Production Ready研修 @ Wantedly - Qiita
この資料は2019年ウォンテッドリーの新人研修資料です。インフラ研修における「Production Ready」の考え方についてまとめたものです。マイクロサービス化が進む中で、個々人またはチームで自信を持ってローンチして、コア・バリュ...
https://qiita.com/koudaiii/items/e5c16830234ceed41e80
こんにちは、Wantedly でエンジニアをしている南です!
Wantedly では、毎年新卒メンバー向けに新卒研修を実施しています。今日はその取り組みについて、特に今年の新卒研修で考えたことや実施した内容についてご紹介したいと思います!
Wantedly の新卒研修はいくつかユニークなところがあるので、まず始めに簡単に概要を説明したいと思います。
まず、Wantedly では新卒であっても「研修だけを受ける期間」というものは存在しません。それぞれのメンバーは入社してすぐにプロダクトチームやビジネスチームに入って実務を行い、並行して週に3-4回、1回あたり 30min-1hour ほどの研修を受けるという形式にしています。
この運用をしている理由はいくつかあります。そのうちの1つは、Wantedly ではエンジニア、デザイナー、ビジネスのそれぞれのポジションで「すぐに実務が出来る人」を採用しているという事です。プログラミング未経験の人をエンジニアとして雇う事は無いですし、デザイナーも同様です。その為、研修の内容は「最低限必要な基礎知識」というよりは、メンバーが Wantedly の中ですぐに活躍出来るように「実力を底上げするためのもの」を中心とした実践的な内容になっています。また、「組織やプロダクトについて」など、会社として伝えていかなければならないものも重視しています。
もう一つの理由としては、「そもそも長期インターンを経験しているメンバーが多い」という点も挙げられます。基本的に入社時はインターン時代に所属していたチームにそのまま入るため、実務をしない期間を設けるよりも自然なフローとして受け入れられています。
その他、実務を経験する事でより「研修の効果」を実感やすいという狙いもあります。また、逆に研修に対してメンバーからフィードバックをもらう際も、「実務に対して効果があるかどうか」という実践的な観点でコメントをもらうことができます。こちらもメリットの1つです。
このように、実務と並行しながら、新卒メンバーには4-5月の2ヶ月間新卒研修を受けてもらっています。
入社直後の新卒メンバー。今年はエンジニアが5名、デザイナーが1名、ビジネスが2名入社しました。
例年、新卒研修全体の取りまとめは CTO が行っているのですが、多忙の為に時間の捻出が難しいという側面がありました。1人責任を持つ人を立てて実施したいという思いから、今年は自分が担当する事になりました。
今年の新卒メンバーはエンジニア、デザイナー、ビジネスのそれぞれのメンバーがバランスよく入ってきたため、次のような分担で研修内容の考案・実施を行いました。
新卒研修実施に向けて、最初にやったのは「新卒研修で実施する内容の考案・整理」です。
「Wantedly で活躍する為に何を身につけてもらう必要があるか」という観点で、以下のようなヒアリングを実施しました。
ヒアリングの際は以下のような issue を作り、そこに出てきたアイディアをまとめていきました。
これらのプロセスを通して実施したい研修内容についてアイディアを出した後、CTO とすり合わせながら「実際に新卒研修として取り組む内容」を決めていきました。
取り組む内容を決めたら、いよいよ実施です。研修は基本的には講義 or ワークショップ形式で、それぞれのコマごとに講師を assign する形にしました。講師としては、「その領域に詳しい人」かつ「その領域を教えることにモチベーションがある人」にお願いするようにしました。
実際に実施した内容のうち、いくつかピックアップしてご紹介します。資料が公開されているものについては、資料のリンクも添付しました。社内向けで公開出来ない資料については、一部を抜粋して掲載しています。
Wantedly のビジョン・カルチャー・組織 by 仲
CEO の仲から、Wantedly という会社のビジョン、カルチャー、組織について話してもらいました。
Managing Your Leader by 川崎
CTO の川崎から、1 on 1 などを通してリーダーとどう付き合っていくかを話してもらいました。リーダーをマネージするという考え方に衝撃を受けるらしく、毎年人気の講義です。15 five という Wantedly で利用しているツールの紹介も含まれています。
Wantedly の創業時から学ぶプロダクトの考え方 by 川崎
CTO の川崎から、Wantedly の創業時からの歴史を振り返りつつプロダクト開発の考え方について話してもらいました。こちらは、以下の資料をベースにしています。
Wantedly Visit というプロダクトについて by 久保長
Visit チームリーダーの久保長から、Wantedly Visit というプロダクトがどういったサービスなのか、今後何に注力していくのかについて話してもらいました。
以下は、資料の一部です。
「Visit の Product について知ろう」というタイトルで話してもらいました
Wantedly Visit が提供している価値を説明した資料です
Wantedly People というプロダクトについて by 武田
People チームリーダーの武田から、Wantedly People というプロダクトがどういったものなのか、どういった歴史を歩んできたのかについて話してもらいました。
以下は、資料の一部です。
「Wantedly People History」というタイトルで話してもらいました
Wantedly のデザイン by 青山
デザイナーの青山から、Wantedly のブランド表現やデザインについて話してもらいました。
Wantedly の会計 by 吉田
CFO の吉田から、会計の基礎、Wantedly Visit のビジネスモデル、数値計画や予算への向き合い方について話してもらいました。
以下は、資料の一部です。
「会計について深掘りしない会計の話」というタイトルで話してもらいました
Wantedly のビジネスチーム by 川口
ビジネスチームリーダーの川口から、Wantedly Visit のビジネスチームの組織や取り組み、 市場規模や戦略について話してもらいました。
ビジネスマナー by 仲野、岩谷
ビジネスチームの仲野、岩谷から、ビジネスマナーについて話してもらいました。
以下は、資料の一部です。
「ビジネスマナー研修」というタイトルで話してもらいました
新卒からリーダーになるために by 森脇
エンジニアの森脇から、リーダーになる為に心がけると良い事、意思決定のプロセスや重要さについて話してもらいました。
フロー状態で仕事をするための Getting Things Done by 南
自分が担当した講義で、Getting Things Done と呼ばれるタスク管理手法について紹介しました。新卒研修実施前にメンバーからのヒアリングを行う中で、「自分に合うタスク管理手法を見つけるまで苦しんだ」という話を聞いた事がきっかけで実施を決めたものです。
コンテンツ作成に集中するためのプレゼンテーション Tips by 大坪
エンジニアの大坪から、プレゼンテーション資料を作成する際の Tips について話してもらいました。良いプレゼンにする為の実践的なテクニックが詰まっています。
THE NON-DESIGNERS DESIGN by 菅谷
デザイナーの菅谷から、デザインとは何なのか、またデザインスキルの基礎はどういったものなのかについて話してもらいました。
以下は、資料の一部です。
「THE NON-DESIGNERS DESIGN」というタイトルで話してもらいました
Think about UI by 上野
デザイナーの上野から、UI について考えるワークショップを開催してもらいました。
以下は、資料の一部です。
「Think About UI」というタイトルで話してもらいました
UX の階層についての説明
Wantedly のインフラ by 坂部
インフラチームリーダーの坂部から、Wantedly のサービスを支えるインフラがどういう思想で作られているのか、どういった歴史で今の構成になっているのかについて話してもらいました。また、実際に Kubernetes cluster 上に1つ microservice を作成してみるという実践的な内容も含まれていました。
「Production Ready とは何か?」という事もこのタイミングで話してもらいました。
ソフトウェア設計 by 竹野
エンジニアの竹野から、ソフトウェアの設計はなぜ重要なのか、また設計に際して何を考えるべきかについて話してもらいました。
以下は、資料の一部です。
「ソフトウェアの設計について」というタイトルで話してもらいました
Redis で学ぶデータ構造とアルゴリズム by 川崎
CTO の川崎から、Redis の内部データ構造やアルゴリズムについて話してもらいました。データ構造やアルゴリズムに興味を持ってもらう事、また必要であれば OSS のコードを読んで理解を深める習慣を身につけてもらう事を狙いとした研修です。
ソフトウェアテスト by 原
エンジニアの原から、ソフトウェアでテストを書く目的や自動テストをいかに実施するかについて、実践的な取り組みを話してもらいました。
BigQuery データ分析ノック by 松村、山中
エンジニアの松村と山中に、BigQuery でデータ分析するワークショップを実施してもらいました。ひたすら大量の SQL を書くために良いトレーニングになると言われており、毎年開催している人気の講義です。
データを正しく見る為に by 富岡
エンジニアの富岡から、サービスの課題を分析したり、リリースした改善の結果を評価するための実践的な分析方法について話してもらいました。
機械学習との付き合い方 by 丹治
機械学習エンジニアの丹治から、機械学習をプロダクトに役立てるためにどのように取り組むべきか、Wantedly ではどうしているのかについて話してもらいました。
新卒 ISUCON by 南、齋藤、千葉
自分が同僚の齋藤、千葉とともに実施した研修です。実践的な高速化手法の習得や、インフラからアプリケーションまで広い領域への習熟を狙いとして、1日がかりで社内 ISUCON を実施しました。こちらも毎年開催している人気の研修です。
実施の際には、事前に練習用の instance を用意するなど、学びやすい環境の整備にも気をつけました。
当日の様子については、参加したメンバーにブログを書いてもらいました。こちらもご参照ください。
失敗から学ぶ - ポストモーテム by 齋藤
エンジニアの齋藤から、Wantedly で取り組んでいるポストモーテムという取り組みの意義や内容について話してもらいました。失敗から学ぶ文化を作っていく上で、欠かせない研修だったと思います。
Frontend Engineering @ Wantedly by 山田
エンジニアの山田から、Wantedly の Web フロントエンド開発で使われている技術や、Web フロントエンド開発に求められる一般的な知識について話してもらいました。
実行計画から学ぶ PostgreSQL の内部動作とクエリ最適化 by 南
自分が担当した講義です。Wantedly ではサービスから利用する DB として基本的に PostgreSQL を利用しているので、PostgreSQL の内部動作について理解を深めてもらうために講義をしました。
プロダクト改善ワークショップ
エンジニアの永島と永田から、プロダクトを改善するサイクルの回し方について話してもらいました。また、実際に改善アイディアを提案するワークショップも実施しました。
なお、ここで紹介したもの以外にも、様々な研修を実施しており、一部は資料を公開しています。以下の Wantedly 発表資料一覧ページも参照してみてください。
研修を実施する際は、いくつか工夫を行なっています。
まず、講師の方にお願いして、可能な限り資料を公開してもらいました。確かに、研修で話す内容の中には、「組織固有の話」など場合によっては公開するのが難しいものもあります。一方で、「普遍的に必要とされる知識の話」については公開しても問題無いだけでなく、世の中に学びとして蓄積していく事ができます。また、資料が公開されていればいつでも共有・参照できるので、今後新しく入ったメンバーにも簡単に情報を共有する事ができます。それらの狙いから、公開を推奨するようにしました。
また、講義の受講者については、新卒メンバーに限定しないようにしました。研修の内容によっては新卒メンバーに限らず広い範囲の人にとって有用なものがいくつもあり、それを新卒メンバー限定にしてはもったいないと考えたためです。Google Calendar に全員が分かる形で講義の予定を入れておき、聞きたい人は自由に参加できるようにしました。
さらに、新卒メンバーからフィードバックをもらうために、講義の直後に Google Form でアンケートに回答してもらうようにしました。講義を受けたばかりの状態で振り返ってもらえるだけでなく、講義の内容や新卒研修の運営について、改善の為の有用な情報をすぐさま集める事ができました。
これらの取り組みを経て、4-5月の2ヶ月にわたる新卒研修は無事終了しました。フィードバックアンケートを見る限り、新卒メンバーからは総じて高評価を貰えたと思っています。
新卒研修が終わった後は、新卒メンバーと新卒研修運営メンバーで打ち上げに行きました。研修の締めくくりとして、満足感のある楽しい会になったと思います。
新卒研修打ち上げの様子。皆良い表情をしています。
打ち上げでは美味しい焼肉をいただきました!
今年の新卒研修は終わりましたが、今後も新卒研修は実施していきます。さらに改善をしていくために、やりたい事はまだまだたくさんあります。
例えば、「一定時間経過した後での効果測定」は新卒研修の評価を行う上で有用だと考えています。研修直後はたくさんの事を学ぶため「役立った」と感じるバイアスが強いですが、半年後や1年後などある程度時間が経った状態で振り返る事で、「真に役立ったかどうか」を評価する事ができます。
また、新卒研修以外のトレーニングも今後強化していきたいと考えています。中途入社するメンバーや既存のメンバー向けのトレーニングを通して、Wantedly のメンバーの力を底上げする事が狙いです。
Wantedly で 2019年度に実施した新卒研修について、その取り組みや実施した内容についてご紹介しました。社内のメンバーへのヒアリングから研修内容の立案、実施、フィードバックをもらうところまで、一連の改善サイクルについても説明しました。
新卒研修の改善サイクルを回す中で、Wantedly では着実に知見が積み上がっています。今後も、新卒研修の取り組みはさらに改善されていくはずです!