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今回は、グッドパッチの最年少マネージャーに就任した野田のインタビュー記事をお届けします!経営コンサルティングファームの内定を辞退しグッドパッチへ新卒入社した理由や、社内で語り継がれる組織崩壊時のプレゼン内容、次の3年でグッドパッチで実現したいことについて話を聞いてみました。
プロフィール
Goodpatch Design Div. UX Design Lead 野田 克樹(のだ かつき)
Twitter:@ktknd
2017年4月新卒入社。千葉県木更津市出身、千葉大学工学部情報画像学科 卒業後、プロジェクトマネージャー / UXデザイナーとしてグッドパッチへ入社。約2年間UXデザイナー/プロジェクトマネージャーとして主に日系大企業のデジタル新規事業の立ち上げに携わる。2018年にはTBSテレビの新規Webメディア「Catari」の立ち上げからリリースまでを担当し半期社内MVPを受賞。2019年6月にはグッドパッチ史上最年少マネージャーに就任し、現在はUXデザイナーのマネジメントも行う。
デザインに携わりたいと思ったきっかけは、ピクサー作品
僕はもともと、ピクサーの映画、特に『カーズ』が大好きでかなり影響を受けています。ピクサー作品のDVDには、スタジオやオフィス風景、スタッフのインタビューといった現場の制作風景の裏側がわかるコンテンツがおまけとして付いているのですが、初めてそれを観たときに、僕の中でファンタジーだったものが人の手によって生み出されていたことに衝撃を受け、同時に強く憧れを感じました。
『カーズ』のような人を感動させる作品をつくる技術を学びたいと考え、千葉大学工学部情報画像学科に進学し、専門として、画像解析やリモートセンシングの技術を学びました。
また、アルバイトではスターバックスで体験を重視した接客を学びました。face to faceのコミュニケーションのなかで相手がどんなニーズを持っているのかを汲み取り、お客様が喜ぶ商品を提案する体験を通して、僕は技術に加えて「人がどう感じるのか」という体験と向き合うことに興味があると気づいたんです。人の心を動かす「ストーリー」をつくることに自分はワクワクすると考え、大学院で技術ではなく、デザインを極める道で就職すると決めました。
Goodpatchが目指している最高のチームを新卒社員にも知ってもらうために、毎年新卒社員の入社日にはCEOからのプレゼントとして『ピクサー流 創造するちから』を配布しています。
https://goodpatch.com/blog/people-experience-onboarding-newgrads/
経営にデザインの観点が必要になる時代にデザインで生きることに決めた
「人を感動させるストーリーをつくりたい」という想いで就職活動を始めたものの、僕には何の専門性もありませんでした。自分の武器を見つけるために、ストーリーテリングに紐づく専門性を調べていくと、マーケティングという領域に行き着きました。そこで、オンライン辞書サービスの会社でインターンを始めたんです。大学3年生、2015年のことです。
インターンではWebマーケティング業務を担当し、ボタンのABテストや機能追加時の仕様作成、最終的にはアプリのUIデザインやゼロからアプリを立ち上げるところまで携わらせてもらいました。独学でマーケティングや経営の勉強をしていたところ、ハーバードビジネスレビューのケーススタディに登場していたIDEOをきっかけにデザインファームの存在を知りました。そこでデザイン思考を初めとする広義なデザインに出会います。当時、ある経営コンサルティングファームから内定はいただいていたのですが、「本当に自分が進むべき道はデザインなのかもしれない」と日本のデザインファームを探していたときに、グッドパッチと出会いました。ちょうどサマーインターンを開催していた時期で、僕は大学4年生の夏でしたが、勉強のためにサマーインターンに申し込み、参加しました。
サマーインターンで体験したのは、徹底的にユーザーと向き合いひとつのプロダクトを作っていくデザインプロセスでした。当時の課題は「オリンピックにまつわるサービスを開発する」というもので、ペルソナに扮した社員に直接ユーザーインタビューを行うのですが、ユーザーとの距離の近さにまず衝撃を受けました。Webマーケティングのインターンにおいて、実際の顧客を前にすることはなかったからです。「良いものや人を感動させるものをつくりたかったら、デザインが必要なのかもしれない」とデザインの可能性に気づきました。
野田が参加した当時のサマーインターンの様子
https://goodpatch.com/blog/summer_intern_report_2016/
今では経済産業省による「デザイン経営」宣言の発表をはじめ、ビジネスにおけるデザインの認知度は高まりつつありますが、2016年はデザインを経営、ビジネスで活用している国内の実例はまだまだ少ない頃でした。そのタイミングでサマーインターンに参加し、代表の土屋から「これからはデザインの観点を備えた経営者が必要になる」という言葉を聞き、悩んだ末デザインの道で生きていこうと決めました。グッドパッチでなら、技術と人の間でストーリーテリングを実践できると思い、内定をいただいていた経営コンサルティングファームを辞退、グッドパッチへ入社しました。
メンバーを役割ではなく人として知る、全員が輝ける土台づくりを
意気込んでグッドパッチに入社したものの、入社後しばらくは「自分は何もできていない」と感じる経験が多くありました。例えば模擬クライアントワークを行う研修で、参加している人を巻き込み場をデザインしたプレゼンをする同期に対して、「この同期には勝てない」と毎回感じていました。さらに、初めて担当した新規事業立ち上げのプロジェクトでは、クライアントの意思決定者となかなか会えず要件が二転三転してしまいデザイナーを疲弊させてしまうなど、悔しい経験が多かったです。
その頃、自分だけではなく会社自体にも閉塞感がある状況でした。そんな時に転機になったのがSXSWというカンファレンスに行ける権利を懸けた社内のプレゼン大会でした。
野田のピッチ資料
自分の持つデザインノウハウをピッチするという企画だったのですが、「僕は経験も少ないし、ノウハウもないけど、このGoodpatchの事が大好きです!僕はこの会社を世界で一番有名なデザイン会社に成長させたいです!SXSWでGoodpatchを世界に売り込む経験をさせてください!」とピッチし優勝、SXSWへのチケットを手にしました。代表土屋のブログでも紹介されていますが、メンバーから共感のコメントをもらうなど反響も大きく、自信に繋がりました。
もう1つの転機が、初めてPM/UXデザイナーをメインで担当したTBSテレビの新規事業Catari(カタリ)でした。ブランドアイデンティティ構築からWeb開発までお手伝いさせていただいたプロジェクトです。
TBS新規事業Catari(カタリ):https://goodpatch.com/ja/work/catari
複数のステークホルダーを巻き込んだチームビルディングには苦労しましたが、先方のプロダクトオーナーの方が考えていることに追いつこうと奔走し、社内のチームメンバーがモチベーション高く働ける環境を作ることにフォーカスした結果が認められ、当時の社員総会でMVP(Most Valuable Product)を受賞することもできました。
当時のプロジェクトチームメンバーと撮影した2017年MVP受賞の様子
このプロジェクトでは、チーム内で「これは聞いてなかった」ということや、開発側とデザイン側で剥離がないように、コンセプト決めワークショップなど上流からエンジニアに参加してもらっていました。
UXデザイナー兼プロジェクトマネージャーである僕のアウトプットはサービスコンセプトやユーザーインサイトなど、ユーザーの目には触れない中間成果物なんですよね。だからこそ、自分がモチベーション高く働けることよりも、デザイナーとエンジニアが強みを発揮できて、モチベーション高く働ける環境づくりに注力しました。
引用:TBS新規事業Catariは愛から生まれた。サービスに息を吹き込むまでの軌跡
今振り返ると反省点はいくらでも出てきますが(笑)、自分の責務は「チームメンバー全員が輝ける土台をつくること」なんだとはっきり認識できたプロジェクトでした。
MVPに選んでいただいた時のことは今でも忘れられません。当時のグッドパッチはカルチャーの再構築を行なっている途中段階だったので、毎月メンバーが退職していくような状態でした。そんな状況だったので、受賞挨拶の時は「僕は絶対に会社を辞めない。グッドパッチが潰れるまで戦います。」という言葉が出てきました。どんなにいいチームを作っても、続けられなければ意味がないですよね。
日本のデザイン投資額向上によって、世界を前進させる
入社3年目の今は Design Div. で、UXデザイナーとしてプロジェクトに参画しながら、UX Design Lead としてメンバーのマネジメントにも挑戦しています。次の3年では僕がグッドパッチの柱になるような新しい事業をつくりたいと思っています。
例えば既存の自社事業であるデザイナー特化型キャリア支援サービス『ReDesigner』は、日本のデザイナーを増やしデザイナーが輝ける環境をつくることに挑戦していますし、フルリモートデザインチーム『Anywhere』は人が働く環境自体をこれまでとは全く違う形でデザインしています。
グッドパッチの柱になるような新しい事業をつくるには、自分がまだ未熟すぎるので進化しなければいけません。僕には、デザインの価値を広げるためにどうしたいかという視座とビジネス視点が足りていないと思っています。
デザインの価値を広め日本をどうしていくかという問いの先には、日本のデザイン投資額が増える未来があります。デザインの観点を持った経営者が増えたり、スタートアップにデザイナーがジョインしたり、デザイナー起業家に投資が集まったり、大企業の開発予算にプロダクトデザインのためのデザインファームへの投資が増えたり、といった状態です。どうやってデザインの価値を広めるか、という部分はまだ言語化できていません。
またもう一つ不足しているビジネス視点ですが、現状はプロダクトオーナーの人がビジネスの観点を補ってくれています。プロダクトオーナーと同じ解像度のビジネス観点を持たなければなりません。僕はたまたま大企業の案件を担当することが多いのですが、クライアントから学ぶことが多くプロジェクトの数だけ尊敬するプロダクトオーナーがいます。彼らと仕事をすればするほど、プロダクトや事業を持つことに憧れるんです。
ただ、まずはグッドパッチとしてデザインパートナー事業を成長させるべきだと考えています。グッドパッチがパートナーとして関わる企業を増やし、世の中に良いデザインが増えれば増えるほど、世界が前進するというのが僕らのビジョンです。事業拡大のためにマネージャーとしては人が肝になると考えています。僕は、メンバーのスキル的成長はもちろんですが、人間的に豊かになって欲しいと思っています。その先で事業を成長させ、デザインマーケット自体を拡大していきたいです。