「HR業界は6年もいるし、起業もしたいし、そろそろ潮時かな」
今回インタビューした井上美里さんは、前職で働きながらそのようなことを考えていたそうです。しかし彼女は、その7年目をHR業界に位置するOTOGIにて踏み出していくことを決心してくれました。
人事、新卒エージェント、転職エージェントと、幅広くHRを経験してきた井上さんが、"あえて"同業界であるOTOGIを選んだ理由はなんだったのか。そこにはHR業界に長く在籍し、多くの企業を見てきた井上さんだからこそわかるOTOGIの魅力が詰まっていました。
井上美里 / プロデューサー
関西学院大学を卒業後、Webメディア事業を展開するオールアバウトに新卒入社。人事部に配属され、新卒採用、中途採用などに幅広く従事する。その後、新卒紹介事業を展開するシンクトワイスでRA/CA業務に1年従事し、当時1人目社員となるビズアクセル株式会社に転職。2年間採用コンサルタントとして働いた後、2023年8月OTOGIへ入社。
「ファーストキャリアが人事という異色のキャリア」新卒 / 中途採用、採用広報、組織活性化...あらゆるHR領域を新卒で経験
ーー人事としての経験は、新卒の会社で積んだと伺いました。
そうですね。新卒で入社したオールアバウトで、入社初日に主たる理由の共有はないまま「人事部に配属で」と言われたところからスタートしました。「新卒から人事配属ってあり得るんだ」と思いましたが、せっかく配属してもらいましたし、面白そうだったので特に何も深く考えずに社会人としてのキャリアが始まりましたね。
ーー確かオールアバウト社って300名規模ですよね?その中で新卒から人事配属は大抜擢な気が…人事としての業務内容を教えてください!
新卒採用が業務内容の8割、残りの2割で中途採用と採用広報的な動き、あとは組織活性化の動きでした。新卒採用は上司と私とで動いていたのですが、上司は新卒採用以外にも仕事があったので、基本は私が1名体制で実行するという構図。配属初年度から総合職・エンジニア職合わせて11名の採用を任せてもらえてしっかりと達成することはできたんですが、多くの応募をいただいている中で全員に真摯に対応するためにも、もうとにかくヒーヒー言いながら仕事してましたね(笑)。
ーー新卒の方が1人で11名採用達成していることがすごすぎます…
ありがとうございます…!”1人で”とは言え、上司や同僚からの助言はもちろん、総合職採用の方では各部署の色んな方に面接官として出ていただきましたし、エンジニア職採用ではエンジニア社員と採用チームを組んでプロジェクトとして動いていました。飲みの場で相談を聞いてくれた同期も含め、本当に関わった全ての社員に育ててもらった感覚ですね。新卒の身で諸先輩方や経営陣を巻き込んで動いてもらうというプレッシャーは相当なものでしたが、おかげさまでこの辺りで肝は据わりました(笑)。
当時の姿勢としては、前に前にと仕事を動かしていくことを意識していましたし、それが染みつきました。前述した通り自分だけでどうにかなる数字ではないですし、自分がボールを持ちすぎたら誰かの仕事が止まってしまう。自分のせいで誰かの仕事が滞ってしまったり、数字を達成できなかったりするのが嫌だったので、とにかく愚直にできることを全て実施していたら11名の採用という結果に結びついたと解釈しています。
ーーとにかく前に推進されてたんですね。当時、新卒11名を採用するために実施したことはどんなことでしたか?
母集団形成はダイレクトリクルーティングとWantedly、会社説明会などのイベント参加がメインでした。ナビ媒体も使用していたのですが、費用対効果の観点から途中で掲載を止めてしまいました。全体的な歩留まり改善の観点ですと、フォロー面談の実施がやはり1番インパクトが大きかったと思っています。志向性が合わなかったら無理に選考を進めなかったり、方向性すらあまり見えていない方であれば専用の比較表を作ってあげたりと、相互に納得感のある意思決定により内定辞退が発生しにくい状況をとにかく意識していました。
ーー社会人1年目からその動きができているのがすごいですね。しかも残りの2割で他のこともやっていたんですよね。
中途採用や採用広報的な動きもしていましたが、個人的に1番思い入れがあるのは組織活性化の施策ですね。「芸人ランチ」という某バラエティ番組を文字ったランチ施策を企画運営していました。プロ野球芸人、フェス芸人、キャンプ芸人など、いろんな〇〇芸人で開催し、毎回それなりに参加者が集まってくれていたのはとても嬉しかったです。
ーー芸人ランチ面白そうですね。企画したきっかけはなんだったんですか。
これは「勝手にやらせてください」と言って始めたものだったのですが(笑)。オールアバウトは新卒を大切に育てていこうという文化がとても強く、ただ一方で中途メンバーは自分のチームとしか関わりがない、という状況がどうも気になっていたんです。
「自分が中途入社して、同じフロアで働いているけど話したことない人がたくさんいる環境にいたらどう思うだろう」と考えたら、「きっと嫌だろうな」「でも誰にも相談しにくいだろうな」「会社がその場を作ってくれたら嬉しいのでは」と思うようになって、部署の垣根を越えた芸人ランチをやり始めました。結果として、ランチ以前は全く話したことがなかった2人が「後日、2人でランチに行ってきました!」という声も多くもらえるようになり、とても嬉しかったことを覚えています。
人事は自社しか紹介できない。本質的なマッチングを目指し、採用支援領域へ踏み出す。
ーーオールアバウト社での経験は、井上さんの中でとても充実していたように聞こえます。そんな環境から転職したのは、何かきっかけがあったのでしょうか。
2年が経過したタイミングで、自分のキャリアを見つめ直したんですよね。人事という仕事は天職だと思っていましたし、やりがいも楽しさも感じていました。しかし、相対する学生には自社だけしかおすすめすることができない。そこにどうしてももどかしさを感じていたんです。
これから社会人になろうとしている学生さんたちは「どんなキャリアを歩んだら良いのか」を真剣に悩んでいて、その悩みをより本質的に解決するんだったら採用を支援する側に立ってみるのがいいんじゃないかと。オールアバウトでの人事活動でもやり切った感覚もあったので、転職を決意しました。
ーー2社目のシンクトワイス社を選んだ理由はなんだったのでしょう。
新卒紹介という事業領域であることに加え、RAとCAを両面で経験できることが決め手でした。私は新卒から人事だったので、多くの新卒1年目が通るであろう「営業」というものを経験したことがなかったんです。この先のキャリアで「人事しか選択肢がない」という状態に陥るのも怖いなと感じていたので、その要素を持ち合わせていたシンクトワイスに転職することを決めました。
ーーめちゃくちゃストイックな理由ですね(笑)。そこから前職に当たるビズアクセル社への転職はどういったきっかけがあったのでしょうか。
シンクトワイスで得たかった「営業経験」「新卒紹介」の2つは、短い期間でしたが得た感覚があったんです。しかし自分の中で「1社にもっと寄り添っていきたい」「新卒ではない領域にも挑戦したい」「既に働いている自分の友人たちがキャリアで悩んだ時にも支えられる存在になりたい」という想いが沸々と湧いてきて、転職を決意しました。
ーービズアクセル社には1人目社員として入社なさっています。決め手はどういったところでしたか。
事業内容が「関西ベンチャー特化の転職支援」だったということもあるんですが、どちらかというと代表の創業背景や仕事への向き合い方を素直に尊敬できたというのが大きかったです。代表は大手エージェント出身だったからこそ、そこでの経験から「より丁寧で、より本質的なマッチング」を心がけていました。
面談の内容をはじめとしたさまざまなことを詳しく質問させてもらった中で「言っていることは本当なんだな」と感じ、シンクトワイスを退社する時に感じていた「1社に寄り添った仕事の仕方」も体現できると思い、入社を決意しました。
ーービズアクセル社での業務内容はどんなものでしたか。
RAとCAを両面で行っていました。クライアント企業に向けて採用のコンサルティングもさせていただきながら、案件が入ったらそれに合致する人材にスカウトを送付し、面談対応、1名あたり1〜3社を紹介し、企業への推薦状を作成した上でご紹介、その後の選考課程を伴走するというものです。担当していた社数はそれほど多くなかったのですが、当初目的としていたように、1社に深く入り込んでいくことができたので、ベンチャー企業のリアルをたくさん見ることができました。
例えば、新規事業の立ち上げのために紹介を依頼されたと思ったら、その事業がすぐに潰れてしまったり、それを見てその会社にいた別の人材が辞めてしまったから、そこを埋めるための人材の紹介を依頼されたりと、改めて「会社と人ってこれほど密接な関係なんだな」というのを肌で感じましたね。
ーー転職領域は初めてだったかと思います。実際に働かれてみていかがでしたか。
これまで新卒領域で言うと大きく分ければ「総合職」「エンジニア」の2職種だったところから、爆発的に職種が増え、とにかく勉強の日々でした。ミクロで見ると100職種は勉強したんじゃないでしょうか。そのおかげで自分自身の視野が大きく広がった感覚もありました。業界の幅広さ、職種の幅広さ、会社ごとに異なる組織課題の多さ。ビズアクセルのように1社に深く入り込んでいける事業内容でないと、とても経験のできない2年間だったなと感じます。
ーー会社の理念として掲げられていたことを、井上さんも一緒に体現できていたということですね。
正直どこまで体現できていたのかはわかりませんが、そうできるように努力はしていましたね。特に推薦状。これは命を賭けて書いていました(笑)。書類からだと伝わらないその人の良さやポテンシャルってあるじゃないですか。特に求職者が現職でそれが活かされずに転職市場に出てきてしまっている場合、職務経歴書だけだとその人は書類で弾かれてしまうんですよね。
だからこそ、この人にはこんな力があって、こういうお人柄で、こんなポジションでこんな活躍しそうですってことまで細かく書いていました。結果、当初提示されていた基準だと書類で不合格になってしまう方が、内定獲得までできた時はめちゃくちゃ感動しましたね。
起業目前に出会ったのは、これまでに見たことがないベンチャー企業"OTOGI"だった
ーービズアクセル社を退職するに至った背景をお伺いしたいです。
「HR業界はもういいや、離れたい」とは思っていたんです。学生時代から「社会課題をビジネスで解決したい」と考えていて、就活生の時にも最初は大手の総合広告代理店を志望していました。ただ、それら企業群からは内定を頂けず、偶然出会えて入った企業では人事をやることになり、そのままHR業界に今日までいる。どこか偶発的にHRという業界に縛り付けられているような感覚もあって、そろそろ離れて別業界へ転職をするか、自分で事業を立ち上げるかということを考えていました。
たまたまスタートした地点が「人事」だっただけであって、まったく別の場所からスタートしていたらどんなところに流れていくのだろう。そんなことを漠然と考えていた中で出会ったのがOTOGIでした。
ーーOTOGIのどういった部分に惹かれたのかをぜひ伺いたいです。
陳腐ですが、これまで出会ってきた企業と一味違うと感じたんです。抽象的に言うと、定性面と定量面のバランスが良く、かつそれぞれがしっかり強いというところでしょうか。具体的には、理念やビジョンはどの企業でも語っていると思いますが、”想い”だけでなくそこに至るまでのプロセスや考え方の具体度が非常に高く、事業戦略に関しても業界を俯瞰的に見た上で戦略性を持って設計されていると感じました。事業への解像度だけではなく、OTOGIという組織に対しての解像度も非常に高く持てたこともあり、想いもロジックも大切にしたい私にとってかなり魅力的でした。
ーーそういっていただけるととても嬉しいです(笑)
あとは代表の山本と、それについていく塚本の人柄、そして2人の関係性がとても素敵だなと感じました。特に山本は過去の経験(当時の株式会社SAKIYOMIの2番手ポジション)から1人でゴリゴリと進めていく馬力を持っていながら、多角的な視点で他人の気持ちも理解できるというバランスがあり、かつ自身の中で作り上げたい世界観への情熱もありながら、俯瞰して会社 / 事業を成長させるためのロジカルさを持ち合わせている、非常にバランス感覚に優れた方だなと感じています。
また、山本がいない間に塚本から聞いた話の中からも、山本が塚本を「ビジネスパーソンとしてではなく、人として育てようとしている」ことがとても伝わってきて、とても感動したのを覚えています。
ーーどんな話だったのか物凄く気になりますね…笑 入社する前のエピソードで印象的だったものはありますか。
私が自作のプレゼン資料を山本にお見せしたときのエピソードだったんですけど、
山本:めっちゃいろんなこと考えてますね!
井上:しょうもないことばっかり考えてるんで…笑
山本:しょうもないことの方が複雑性が増し難しいですから
井上:暇やから考えてるだけですよ!
山本:あ、ちなみに学び舎を指すschoolの語源はギリシャ語のskholeで「暇」という意味らしいですよ!最終的に人間は暇を持て余すと「学ぶ」ことをするという解釈もできるので、語源はあながち間違っていなさそうですね(笑)。諸説あるみたいですが!
井上:...!それめっちゃ面白いですね!
という会話があったんです。日常会話にすぎないのですが、私としては暇であることをネガティブに伝えたのに、それを全てポジティブに肯定してくれたり、哲学や様々な話に紐付いていったり、それでいて一つの意見を押し付けなかったりと会話をするだけで心地よい感覚を得ていました。入社した今思い返すと、このラリーにOTOGIの「ポジティブ解釈(肯定)」や「メタ認知」「あらゆる領域の探究」といった文化や山本の人柄が出ているなと思って。OTOGIの紹介を誰か他の人にする際には、このエピソードを使うようにしています(笑)。そして、自分が知らない話を面白いと思える方はOTOGIに合うと思います(笑)。
ここでなら、まだHR業界で戦ってみようと思えた。
ーー正直、OTOGIの業務内容的な部分は全く刺さってませんでしたよね?笑
これを言われたのは2回目で、初めてそれを山本に言われたのは印象的でしたし、確かに最初はOTOGIの事業内容に対して興味関心を持っていませんでした(笑)。やはりHR業界を抜けたいという想いが強くありましたし、山本や塚本の人柄、OTOGIのカルチャーに惹かれていたので、事業内容は見ていませんでしたね。
ただ、後から事業内容を聞いていくと「採用活動における"母集団形成領域や認知"以降の"動機形成領域"に携われること」や「"採用狭報"というまだ未成熟な領域へのチャレンジ」「ディレクションスキルが身に付くこと」など、これまでに経験してきたHR業界とは全く違う形でHR業界に携われるなと思ったんです。「それはそれで面白いな」と感じ、OTOGIへの入社を後押ししてもらった感覚がありました。余談ですが、昔から”人を巻き込み、物事を良い方向に推進していくこと”は好きだったので、丁度今年友人に「ディレクションの仕事とかしてみたかったな〜」と話していたのもここで繋がったんですよね。
ーーまさにこれからOTOGIで働き始めるところにいますが、会社の中でどんな存在になりたいと考えていますか。
端的に言えば「OTOGIの温度を1℃上げたい」、これに尽きますね。昔から「モチベーターになりたい」という気持ちが強くあって、自分がいることで周りが一緒に盛り上がっていくという立場に憧れがあるんです。井上がいることでOTOGIという会社の温度が1℃でも上がったら最高だなと思っています。
ーー井上さんから見てOTOGIという会社は今後どうなっていくと思いますか。
どんなことが起きたとしても「大丈夫だろう」「楽しめちゃいそうだ」と感じています。人の観点で言えば、合理と情緒のバランスが綺麗に取れている人が集まっているため、より良いサービスを作っていけるでしょうし、業界的に考えても「母集団形成主義の脱却」「採用広報 / 狭報」はよりトレンドになっていくでしょうから、OTOGIにはさまざまな形で成功する可能性があるんじゃないかなと感じています。これから一緒に創っていく未来がただただ楽しみ!というのが本音で、ワクワクしています。