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組織カルチャーの「基盤」はどこにある?|Building Wantedly #1

成長企業は採用だけではつくれない。

ウォンテッドリーを「採用の会社」として思い浮かべる人は多いかもしれません。もちろん、私たちが採用を組織づくりの要として重要視してきたことに間違いはありませんが、人を集めるだけでは組織は成り立たないのもまた事実。同じ目標に向かって邁進するチームを作るためには、組織設計にも思想を込めなくてはいけません。

CEOである仲の「自分自身が新卒で入りたいと思うような会社を作る」というシンプルな想いから始まったウォンテッドリーの組織づくりの物語は、30人/50人/100人...と増える登場人物の数にあわせて新たに立ち上がる課題の連続でもありました。

全3回にわたる連載ストーリー「Building Wantedly」では、ウォンテッドリーが会社設立初期からこれまでの間に積み重ねてきた“シゴトでココロオドル組織”を作るためのチャレンジについて紹介したいと思います。

ゼロイチ期の信頼関係を支えた距離感

「小さなチームで距離感が近かったこともあって、特に意識せずともワークエンゲージメントを高く維持して働くことができていた」...... CTOの川崎は、彼がウォンテッドリーにジョインして間もない2012年当時を振り返ってそのように述べます。

事実、創立当初からダニエル・ピンクの提唱するモチベーション3.0理論に強く影響を受けていたウォンテッドリーのチームカルチャーにおいては、「陣頭指揮を執るリーダー+その他の作業者」という図式に陥らないよう、プロダクト開発において実際に手を動かすエンジニアへの権限譲渡を初期から進めていました。ピンクのいう「自律(autonomy)」によって駆動する組織であるために、CEOの仲を中心に「WHY(なぜやるのか)は示すがHOW(どうやるか)は任せる」という方針を貫いていたのです。

もちろん、高い裁量を持って働けるチームができたのは、「特定の分野で自分より圧倒的に優れた人をチームに迎え入れる」という採用方針があったからこそ。しかし同時に、優秀なメンバーが自律して働いたうえで、最高のアウトプットを持ち寄れるようにするために必要だったのが「最高のコミュニケーション」と「最高の環境」を生み出すための数々の仕掛けでした。

カルチャーには、それを育む「場所」が必要だ。

なぜウォンテッドリーはコミュニケーションや環境への積極投資を大切にしているのか。コロナショックによるリモート勤務の拡大から先駆けること8年前、ウォンテッドリーが経験したリモート勤務にまつわる小さなつまづきに、その理由の一端が隠されていました。

川崎:当時の僕たちは10人にも満たないスタートアップ企業でしたが、「何時にオフィスに集まるかも決めていないし、来ないなら来ないでもOK」というゆるい取り決めのもと、各々が自分のペースで働いていました。ただそれだと、ちょっとした相談ごとをしたい際に、いるべき人がいないせいで意思決定が先送りになってしまいます。

対面であれば30分で済むような決断を1日遅らせて、スタートアップの生命線であるスピードが損なわれてしまうでは本末転倒なので、“原則リモート非推奨”の方針を作ることにしました。2020年現在はコロナの影響で在宅勤務がメインになっていますが、それが意思決定のスピード感やワークエンゲージメントにどのような影響を与えるのか、引き続き注視していきたいと思っています。

良いプロダクトを開発するためには、なによりもコミュニケーションの量と質を担保することが大切。そしてそのためには、アドホックに互いを呼び出しあえる距離の近さや、お互いの顔が見えている安心感がなくてはならない...... それが初期の学びからウォンテッドリーが培ったスタンスでした。

そして、顔の見える距離感を軸にコミュニケーション文化を育んでいくためには、サードプレイスのような居心地で「共創」を促す場所が必要だと私たちは考えました。そんな独自の哲学をカタチにしたのが、2015年に入居した白金台のオフィスです。

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社内制度は小さくスタートする

しかし、この引っ越しの裏側でウォンテッドリーは、人員拡大を見越した組織づくりを進めている真っ最中でした。いわゆる「30人の壁」を超えて組織をスケールさせるために、優れたコーポレート機能を必要としていたのです。

コーポレート部門の執行役員を務める大谷がウォンテッドリーにジョインしたのは2014年のことでしたが、もともと彼はWantedlyの最初期の顧客であり、前職時代に人事として10人規模の会社を上場まで導いた「スタートアップのなんでも屋さん」であったといいます。

2012年、Wantedly初のmeetupで利用企業を代表してWantedlyの運用メリットを語る大谷

そんな大谷はウォンテッドリーに入社してまもなくメインのミッションである採用に奔走するだけでなく、「メンバーが生産性高く働き続けるためには何が必要で、何が不要か」を考えることも同時並行で行なっていきました。

大谷:私たちはプロダクトやサービスを作っている会社であり、皆で集まって議論しながら熱量高く働くことを大切にしています。なので、生産性を下げるものや手続きは極力取り除いたうえで、快適に働ける環境を作ることもコーポレート部門の仕事です。

具体的には、オフィスにある椅子や机、モニターなどの備品類は極力いいものを揃える。通勤で疲れないように1.5km圏内に住む場合には3万円の家賃補助を出す...... 大掛かりな社内制度をいきなりドカンと打ち立てるよりも、「小さくても社員に喜ばれること」を見つけて、それをスケールさせることにフォーカスした方がウォンテッドリーっぽいので、このやり方を気に入っています。

コーポレート部門であっても社員向けの制度やサービス設計を通じて洗練されたものづくりの文化に参加できることがウォンテッドリーの魅力だと語る大谷。社員アンケートで「オフィス周辺に食事の選択肢がない」という声が挙がれば、健康面にまで配慮したまかない制度を作り、利用率や準備工数などを見つつ改善していく......そんな風にサービスユーザーである社員の“行動”を通じて社内のニーズに対する仮説検証を繰り返しながら社内施策をスケールさせていきました。

オフィスに集まりづらくても、挑戦を続けるチームであるために。

このようにカルチャーの拠点であるオフィス、そしてそこで育まれるコミュニケーションへの積極投資を行なってきた私たちウォンテッドリーもまた、2020年現在、コロナの影響により「オフィスに集まって働く」こと自体の困難に直面しています。それでも、私たちが組織づくりにおいて目指すところは変わりません。

この4月には、非常事態宣言を受けて全社員に3万円の備品購入費を支給しましたが、こうした意思決定をスピーディーに行えたのも、環境への積極投資により社員の生産性を守るという思想があったから。さらには、大掛かりな社内制度を作るのではなく「各々の裁量で最適な選択ができるような、フットワークの軽い仕組みを考える」というコーポレート部門の哲学が、社員の自律を重んじた福利厚生施策として結実することになったのだと言えます。

大谷:ウォンテッドリーには「自分の頭で意思決定ができる人を採る」という採用方針があります。整った社内制度に安心を感じる人よりも「この事業が面白い!」と思ってくれる人と一緒に働きたいと考えているので、そういう人の挑戦をサポートするための仕組みを会社としては提供したい。

なので、一律的な福利厚生サービスを会社として提供するよりも、仕事で挑戦を続けるために各自が必要としているものに、いつでも主体的にアクセスできるような環境を作ることのほうが組織づくりにおいては大切だと考えています。

2020年3月、エンゲージメント事業第一弾として福利厚生サービス「Perk」の提供を開始したウォンテッドリー。この事業の背景にあるのは、私たちが今よりもずっと小さなチームだったときから変わらない、組織づくりの哲学なのです。


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