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2023年、ゲーム畑で育ったベテランクリエイターが、ゲームであらゆる課題を解決するチーム「ゲームフル」を発足した。ゲームの企画制作にとどまらない活動の目指す先、これからのカヤックの柱となり得る大きな可能性とは?
後藤 裕之(右)
面白プロデュース事業部・企画部ディレクター、ゲームフルチーム
猫を愛するゲームクリエイター。代表作に「ことばのパズル もじぴったん」「冒険クイズキングダム」 「スーパー野田ゲー」シリーズなど。円周率暗唱 42,195 桁のギネス世界記録(1995 年当時)を達成
渡邉 和歳(左)
面白プロデュース事業部・企画部ディレクター、ゲームフルチーム
人生の大半を「仕事としてゲームをつくっている」か「個人でゲームつくっている」か「ユーザーとしてゲーム楽しんでいるか」の三択で生きている、廃クリエイターゲーマー
◆ゲームを根本から世の中に活かしたい!
ー後藤さんと渡邉さんはゲーム会社からカヤックに転職し、最初はゲーム事業部でクリエイターとして活躍してこられましたよね。「ゲームでクライアントの課題を解決する専門チームをつくる」という構想は、どのようにして生まれたのですか?
後藤
4年前に面白プロデュース事業部(旧クライアントワーク事業部)に異動した頃から、ゲームを使って何か面白いことをやりたいと考えていました。コロナ禍でデジタルコンテンツの需要が高まる中、商品のPRができるミニゲームをつくるという案件が増えていき、「ゲーム以外の要素とゲームを絡めたコンテンツ」の面白さを知ったんです。本格的に取り組めば、もっと強いシナジーが生まれるだろうと確信しました。
ただ、テコ入れしたくても、当時の面白プロデュース事業部には僕以外にゲーム畑の人間がいなかったので手が回らなくなってきて......。ゲームの知見が豊富な渡邉さんなら生き生き楽しめるだろうな、と思い声をかけました。
渡邉
後藤さんが面白プロデュース事業部に異動してわりとすぐに、後にゲームフルとなる核のアイデアを聞きました。その時に「ぜひやりたいですね」と手を挙げたのですが、なかなか僕の異動が実現せず、2年前にようやく後藤さんに合流できました。当時、後藤さんはけっこう難しい要求をしてきましたよね。ゲームの知見はめちゃめちゃ必要だけど、ゲーム以外の部分を面白くつくれる人が必要だって。
後藤
はい、ゲームをつくること自体が目的ではないので。「ゲームフル」の最終目標は、物事を分かりやすく、面白く、受け入れやすくするゲームの力で、人生経験や視野が広がるような体験をつくることなんです。
ーそれで「ゲームフル」はゲーム事業部ではなく、面白プロデュース事業部なんですね。
渡邉
遊びとして楽しんでもらうことが最終目的じゃないんですよね。僕なりの表現で言うと、「ゲームフル」の仕事は、ゲームをつくる手法やクリエイティブな手法を使って世の中の興味を最大化すること。僕や後藤さんがゲーム畑でひたすら考え続けてきたことって、「どう興味を持たせるか」なんです。
後藤さんはゲームで世の中や人生を豊かにしたいと言っていましたが、僕はゲームの手法であらゆる人のあらゆる興味を最大化したいと思っています。
後藤
若い時は「面白いゲームをつくるんだ!」と狭く深く熱中してきました。でも、子どもが生まれたりして自分が関心をもつ世界が広がってくると、ゲームを使って様々な分野に関わりたいという欲求も広がっていくんですよね。
ーちなみに「ゲームフル」という言葉はあまり聞き覚えがなかったのですが、いわゆる「ゲーミフィケーション」とは違うのでしょうか?
後藤
ゲームの見た目やノウハウを模倣する「ゲーミフィケーション」という言葉は10数年前からあります。「ゲームフル」はテクニック上の話だけではなく、価値観や生活様式をも変えていくことを目指すイメージです。
例えば、ピーマンが苦手な子がいるとします。細かく刻んで、ハンバーグというエンタメに隠して食べさせるのが「ゲーミフィケーション」だとすれば、ピーマンをそのままでも楽しく食べられるようにするにはどうするかを考えるのが「ゲームフル」です。関わりや設計のレベルがさらに深いというか......。割とあいまいな違いなんですが、ゲームを根本から世の中に活かしていきたいという思いを込めて、「ゲームフル」という言葉を使い、名乗っています。
◆ゲームとの掛け合わせが生み出す、大きな可能性
ー「ゲームフル」というチームを発足したことで、カヤックをどう盛り上げて行こうと考えていますか?
後藤
ゲーム会社はゲームしかつくっていないことが多いですが、カヤックは多様な領域の事業を行っています。だからこそ、「ゲームを色々なものと掛け合わせて世の中に役立てていける、唯一無二の存在」になれる可能性があると思うんです。
そういう打ち出し方をしてもいいんじゃないかな、と思って......。「面白いことを色々やっています」と言っても、ちょっとボンヤリするじゃないですか。「つくる人を増やす」などいくつか会社の理念がありますが、何かひとつ柱を増やしたいという思いが個人的にあるんですよね。
渡邉
僕はカヤックの仕事は「遊び」がひとつのテーマになっていて、中でも漫画とゲームの知見が強みだと感じています。「漫画と〇〇」「ゲームと〇〇」など、カヤックならではの強みを活かした掛け合わせの型を意識的に持つことが重要だと思うんです。
特に、ゲームとの掛け合わせは「ゲームっぽい〇〇」という表現がしやすく、「それってありそうだよね」と思ってもらえる。というのも、ゲームは一定の形でしかあり得ないコンテンツではなく、もっと概念とか切り口のようなものなんです。今僕たちは面白プロデュース事業部で「ゲームっぽいプロモーション」をやっているけれど、別に「ゲームっぽい保育園」とか「ゲームっぽい不動産」があっても構わないんじゃないですかね。
ー「ゲームフル」はあらゆる領域に応用できるから、ビジネスチャンスが広げられる、と。
後藤
そうですね。「ゲームフル」でやろうとしているアウトプットは、デジタルだけじゃなくてアナログ的なことでも構わないと思っています。
渡邉
そこにはこだわっていませんよね。スマホゲームやパソコンゲームだけじゃなくて、ボードゲームだったりクイズイベントだっていい。なぜゲーム事業部じゃなくて面白プロデュース事業部なのかというのは、スマホやパソコン以外のデバイスで展開することで、ゲームの可能性を広げたいと考えたからです。
後藤
僕は普段から、どんなお題でもゲームと掛け合わせる訓練をしています。例えば、ニュースを見ている時も、この問題をゲームで解決するならどうしたらいいだろうと考えています。
カヤックはもともと意外なもの同士を掛け合わせて、面白いものをつくってきました。ブレスト文化も、アイデアの掛け合わせです。掛け合わせによる化学反応を起こして新しいものを生み出すことは、この会社のものづくりのベースなんです。
▼ゲームフル的な案件の事例紹介
◆カヤックが牽引するゲームフルな未来
ー今後の抱負について教えてください。
後藤
やってみたいことを個人的に挙げるとすれば、ひとつはゲームと教育分野の掛け合わせです。
よく「ゲームばかりやっていないで勉強しなさい」と言われるように、まだゲームと勉強が対義語のように捉えられています。でも、ゲームは時間の無駄じゃない。
例えば、サッカー漫画を読んでサッカー選手を目指すみたいに、ゲームも何かを学んだり極めようとするきっかけになれると思っているんです。学校や塾と組んで、学びのモチベーションをあげたり、人生の目標が見つかったりするコンテンツやサービスをつくってみたいです。
二つ目は、電車や飲食店などにある、画面上のコンテンツです。まだまだ一方通行の発信なのですが、今後顧客データとリンクしていくようになると、ゲームの要素を活用できる余地があると考えています。外出、食事、暮らしの行動変容に楽しく活かせるように、ゲームフルな要素で画面を埋め尽くしてみたいですね。
渡邉
僕も教育分野はぜひやりたいです! 勉強をしたくない子は5分も続かないこともありますよね。うちの子用に、あえて1日1分しかできない「タイムアタック的な計算練習アプリ」をUnityで自作したこともあります。1日1分しかやらなくていいのでモチベーションが下がらないし、最高記録を更新できたら嬉しそうでした。ゲームフル的に考えると、達成した嬉しさや褒められる気持ち良さはとても重要なんですよね。
あと、シニア層を対象にすることもやってみたいです。クライアントワークならアプローチ先としていけるのではと考えているところです。
先ほどの教育分野と同じで、ゲームがお年寄りのやりがいとか生きがいの入り口になれると考えています。さらに大きい構想で言うと、お年寄りの日々のモチベーションを上げることの次に、シニア世代と孫世代をつなげることもやってみたいです。
ーゲームは若い人や子供だけのものではないと。
後藤
漫画も昔は子供が読むものと考えられていましたが、今は大人の鑑賞に耐えうるというか、大人が漫画を読んでいてもおかしくない。だから、ゲームは若い人だけがやるものという感覚も時間が解決していくでしょうね。
渡邉
80代の鈴木史朗さんは、『バイオハザード』めっちゃうまいですもんね。
後藤
そうそう! 作り手が先入観で「お年寄りにはゲームは無理だろう」とか、考えちゃいけないですね。
これからは、ゲームの力が役立つ場面が世の中に圧倒的に増える。それをカヤックが牽引していければと思っています。
今はまだ明確なお題をいただいて案件を担当している形が多いですが、僕ら側からも自主的に多様な掛け合わせを提案して「ゲームフル」を広げていきたいと思っています。何なら、ゲームと組み合わせられないものは無いんじゃないかと思うので、カヤック社員の皆さんも何か困っていることがあれば声をかけてください!
(取材・文 二木薫)