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サービスの根幹を支える“インフルエンサーファースト”の意識こそ、LIDDELLの強み
ーー今、LIDDELLで展開している5つのサービスを立ち上げた背景や特徴、独自性を教えてください。
5つのサービスを立ち上げたのは企業がマーケティング課題として捉えている「認知」「興味・関心」「検討」「購買」「共有」、そしてその先にある生活者のパートナー化までを支援するためです。そのためには、循環構造のマーケティング支援サービスが必要だと考えました。
また、解決レベルが高度な案件ほど、インフルエンサーはより高いクリエイティブなセンスやコミュニケーション能力を求められます。5つのサービスは、そんな彼らの成長レベルに対応できるものとなっています。
まず、「EMERALD POST(エメラルドポスト)」はインフルエンサー初心者向け、ソーシャルメディアでつながる友人や知人へ、企業のニュースやお知らせを届けるサービスです。
次に、「SPIRIT(スピリット」はさらなる活躍を目指すインフルエンサーが、商品やサービスを自身の体験情報としてフォロワーに伝えていくサービスです。
さらに、企業の公式SNSアカウントの運営やクリエイティブを担い、より複雑な案件に継続的に対応する「PRST(プロスト)」、インフルエンサー自身が本当に好きなものを、SNS上で接客販売していく「FOR SURE(フォーシュア)」が続きます。
最後の「JANE JOHN(ジェーンジョン)」は、インフルエンサーの育成と発掘の役割を担い、インフルエンサーと企業とのパートナーシップ構築の架け橋となります。
なお、「EMERALD POST」「FOR SURE」はビジネスモデル特許をとっており、他ではできないリデルだけのコミュニケーションが実現可能です。
ーーインフルエンサー(=個人)を大切にし、成長も視野に入れたサービスとなっていますが、クライアント視点で事業を行う企業が多い中、その発想はどこから生まれたのでしょうか。
企業との取引では、個人であるインフルエンサーはどうしても弱い立場になり、本当はやりたくない内容でも断りづらいのが実情です。でも、我々のサービスは、登録インフルエンサーがやりたい仕事に手を挙げる公募形式。企業とインフルエンサー、双方のニーズにギャップが発生せず、お互いがwin-winの関係を築けます。また、企業とインフルエンサーが対等であるために各サービスにはお互いに評価し合うシステムを導入しています。
LIDDELLは「個人の影響力を、人々の未来のために。」をミッションに掲げ、「人×テック」というメソドロジーや理論を礎に、「企業」と「個人(=インフルエンサーや生活者)」が対等に取引できる環境(エコシステム)を目指しています。そういった部分が、キャスティングのみやマッチングのみを展開する他企業と一線を画する所以のひとつであると考えています。
ーーサービス形態としてプラットフォーム型を採用したのはなぜですか。
プラットフォーム型を採用した理由は、これからの社会が、個人が縛られずにより自由な形で自分の影響力を発揮していくと踏んでいたからです。特にインフルエンサーは、自分の個性を出しているからこそ、影響力を発揮できます。SNSに理解のない方が無理やりマネジメントするのではなく、本人によるセルフプロデュースに多くを委ねる。そのためには、より自由度の高いプラットフォームにするのが適しているだろうと考えました。
ただし、完全自由な場を解放しているわけではありません。質の高いアウトプットを生み出すために、最低限の制限やルールを設けた上で、インフルエンサーが自由に活動できるようにサポートする。こういう手法こそ、これからの社会に合っているし、インフルエンサーと企業をつないで影響力を発揮できるのではないかと思います。
ーーインフルエンサーファーストは、LIDDELLのサービスの特徴でもありますね。
LIDDELLはプラットフォームを運営するテック企業でありながら、未だアナログな部分があります。それは僕がエンターテインメント業界に長くいたことが要因の一つです。ただその分、人のマネジメントには長けていると自負しています。だから、デジタルなプラットフォームを作るにしても、情緒的な部分を踏襲しインフルエンサーファーストになりやすい。芸能プロダクションを経営していた頃のタレントファーストな姿勢が染みついているからこそ、特徴的なサービス設計になったのだと思います。
もちろん、インフルエンサーファーストは、クライアントのことを思ってこそ。インフルエンサー自身の個性や意志を尊重して活かすことが、結局は課題解決や売上の向上につながる。インフルエンサーの意志を尊重することで、インフルエンサーとクライアントは真のパートナーとして「協働」できると考えています。
インフルエンサーを育て、業界の健全性を担保することも、一企業としての重要な役目
ーーインフルエンサーファーストを貫き続けるために苦労されたことはありますか。
大きな利益を得られそうな案件でも、インフルエンサーに本当にメリットがあるのか?
「広い視点で捉え、インフルエンサーに損があれば断る。」これを頑固にやってきました。
そして、インフルエンサーに厳しく対応する場合もありました。それはインフルエンサーとしての活動に対し、モラルやマナーを守ること。インフルエンサー検定を開発し、SNSリテラシーを向上させる教育事業の実施などです。レクチャーをした上で、ルールに従ってもらえない人には退会してもらったこともあります。この姿勢は社員もしかりで、インフルエンサーを教育するためには、まずスタッフが学ばなければいけません。だから、入社時には必ず検定を受けてもらいます。
そのため、LIDDELLが初めて使った広告費は売上向上ではなく、ステマ撲滅活動に充てました。当時、FR2というファッションブランドが展開する『スモーキングキルズ(Smoking Kills)』とコラボレーションさせていただき、"ステルスマーケティングキルズ Tシャツ" を作ってインフルエンサーに着用してもらうPRキャンペーンをやりました。僕らはこの市場で仕事をしていく限り、業界の健全性に寄与していかなければならないという意識はサービス当初から強く持っていました。
個人プレーからチームワークの時代へ。他者との関係性をいかに築けるかが、これからを生き抜くカギ
ーーこれからのマーケットの動きについては、どうお考えですか。また、それに向かってどう進化していくべきかを教えてください。
個人が自分のブランドを高め、それぞれが主役になる「個人の時代」が到来しています。僕等はこの個人の時代に先駆けてビジネスをしており、インフルエンサーという個人を成長させて、個人事業主として自律する支援を事業化しています。
ただ、近い将来には個人での限界を感じ始めるインフルエンサーが増えると思います。活動規模を大きくしていくプロセスにおいては、自分だけでは不得意な領域もあって、それを補完しあえる仲間が必要になってきます。なので、今後はチームワークの時代になっていくと思います。
例えば、あるYouTuberが、最初は自分一人で撮影、編集をして作っていたけれど、規模が大きくなるにつれて、企画、撮影、編集、ロケハンをする人など、関係者が増えてチームプレーをするようになった。このように、多くのインフルエンサーの個人活動も同じように集団活動になっていくと思います。
僕等のプラットフォームも、これからは<ワークスペース>として様々な関係者が、企業も個人も関係なく、チームになってプロジェクトを進めていく形になっていくでしょう。
(第三回に続く)