2015年の記事だけれど、示唆にとんだ内容なので紹介してみたい。
1000人に1人しか入社できない狭き門のグーグルでは、大卒資格を有した社員は半数しかいない、という点がクローズアップされて、こんな記事にもなっていたりする。
(まあ大学を卒業する前にビジネスの場で活躍してしまって、卒業を待つ意味がなくなって中退したような超優秀な人たちということなんだろうけれど)
僕は、これらの記事の内容を企業の人事に活かすために、重要な点は一つだと考えている。
それは「人間」を見ること。
たとえばラスズロ・ボック氏が紹介している内容に、自己評価の高い男性は有害だが、自己評価の高い女性は有能だ、というものがある。それはそれぞれが育ってきた社会環境がステレオタイプにどのような行動を求めるようになったのか、ということを前提として考えなければいけない。単純に日本でも、自己評価の高い男性が有害、というわけではないかもしれないし、自己評価が高い女性が有能ではないかもしれない。
しかし、データに即して仮説を置き、実際に人の行動を見ていけば、まちがった思い込みは排除できる。
昨日僕はグロービスで授業を行いながら、それぞれの受講生が考える有能なリーダーについて語ってもらった。
その中で30代くらいの男性がこんな話をしてくれた。
「女性のリーダーのもとで働いていますが、とても有能な方だと感じています」
それはなぜ?と僕は聞いた。
「女性らしさ、というか、とても調整力が高くて、部下として仕事のやりやすさをいつも確保してくれます」
なるほど、それはたしかに。
「さらにこの方は、実は時短勤務をされています。みんなより1時間早く帰るのですが、それは1時間早いというだけではなく要は残業をしない、ということです。それでも、僕たちはこの人の下で働きたい、と思えるので、本当に優秀だと感じています」
他の受講生たちが「それはすごく優秀な人だ」という雰囲気になる中で、僕はいじわるな質問をした。
「それって『女性だから』って関係ないんじゃ?」
みんながハッとした感じになったので僕は続けた。
「気づくべきは、『女性なのにすごい』『短時間勤務なのにすごい』と感じてしまうことで、『自分とは違う』と思考放棄してしまう可能性があるということ。性別とか働き方じゃなくて、どんな行動がリーダーに求められるか。どんな行動を真似すればリーダーになれるのか、という点に気づかないといけない。だから人を『ラベル』で見ることは楽だけれど、その思い込みから卒業するようにしましょう」
性別とか学歴とかの「ラベル」(経済学的にはシグナル)で人を判断することはとても楽だ。日本で血液型占いが定着しているのも、それが一種のラベルとして機能しているからだろう。
考えてみれば、僕たちのまわりにはいろいろなラベルがある。
ラベルは端的に人を把握するのに役に立つ。
けれども、長く付き合っていく人に対してはラベルを外した状態で相対した方がよい。
それは言い換えるなら、人を見る軸を自分の中に持つということに他ならない。
企業の人事も、優秀な大学卒だから、ではなく、彼はFランク大学だけれども弊社がもとめる行動を高いレベルでとってくれるだろう、という自信を持った判断ができるようにならなければいけないということだ。
その確率がとても低いから、ついついラベルを活用してしまうのだろうけれど。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
※この記事は平康慶浩のブログ「あしたの人事の話をしよう」http://hirayasu.hatenablog.com/ 2016年10月9日掲載分を転載したものです。