ソーシャル機能を兼ね備えた、経済ニュースプラットフォーム「NewsPicks」。The Wall Street JournalやThe New York Times、Bloombergなどの 国内外90メディアのニュースのほか、NewsPicks編集部が作成するオリジナル記事を簡単に閲覧できるだけでなく、各業界の専門家や要人をフォローすることで、彼らが関心を寄せるニュースや記事、それに対する解説コメントも読めるという仕組みで人気を博しています。
そんなNewsPicksの編集部には、インフォグラフィックス・エディターである櫻田 潤(さくらだ じゅん)さんが働いています。インフォグラフィックスとは、情報やデータ、知識を視覚的に表現する手法のこと。普段何気なく目にする、電車の路線図や「男子トイレ/女子トイレ」を示す絵文字(ピクトグラム)などもそのひとつで、意識してみるとあちらこちらに存在していることに気がつきます。
櫻田さんは、いち早くインフォグラフィックスの可能性に着目し、情報発信をおこなってきた第一人者。フリーランスとして仕事を請けたり、講演や出版の機会も多かったという櫻田さんですが、現在のインフォグラフィックス・エディターとしての働き方を見出すまでにはどのようなストーリーがあったのでしょうか。
今日はNewsPicksを運営する株式会社ニューズピックスへお邪魔し、櫻田さんとインフォグラフィックスとの出会いから、ニューズピックスで働くにいたるまで、たっぷりとお話を伺っていきます。
“インフォグラフィックス・エディター” とは
スマートフォンが普及し、何気ない隙間時間にもSNSやニュースWebサイトなどから情報収集をするのが当たり前の世の中。直感的に情報を伝える手段として注目されているインフォグラフィックスですが、専門的にインフォグラフィックスを取り扱う人材は、日本には数えるほどしかいません。「インフォグラフィックス・エディター」なる職種も、櫻田さん自ら作ったオリジナルのポジションです。
−業務ではどのようなことをされるのでしょうか?
「NewsPicks編集部でディスカッションをした上でインフォグラフィックの形に落とす、ということをしています。記事を作るときには、ほぼ企画から入るようにしていて、部分的に参加するということはあまり多くありませんね」
−インフォグラフィックス・エディターとして、現場での制作スキームはご自身で作られたのですか?
「そうですね。入社してから1年くらいはばたばたでしたが、幸いなことにNewsPicksの編集者たちは『今までと違うことをやりたい』という意識の人が多いので、どんどん理解度が高まって。2年目にはだいぶやりやすい環境が整いましたね」
−インフォグラフィックを作るにあたって、デザインよりも情報の整理(編集)をすることが重要だとおっしゃっていますよね。けれど、実際に櫻田さんの作品を拝見すると、情報を伝えているだけでなく細かいパーツのひとつひとつがユニークで配置にもこだわりがあって、まるで一枚のアート作品のような完成度というか。これは総合芸術なのでは…?と感じます。例えば部屋に飾られていても違和感がないですよね。
「確かにそういう側面もあって、そこが面白さでもあります。普段の仕事でも、同じものをずっと作れば良いとは思っていなくて、毎回小さくても必ずひとつは新しい要素を入れようと思ってやっているんです。そういった変化を繰り返すことで稀に『自分の作風が変わったな』『一気にアップデートしたな』と感じる瞬間があるんですよ。そういうときはやりがいを感じますね。
もちろん、ユーザーから良い反応がもらえたときとか、意図したところで面白いと思ってもらえたときも、(インフォグラフィックスの可能性を正しく示せたということで)やりがいを感じますね」
−ここ数年、インフォグラフィックス自体がバズワードとして盛り上がっているように感じますが、今後どうなっていくと思われますか?
「自分の中では、これ以上『インフォグラフィックス』の言葉にとらわれる必要はないと感じています。そのワードが散々消費されて、最終的にインフォグラフィックスを扱う人がどれだけ残ったか、成果出している企業がどれくらいあるのかというと、そんなにないので。このブームが落ち着いてから、またやる人が出てくると思うので、そこからという気がしますね。今は過度期だと思っています」
−日本で今インフォグラフィックスを専門的に取り扱っている人はどのくらいいるのでしょう。
「数人ですね…。世界だとたくさんいますが。
でも世界の流れを見ていても、インフォグラフィックスを大々的に銘打っていた会社もマーケティングの会社に買収されたり、自身がコンテンツマーケティングに寄せた会社に方向転換していたりしていて、『インフォグラフィックス』というワードが前面に出ることがなくなってきています。逆を言うと、“一般”の枠に戻っていったのだと思うんです。
つまり、価値ある情報をわかりやすく届けよう、そのためには図やビジュアル的な要素を効果的に使っていこう、という当たり前の流れがもともとあって、それが『インフォグラフィックス』という言葉を借りて世の中に広がったに過ぎないと。そういった “インフォグラフィックス文化運動” のようなものがひと段落して、一般的なものとして認知されるようになってきたのだと思います」
職種を転々とした時代
今でこそインフォグラフィックスの第一人者として最前線を行く櫻田さんですが、過去にはSE、Webデザイナー、マーケティングなど幅広い職種を経験してきています。その背景には、一体どのような経緯があるのか伺います。
「諦めが早いので、どんどん次いっちゃうんですよ。
最初はプログラマとしてキャリアが始まったんですが、いざその世界に入ってみるとすごい人がいっぱいいるんですよ。死ぬほどプログラムが好きという人がたくさんいて、これは敵わないなと思ってWebデザインの道に行ったけれど、こちらにもやっぱりすごいが人いて、やめようってなって(笑)」
−「一番になれないから次へ」というのは、ある意味すごく上昇志向の強い考えですよね。
「そう思うかもしれませんが、自分としては挑戦していったというより、逃げていったという方がニュアンスとしては正しいと思います。過去には自分のバロメーターを入力すると強みがわかるデスクトップアプリを作ったこともあるのですが、そのアプリのように自分の適性を模索しながら転々としていった結果、それまでの経験や考えがミックスしていって、今の職種に行き着いたんです」
−そもそも最初にプログラマになろうと思ったのはなぜなのですか?
「実はその頃環境汚染に対して関心が高くて、この時代に有形のものを作るのはやだなって思っていたんですよ。いろいろ選択はあるんですが、サービス業のように、自分を売っていかないといけないようなものはピンとこなくて。ソフトウェアは形がないのでやってみようと思いました」
−それは変わった動機ですね…! 面接でそのお話されましたか?
「どうだったかな…していないと思います。していたら、きっと落とされていますよね(笑)。とにかく自分の中で “やりたくないこと” は明確にあるので、消去法で選んできたところはあると思います」
−未経験の業種への転職って基本的にはハードルが高いと思うのですが、転職自体は苦労されなかったのでしょうか?
「大変でした(笑)」
「でも、自分は個人Webサイトをすぐに作るクセがあって。プログラマーをやっていたときはプログラミングを扱ったWebサイトを持っていましたし、その後もいろいろWebサイトを立ち上げていたので、転職のときに『こういうものをやっています』と見せられるものは常にあったんですよね」
−なるほど。インフォグラフィックスをテーマにしたご自身のWebサイト『VISUAL THINKING』( http://www.visualthinking.jp/ ) もたくさん立ち上げた中のひとつということですね。
「はい。10年くらいWebサイトは作り続けていて、『VISUAL THINKING』は、もう何個目だろうという感じで。本当に、『あのキーワードおもしろい』って思うとすぐにそれでドメインを取っちゃうんですよ。続かなかったらそれであっさりやめちゃうので、まともに続いたのは3個くらいです。今もドメインは10個以上持っているんですよ(笑)。でももう、更新しているのは『VISUAL THINKING』だけですね」
−「すぐにドメインを取っちゃうクセ」って面白いですね。
「根本が飽きっぽいんですよ(笑)」
NewsPicksとの出会い
−さて、『VISUAL THINKING』の運営が功を奏して、まさにご自身のやりたいことが実現できる仕事へとオファーされました。これは狙っていたわけではないのでしょうか?
「とにかくラッキーだと思っています。実はここにくる直前は、『仕事は仕事、趣味は趣味と分離して生きていこう』と考えていたんです。好きなことややりたいことはいろいろありましたが、なかなかお金と結びつけていくビジョンが描けなかったので。
そんな矢先に僕の著書を読んでくれた佐々木(現NewsPicks編集長)と出会って、『メディアの新しい形を作ろう』と今の会社に誘われました。海外メディアではグラフや図解の使い方が違うなと常々感じていたのと、紙やPCではなく、スマートフォンで見るインフォグラフィックスというのをもっと模索してみたいという思いがあり、ぜひやってみたいと。…やっぱりラッキーですね(笑)」
−NewsPicksには個性的な方がたくさんいらっしゃると聞いています。
「そうですね。フリーランスを10年やっていたという人や、会社勤めの経験がないという人もいるんですよ」
−それだけ「個」が溢れていても会社としてまとまるものなのですか。
「やっぱりそこは、それぞれが得意な仕事をやればいいという風潮があるからだと思います。何かやりたいことができたときに、それを止める人もいないですね。新しいチャレンジを始めるときに、ややこしい手続きとかもいらないので、アイディアを言い出しやすいというのもあると思います。それに業務に差し支えなければ、個人の活動や仕事も自由にできますし」
−それをフリーランスではなくて、会社でやる意味というのはどこにあるのでしょう。
「インパクトのスケールが違うというところですね。個人で作っているのと、会社規模で作るものでは、社会への影響力がやはり違うなと。同じ船の中でやりたいという動機はそこですね」
−この会社にいるあいだに達成したいことはありますか?
「NewsPicks編集部内だけでもいろんな職種に関わっていますが、自分は過去に色々な職種を転々としてきたというバックグラウンドがあるので、それを生かしていい感じでミックスできたらいいなと思っています。それこそ、これまでは記事のことにだけリソースを割いていたのですが、NewsPicks以外のことに手を広げても良いと思っていて。
今はちょうど、NewsPicksを運営するユーザベースグループの企業Webサイトのリニューアルに関わっているのですが、Webデザインをしていた頃の経験が生きています」
自然体のままで、自身のやりたいことに身を任せていった結果、新たな職種を切り拓くにまでいたった櫻田さん。ご自身は「ラッキーの連続だった」とおっしゃっていますが、軸をぶらさずに強みを築き続けてきたことが実を結んだのだと感じました。
それにしても、櫻田さんは時折とても個性的な意見をおっしゃるので驚かされます。さらに話を聞いていくと、櫻田さんの根底には知られざるアーティスト気質があることがわかってきました。後編ではそんな側面に焦点を当てていきます。
リニューアルされた株式会社ユーザベースのコーポレートWebサイトはこちら
ソーシャル機能を兼ね備えた、経済ニュースプラットフォーム「NewsPicks」。The Wall Street JournalやThe New York Times、Bloombergなどの 国内外90メディアのニュースのほか、NewsPicks編集部が作成するオリジナル記事を簡単に閲覧できるだけでなく、各業界の専門家や要人をフォローすることで、彼らが関心を寄せるニュースや記事、それに対する解説コメントも読めるという仕組みで人気を博しています。
そんなNewsPicksの編集部には、インフォグラフィックス・エディターである櫻田 潤(さくらだ じゅん)さんが働いています。インフォグラフィックスとは、情報やデータ、知識を視覚的に表現する手法のこと。普段何気なく目にする、電車の路線図や「男子トイレ/女子トイレ」を示す絵文字(ピクトグラム)などもそのひとつで、意識してみるとあちらこちらに存在していることに気がつきます。
櫻田さんは、いち早くインフォグラフィックスの可能性に着目し、情報発信をおこなってきた第一人者。フリーランスとして仕事を請けたり、講演や出版の機会も多かったという櫻田さんですが、現在のインフォグラフィックス・エディターとしての働き方を見出すまでにはどのようなストーリーがあったのでしょうか。
今日はNewsPicksを運営する株式会社ニューズピックスへお邪魔し、櫻田さんとインフォグラフィックスとの出会いから、ニューズピックスで働くにいたるまで、たっぷりとお話を伺っていきます。
“インフォグラフィックス・エディター” とは
スマートフォンが普及し、何気ない隙間時間にもSNSやニュースWebサイトなどから情報収集をするのが当たり前の世の中。直感的に情報を伝える手段として注目されているインフォグラフィックスですが、専門的にインフォグラフィックスを取り扱う人材は、日本には数えるほどしかいません。「インフォグラフィックス・エディター」なる職種も、櫻田さん自ら作ったオリジナルのポジションです。
−業務ではどのようなことをされるのでしょうか?
「NewsPicks編集部でディスカッションをした上でインフォグラフィックの形に落とす、ということをしています。記事を作るときには、ほぼ企画から入るようにしていて、部分的に参加するということはあまり多くありませんね」
−インフォグラフィックス・エディターとして、現場での制作スキームはご自身で作られたのですか?
「そうですね。入社してから1年くらいはばたばたでしたが、幸いなことにNewsPicksの編集者たちは『今までと違うことをやりたい』という意識の人が多いので、どんどん理解度が高まって。2年目にはだいぶやりやすい環境が整いましたね」
−インフォグラフィックを作るにあたって、デザインよりも情報の整理(編集)をすることが重要だとおっしゃっていますよね。けれど、実際に櫻田さんの作品を拝見すると、情報を伝えているだけでなく細かいパーツのひとつひとつがユニークで配置にもこだわりがあって、まるで一枚のアート作品のような完成度というか。これは総合芸術なのでは…?と感じます。例えば部屋に飾られていても違和感がないですよね。
「確かにそういう側面もあって、そこが面白さでもあります。普段の仕事でも、同じものをずっと作れば良いとは思っていなくて、毎回小さくても必ずひとつは新しい要素を入れようと思ってやっているんです。そういった変化を繰り返すことで稀に『自分の作風が変わったな』『一気にアップデートしたな』と感じる瞬間があるんですよ。そういうときはやりがいを感じますね。
もちろん、ユーザーから良い反応がもらえたときとか、意図したところで面白いと思ってもらえたときも、(インフォグラフィックスの可能性を正しく示せたということで)やりがいを感じますね」
−ここ数年、インフォグラフィックス自体がバズワードとして盛り上がっているように感じますが、今後どうなっていくと思われますか?
「自分の中では、これ以上『インフォグラフィックス』の言葉にとらわれる必要はないと感じています。そのワードが散々消費されて、最終的にインフォグラフィックスを扱う人がどれだけ残ったか、成果出している企業がどれくらいあるのかというと、そんなにないので。このブームが落ち着いてから、またやる人が出てくると思うので、そこからという気がしますね。今は過度期だと思っています」
−日本で今インフォグラフィックスを専門的に取り扱っている人はどのくらいいるのでしょう。
「数人ですね…。世界だとたくさんいますが。
でも世界の流れを見ていても、インフォグラフィックスを大々的に銘打っていた会社もマーケティングの会社に買収されたり、自身がコンテンツマーケティングに寄せた会社に方向転換していたりしていて、『インフォグラフィックス』というワードが前面に出ることがなくなってきています。逆を言うと、“一般”の枠に戻っていったのだと思うんです。
つまり、価値ある情報をわかりやすく届けよう、そのためには図やビジュアル的な要素を効果的に使っていこう、という当たり前の流れがもともとあって、それが『インフォグラフィックス』という言葉を借りて世の中に広がったに過ぎないと。そういった “インフォグラフィックス文化運動” のようなものがひと段落して、一般的なものとして認知されるようになってきたのだと思います」
職種を転々とした時代
今でこそインフォグラフィックスの第一人者として最前線を行く櫻田さんですが、過去にはSE、Webデザイナー、マーケティングなど幅広い職種を経験してきています。その背景には、一体どのような経緯があるのか伺います。
「諦めが早いので、どんどん次いっちゃうんですよ。
最初はプログラマとしてキャリアが始まったんですが、いざその世界に入ってみるとすごい人がいっぱいいるんですよ。死ぬほどプログラムが好きという人がたくさんいて、これは敵わないなと思ってWebデザインの道に行ったけれど、こちらにもやっぱりすごいが人いて、やめようってなって(笑)」
−「一番になれないから次へ」というのは、ある意味すごく上昇志向の強い考えですよね。
「そう思うかもしれませんが、自分としては挑戦していったというより、逃げていったという方がニュアンスとしては正しいと思います。過去には自分のバロメーターを入力すると強みがわかるデスクトップアプリを作ったこともあるのですが、そのアプリのように自分の適性を模索しながら転々としていった結果、それまでの経験や考えがミックスしていって、今の職種に行き着いたんです」
−そもそも最初にプログラマになろうと思ったのはなぜなのですか?
「実はその頃環境汚染に対して関心が高くて、この時代に有形のものを作るのはやだなって思っていたんですよ。いろいろ選択はあるんですが、サービス業のように、自分を売っていかないといけないようなものはピンとこなくて。ソフトウェアは形がないのでやってみようと思いました」
−それは変わった動機ですね…! 面接でそのお話されましたか?
「どうだったかな…していないと思います。していたら、きっと落とされていますよね(笑)。とにかく自分の中で “やりたくないこと” は明確にあるので、消去法で選んできたところはあると思います」
−未経験の業種への転職って基本的にはハードルが高いと思うのですが、転職自体は苦労されなかったのでしょうか?
「大変でした(笑)」
「でも、自分は個人Webサイトをすぐに作るクセがあって。プログラマーをやっていたときはプログラミングを扱ったWebサイトを持っていましたし、その後もいろいろWebサイトを立ち上げていたので、転職のときに『こういうものをやっています』と見せられるものは常にあったんですよね」
−なるほど。インフォグラフィックスをテーマにしたご自身のWebサイト『VISUAL THINKING』( http://www.visualthinking.jp/ ) もたくさん立ち上げた中のひとつということですね。
「はい。10年くらいWebサイトは作り続けていて、『VISUAL THINKING』は、もう何個目だろうという感じで。本当に、『あのキーワードおもしろい』って思うとすぐにそれでドメインを取っちゃうんですよ。続かなかったらそれであっさりやめちゃうので、まともに続いたのは3個くらいです。今もドメインは10個以上持っているんですよ(笑)。でももう、更新しているのは『VISUAL THINKING』だけですね」
−「すぐにドメインを取っちゃうクセ」って面白いですね。
「根本が飽きっぽいんですよ(笑)」
NewsPicksとの出会い
−さて、『VISUAL THINKING』の運営が功を奏して、まさにご自身のやりたいことが実現できる仕事へとオファーされました。これは狙っていたわけではないのでしょうか?
「とにかくラッキーだと思っています。実はここにくる直前は、『仕事は仕事、趣味は趣味と分離して生きていこう』と考えていたんです。好きなことややりたいことはいろいろありましたが、なかなかお金と結びつけていくビジョンが描けなかったので。
そんな矢先に僕の著書を読んでくれた佐々木(現NewsPicks編集長)と出会って、『メディアの新しい形を作ろう』と今の会社に誘われました。海外メディアではグラフや図解の使い方が違うなと常々感じていたのと、紙やPCではなく、スマートフォンで見るインフォグラフィックスというのをもっと模索してみたいという思いがあり、ぜひやってみたいと。…やっぱりラッキーですね(笑)」
−NewsPicksには個性的な方がたくさんいらっしゃると聞いています。
「そうですね。フリーランスを10年やっていたという人や、会社勤めの経験がないという人もいるんですよ」
−それだけ「個」が溢れていても会社としてまとまるものなのですか。
「やっぱりそこは、それぞれが得意な仕事をやればいいという風潮があるからだと思います。何かやりたいことができたときに、それを止める人もいないですね。新しいチャレンジを始めるときに、ややこしい手続きとかもいらないので、アイディアを言い出しやすいというのもあると思います。それに業務に差し支えなければ、個人の活動や仕事も自由にできますし」
−それをフリーランスではなくて、会社でやる意味というのはどこにあるのでしょう。
「インパクトのスケールが違うというところですね。個人で作っているのと、会社規模で作るものでは、社会への影響力がやはり違うなと。同じ船の中でやりたいという動機はそこですね」
−この会社にいるあいだに達成したいことはありますか?
「NewsPicks編集部内だけでもいろんな職種に関わっていますが、自分は過去に色々な職種を転々としてきたというバックグラウンドがあるので、それを生かしていい感じでミックスできたらいいなと思っています。それこそ、これまでは記事のことにだけリソースを割いていたのですが、NewsPicks以外のことに手を広げても良いと思っていて。
今はちょうど、NewsPicksを運営するユーザベースグループの企業Webサイトのリニューアルに関わっているのですが、Webデザインをしていた頃の経験が生きています」
自然体のままで、自身のやりたいことに身を任せていった結果、新たな職種を切り拓くにまでいたった櫻田さん。ご自身は「ラッキーの連続だった」とおっしゃっていますが、軸をぶらさずに強みを築き続けてきたことが実を結んだのだと感じました。
それにしても、櫻田さんは時折とても個性的な意見をおっしゃるので驚かされます。さらに話を聞いていくと、櫻田さんの根底には知られざるアーティスト気質があることがわかってきました。後編ではそんな側面に焦点を当てていきます。
後編▶衝動的に絵を描き、太宰の小説を書き写した日々…社会との接点を模索し見つけた「理想の仕事」とは