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SESの中抜きを潰すビジネスモデルが、なぜ成功しないのか。その原因とは。

なんだかんだ私がIT業界でのたくってる時間も10年を超えた訳だが・・・。

その間ずーっと再委託のまた貸しビジネスは続いていて、それを『問題である』『不愉快である』と考える人や、『自分は被害者である』と考える人は常に一定数以上いて。そのニーズやギャップをビジネスチャンスと捉えるひとらがいて。

で、それを解消するビジネスを行おうとする。
※私も過去にそれ系の会社に居た事ある。

それ自体は悪い話じゃないんだが、なぜか毎回あまりうまく行かない。

※というかうまくいくなら、そのビジネスがとっくにSESを淘汰してる。誰でも考える訳だし。


なぜ失敗は繰り返される? 

今回はその辺の話をしてみようかと。



〇まず、SES(特に、再委託)が発生する構造。

※細かい話はこれ(https://www.wantedly.com/companies/trash-briefing/post_articles/113828
 フィード:IT業界の多重下請構造はなぜ変わらないのか・業界内でのSIの機能

1.解雇規制があり、エンドは社員雇用しづらい。

2.SIの機能が必要

3.2次・3次はチーム戦になりがち

4.4次以降の市場に特化した会社の増加・再発生


建築に例えると、ゼネコンの役割がまずあって、サブコンや建築会社がその下に別の役割で存在。
ITの場合、サブコンや建築会社に職人を派遣する派遣会社がその下に存在するが、これらの派遣会社はサブコンや建築会社を目指していなかったりする。 と言う感じ。


なお、大手発注者側からの取引制限は下記の様なものが多いかなと

・資本金の金額    (下請法にからむから?)
・社員数・パートナー数(提供できるリソース量。そこそこの人数の体制で参画できる事)
・セキュリティレベル (低い下請け使って事故ったら・・・わかるよね?)
・社歴        (安定性?)
・一般派遣免許    (派遣以外受け入れNGの会社も当然ある。)
・財務状況      (これも安定性?)
・知り合いかどうか  (Webやゲームはこの要素が大きい)

会社によっては億の資本金が必要だったり、かなりの規模のリソースを出し続けないと取引なくなったりする事もあるので、いつでもどこでも気合や精神力で取引スタートできるワケではない。
(ちなみに古い会社ほど取引先が良かったりもする。取引開始のハードルがゆるい時代があったようだ)

こんな制限から直接取引ができず、中間に位置取っている古くて大きめの会社や、営業専門の会社を経由する(口座を借りる)ルートを選択するしかなくなるという背景も。

あるけどまあ、普段から営業してたら、フツーは少しづつ上がっていくもんかなあ。


〇発注者・受注者を直接契約させるビジネスとは

WebシステムでのBtoBマッチングサービスのタイプが多いです。基本は、案件情報を掲載した求人サイト型のものになるかと思います。営業マンやエージェント会社の業務をシステムで代替すると言う考え方ですね。営業力を持たないフリーランスや小規模法人などが特にメリット享受できそうです。発注者と受注者を直接契約させるもの以外は、形を変えただけのただの中間会社ですので、ここでは除きます。


〇商流面での限界

【口座開設と言うハードル】
大手発注者との取引の際は、大手発注者側内部で【取引先口座】というものを新設します。
この際毎回、新規発注先の審査が発生し、また、手続き上も非常に面倒くさいです。小規模事業者やフリーランスではほとんどの場合、直接取引は難しいと言えます。(実際に取引をしているケースはゼロではない。また、Web業界は上記の限りではない)

この取引開始における口座開設のハードルが原因のひとつであるのに、その解決がなされていません。

このため、発注者・受注者間の直接取引を謳ったサービスであっても、受注者サイドの利用者が契約できる商流は【大手に口座を持っているソフトハウス】が上限となります。ですので受注者の商流上の位置は、新規取引が楽な2次請け・3次請けが限界となってしまいます。

また、2次3次の会社はSESの営業会社とはカラーが違い、開発会社です。大きな会社はだいたい決まったパートナーを持っているのがほとんどで、それらの既存パートナーからの調達が優先になります。(SESガチャを回すリスクを冒さなくても良い)

おそらく発注者サイドのメインの利用者となるのは『営業会社的なSES会社』で、その時点で商流は一段追加です。例外的に、発注者直接の浅い商流となるケースは、調達能力が高くない零細の受託会社と直接契約するケースくらいでしょうか・・・。


【体制参画を要求されるハードル】
これもそもそもの話になりますが、1名での準委任契約、浅いSI商流ではNGなことが多いです。偽装請負の回避が目的で、ルール化されています。
また、もともとのSI側の需要も、『リーダーを含むチーム単位の戦力』と言うものですので、なおさら単品での人材のやり取りが成立しづらくなっています。


なお、Webサービス系やゲーム系の商流は主に『知り合いかどうか』がハードルで、欲しがるリソースも『管理が不要なレベルの個のエンジニア』ですので、この手のビジネスが機能する可能性はあります。将来的にこの辺りの発注者を頂点とした、直接契約サービスが誕生する可能性はあります。

ただ、システムの利用に作業工数がかかるようだと、そもそもサービスを利用してくれず、結局エージェントから調達する事に。結局1社挟まる結果に落ち着きます。
Webサービス系やゲーム系の会社は、パートナー企業を確保したいというよりも、直接社員を採用したいという需要がまずあって、その代替品としてSESエンジニアを利用するという構造ですので、窓口としてエージェント1社と付き合った方が工数がかからないんですね。




〇課金方法の問題(ちとややこしい内容)

リソース側(受注者側)が費用負担する課金方式は少ないです。
リソース側はエージェント(営業会社型SES)に経歴書を送れば済むので、費用負担する動機が薄いです。既存の代替サービスがあるなか、フリーランスやSES会社に課金させるのはなかなか難しいと思います。営業時しか恩恵を感じないサービスでもありますし・・・。

というわけで、『発注者側がサービス運営者に対して費用を支払う』仕組みが多くなるかと思います。
また、この費用は受注者側に転嫁される構造になります。(できないなら利用するメリットが無い)
サービスの利用金額・方法にもよりますが、受注者サイドが中抜き排除による金銭的なメリットを得ると言う事は難しいかもしれません。


・利用時、一括前課金方式(求人サイト型)
発注者側の企業がサービス運営企業に一定期間分の利用料を前払いする方法です。
前払い分を取り返して利益を出す為に、発注側の企業は必死で運用してくれます。反面、前払いである事がリスクと捉えられ、SESガチャリスクを嫌う会社や営業に自信の無い会社は利用しづらい傾向があります。 
つまるところ、エージェント(営業会社型SES)然とした会社がベストなユーザーになってしまいます。
また、一部の強い発注者に問い合わせが殺到し、その他の発注者が全く利益が得られない状態に陥ると、どんどんサービスから離脱され、サービス運営が継続できない事態になります。


・決定後、一括課金方式(人材紹介型)
論外です。発注者・受注者間で契約、稼動開始後、受注者が出勤しない・スキル不足等で即終了となった場合に発注者が課金分の費用を回収できなくなってしまいます。特にIT業界のフリーランスではそういった危険な人材も多く活動する為、こういったリスクを甘受してくれる発注者はまずいないでしょう。それどころか、問題のある一人のフリーランスが次々にやらかしていくと、運営者はむしろ儲かってしまいます。

※この手のマッチングサイトは、悪質なフリーから見ると、一社で出禁くらっても次の発注側利用者に行けばいいという構造で、問題のある受注側利用者をなかなか排除できないと言う問題もあります。


・決定後、月額課金方式(SES・営業支援費型)
発注者・受注者間で契約、稼動開始後、毎月小額の課金が発生します。(ほぼいつものSESだが)
発注者・受注者は、売上確定後にサービス運営者に費用を支払えばよいので、リスクもなく、マネタイズ方法としては現実的なやりかたです。しかし、この方法のリスクはサービス運営者側に発生します。
発注者・受注者間で口裏を合わせられると、運営者側には確認の方法がありません。
同様の課金方法の求人サービスでの実情を鑑みるに、運営者にとって決して軽く見れないリスクです。


このように、『運営会社が発注者・受注者の契約の間に挟まって毎月売上の一部を抜き抜き』という方法が、発注者・受注者・運営会社3者にとって、リスクが少ない方法となってしまいます。

でもこれって、ふつうに『SES』になりますよね・・・。


つまるところ、各契約者間のお互いの未回収リスクの回避を徹底した状態が、現在のSES(又貸し)構造であるといえます。各利害関係者が自身のリスクを最低限にしようと立ち回った結果、折り合ってしまう『ナッシュ均衡』のような落とし所と考える事ができそうです。



多層構造の解消に関しては、ニーズやギャップは純然と存在します。異業種出身・営業系キャリアの私から見ても、ビジネス的にとても興味のある論点です。実際、発注者・受注者のほとんどの関係者が、『商流深いのウゼえな』と、感じています。誰かが悪意を持って行っている訳ではなく、そういう構造があり、仕方なくそこに落ち着いている。だけです。

単純に今までと同じタイプのビジネスモデルを模倣したところでうまく行く気はしませんが、一つ二つの工夫や、ビジネスモデルの修正で、ビジネスとして成立する気はしていて、不足しているピースが埋まり次第、失敗できる形を取りながら、小さくチャレンジしてみようかなと思っています。


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その他の記事へは、下記リンク先が記事一覧となっておりますので、そちらからどうぞ。

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