少数精鋭の企業では、1人ひとりの価値観や考え方が会社としてのアウトプットに大きく影響します。プロダクト組織のグループマネージャー・服部毅保は、エンジニアとしてアソビューに出会ってから仕事に対する考え方が一変したメンバーのひとり。そのキャリアの変遷と仕事への姿勢の変化について紹介します。
「普通の人生を歩いている」エンジニアとして3年、感じた危機感
服部「『なんか、For youじゃないよね』と言われました。自分のことばかり考えていたらダメだと。関西から新幹線で数万円かけて来て、なんで怒られなあかんねんと思いましたけど、後から考えると、それが逆に良かったんです」
2016年夏の出来事を、服部はこう振り返ります。アソビューの採用面接の場でCEOの山野智久は、服部を「For youではない、自分本位だ」と𠮟責。このような厳しい言い方が、逆に服部の心を刺激しました。
服部はアソビューと出会うまでに、大手とベンチャーの2社を経験しています。大学の理系学部に進学した服部は、自然環境や生物の研究を行っていました。研究職に進む選択肢もないわけではありませんでしたが、研究に対する熱量は上がらず、他の道を模索。
就職活動当時はスマホが普及し始めたタイミングで、「スマホアプリ」という形で多くのサービスが提供されていました。そこに関心を寄せた服部は、エンジニアとしてものづくりに関わりたいと考えました。
服部「プログラミングを学んできたわけでもなく、スキルがない中どうしようと思っていろいろ調べていくと、大手企業であれば初心者にも1から教えてもらえる教育研修システムがあることがわかりました。ただ僕はエンジニアとして自分で手を動かしてモノをつくってみたいと思った。だから大手企業の本社ではなく、子会社に狙いを定めました。というのも、親会社だとどうしても営業やコンサルに近い業務が多くなるからです」
そうして大手ソフトウェア会社の子会社に在籍し、主に大手住宅メーカーの常駐エンジニアとして社内システムやソフトウェアの開発を行いました。順調に基礎的スキルを身につけ、成長することができましたが、約3年後、服部の心の中には危機感がありました。
服部「めっちゃ普通の人生を歩んでいると思ったんです。このまま普通に結婚して、ダラダラとこの会社にいるのかな……と思ったときに怖くなりました。1年目は、プログラムを書けるようになって、それが動くだけで嬉しい、楽しいと感じていたのですが、2~3年目になってくると動くのは当たり前になって、その部分に楽しさが感じられなくなったということもあったと思います。
また、世の中にはたくさん新しい技術が出ていましたが、大手グループというのもあり、会社では比較的レガシーな技術を使い続けていて。どこかで何かを変えなければと思いました」
このような思いから転職活動をスタート。ユーザーとの距離が近いBtoCに着目するとともに、新しい技術に触れるようなベンチャー企業に選択肢を広げました。
「どうしても一緒に働きたい」変化した仕事と会社への想い
海外研修や多国籍のメンバーと働ける環境があるソフトウェア企業に転職をした服部は、約1年後、もう少し人のためになるシステムをつくりたいと考え、再度転職活動を始めます。
そんな折、CTOの江部隼矢からスカウトメールが届きました。
服部「最初は疑心暗鬼で、生意気にも『何で僕に興味を持ってくれたんですか?』といった内容のことを返信しました。それにも丁寧に返信をくれて、この人は誠実だなと思い、面談させてもらいました。いろいろ聞いて、めっちゃいい会社だなと思いましたね。
『とっておきのワクワクを、もっと身近に、すべての人に』という当時のミッションも素敵だなと思いました。遊ぶのが嫌いな人はいないし、この考えを広めようとしているところがいいなと」
日に日に志望度が上がっていく中で迎えた最終面接。そこで、山野から冒頭のような叱責を受けたのです。
服部「僕はなんだかんだ、自分のために転職したいという話をしていました。技術面とか、待遇とか。そうしたらはっきり否定されて。でもそこで『もういいや』とはならなくて、帰りの新幹線ですごく引っかかっていたんです。
1時間ほどの面談でちゃんと良くないポイントを指摘して説教してくれるというのは、なかなかないと思います。言われながら、『むかつくなあ』と思いつつ、『この人の言っていることは合っているな』とも感じていて。僕に時間をかけて向き合ってくれるとても真摯な人たちだなと思いました。
2日後くらいに、自分から『どうしても一緒に働きたいです』という長文のメッセージを送ってもう1度話す機会をもらい、入社することができました」
「『ぜひとも入ってほしい』というスタンスだったら入社しなかったかもしれない」と語る服部。山野が厳しく指摘したことで、アソビューという会社やサービスに対する思いがより強くなったのです。
入社の決め手は、新卒就活時や1度目の転職時には優先度の低かった「ミッション」と「人」。それが、現在までの服部のキャリアの中で、アソビューが最も在籍期間の長い会社になっている理由のひとつかもしれません。
個々は頑張っているのに形にならない……スクラム開発導入で開発クオリティを改善
2016年9月に入社すると、当時の「アソビュー.com」をリニューアルするプロジェクトが走っていました。服部は2017年3月のローンチを目指してプロジェクトに参画。しかし半年後にできあがったサイトは、当初の想定とはほど遠い仕上がりでした。
服部「不思議なことに、いろいろそれっぽいものはできているのですが、それぞれバラバラで結合できない状態でした。みんなすごく頑張ったのに、ほぼ何もできていない。しかもそれがなぜなのかわからない。徒労感でいっぱいでした」
3月中のローンチはできず、多くのメンバーが疲れ果てている状態。ただそのことが、会社として、組織として、開発の進め方を深く考える機会になりました。
そこから密にコミュニケーションを取ることの重要性を再認識し、スクラム開発をスタート。ローンチ時期を2017年9月末に再設定して、半年かけてチームビルディングとサイトリニューアルを進めていきました。
服部「再スタートを切った際に、業務委託の方も合わせて13~4名ほどのチームのリーダーをやりました。2017年3月の時点では、仲が悪いわけではないのですが、メンバー同士のコミュニケーションがぎこちなかったんです。
スクラム開発を取り入れ、みんなで毎朝のミーティングで雑談を含めたコミュニケーションを取っていくと、相互に話しやすくなりました。その結果、エンジニアだけでなくデザイナーとも密にコミュニケーションが取れて、以前よりも円滑に進むようになりました」
無事にアソビュー.comのリニューアルは完遂。服部はそこからプロダクトのグロースを担うマネージャーとして改修や機能追加の指揮を執ることになりました。
2019年後半には、ベトナムのオフショア組織(2021年に売却)にCTOとして赴き、数ヶ月で組織立て直しを実行。服部はアソビューで、1社目や2社目ではしたことのなかった新しい業務を次々と行い、経験値を溜めています。
新しいポジションをつくりながら、倍以上の拡大を
プレイングマネージャーとしての業務を行うようになり、当初服部が心がけたのは、「いかにメンバーが仕事をしやすく、チームとしての生産性を担保できるか」です。
服部「生産性を下げないために、各エンジニアのタスクとして計画されているもの以外を基本的にさせないようにしました。具体的には、『ちょっとここを直してください』とか、『この画面ってどういうことですか』とか、チャットで急に来るエンジニアへの依頼を僕がすべてこなしていました。
なぜかというと、そういう差し込み業務が急に入ってくると、元々計画していたタスクが崩れるんですよね。集中しているところに声をかけられると、集中が途切れて生産性が下がるので。だから僕は僕で自分のタスクもこなしながら、差し込み業務を他のエンジニアに対応させないようにブロックしていました」
いちエンジニアとして技術を突き詰めていくこともできましたが、チームとしての開発を考えるマネジメント業務について、服部は「自分に合っていた」と語ります。
現在(2021年12月)は、マネジメント範囲が拡大し人数も増えたため、部門の中に4人のリーダーをつくり、リーダーたちがメンバーをマネジメントするような体制を取っています。このような組織や業務内容の変化とともに、仕事における喜びも変化していると言います。
服部「チームのメンバーが成長して、いろいろな仕事を回せるようになっていることが垣間見えるとすごく嬉しいです。前までは自分ができた方が嬉しかったり、どうやって任せればいいかわからなかったりしたのですが、徐々に頼れるようになっていって、結果的にメンバーが自分たちで案件を回してくれている状態をつくることができました。そういう様子をいていると嬉しいなと思います」
服部は、アソビューの開発組織を24時間365日開発が進む組織にするとともに、「キャリアをつくれる組織」にしていきたいと考えています。
服部「自分を含め、みんなが成長できる新しいポジションをどんどんつくっていきたいです。制度も含めて、組織を拡大しながら整えていきます。むしろそうしないと、会社は大きくならないのではないかと思うので。
今は20~30名程度ですが、直近2年ほどで少なくとも倍以上、できれば100人程度の開発組織になっていたいです。そうなると必然的に現状のポジションでは足りないですし、1人ひとりが成長して新しいキャリアをつくれるような組織にしたいなと思います」
自分自身が変化を続けながら、メンバーの成長を促し見守り、事業や組織をより大きくしていく。ミッションと人に深く共感しているからこそ、服部は強い当事者意識を持ってアソビューの今後を描いています。