DYSCHRONIA: CA Definitive Edition(ディスクロニア: CA ディフィニティブエディション)
NintendoSwitch向けシネマティック捜査アドベンチャー『DYSCHRONIA: Chronos Alternate Definitive Edition(ディスクロニア クロノスオルタネイト)』公式ウェブサイトです。
https://dyschroniaca.com/
「人生を変えるような物語体験をつくり、届ける」というミッションを掲げ、オリジナルIPのVRゲームを作り続けてきたMyDearest。そんなMyDearestではゲーム開発以外にも、自社IPを活用したさまざまなイベントやグッズの企画・制作を行っています。今回は、2024年4月21日にLive in Buddyで開催された「CU Fan meeting ハルのメンタリングバー」について、その一部をレポートします。
「CU Fan meeting ハルのメンタリングバー」は、『ディスクロニア: CA』の主人公であるハル・サイオン役の千葉翔也さんと、『ディスクロニア: CA』開発者によるリアルイベント。当日は総合プロデューサーの岸上やサウンドプロデューサーの郡、そして『ディスクロニア: CA』の開発に携わったエンジニアやゲームデザイナーらが登壇しました。
2022年9月にMeta Quest 2でのエピソード1リリースから始まり、PICO、PlayStaion VR2、Nintendo Switch、Steamなどでも展開した『ディスクロニア: CA』。物語の完結を記念して開催された本イベントは、ムーディーな空気感の中で、千葉さんからの乾杯の挨拶からスタートしました。
当日のリアルイベントの様子は動画配信でもお届けしていました
会場入口には物販コーナーも
イベントは冒頭からネタバレ全開のディープな内容に。衝撃的な展開を向かえる物語を前にした千葉さんの役作りの心構え、サウンドプロデューサーやディレクターがこだわった主人公を務める声優さん選びのポイント、千葉さんが収録時に一番苦労したこと、ゲームの主題歌であり星街すいせいさんが歌う『7days』の制作秘話など、すべての物語が完結したこの場だからこそ触れられる話題がどんどん広がっていきました。
皆さんの座席には登壇者向けの質問用紙。突っ込んだ質問やお悩み相談が飛び出していました
ここからはイベント途中で登壇したエンジニアの黒滝、ゲームデザイナーの渋谷、岸上と郡の4名で始まったセッションを一部抜粋してご紹介します。
写真左から渋谷、黒滝、岸上、郡
黒滝:エンジニアの黒滝です。私が主に担当したのはステルスパートで、キャラクターの挙動やBGM制御をプログラミングを通じて担当していました。
渋谷:ゲームデザイナーの渋谷です。役職に「デザイナー」という名前はついていますが、日本においてはゲーム会社で「プランナー」と呼ばれるような、ゲームをより面白くするための企画職を中心に担当しています。『ディスクロニア: CA』ではパズルパートやステルスパートと呼ばれる部分を担当していました。
岸上:お二人の立場から見て、ステルスパートを制作する段階で特に意識していたことなどはありますか?特にエピソード1で、最初に発生するステルスパートはそれなりに難しかった印象があって。それこそもっとシンプルにするという選択肢もあったかと思いますが。
渋谷:ディレクターの末岡さんからはVRゲームらしく、色んなアプローチで攻略できるようにして欲しいという要望がありました。ものを投げて気をそらしたり、音を鳴らしてみたり、あるいはステルスパートではあるもののステルス要素を極力排した形でもクリアできるようにと言われて試行錯誤した結果、あのような形になりました。
黒滝:アドベンチャーゲームに出てくるステルスパートはやっぱり緊張感を持たせたいという意図があって。ゲームとして難しくするという発想ではなく「サクサクと進むようなものではないんだよ」「でもちゃんとクリアできるんだよ」ということをユーザーの皆さんにも感じ取ってほしいという部分はありました。そういう意味では一発でクリアできたという方は殆どいらっしゃらないんじゃないかと思います。
岸上:(観客席に向かって)ちなみに、最初のステルスパートを一発でクリアできたという方はいらっしゃいますか?……ああ、本当に少ないですけど、いらっしゃいますね。複数回やってクリアできた方がやっぱり多いんですね、ありがとうございます!ちなみに、緊張感というキーワードに関して、郡さんが意図していたことはありますか?
郡:できる限りストーリーやゲーム性の邪魔にならないように音を作っていて。エピソード2のステルスパートで、「ボスドローン」と社内で呼んでいたものから逃げる場面では、このステルスパート本編につながるまでの流れもディレクターらと話し合いながら曲の構成を考えていました。ステルスパートのBGMはエンジニアやゲームデザイナーとも何度もやり取りしながら、すごく細かなタイミングまで調整いただいて。「ここでボタンを押して、台詞が終わったタイミングで曲を切り替えて欲しい」といった毎日のように相談していました。本当に細かくてすみませんでした…(笑)
渋谷:他にもステルスパートの作り方も時間が経つにつれてどんどん変わっていきました。エピソード2のステルスパートはラムファード博士の部屋が舞台になるのですが、当初予定ではゲーム実装段階の約半分ほどの大きさしかなくて、ステルスとして立ち回れる部分がとても限られてしまっていました。そこでアートチームの皆さんにお願いして、部屋のレイアウトを大きく広げてもらったりして。
黒滝:エピソード2、3はステルスパートの空間をかなり広げることで、プレイの幅も広がるようにしましたね。VRゲームならではの高低差を生かしたゲーム体験を提供できるように、空間の縦と横を広げただけでなく、高さも2倍くらいにしたりしました。
郡:あとはステルスパートでいうと曲作りに関しても紆余曲折があって。実はとあるキャラクターがステルスパートに入ることをイメージして作った曲もあったりしたんですが、シナリオの構成やゲームとして冗長になってしまうのではないかとなって別の形で生かしたというものもありましたね。そういうところはゲームを作りながら仕上がっていくというところが多かったと思います。
岸上:ありがとうございます。僕個人としては渋谷さんが話していたステルスパートの難しさはVRゲームの主観性によるものという話がとても印象的で。普通のゲームとの違いなど、このあたりをもう少し詳しく聞かせていただけますか?
渋谷:一般的なゲームだとキャラクターの背中などを俯瞰して見えている状態で、これが客観性のあるものであるのに対して、VRだと自身の視点がそのままゲームに反映されるので主観性があるものになります。そしてステルスパートだと主観性と客観性の違いが特に強く発揮されて、VRゲームだと気付いたら後ろに相手がいたり、壁の向こう側に何があるのか見えなかったりと、従来のゲームとは得られる情報量が全く違うんですね。プレイヤーにどう情報を伝えるかという部分はすごく苦労していて、警戒度によってBGMを騒々しくしたり、周囲のキャラクターに実況じみた台詞を言ってもらったりしていましたね。
郡:ゲームBGMでは感情や状況の変化にあわせて楽器を増やしたり減らしたりすることがよくある手法なのですが、ステルスパートだと緊張感を出すために楽器を徐々に重ねていくという点で、黒滝さんにかなり頑張ってもらいました。
黒滝:あるステルスパートでは細かく流れる音を変えていて、ハルが立っているかしゃがんでいるかでも違いますし、相手に視認される前と視認された後でも違います。あとは部屋を脱出するためのギミックを操作した数でも音が変わるようになっていて、部屋を脱出したタイミングにぴったりBGMが終わるようにこだわりました。
岸上:そういう部分までこだわっているのを実際に見ていましたが、どれくらいの方が気付いてくれているんでしょうね。
郡:でも、そういうこだわりは気づかれないのが良いんですよ。あっさり「ああ、終わったな」と感じてくれているのであれば、こちらとしては「しめしめ…」という感じで(笑)
岸上:とはいえ、こういう裏話を聞いた後でもう一度プレイしていただけると、きっと皆さんにとってもまた新しい気付きや面白さがあると思うので、ぜひお時間がある時にまた『ディスクロニア: CA』をプレイしていただけると嬉しいです!
最後までご覧いただきありがとうございました。今回まとめたのは濃密なイベントのごく一部です。MyDearestではゲーム開発だけでなく、こうしたユーザーの皆さんと接点を持つ機会を数多く設けていますので、ご興味がある方はぜひチェックしてみてください。
最後に!現在MyDearestではオープンβテスト開催中の『ブレイゼンブレイズ』でも、Discordで積極的に情報発信をしています。このオープンβテスト期間中により多くのフィードバックを集めることで、より良い正式版リリースに向けて制作陣一同頑張っています。『ディスクロニア: CA』とはまた違う魅力が詰まったゲームですので、ぜひオープンβテストにご参加ください!
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