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仕事を抱え込む人はご用心 定年間際の人事異動の意味

プレーイングマネジャーが9割ともいわれる日本企業の管理職ですが、役員に出世する人は、早々に部下に仕事を任せています。一方で、思い入れがあり、誰よりもうまくできるという自信のある仕事ほど、任せづらいのも事実です。しかしいつまでも仕事を抱え込んでしまうと、出世どころか、活躍の場を失うことになりかねません。

「仕事を抱え込む人」ほど実質定年が早くなる

後輩に任せるより、自分でやった方が早い。そう考えるのは当然です。それに、仕事を依頼した上司やお客さんのニーズにこたえるためにも、スキルが高く経験もある自分がやった方がよいのはまさにそのとおりです。

さらにいえば、仕事を後輩に任せてしまうと、自分の首をしめることになる可能性もあります。たとえば高度な知識と経験がないとうまく進められない仕事を誰にも教えずにおけば、いつまでも会社に必要とされるからです。

60歳の定年後、65歳まで再雇用されるとしても、自分しかできない仕事があるとすれば、給与を減らされずに済むかもしれない、と考える人もいます。

けれども人事部の考えは違います。

仕事をひきつがない。マニュアル化しない。抱え込んでしまう。そんな人に対しては、早めの三くだり半が突き付けられることが増えてきました。

ビジネスパーソンにとっての三くだり半とは定年と思われがちです。けれども隠れた定年があります。隠れた定年は、60歳を待たずにどんどん適用されています。

それは異動です。

「総合職正社員」はほぼ異動を拒否できない

人事に詳しい方であれば、従業員の異動について、それがむちゃなものだったら認められない、ということをご存じでしょう。

けれども実際には、総合職として新卒採用された正社員であれば、異動についての拒否が難しくなります。細かい話は裁判判例の解釈記事などにゆずりますが、採用時点から異動可能性がほぼない、ということを示されていない限り、総合職正社員は会社の指示に従う必要があります。

また、働いている会社が大企業で、給与水準が高いだけでなく、解雇もほぼないとすればどうでしょう。年齢が高くなるほどに、異動命令を断って、転職を選ぶ人の割合はどんどん減ってゆきます。

総合職正社員ばかりの大企業の人事部では、もちろんそんなことを熟知したうえで、「仕事を抱え込む人」への対策を考えるわけです。

仕事を抱え込んでいる人に対して、上司や人事部は再三、注意を促しているはずです。けれどもかたくなに断り続けていると、会社はもう仕事そのものから離してしまうしかない、と判断します。そうして異動命令を出すことになるのです。

異動によって変更されるのは、職種と勤務地です。そしてこの両方を変えようとする異動命令は少数派になっていると感じます。

なぜなら、両方を変えてしまうような異動命令だと、仮に裁判になった際に負ける可能性が高まるからです。また会社都合での異動判断をするのも同じ人間です。そんなにひどい意思決定はなかなかできません。

だから、同じ職種で別の地域に転勤を命令するか、同じ場所で別の仕事への異動を命令するか、そのどちらが増えています。

異動が定年になってしまうのは評価が下がってゆくから

仕事が変わっても働く場所が一緒なら、環境は大きくは変わりません。また、働く場所が変わっても、大きな意味での仕事が変わらないのなら、慣れることも早いでしょう。けれども、一定年齢を超えた異動のあと、どうしても上司からの評価が下がってゆきます。

異動直後は特例として標準評価を受けるとしても、その後は次第に評価が下がってゆくことになります。なぜなら、新しい職場にはもちろんその仕事に習熟した、異動した人よりも経験のある人たちがいるからです。その中に、異動した人よりも若くて優秀な人がいれば、どうしても評価は下がらざるを得ないのです。

結果として、仕事を抱え込んでいた人は、異動後に、誰でもすぐに覚えられる簡単な仕事を繰り返しつつ、低い評価に甘んじてゆくことになってしまいます。

それは、会社で働き続けられるという意味では定年ではありません。けれども、やりがいのある社会人人生は終わったも同然です。あとは会社の外で生きがいを見いだすしかなくなるのかもしれません。

会社の中で転職を試してみる

ではどうすれば「仕事を抱え込む人」にならずに済むのでしょう。

多くの上司や人事部が苦労しても実現できないのですから、そのための解決策はなさそうです。しかしそれは、外部から働きかけても変わらない、ということです。人の行動を変えるために、外部から正論を言ったり、指示命令をしたり、お願いをしても変わることはありません。

本人が気づき、変わろうとしなければ、人は変わらないのです。

「仕事を抱え込む人」になってしまう可能性は誰にでもあります。

この文章を読んでいるあなた自身もそうですし、私自身もそうです。というより、私自身、実際に過去に何度も仕事を抱え込んで、結果として苦労をしてきました。誰でも仕事を抱え込んでしまうし、それは自分もそうだ、と思うところから、人は変われるようになります。

そうして気づいたあとには、まず何をするか、ではなく、どうなりたいかを考えます。たとえば自分が経理のベテランだとします。中でも特定の複雑なやりとりについて熟知していて、そのことを抱え込んでいるとしましょう。

上司や人事部は、そのような人に対して、業務をマニュアル化しなさい、標準化しなさい、という指示を出してきます。けれども、もしそんなことをしたら自分のやりがいがなくなってしまう、と考えるのは当然です。

このような場面で考えるべきは、その仕事から解放されたあとでどんな活躍をしたいのか、ということです。

たとえば子会社を多く持つ会社であれば、子会社に対する経理指導の役割が考えられます。また、特定業務を包括する、より上位の仕事についての確認もあるでしょう。

誰がどんな仕事をしているのかがわかっていれば、経理システム刷新に際してのプロジェクトマネジャーとして活躍できるかもしれません。

自分がこれまで得てきた経験を踏まえつつ、新しくどんな仕事ができるかを考えてみるのです。そうして、これならやってみたい、と思える仕事ができたとき、自分はそちらの仕事に手を挙げて新しく関わってみてください。

その際に、これまで抱え込んでいた仕事もそのままで大丈夫。

もし、やってみた仕事が想像と違っていたとき、戻れる仕事があった方が良いからです。けれども、やってみた仕事が面白ければ、むしろこれまで慣れ親しんだ仕事は、別の人にやってもらうようにしましょう。そうして自然に新しい仕事にシフトする機会を得るようにするのです。

自分で選んだ仕事なら、きっとまたやりがいをもって活躍できるはずです。

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