契約・導入・活用・継続」とお客様のステータスを整理しても、それは私たちにとっての定義であって、「で、何をすればいいの?」と悩むエンドユーザーが自分の進捗を確かめるための言葉にはなりません。「Learn & Support」のいいところは、コンテンツを読んだエンドユーザーが、Wantedly運用を通じてステップアップする感覚を持てるところ。これからPRして認知度を上げていきたいですね。
古賀:
認知度の向上もそうですけれど、今後はコンテンツの事例になった人にセミナーに登壇してもらいたい。コンテンツ・セミナー・コミュニティといったカスタマーマーケティング領域の施策がそれぞれ断続していては大きな成果につながらないので、価値が循環するようなモデル・体制を構築できればいいですね。
同時に、「導入〜活用」の後工程とのつなぎこみを洗練させるためには「コンテンツを見た人のステータスにどのような変化が起こるのか」をデータで追えないと意味がありません。お客様がサポートコンテンツを閲覧した後の行動パターンをしっかりと観測しPDCAを回していくための仕組みを、吉種さんが設計したヘルススコアを中心に構築していきたいですね。
近日公開予定の座談会後編では「継続」のフェーズに関わるヘルススコアについてお話しします。これまでブラックボックス化していた顧客ステータスを定量的に把握するヘルススコアをどのように設計するのか。また、ヘルススコアという基盤を手に入れることで、CSチームはどんな未来を描けるのか。3人の話を通じて掘り下げていきたいと思います。
あわせて読みたい