*本記事は、以下noteの転載になります。
https://note.gaudiy.com/n/n3b75257c8b1a
「機動戦士ガンダム(以下、ガンダム)」シリーズ45周年とガンプラ45周年に向けたプロジェクト「GUNDAM NEXT FUTURE -ROAD TO 2025-」の三本柱の一つである、ガンダムメタバースプロジェクト。同プロジェクトでは、これからの発展に向けて、ガンダムメタバースを一緒に創っていく仲間を募集しています。
ガンダムメタバースプロジェクト 採用特設サイトバンダイナムコグループが進める「ガンダムメタバースプロジェクト」をともに創造する人材を募集します。世界中のガンダムファンがgmpj.bn-ent.net
今回は、同プロジェクトを主導するバンダイナムコグループのガンダム事業統括者、チーフガンダムオフィサー(以下、CGO)の藤原孝史さんと、ガンダムメタバースの技術顧問で、株式会社Gaudiyの代表取締役である石川裕也さんに、プロジェクト発足の経緯や両社が目指すビジョン、開発者にとってのプロジェクトに携わる魅力などについてお話を伺いました。
藤原孝史 | Takashi Fujiwara
バンダイナムコグループ チーフガンダムオフィサー(CGO)
1998年にバンダイ入社。2019年にBANDAI SPIRITS取締役、21年4月からバンダイナムコエンターテインメント常務取締役 兼 事業戦略担当 兼 チーフガンダムオフィサーに就任。第1IP事業ディビジョン・第2IP事業ディビジョン・第3IP事業ディビジョンを担当。
石川裕也 | Yuya Ishikawa
株式会社Gaudiy 代表取締役CEO / ガンダムメタバース技術顧問
2018年5月に株式会社Gaudiyを創業。「ファンと共に、時代を進める。」をミッションに掲げ、大手エンタメ企業とブロックチェーン事業を展開。毎日新聞やLINE Payなど複数の企業でアドバイザーや技術顧問を兼任し、2022年8月にガンダムメタバース技術顧問に就任。
左:Gaudiy CEO石川さん、右:バンダイナムコエンターテインメント CGO 藤原さん
(以下、敬称略)
目次
桁違いの来場者に「ファンを正しく理解できていなかった」と痛感
コンテンツとプラットフォームの中間にある、ガンダムの特異性
ファンとファンがつながり、自由にクリエイティビティを発揮する世界
ガンダムという武器を使い、最高にチャレンジングな挑戦ができる場所
桁違いの来場者に「ファンを正しく理解できていなかった」と痛感
──今回のガンダムメタバースプロジェクトが発足した背景を教えてください。
藤原:バンダイナムコグループはこれまで、IP(*)を軸に商品やサービスを作り、ファンに届けるというビジネスをずっとやってきました。その中で、ファンが大事であることは理解しながらも、ファンと直接つながるような取り組みは、実はあまりできていなかったんです。
*Intellectual Property の略で、キャラクターなどの知的財産のことを指す
そんな中、22年4月からの中期ビジョンに「Connect with Fans」を掲げ、その重点戦略の一つに「IPメタバース」を設定しました。これは、メタバースという手段を介して、IPとファン、ファン同士をつなげていくという構想です。今回のガンダムメタバースプロジェクトは、その第一弾として立ち上がりました。
──ガンダムシリーズ45周年とガンプラ45周年に向けた「GUNDAM NEXT FUTURE -ROAD TO 2025(ニーマルニーゴー)-」を始動されてますが、その歴史の中でファンとどのような関係性を築いてきたのでしょうか?
藤原:ガンダムは、玩具などのトイホビー事業や、ゲームを中心としたデジタル事業、ゲームセンターをはじめとしたアミューズメント事業など、グループ全体で多岐にわたるビジネスを展開しています。
ファンとのつながりにおける転換点となったのが、2009年にお台場に作られた、高さ18メートルの実物大ガンダムです。
それまではイベントをするにしても、収容人数の上限があるリアルな会場で、週末などの限られた期間でしか実施したことがなかったんですね。それがガンダム史上初めて、入場無料のオープンスペースで、50日間にわたるイベントをやったわけです。
そしたら、予想をはるかに超える、約400万人ものファンが来場してくれたんですよ。これまでとは桁違いで我々の誰もが想像できていませんでした。
──50日間で約400万人も。
藤原:そうです。そのとき我々は、ファンの熱量やガンダムというIPのポテンシャルをいかに理解できてなかったか、ということをものすごく反省して。
これまでお会いしてきた方々は、実はファンのごく一部にすぎなかったんだなと痛感したんです。この原体験から「ファンのことを正しく知りたい」と思い、メタバースという手段に着目しました。ただ、実現したい世界観はあっても、どうすれば実現できるのかがわからない。そこでお話ししたのが、Gaudiy代表の石川さんでした。
──Gaudiyとは、なぜ協業することになったのでしょうか?
石川:Gaudiyは、2018年の創業当初から、ブロックチェーン技術を活用したコミュニティサービスを展開しています。2022年に行った資金調達でバンダイナムコエンターテインメントのスタートアップ投資ファンド「Bandai Namco Entertainment 021 Fund」から出資いただく際に、ファンの貢献活動によって生み出される価値がなめらかに分配される「ファン国家」をつくりたいというビジョンをお話しして、意気投合した感じですね。
藤原:IPでファンとつながっていくビジョンを考えたときに、Gaudiyさんの技術的な知見や、エンタメ企業と協業してきた経験をお借りしたいと思いました。そして何より、最初に思想を共有しあった際に、ものすごく共鳴するところがあったんです。お互いのビジョンが重なり、一緒に取り組ませていただくことになりました。
コンテンツとプラットフォームの中間にある、ガンダムの特異性
──石川さんは、ガンダムメタバースの技術顧問にも就任していると思います。具体的に、どのようにプロジェクトを進めてきたのでしょうか?
石川:藤原さんと初めてお会いしたとき、「ファンを楽しませるコンテンツを作ってきた自負はあるけれど、ファンが常に集まれるような場づくりは今までやったことがない。今回はそこに挑戦したい。」と伺いましたよね。その話がすごく印象に残っています。
藤原:我々は、ガンプラにしろアニメ作品にしろ、ファンが楽しめるコンテンツを作り続けてきました。それは「作り手と受け手」のような関係性であり、常にコンテンツを介してファンとコミュニケーションをしてきた感覚なんです。
一方で、メタバースのようなプラットフォームは、オープンスペースで、全員がフラットに存在するじゃないですか。誰もがなんでも自由にできるからこそ、ファンの「真の姿」が見えてくるのではないかと思っています。
石川:開発者目線でも、コンテンツとプラットフォームは、作り方が全然違うと思っていて。コンテンツは初速が大事なので、制作途中の過程は見せずに、完成したらドンと公開することが多いですよね。
でもプラットフォームは、テクノロジーの言葉でいうと、もっと “リーン的” だと思っています。作って、壊してを繰り返しながら、ユーザーの創造性をどう引き出せるか、面白い体験をどう提供できるかを、ユーザーと共に高速で検証していくものだと思うんです。
そしてガンダムは、コンテンツでありながら、プラットフォーム的でもあるなと個人的に感じていて。例えばガンプラは、未完成のパーツからファン自身が組み立てて、スミ入れをしたり、ジオラマを作ったりと、ユーザー主体で楽しむ余白がありますよね。
このコンテンツとプラットフォームの中間という立ち位置は、他のIPではあまり見ないですし、だからこそガンダムメタバースは成立しやすいんじゃないかとも思っています。
──昨今、メタバースに参入した事業者が相次いで撤退するなど、事業として難しい側面もあるように感じますが、それに対してはどのように考えていますか?
石川:そう思われる理由の一つは、自由度が高すぎることだと思っています。メタバース空間というデジタルな箱を用意して「ご自由にどうぞ」と言われても、ユーザーは何をしたらいいかわからないと思うんです。
この逆が、作り上げられたコンテンツだと思っていて。でも今度は、ユーザーの余白が少ないという別の問題が出てくる。だからガンダムは、良いバランスでできる稀有なIPなのだろうなと思います。
──ガンダムメタバースで描く理想の未来について、詳しくお伺いしたいです。
藤原:もし仮に、アバターが集まるデジタル空間のことを「メタバース」と呼ぶならば、我々がやりたいことはメタバースではないのかもしれません。
そうではなく、我々が目指すのは「ガンダムが好き」という共通項をもつ人々が世界中から集まり、心地よく居られる場をつくること。そして、ファンの熱量を最大化することです。
特にガンダムは、人それぞれの「好き」やファンになったポイントが違うと思っていて。プラモデル、アニメ、ゲームなど、入り口が多様でファンが多層的であることが、ガンダムというIPの魅力だと思っています。
これらのガンダムファンを最大公約で括ると、「ガンダム好き」になるわけです。すると、普段は分断されているファンも同じコミュニティになり、そこに一体感が生まれ、ファンの熱量がより大きくなるのではないか。物理的な制約を受けないメタバースならば、それが実現できると思っています。
よく社内で例えに出るのは、ライブ会場にいるファンの空気感ですね。曲やビジュアル、演奏など、好きには違いがあるけれど、「そのアーティストが好き」という共通項があるからこそ、ライブが始まる前の高揚感やライブ中の一体感が生まれるのと同じだと考えてます。
ファンとファンがつながり、自由にクリエイティビティを発揮する世界
──好きなポイントは様々あるけれど、「ガンダム好き」が共通項となるわけですね。世界中にファンがいるガンダムだからこそ、そのポテンシャルはすごそうです。
藤原:現在も横浜にある等身大の「動くガンダム」を見るために、海外から多くのファンが訪れているんですよ。場所や時間の制約がなくなったとき、いったい何人のファンが集まってくれるんだろう、と今から楽しみですね。
──ファンの熱量を高めるために、どんな機能や体験を提供しようと考えていますか?
藤原:結局、メタバースという箱に我々がつくったデジタルコンテンツを並べていったところで、これまでとあまり変わらないですし、それでは長続きしないと思っています。
我々が提供できていないサービスに対して、魅力を感じるようなファンも必ずいると思う中で、一番良いのは、ファンの力でそれを実現してもらうことです。
それこそメタバース空間で、ファン同士の交流がもっと盛んになってほしいですね。例えば、ガンダムの絵を描いて展示したり、ファンが自由にクリエイティビティを発揮していくことで、その熱量がどんどん顕在化し、加速していくと思うんです。その結果、ファンがファンをつなぎ、また新たなファンを生み出して、ガンダムというIPが永続すると理想的だなと思います。
石川:ファンが拡張する世界観は、Gaudiyもすごく共感します。それを実現するのが、テクノロジーを使う意味なのかなと思っていて。
例えばこれから挑戦していく、AIの活用。この可能性の一つは、人々のイマジネーション(想像力)とクリエイティビティ(創造性)をつなぐことだと考えています。頭の中にある妄想を具現化するのに、AIが少し手助けしてくれる。それができれば、ファンのニーズがあるのに企業が提供できてない部分を、ファン同士で満たしていけるようになると思います。
藤原:テクノロジーによってクリエイティブ生成の幅が広がると、目に見えるアウトプットが増え、それにまたインスパイアされて、新たなクリエイティブが生まれる、という循環ができそうですよね。
ガンダムメタバースでは、ブロックチェーン、AI、3Dスキャンなど、様々な先端テクノロジーを活用してますが、それらが進歩するにつれて、クリエイティブの幅がどんどん広がっていくはずです。そして、私たちの想像を超えるようなアウトプットが自然と生まれてくるんじゃないかという期待をしています。
石川:めちゃくちゃいいですね。自分も子供の頃、両手に持ったガンプラを戦わせたりして遊んでましたが、それをデジタル空間でできたら面白いだろうな。得意な人に教えてもらうことで、自分の創造性に気づき、さらにイマジネーションが増すところもありそうです。
ガンダムという武器を使い、最高にチャレンジングな挑戦ができる場所
──開発者目線でこのプロジェクトに関わることの魅力について、どう考えますか?
石川:今までにない新しいサービスづくりに、ガンダムという世界的なIPで挑戦できること。そのサービスが、多くのユーザーにちゃんと使われること。この2点が魅力だと考えています。
ガンダムメタバースは、ファンの保全や外部経済との接続にブロックチェーン技術を使うほか、ファンの活動を横断的につなぐID連携、ガンプラの3Dスキャン、AIなど、最先端のテクノロジーをフル活用したプロジェクトです。めちゃくちゃ難しいけれど、技術者の腕の見せどころだと思っています。
そして、世界中にファンがいるガンダムだからこそ、その先進的なサービスが、多くのファンに使ってもらえる可能性が高いです。今までにない技術的な挑戦があり、自分たちの手で作ったものが多くの人に届く。その両方を満たすプロジェクトは希少ですし、グローバル規模で挑戦できることは、とても意義のあることだと思いますね。
──壮大でチャレンジングですね。最先端のテクノロジーを扱う上で、プロダクトづくりにおいて気をつけていることはありますか?
石川:新しい技術は、たとえ発展途上であってもきちんと投資すべきだと考える一方で、活用のラインを探求しつつも、技術者としてのエゴをユーザーに押し付けるのは違う、と思っています。
また既存のファンも多くいる中では、”攻め”の開発だけでなく”守り”の開発も必ず発生します。その攻めと守りの両輪に向き合い、体験を追求できる「誠実さ」を大事にしたいです。
藤原:ガンダムメタバースのユーザー体験においては、基本的に「性善説」に立ち、あまり規制したくないと思っています。ガチガチにしてしまうと、ファンの可能性を摘みかねないと思うからです。
ただ、一つだけルールを定めるならば、稚拙な表現かもしれませんが「ガンダムを傷つけるのだけはやめよう」ですかね。ガンダム好きの人々が集まる空間なので、それに背く行為や、ファンが悲しむようなことは絶対にしない。技術の使い方も含めて気をつけたいですね。
──そんな、魅力に溢れているガンダムメタバースプロジェクトでは、一緒に創っていく仲間を募集しているそうですね。
藤原:はい。「ガンダムカンファレンス AUTUMN 2023」で発表させていただきましたが、我々と一緒にガンダムメタバースを創っていく仲間を、Gaudiyさんと双方で共同募集します。ガンダムメタバースは、これからも改善やアップデートを繰り返していきますので、ぜひご興味のある方にご応募いただきたいです。
石川:今回の共同募集では、ビジネスデベロップメントやエンジニアリング等、複数領域にわたって募集します。
──最後に、採用候補者の方に向けたメッセージをお願いします。
藤原:まず、大前提として自分なりの軸でガンダム好きであってほしいです。何かしらガンダムの好きな部分を、自分なりに語れることは結構大事だと思っています。その方が、ファンの気持ちを理解しやすいですし、ご本人も楽しんで取り組めるのではないかなと思います。
また、10月に期間限定オープンを控えていますが、ガンダムメタバースプロジェクトで目指す世界観のまだ一部しか再現できていません。それでも、我々がなぜ立ち上げたのかということを、少しでも感じ取っていただけたら嬉しく思いますので、ぜひこの機会に一度触ってみていただきたいです。
ガンダムメタバースプロジェクトは、目指すべき大きな方向性はあるけれど、そこに向かっていくための「道」があるわけではありません。なので、勇気をもって新しい道を切り拓きながら、一緒に歩みを進めていける人に来ていただきたいですね。
ガンダム好きでやりたいことがはっきりしている人、ガンダムメタバースに対する熱意のある方には、ぜひアイデアも提案してほしいですし、ここでフルスイングしていただきたいです。
石川:このガンダムメタバースは、国内外のテクノロジーを活用したプロジェクトの中でも、大本命の一つなんじゃないかと本気で思っています。すごく大きなチャレンジをしているので、まだまだ見えない部分もあるし、一筋縄でいかないことも多いため、仲間を増やしていきたいと考えています。
そこで大事なのは 「これは自分にはできない」と尻込みせずに、何事もまずやってみるという挑戦マインドだと思っていて。困難な状況を楽しみながら、一緒に挑戦していける人をお待ちしています。
(取材・文:山本花香、撮影:星野賢一)