アソビューは2021年1月、BtoB向けサービス「ウラカタ」などを持つ株式会社そとあそびのM&Aを行いました。そとあそびの代表であり、「ウラカタ」の開発や事業責任者を担ってきた執行役員CPO(Chief Product Officer)を務める横峯樹の人生の軌跡を振り返るとともに、アソビューでの夢に向けて取り組んでいることを紹介します。
選択肢を持つため、フリーターから大学生、ベンチャー社員へ
執行役員CPOの横峯樹は、2021年1月にアソビューがM&Aを行った株式会社そとあそびの代表。個人のミッション「楽しく生きる人を増やす」を掲げて、以前から精力的にこの領域に携わってきました。ですがその人生とキャリアは、波乱万丈そのものです。
横峯「高校を卒業した後、2年間フリーターをしていました。実はその頃、家庭でいろいろあったのですが、救いの手を差し伸べてくれた人たちがいました。その時期にある人がくれた古いパソコンを触ってみたとき、初めてインターネットのすごさに気づきました。
また、いろいろなアルバイトをする中で同僚の大学生から大学生活の話を聞いていると、改めて大学に行くことの価値を強く感じ、アルバイトで貯めたお金で予備校に行って受験し、大学に入りました」
情報系の学部に入学した横峯は、入学してからプログラミングを学びはじめます。周囲のレベルについていくことで精いっぱいだった学部での4年間を経て、大学院に進み2年後、26歳のとき、起業家を多く輩出する企業に新卒として入社しました。
横峯には、大学院への進学や就職活動で軸にしていたことがあります。
横峯「選択肢を狭められるのが嫌だったんです。家庭の事情がコンプレックスだったのかもしれません。学部生時代に就活をしてみたら、理系だと応募条件が大学院卒という職種も多くて。その職種になりたいのかまだわからないのに、その時点で選択できなくなるのは嫌だと思って、選択肢を幅広く持てるような意思決定をしてきました。
大学院では、1年生の4月からインターンやセミナーにたくさん参加して情報をとにかく集めました。日系の大企業、外資系コンサル、ベンチャー企業など、20社ほど見たのですが、どう見てもベンチャーが一番楽しそうだったんです。
自分ができることが増える環境に身を置くことで、その後のキャリア選択の自由も手に入ると思ったので、就活はベンチャーに絞り、結果的にはガイアックスという会社に入りました」
▲大学院時代の横峯(写真後方中央)
追い風に乗ったはずが……組織の急拡大で崩壊を経験
入社後、自分で事業を立ち上げたいと考えていた横峯は、ある日クーポンサイトで偶然「パラグライダー体験」を目にして、衝撃を受けます。
横峯「『パラグライダーって日帰りで3000円でできるんだ!』って。安い居酒屋のコースと同じぐらいの値段で、空を飛べるなんて衝撃じゃないですか。でもこれって、なかなか一般的に知られていないですよね。
なんとなく毎週飲み会に行くよりも、みんなでパラグライダーに行った方が絶対楽しい。休日の過ごし方ってもっとあるんだと思って、こういったアクティビティを広められる事業をつくりたいと思いました。
ただ、プロダクト開発をしようと思って調べてみると、当時既にカタリズムという会社(現アソビュー)がありまして(笑)。自分たちの開発だけでは難しい部分が多かったので、いったん止めました」
その後も、アウトドアレジャーへの想いを高まらせた横峯は、株式会社そとあそびに入社。1人目の正社員として、サービス開発を行うことになります。その決断を後押しするように、世の中でも「体験」への注目度が急上昇していました。
事業成長を加速させるため、2年後にそとあそびはソーシャルゲーム事業で伸ばしていたアカツキにグループイン。デジタルだけでなくリアルな世界での豊かな体験創造を牽引するLX(ライブエクスペリエンス)事業として走り出しました。ところがここから、大きな困難が待ち受けていたのです。
横峯「発足当初、30名程度のチームからスタートしました。会社としてはLX事業に投資すると決めていたので、ガンガン人を増やしていくことになり、僕は全体の開発責任者をしながらひたすら採用面接をしました。半年ほどでエンジニアだけで50人ほどになり、さらに外注で3社に発注、全体で200名程度の体制に急拡大しました。
ただ、僕がそれまで経験してきたのは多くて10人程度のチームでしたし、基本的に自立を前提とした組織だったので、この規模のマネジメントはしたことがなくて。一気に組織が大きくなったことで、統制が取れず、見事に組織が崩壊することになりました。そこから逆に、一気に組織がシュリンクしていくことになります。自分で誘って入って頂いた方に、自分で契約終了を告げていく。これはつらかったですね」
▲そとあそび社最初の資金調達時(2015年7月)
楽しく生きる人の輪を大きくするために、M&Aでジョイン
組織が縮小していく中で、横峯は1つの成功体験も得ます。
横峯「そとあそびを立て直すとなったときに、20人くらいの規模の開発チーム責任者になりました。プロダクトマネージャーとして、開発の仕組みをどのようにつくり、どういう形で運営していくのか、というところからチームでしっかり整理をしました。
その結果、生産性高く、みんなのモチベーションが高い状態を保ちながら開発を進めることができたと感じています。事業の数字的にも成長させることができて、これは今も生きている経験ですね」
プロダクトマネジメントや事業責任者の経験を経て、横峯はそとあそびの代表に就任。その直後、アソビューCEOの山野と対面し、さらなる事業成長を見据えて、M&Aでジョインすることが決まりました。
横峯「そとあそびという会社をどうするというよりは、元々自分でやろうとしていた『もっと休日の過ごし方のバリエーションを広めていく』をいかに実現するかという視点で考えました。実際にアクティビティを提供されているパートナーさんは、本当に心から誇りと自信を持って魅力を語ってくれますし、ライフワークとして好きなんだなと伝わってくる方が多いんです。
そんなパートナーさんやアクティビティを体験する人たちも、楽しく生きる人を増やしたい。そしてその輪をどんどん大きくできる事業をしていきたい。そのためにはアソビューと一緒になってやった方がより大きな輪にしていけるだろうと思いました」
現在は執行役員CPOという役割で、アソビューが持つプロダクト全般を管掌しています。
横峯「『何をつくるか』を決めるところがメインです。次にどういう機能をつくるか、何をつくればゲストやパートナーさんにより価値を提供できるのか。セールス側と開発側の双方と話しながら進めています。それに加えて、特にアソビュー.com/そとあそびでの事業責任者という役割が大きいですね。マーケティング戦略の策定と実行、運用方針の検討、ブラッシュアップなどを注力して行っています」
自分の状態にコミットすることは、事業成長に直結する
昨年からアソビューの一員となった横峯は、「やりたいことがいっぱいある」と充実感をにじませます。
横峯「一定の金額を調達しているベンチャーではありますが、ここからさらに成長していく余力があるのでやりがいも楽しみも大きいです。念頭に置くのは『生きるに、遊びを』をどう実現していくかというところ。これは僕の個人ミッションにも直結しています。
具体的には、テクノロジー領域はまだまだ取り組みがいがある状態です。特に自分が大学で研究していた機械学習やレコメンドエンジンを入れることで、プラットフォーム上で遊びの発見をたくさんつくることができるようになります。大量の遊びのデータを持っている会社なので、このデータを十分に活用することが今後の注力領域です」
話しているだけでもエネルギーがあふれてくる横峯。彼が仕事をする上で大事にするのは「自分の状態を整える」こと。その背景には、これまでのキャリアから見出した事業成長の重要因子があります。
横峯「自分が最高の状態であることで、最も事業成長すると思うので、睡眠の質と自分の状態(体調)にコミットすることを心がけています。というのも、マネジメント層になると関わる人も増えますし、決断するシーンも増えてきます。すると僕のメンバーに対する反応伝え方が、チーム全体の生産性にめちゃくちゃ影響しますし、1つ1つの決断には細心の集中力が必要です。
たとえば、僕が寝不足でずっとイライラしていると、メンバーが気軽に質問しにくいですし、機嫌の悪い返し方をすればメンバーのテンションは下がります。またコンディションの悪い状態での決断はもしかしたら大きな見落としをしているかもしれない。
そうなると一緒に働くメンバーももちろん、事業を応援してくれている方、契約いただいているパートナーさん、使っていただけるゲストの方々全員が不幸になってしまう。
その状態に陥る根本的な原因は自分の状態だと思います。逆に言うと、自分の状態が事業成長に直結すると思っているので、自分ができる最高の状態でアウトプットできるようにコミットしています。そういうプロ意識は常に持っていますね」
自分の状態を常に高めることは、重要とわかっていてもなかなか意識し続けることは難しい部分。ただ横峯は、これを「自分が幸せになるためにやっている」と語ります。
横峯「自分の状態を保つことに対して、『頑張っている』という意識はありません。以前、組織崩壊を経験したことから、みんなで組織として活動していくとはどういうことか、どうしたら幸せな状態で居続けられるんだろうか、と突き詰めて考えていったらここに行きついた感じです。これからも、何歳までにどうなりたいというよりは、健康で幸せを自覚できる状態で居続けたいと思っています」
横峯はあらゆる経験を糧に、「楽しく生きる人を増やす」に向けて邁進しています。その生き方や考え方は、アソビューのミッションとシナジーを起こし、かかわる人を明るく前向きに変えていくことでしょう。
▲休日には家族や友人と度々遊びに出掛けているという