最近(2023年くらい)、いよいよITの中途未経験者採用が冷え込んでるねって感覚で。その話ですこしまえに、ポスト(5月当時はツイート?)したところ、けっこう反応もらえた的な事がありまして。
しばらく寝かせて、中途未経験市場が好転しなかったら内容をまとめて記事にしようと思ってたんですが。
案の定というかなんというか。
市場が好転した印象はまったくなかったので、これからIT業界への就職を考える未経験者向けに、よくあるネット広告や、あさーいインフルエンサー、youtuberの発言とは別の角度の、【業界内からの情報】を残しておいてやろう的な方針で、上記のリプ欄の話をまとめ、解説などを加えた記事を一本書いときます。
1.まず前提条件の説明
こちらですね。
じつは、絶妙に難しいかんじに条件を決めてます。じゃないと、『じゃ、ウチ来なよ。』で話が終わってしまうので。こうしました。この前提のIT未経験者が、どうやって一歩目の会社を見つけるか。と言う趣旨の問いですね。
・28歳
・真面目に学習する気はある
・まだ未学習
・適性は不明
・前職はITとの関連性薄い
・その他特筆するブランドなし
・年収300万くらい希望だが、経験優先で調整する気はある。
とくに、【真面目に学習する気はある】けど【まだ未学習】は、採用事故あるあるパターンです。プログラムには適性がありまして、これはプログラムを学習し始めてみないと判定が難しいのですが、この方は判定不能な状態と言う事になります。
適性が無いようですと、いかに会社・先輩がフォローしようとも成長する事は少なく、離職に至る事になります。そうなれば育成・採用の費用は回収できません。つまり、このままでは育成型の会社にとってバクチを強いられる条件と言う事になりますね。
逆に非育成型(本業ロースキル派遣・ジョブローテが可能な会社)の場合は、必ずしもプログラム適性は必要ではありません。28歳だとその手の求人はわんさかあるんじゃないかな。
2.で、いろいろな意見が来ました。
〇採用しない・ITはやめとけ
採用者目線で『採用しない』判定のケースです。
採用が強い会社であれば、この判断に至るのは不思議ではないです。なにしろ未経験者ですし、採用側からすると無尽蔵に市場に存在する事になります。『採用しない』も、一つのまっとうな判断と言えます。
特に、【やる気ある(自称)けど学習はしない】のパターンですから、『ITやめとけ』と言うアドバイスもありっちゃありです。非IT業界のひと(研修・転職サービスやインフルさんなど)が言うほどIT業界への未経験参入の市場環境は良くありません。よくわかっていない人がローリスク・ハイリターンな選択肢を選ぼうとしていたら、それを止めてやるのも親切と言えるかと思います。
〇先に資格取れ
基本情報技術者試験取れ。その他、情報系の資格取れ。ってアドバイスは多かったです。
基本情報は未経験者にとってカンタンとも言えないのですが、ITエンジニアの『基本』の内容をまとめたものとなっており、先輩エンジニアから見た資格取得者は『言葉が通じやすい』と言う印象になるとか。
ちなみに、離職する前に資格取っておくのがベストです。会社辞めたって、勉強しない人は勉強しません。また、ITパスポートは『ITを利用する人すべて』がターゲットになるものですので、エンジニアを志望する上では少し弱い印象です。
〇自社のIT部署へジョブローテ
資格取る動きと並行で良いと思いますが、ジョブローテーションが可能ならば転職リスクなしでITの経験できます。昨今ではITベンダー(システムを売る側)ではなくエンドユーザー側のIT部署を希望する求職者が多いように思われますので、その様な方でしたらこれで目的達成です。
まあ、実はそういう話ではないんでしょうけどね。一応です。
〇インフラ屋さんを狙おう
インフラ運用系のロースキル案件(サーバーの監視とか)であれば、未経験でも仕事につきやすいよねって言う戦略ですね。インフラ系のベンダー資格がこの手の派遣案件の採用条件になっている事が多く、会社によっては未経験者を採用してCCNAやLPICを取得させ、監視案件にアサインする。といった手法を取っている事があります。比較的現実的な案と言えます。
問題点を挙げると、この手法はロースキル系SES会社が20年前から採用している派遣の手法で、現在では知られすぎている。競合が多すぎる。手法と言えます。スムーズな実務経験取得が可能かは、会社によるところとなりそうです。人によっては監視案件は超ラクなものでもあり、10年経ってもずっと監視マンと言う事もおきます。こうなると、40手前で監視業務専門のひとが出来上がってしまいます。
※ログ監視は未経験者の経験として悪いものではなく、ちゃんと育成するインフラの会社にとっても最初の案件になり得ます。監視=NG は早計ですので、念のため。
〇自前のプロダクトを作ろう
自前のプロダクトで稼ぐのが目的ではなく、プログラム学習を自走で行った&プログラム適性 を証明し、採用を勝ち取れ!と言うもので、『学習しろ』と、ほぼ同義な感じでした。
多くのプログラミングスクールが、この自前のプロダクト(ポートフォリオ)を作成することをゴールに設定しており、手段としてはよいものと言えますが。プログラミングスクール行っとけばOKと言う訳ではない事にご注意ください。 スクールによりますが、『3カ月でマスター!』なんてふつうに無理ですし(ホントに出来たら供給過剰で市場が崩壊する)『1年でフリーランス!!』『イッセンマン!』とか広告しているスクールの生徒を積極採用したいとか言う会社はフツーじゃありません。そもそも自走で学習していませんし、言われた通りに作る成果物は適性の証明にもなりません。
※ガチ系のスクールも存在。ほか、大学なども。勧める声もありました。
以下は、効果的かどうかイマイチわからないもの
〇人気無さそうなお堅い系のちゃんとした会社狙い。
ガッチガチの公共系、金融系、フル常駐で朝も早い。(規制が厳しい業界なので)お客様も厳しい。人脈や前職の経験がなければ、あえて優先順位をあげて狙うという事は少ないかも...(実は高ブランドの路線でもある)ですが、人気無さそうな領域を逆張りで狙うという案ですね。
実は私は、このあたりのベンダーさんの採用ハードルがよくわかっていません。なので、効果的と言えるかどうか、何とも言えないんですよね....。需要としては大きい領域ですので、この辺の会社さんが未経験採用しまくっていたら、中途未経験者が余るなんてこともない気がしますが。
〇地方で倍率低い所に潜り込め
こちらも確認できない情報ですが、割と聞く話です。
中途未経験市場の悪化は、IT業界の裾野であるSES業界が、『派遣で開発経験を積ませる』と言う事ができなくなったのが一因です。育成のしやすさは人材供給に対して需要が大きければ大きいほど育成しやすいというのが本来の市場のしくみなのですが、東京は悪質な会社が増えすぎて職歴偽装も跋扈。今では地方の方が未経験者の開発経験が積みやすくなってしまったとの事です。
地方の『開発経験しやすさ』が昔よりも上がったという事は無いと思いますので、東京よりもまだマシってことなんですかね?
〇COBOLやっとけ!
これも未確認情報。
参入ハードルが低く、歳とっても仕事があるからと言う意見が多い。が。現役COBOLerに聞くと、今でもけっこう20代COBOLerなどが現場に投入されているのが実情で、経験する工程が低いと40代で仕事減るのは変わらず。マニアックな環境か上の工程を経験する必要がある為、結局会社次第になってしまいそう。
そもそもCOBOL案件は、COBOLの仕事が取れる商流にいる会社じゃないと取れない気がするし。(例えば、うちじゃ無理。)そもそもどうやって学習すんの問題もある気がする。
※COBOL→ABAP
COBOLer派生。
SAPと言うERP分野ではで世界一のドイツ企業。その『R/3』と言うERPパッケージが、このABAP/4(あばっぷ)と言う言語で作られていたのですが。企業へのパッケージ導入の際には、その企業に合わせた改修が必要で、その際にABAPのプログラマーが必要になります。
ABAPのプログラマーは比較的高額なのですが、それよりもR/3(現行はS4/HANA)の導入を行うSEが『SAPコンサルタント』と呼ばれ、ITコンサルと同じような役割を兼ね、金額もITコンサル並みになります。ABAPのプログラマーからSAPコンサルへキャリアアップできれば、年齢制限も緩く、報酬も高額と、まさにプログラムでイッセンマンなルートを歩むことができます。
で、このABAP、COBOLに似てるので、COBOLerからの転向者が多いんだわ。
ただし、コロナ期のDXバブルで大増員したコンサルファームはヒトを切ってるタイミングだし。
R/3から現行のS4/HANAへの変更の際も、あんまりABAPプログラマーの出番は多くなかったようで。2023年現在では、ちと鉄板とは言いづらいルートかもしれないです。(すでにSAPかついだ会社に入社している人にとっては多分問題ないと思う。)
〇ブラック系ベンチャーいっとけ!
未経験でこれ系に入社できた話は2018年前後ではちょいちょい聞いたので、まったくなしではない。ただし、2021以降はVCがITベンチャーに見切りつけつつある気がするので、当時と市場環境が同じとは限らない。現在の市場での成功失敗は知りようがない為、どのくらい成算があるのかはちとわからない感じ。
〇外資いっとけ!
よくわからん系。未経験からいけるんじゃろか。そもそも外資のどういう業態に行けばいんじゃろか。これ系、あんまし解像度高い話がでてこないんだよな。
〇フリーでOK
よくわからん系2。
未経験で仕事取れて、納品までできるんなら、そもそもあんまり苦労はない気がする。
まあ、みんながみんな、真面目にリプしている訳じゃないからね。元ネタがX(Twitter)だし。
3.どうやって会社探して応募する?
そもそも、この辺がどうやっていいかわかんなくなってんだよな。
・一般の求人サイト
15年前は、一般の求人サイトに登録し、『ちゃんと育成のロジックを持ってる』会社をさがして応募していくと言う、さほど難しくない作業だった。(受かるかどうかは別として、どのサイトでも常に1~3件くらいそういう求人が見つかった)
現在は、一般の求人サイトでスカウトメールが過剰に付与され、人事担当者側からの検索にかかるだけでどんな人にでも大量のスカウトが届くようになってしまい。スカウトメールと言う手法自体が陳腐化。
それにより、高額な枠を使ってサイト内での表示順位を上げ、直接PageViewを稼ぐという方法が効率的に。その為現在の一般の求人サイトは大量採用の会社が有利となっている。
育成前提の場合は大量採用はできない(受け入れ枠には限度がある)為、スカウトと言う手法を失った育成型の企業は超不利に。一般の求人サイトからはほとんど撤退している様に見える。
・人材紹介
一般の求人サイトとは異なり、企業側は費用なしで求人を出すことができるが、その分採用時に100万強の費用が発生する事になる。育成する会社が資質が見えない未経験者を100万払って採用するかと言うと....。
また、人材紹介のCAはITのプロではないので、資質の判断はできず(資質の存在を知らない人が多い)未経験者であるが故、経歴書の見分けもつかないので、片っ端から企業に送り付けるムーブになる。
これでは求人サイトやハロワを利用するのとあまり変わらない。
・その他の問題点
2018年前後の育成フリーライド狙いの中途未経験者の跋扈によって、中途未経験採用を止めてしまった会社も多い。コロナ期はスクール上がりの未経験者が大量に余った時期なのだが、そこを狙った採用は大手の派遣会社やSES会社が中心(目撃例多数)で、選び放題の状況においても育成型の企業はスクール生の採用を回避した。中途未経験者に対する育成企業の絶望感は根深い。(なお新卒は別で、2022年から多数の企業が新卒採用に参入し、人材会社もその後を追った)
そもそも、育成する企業が淘汰されてしまっている可能性もあり。(正確には、潰れるか、売却するか、2次3次請けに昇格して逃げ切るかみたいな感じっぽい)IT業界全体の未経験者の受け入れ可能数自体が激減してしまっている可能性も捨てきれない。
そのただでさえ減った受入可能数が、かなり新卒に流れてしまっている事を考えると、中途未経験者の立場は本当によろしくないという事になる。
エンジニアに育成するつもりのない求人の比率がめちゃめちゃ高くなっており、育成するであろう会社の求人は見つけられない。見つけても競争率が高く、ハードルが高い。
そういう事がイメージできている業界内のエンジニアは、『ITはやめとけ』ってアドバイスをせざるを得ない訳ですよ。あの辺のひとたちが、イジワルで言っている訳ではないという事は、真面目に理解した方が良いと思いますぜ。
しかし、Wantedlyのストーリーで書く話じゃねえなあ....。これ。