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地域の仕事に興味がある人へ向けて、面白法人カヤック・ちいき資本主義事業部で働くクリエイターの仕事ぶりをインタビュー! 従来、豊かさの指標とされてきたGDPや法定通貨とは違うベクトルから挑む、「前例のない地域活性化」のやりがいや難しさは何か。これから目指すものは何か。たっぷり語ってもらいました。
有江慶彰(右)
1974年生まれ、2016年入社
ちいき資本主義事業部/コミュニティデザイナー
渋谷生まれ渋谷育ち。双子の育児きっかけで鎌倉へ移住、更に奥へと葉山に在住。IT企業でSEやPMを25年。ハイボールが好き
小川功毅(左)
1999年生まれ、2023年入社
ちいき資本主義事業部/アシスタントディレクター
着眼大局着手小局。大志を描くのが好き、どんなに地道な働きでも大志に通ずるとこじつけるのが好き
地域の点と点を横串でつなぐ
ー最初に自己紹介を兼ねて、面白法人カヤック・ちいき資本主義事業部で働くまでの経緯を教えてもらえますか。
有江
カヤックに転職したきっかけは、「カマコン※」での活動を通してカヤック社長の柳澤さんと知り合ったことでした。もともと地域活性に興味はあったのですが、転職前に20年くらい開発のプロジェクトマネージャーをやっていたので、まずは経験のある分野の仕事を任されていました。
ゲームコミュニティサービス「Lobi」の開発や、面白プロデュース事業部でのクライアントワークを経て、ちいき資本主義事業部に異動して2年弱くらいです。異動した時は「ついに来たぞ!」と嬉しくて、かなりスイッチが入りましたね。
※カマコン:2013年からスタートした鎌倉の地域活動コミュニティ。地域住民や鎌倉に関わる企業や経営者がテーマを持ち寄りプレゼンし、その人のやりたいことに対してブレストの手法を用いてアイデアを出し、応援する活動を行っている
ー小川さんの経緯も教えてください。
小川
2023年の4月に新卒入社しました。志望したきっかけは、カヤックで地域資本主義が立ち上がり、経済成長だけでなく新しい価値観を提示する、しかもそれを鎌倉でやる、と知ったこと。気になって『鎌倉資本主義』を読んでみたら、深く共感できたんです。10回以上は読みましたし、付箋も100枚くらい貼ってあります。
ー3ヶ月かけて用意したエントリーシートは4万字にもなってしまったそうですね(笑)。
小川
はい(笑)。内定後は、ちいき資本主義事業部で運営する移住スカウトサービス「SMOUT(スマウト)」で、北海道下川町の現地レポーターをやっていました。その後、「まちのコイン」チームにジョインしたという流れです。
▲スマホアプリを使った地域活性化のサービス「まちのコイン」。加盟スポットが提供する「お金で買えない嬉しい体験」をしながら、地域や人とつながることができる
ー現在はどんなことに取り組んでいますか。ちなみに、おふたりのことはコミュニティマネージャーと呼べばいいのでしょうか。
有江
僕はあえて「コミュニティデザイナー」と名乗っています。というのも、色々な地域に行って自治体や商店街の方に会う時、マネージャーという響きが管理者のようなイメージで捉えられることがあったからなんです。管理者ではなく、もっと隣に寄り添う者だと思っているので。
現在は「まちのコイン」の鎌倉での運用を担当していて、どうやってまちを盛り上げ、加盟スポットのファンをつくっていくかなどを考えています。
小川
鎌倉のコイン「クルッポ」の循環を促進するため、アプリのスポット体験数やユーザー母数を増やす取り組みをしているんです。有江さんはラジオ番組にも出演していますよね。
有江
3年前から「鎌倉FM」に出演していて、今はMCもしています。まちの情報ネタは、「まちのコイン」のアプリから投稿してもらっています。毎回20件くらい届くので、読み上げるのも大変なくらいで嬉しいですね。
また、「カマコン」でファシリテーターをしていた経験を活かして、全国の導入地域で加盟スポットの交流会を開催し、ブレストやワークショップを行っています。
ー多様なアプローチをされているようですが、今の仕事をひとことで表現すると?
有江
スティーブ・ジョブズの「Connecting the dots (コネクティング・ ザ・ドッツ)」です。全然違うフィールドの人、普段交流のないようなところに横串で入っていって、「点と点をつなぐこと」なんだと思います。
つながりを実感できると自分たちの気持ちも盛り上がります。地域の交流会で会った人から聞いたのですが、20年近くひとりでゴミ拾いをしていたけれど、「まちのコイン」を使ったら興味のある人が集まってくれるようになって、とても嬉しかったそうです。それを聞いて、僕も胸が熱くなりました。
客観的価値から踏み出す「初めの一歩」に
ー仕事のやりがいや面白い部分はどんなところですか。
有江
複数の課題を見える化し、「まちのコイン」の体験で解決できるところです。例えば、「鎌倉駅の夕方の混雑回避」と「小町通りの裏エリア(裏小町)の賑わいづくり」に対して、「夕方に一杯飲んでいきませんか」というスタンプラリーを企画して鎌倉駅から裏小町への動線をつくるとか。
ユーザー、スポット、運営団体の視点はそれぞれ違うので、ひとつの場で全員がどうやったら満たされるのかを常に考えています。全員が幸せになった時には、僕もすごくやりがいを感じます。
そういえば、小川くんは学生時代から幸せをテーマに論文を書いたり探求したりしていましたね。その視点の中から、何か思うことはありますか。
小川
幸せは主観だし感情なので、「自分ごとの価値や自分ごとの活動が開くようなプラットフォーム」をつくると、人はもっと自分自身の幸せについて向き合えるんじゃないかと思っています。お金を稼ぐ幸せだけじゃなくて、「ちょっといいことができたら嬉しい」とか、自分なりに考えた主観的な幸せの価値をつくる人を増やしたい。地域への愛着も、立地がいいからとかではなく、「この人がいるから、この店があるからまちが楽しい」と思ってくれる人を増やしたいんです。
「まちのコイン」が市場価値のような客観的価値から踏み出す「初めの一歩」になれていたら嬉しいし、そこにやりがいや面白さを感じます。
有江
地域活動に気軽に参加できるような、簡単な体験もたくさんありますよね。「ゲーム感覚で興味を持って、いつの間にかまちのゴミ拾い体験にも参加していた」みたいな流れがつくれたら、最高です。
ー流れと言えば、「まちのコイン」は今どんなフェーズだと思いますか。
小川
鎌倉では導入から3年ほど経って、「まちのコイン」の運営に関わってくれるほどの熱量を持ったユーザーさんも出てきました。そこで、体験を利用するだけでなくユーザー自身が体験をつくる側になる、「ユーザーコミュニティ主催のスポット」という新たな試みをしています。
▲ユーザーコミュニティのスポット「まちのサポーター」の皆さん。様々な体験作りや月例会をはじめ、カヤックのイベント運営にも熱心に参加
有江
イベントなどでお手伝いしてもらった後に、「まちのスナック」で感謝を込めた打ち上げをやりました。それがまたオフ会みたいな感じになって、どんどんつながりが生まれています。
小川
そうしたつながりを一過性のものにせず、意気込みを保ったまま「まちのコイン」の施策に絡んでいってもらうようなコミュニティづくりを心がけています。
「まちのコイン」の課題と未来
ー地域活動にまだ興味がない人、もともと個人的に熱心に活動していた人、あらゆる角度からのタッチポイントをつくっているんですね。事業として難しいと感じる部分はありますか。
小川
人と積極的につながり、地域の中に入り込んでいく難しさがあります。これは短期間でできるものではありません。
有江
長い時間をかけてつながりを築いてきた方の中には、デジタルアプリでつながろう、という考え方に抵抗を感じる場合もある。ITの壁というか、スマホを使わない世代の方も多いですから。
小川
前例のないサービスのため、どうしたら分かりやすく伝わるのか、どうしたら盛り上がるのか、収益につながるのか、その答えをゼロから生み出していかないといけません。「まちのコイン」のように、デジタルアプリで、換金性がなくて、25地域で実施している地域通貨は他にないですもんね。
有江
そもそもコミュニティ通貨という性質上、収益性が高いものではない。自治体の予算のタイミングは1年に1回しかないですし、株式会社の事業としてはけっこうチャレンジングだと思います。
小川
導入地域も広がり徐々にデータが集まっていますが、地域の特色を活かしたサービスづくりをしているが故に、課題もまちまち。成功事例だからといって、どこの地域に当てはめても上手くいく「型」や「法則」になるとは限りません。
例えば、八尾市のシャッター商店街に人を呼び戻したという成功例がありますが、「おばちゃんのパワーがすごい」「会話が好き」など八尾市独自のカラーや条件が影響しているので、鎌倉で同じことをしても盛り上がらない。全然違うんですよ、反応が。ゼロから生み出したものを10に広げていくフェーズの課題にも、日々向き合っています。
ーこれから挑戦したいことを教えてください。
有江
これは僕の個人的な意見ですが、現在「まちのコイン」の導入は基本的に自治体発なので、ボトムアップの仕組みもあるといいなと思っています。まちに関わる役割や接点を増やしたいし、まちの声やまちの課題の見える化はどんどんやっていきたい。「まちのコイン」をつくっていると、世の中には「見えていないこと」がたくさんあるのに気づくんです。
小川
地域の方のアクションにつながるような課題の見せ方とか、その解決に貢献できたという達成感づくりはもっとチャレンジしていくべきだと思います。
それから、楽しいサービスでありつつも、より本質的な課題を解決していきたいです。例えば、鎌倉はSDGsやゴミ問題から「まちのコイン」が導入されているので、そこにアジャストした体験を増やしたいです。
有江
面白くて話題性のある体験はすでにあるのですが、より実質的な成功事例をどんどんつくっていくつもりです。
楽しみながらいつの間にか課題が解決されていることが理想
ーチームの雰囲気についても聞かせてください。
有江
現在は、開発メンバーを含め15人ほどのチームで活動しています。縦割り感もなく、横の連携が強くて動きやすいです。年齢的には子育て世代の割合が多いから、小川くんはジェネレーションギャップがあって大変かも(笑)。
小川
いえいえ、かなりフラットで話しやすいですよ。新卒でもリスペクトして任せてくれていると感じます。その反面、手取り足取り教えてもらうような環境ではないです(笑)。中途入社の人も多いですが、みんなすぐに馴染めています。「社会を面白くしたい」と思っている人が集まっていますよね。
有江
そうですね。先ほど小川くんが言ったように「楽しいけれどいつの間にか課題解決につながっている」ことを目指していて、だからこそ僕はカヤックで働いているのだと思います。
▲有江さんが「地域の仕事でもこういうことができたら」と考える、面白要素で課題解決したクライアントワーク「カップニャードル」。蓋の開け口を可愛らしい猫の耳に見立てることで、新パッケージの話題化と蓋どめシール廃止によるコストカット・ゴミ削減を両立
ー初めて「ちいき資本主義事業部」という名前を聞いた時は、何をやっているんだろう? どんな人がいるんだろう? と不思議に思っていました。
有江
価値観を軸にして、思想の名前を付けている事業部なんて稀だと思いますよ。経済軸だけじゃなく、社会軸や環境軸のバランスを考えた新しい指標を掲げている。チームメンバーでも、この思想を自分の中に落とし込むのは難しいです。でも、ハードルが高いと躊躇せずに、興味を持ってくれる人と一緒に働きたいです。
小川
事業部のビジョンや価値観に対してどこか共感できるのであれば、アプローチは何でもいいんですよね。それぞれのバックグラウンドや強みを活かして活躍してくれればいいんじゃないでしょうか。
有江
そう思います。例えば、僕はずっとファシリテーターをしていたので、人が集まったところを賑やかして、みんなに仲良くなってもらうことに力を入れています。
小川
私は新卒なので、特にまだ強みは......。でも常々思っているのは、私ほど地域資本主義を熱心に考え、語るのは少数派だと(笑)。そこはずっと直球であり続けたいですね。思想と現場をつなげて、成功事例をつくっていきたいです。
ー最後に、面白法人カヤックで地域の仕事をしてみたい人へメッセージをお願いします。
有江
まずは、地域資本主義を面白がって、ワクワクしてくれたらと思います。この仕事は色々な人とどれだけ接点を持てるかも大事なので、それを楽しみながら働ける人が向いていると思います。
小川
鎌倉に引っ越して1年も経っていないのですが、コミュニティマネージャーなので地域に馴染むスピードが尋常じゃなく早い。ただ住んでいるのとは別の角度で深く溶け込めているのは、地域のサービスの単なる「受け手」ではなくて、「つくる側」になれているからだと思うんです。自分の暮らし自体もどんどん楽しくなっていくので、興味のある方はぜひ一緒に働きましょう!
(取材・文 二木薫)
カヤックサイト インタビューより引用-https://www.kayac.com/news/2024/01/interview-machinocoin
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