HITOTOWAでは、都市部に暮らす人々にゆるやかなつながりをつくるネイバーフッドデザイン×不動産ビジネスの相乗効果でよりよい社会をつくることを目指し、このたび新規事業「ひととわ不動産」を立ち上げました。
今回のインタビューでは、「ひととわ不動産」の本格始動に際し、現在この事業を中心となって進めている代表の荒昌史と、昨年10月入社の金子愛に話を聞きます。
なぜいま、HITOTOWAが不動産事業を始めるのか。「ひととわ不動産」が目指す社会とは何か。数ある不動産ビジネスの中で、「ひととわ不動産」の役割とは──?
また現在、「ひととわ不動産」事業をともに創っていく仲間として、不動産ビジネス経験のある方を募集しています。本記事では仕事の魅力や働き方についても触れているので、ご関心のある方はぜひ参考にしてみてください。
ネイバーフッドデザインを加速する、「ひととわ不動産」
──前半は荒さんに、「ひととわ不動産」に込めた思いや取り組みについて聞いてみたいと思います。まず、事業立ち上げの背景とは?
荒:背景には、大きく2つの文脈があります。1つは、これまで都市部に暮らす人々にゆるやかなつながりをつくるネイバーフッドデザインを推進してきたなかで、まちに深く関われば関わるほど、不動産関連の相談を受けることが多いと感じていたこと。
たとえば「この空き家、何かできない?」や、「この商店街の活性化を手伝ってくれない?」という声。または、僕らがエリアマネジメントに取り組んでいるまちに「住みたい/出ていかなければならないけれど、物件をどうしよう」という相談もあります。
そういうとき、今までは知人への紹介しかできなかったけれど、HITOTOWAに不動産ビジネスのスキルがあれば直接貢献できて、ネイバーフッドデザインをより加速し、深めていくことができると感じていました。
代表の荒。ひばりが丘/学園町エリアにて、まち並みや歴史の勉強会も積極的に行っている
荒:もう1つの背景には、少し個人的なストーリーが混ざります。HITOTOWAには、髙村や田中が企画運営に尽力してくれた「まちにわ ひばりが丘」という、西東京市・東久留米市のエリアマネジメントプロジェクトがあって。
そのなかで僕もひばりが丘に通うようになり、結婚を機に、近隣エリアの学園町に引っ越しました。子どもも生まれ、まさに近所の方々とゆるやかに助け合えるような関係性を受け手としても体感するようになり、自然と「このまちのためにできることをやっていきたい」と思うようになったんです。
また引っ越した後で、学園町というまちは歴史的にも希少価値があること、一方でそうした価値ある風景が、住宅開発のあり方や相続問題による土地の売買などで、どんどん失われている現状を知りました。
また学園町の地主さんたちと話すうち、そうした一般的な土地・建物の売買や活用に問題意識があり、やるせない気持ちを抱えている方がたくさんいるとわかったんです。
学園町にかぎらず、古き良き街並みや田園風景が失われていく課題を抱える東京郊外のエリアは多い。そうしたまちで問題意識を持つ地主さんたちに寄り添う同志として、ネイバーフッドデザインの経験やメソッドを活かして、何ができるだろう……? そう考えていくなかで、やはり不動産を扱えるようになることは不可欠だと感じ、「場づくり×不動産ビジネス」の新規事業を立ち上げました。
「まちの記憶」を受け継ぐ宅地開発や、不動産の利活用を
──「ひととわ不動産」は、どのような事業ですか?
荒:目指すのは、まちに助け合える人々のつながりをつくるネイバーフッドデザインを土台に、不動産の力でまちを継承して、持続可能なまちと暮らしをつくること。
内容としては不動産仲介を入口に、僕らがグリーンデベロップメントと呼ぶ緑豊かな小規模宅地開発や、シェアハウスや賃貸住宅にして子育て世帯やお年寄りに貸し出すなど不動産の利活用を行っていこうとしています。
──「グリーンデベロップメント」というのは?
荒:もともと学園町の自治会では「緑を守ろう」という学園町憲章を掲げていて。自然豊かな暮らし方をしていたまちなのですが、一般的な宅地開発のなかで緑が減り、悲しんでいる地主さんも多かったんです。
そこで自然豊かな暮らしを継承する、または取り戻すような小規模宅地開発のあり方を「グリーンデベロップメント」と名付け、そんな開発をしていこうとしています。
地域にあるものを活かして小さな資源から大きな未来を描く「マイクロデベロップメント」の、HITOTOWAなりの再定義でもありますね。持続可能なまちという観点からも、学園町に限らず、大切にしていきたい考え方です。
──初めてその単語に触れる方にも、もう少しイメージをお伝えしたいのですが。何かグリーンデベロップメントの事例はありますか?
荒:たとえば昨年は、西東京のある農家さんの、区画整理と相続対策にまつわる2つのプロジェクトに、コーディネーターとして参加しました。
1つは、区画整理によってその農家さんの土地を一部売却するというもの。売却した土地に建つ住宅と、農園との連続性をどうデザインし、どうコミュニティをつくるか。地産地消を促進するようなライフスタイルづくりを提案しました。
もう1つは、相続対策の借り入れ関連で、その農家さんの使われていない生産緑地をどう活用するかというプロジェクト。これは東京R不動産と一緒にコーディネートし、木々に囲まれ、コミュニティも育まれる賃貸住宅「コーポラ賃貸」をつくる取り組みに関わっています。
こうしたプロジェクトも、これまではコーディネートに留まっていますが、今後、宅建業を取得し、不動産取引の経験がある方を迎えたら、HITOTOWAでもより踏み込んで貢献していきたいと考えています。
──グリーンな小規模宅地開発、のイメージがわいてきました。「不動産の利活用」についても、具体例はありますか?
荒:現在進行形の事例も多くまだ紹介しづらいのですが。たとえば、「まちにわ ひばりが丘」のコミュニティ拠点として、もともとあった団地の一棟を改修してつくった「ひばりテラス118」もそのひとつですよね。
ひばりが丘団地のテラスハウス118号棟を改修して完成したコミュニティセンター「ひばりテラス118」
また別のネイバーフッドデザイン事業として関わっている、ある地域に根ざした図書館関連のプロジェクトも参考になるかもしれません。ある公立図書館の閉館に伴い、その場所を民設民営の図書コミュニティ施設に転換するというプロジェクトです。
こちらは当初、憩いの場、共助の場としてその場所を受け継ぐためのネイバーフッドデザインとして関わりました。今後は、住民の方々を主体とする企画運営体制を構築するべく、伴走支援を行っていくところです。
これからも人口減少や建物老朽化のなかで、こうした「公共空間の再統合」が起きるのは間違いないこと。
同様のプロジェクトがあったとき、HITOTOWAに不動産ビジネスの力があれば、テナントを誘致したり、一部を売却してそれを建て替え資金に充てたり、発想を広げてできることが増えると考えています。
──そのほか、注目する他社事例などありますか?
荒:尊敬する他社事例は、広島の皆賀にある「ミナガルデン」です。歴史ある農園の跡地を活用した複合コミュニティ施設で、土地の記憶を受け継ぎ、緑に囲まれた住宅群と、カフェやシェアキッチンなどがあるコミュニティ施設を兼ね備えていて。まさにこういう場をつくっていきたいなと。機会をつくって訪れてみたいですね。
完結しない、“プロデューサー”的立ち位置で関わる意味
──東京R不動産や地元の工務店など、さまざまな方とチームで動くことも多そうですが、そのなかで「ひととわ不動産」はどんな役割になるのでしょう?
荒:僕らの役割は、地主さんや農家さん、あるいは不動産事業者からの相談も受けながら、皆が思い描く世界が実現できるように動いていくこと。
たとえば長らく住んできた農家さんなど、そのまちを大事に思う方でも、土地を売らなければならない状況は起こりうる。だからこそ新しくつくるものが、まちの風景を継承し、経済性も兼ね備えたものにできれば、地主さんにも周辺の方々にも貢献できる。
さらに、そこへ新しく住む方もまちのあり方に共感して住むので、コミュニティに参加しやすく、共助の促進にもつながっていく。そんなふうにさまざまな立場の人に思いを馳せ、全体としての調和をはかっていくことを大切に考えています。
学園町のまち歩きツアーや視察対応のようす。この写真は荒(写真右奥)が、近隣の事業者や住民の方々にまちの歴史を説明しているところ。
荒:HITOTOWAはもともと「都市の社会環境問題を解決する」というミッションを掲げていて。なかでも、プロデューサー的な立ち位置で、まちの課題解決に関わっていくことを存在価値としているんですね。
まちにはいい取り組みがいろいろあるけれど、バラバラになったり、部分最適になってしまいがち。プロデューサー的な立場の人が全体最適化する必要があります。
ひととわ不動産は、まさにそういう立ち回りです。言いかえれば、全部ひととわ不動産で完結できるとも思いません。東京R不動産や地元の不動産屋さん、工務店さん、建築家や税理士の方々などと案件ごとにチームをつくりながら、つくりたい社会を実現していく。「一緒にやろう」と言ってくれるパートナーがすでにいることは、心強いですね。
複合的な経験や働き方だから、持てる視点で
──お待たせしました! 金子さんは昨年10月の入社ですが、それまでも数々の場づくりに携わってきた“場づくりのプロ”視点から、「ひととわ不動産」について聞いてみたいです。まずは自己紹介もかねて、入社までの背景を聞かせてください。
金子:私は茨城県の、高齢化が進んで子どもが少ないエリアで育ちました。大人になってその経験を見つめ直したとき、凝り固まったコミュニティのなかで育ってきたことや、見えていた職業の選択肢が少なかったことに気づいて。地方に拠点やコミュニティをつくることで、子どもたちの人生の選択肢を広げる活動がしたいと思ったんです。
そんなとき、千葉の金谷という場所で、廃墟になったホテルを拠点にまち起こしをしたい地主さんと出会って。そこをリノベーションして「KANAYA BASE」という拠点をつくり、外からも人を呼び込みながら、地元の方々と交流して、子どもから年配の方まで気軽に立ち寄れる場づくりをしていました。
2014年、KANAYA BASEで開催した周年イベントにて。まちの内外からたくさんの人が訪れる場づくりをしていた。写真中央で浴衣を着ているのが金子。
金子:3年ほどでその場所が使えなくなったことをきっかけに、金谷を離れて。遊休不動産を活用して宿泊施設をつくったり、公園などの公共施設を活用してキャンプ場をつくったりして、地方に人とお金の流れや雇用を生むような仕事をしてきました。前職の会社で8年ほど過ごし、社内でもある程度、自治体に対して遊休不動産の活用を提案するフォーマットをつくってこられたので、次に何をやろうかと考えていたんです。
そんなときに書籍『ネイバーフッドデザイン』を読み、私が金谷でやっていたようなことを、体系立ててやっている会社があるのだと共感して。住空間に近い場所でのコミュニティづくりに興味が高まっていたこともあり、入社して今に至ります。
──現在は複数の会社で働くワークスタイルだとか。
金子:はい。HITOTOWAで週4の社員として働きつつ、業務委託として前職の会社でも週1で働いています。プラス、今は公共R不動産でもプロジェクトを担当しているので、大きく分けると3つの仕事があります。
この働き方だからこそ、相乗効果で知識や経験を活かして、よりよい仕事ができると感じていて。柔軟な働き方ができるHITOTOWAの社風はいいなと思います。
「住宅地の公共空間」が秘めている可能性を引き出したい
──金子さんは「ひととわ不動産」に今、どんな関わり方をしていますか。
金子:荒の話していたような構想を実現するためにどうしたらいいかを一緒に考えたり、思い描く構想の近い、ある行政の公募案件に向けた提案書づくりなどをしています。
──外部で数々の場づくりに関わってきた視点から、「ひととわ不動産」の魅力とは?
金子::今まで私は、「非日常の空間のなかに来てもらう」取り組みが多かったので、ひととわ不動産では「日常の空間」で、人の暮らしに密着した提案ができるのが魅力だなと感じています。
個人的には公園や道など、住宅地における公共の場の使われ方に特に興味があって。公共空間を利用する人って、「近いけどある程度広範囲」という微妙な広さなんですね。「マンション内」などとはまた違う、周辺地域への広がりを持たせられるのが、すごくおもしろいなと思うんです。
公園活用もテーマの一つであるプロジェクト「PICNIGOOD sokamatsubara」でのひとコマ。金子も入社当初からチームメンバーとして活躍している。
金子:たとえば団地ひとつとっても、現状では公園が配置されているものの、遊具がさびれていて、「ここにいたい」空間になっていないことも多い。でもそういう「住宅地の公共空間」こそ、設えや使われ方をデザインすれば、多世代の交流が生まれるなど、十分に変化しうる場所でもあると思っていて。
ひととわ不動産の理念のもと、住宅地や公共空間をデザインすることで、「何かをやりたい」人が、自分の住むまちで気軽に活動を始められる、そんな暮らしを増やしていけるかもしれない。可能性にわくわくしています。
化学反応の起きるチームで、共感できるまちづくりを
──さて、そんな事業をともに創っていくメンバーとして、不動産ビジネス経験者の方を募集中とのこと。荒さんもデベロッパーのご出身ですが、新しく入る方への魅力はどんなところにあると思いますか。
荒:不動産って資産でもあり、ビジネスの種でもあるけれど、それだけではなくて。不動産のあり方によって解決できる社会問題や、つくれるライフスタイルがあると思うんです。ただ、今のHITOTOWAに不動産のプロはいない。だから志をともにする方に、その第一人者として活躍してもらいたいなと思っていて。
一方でHITOTOWAには、場づくりのプロである金子がいたり、ネイバーフッドデザインの経験を積んできた仲間がいる。志の近い異分野のプロ同士、相乗効果や化学反応を感じられる環境です。そういうチームのあり方のなかで自分の専門性を活かしてもらえたら、楽しいんじゃないかなと思います。
金子:いわゆる不動産ビジネスでイメージする、「件数を追いかける」ような仕事ではないですよね。どちらかというと、「このまちが、こういうあり方になるといいよね」を考えながら、周りの人と対話しつつ、実現のサポートをしていく。その手段として不動産のスキルを使う感じになると思います。
本当の意味で「まちをつくっていく」ことに自分の不動産関連スキルを活かしたい、そんな方が来てくれると嬉しいですね。
荒:会社の創業からは14期目だけれど、新しい事業を1からつくっていく仲間になります。ゼロからつくることが好きな方は楽しいと思いますよ。
一方で、バリバリの不動産ビジネス経験がなくても、関わってみたい方がいたらまず問い合わせてみてほしいです。たとえば「かつて仲介や賃貸の管理をやっていたけれど少し実務から離れている」とか。金子もそうですが、働き方や仕事内容はその人のライフスタイルや特性にあわせて、柔軟に相談できればと考えています。
または、不動産の実務経験がなくとも関心があり、ひばりが丘や東久留米の近くに住んでいて地域性を理解しているなど別の強みがある方も嬉しいですね。地元コミュニティとのつながりを活かして力を発揮してもらえたら、と思います。
10年後の未来を見つめて、今、ここから
──最後に、“これだけは言っておきたい”ことはありますか?
荒:新規事業、すごく楽しいよ!ですね(笑)。まだいろいろ決まっていないし、どういう案件に出会えるかわからないけれど、そのなかで切り拓いていく感覚が楽しい。
それに、郊外住宅地で人口減少が起こるなかでどうコミュニティを形成していくか、どのように風景を守っていくかは、今後の社会問題の主流になっていくと思います。
これまで取り組んできたネイバーフッドデザインも、エリアマネジメントが当たり前になる時代のなかで、選ばれてきた状況がある。
そう考えると、ひととわ不動産は5年後、10年後の社会問題に今からアプローチしていく新規事業。課題解決に貢献できるよう、今から腰を据えて、しっかりと事業にしていきたいです。
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以上、「ひととわ不動産」の本格始動に際して、社内インタビューをお届けしました。
「ひととわ不動産」へ込めた思いの一端を、感じていただけたでしょうか?
10年後を見据えた事業の柱として大切に育てていきたいと、私たちも気を引きしめているところです。
現在HITOTOWAでは、そんな「ひととわ不動産」をともに創っていく仲間として、不動産ビジネス経験者の方を募集しています。
本記事をお読みの方はもちろん、周りにご関心のある方がいらっしゃったら、ぜひ本記事をシェアいただければ嬉しいです
そのほか、新規事業に関するご相談やお問い合わせも、お待ちしています。
(HITOTOWA 広報チーム)