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昨今話題のジェネレーティブAI「ChatGPT」。
当社は業界でもいち早く、ChatGPTを活用した機能開発に着手。5月にはAI契約審査プラットフォーム『LegalForce』に新しく「条文修正アシスト」機能を搭載し、オープンβ版の提供を開始しました。
他に類を見ない速さでオープンβ版としてお客様へお届けできた理由を、コアメンバーとして抜擢された期待の若手、渡辺と黒田に語ってもらいました。
渡辺 凌央(わたなべ・りょう) PdM / ソフトウェアエンジニア
大学卒業後、DeNAに入社。複数のサービス開発にフロントエンドエンジニアとして携わる。2022年1月、LegalOn Technologiesに参画。フロントエンドエンジニア、プロダクトマネージャー(PdM)兼務。
黒田 佑太(くろだ・ゆた) PEM / ソフトウェアエンジニア
東京大学卒業。新卒で都内のIT企業に入社しWebやスマホアプリ開発に従事。年間MVPを歴代最速で受賞後、2021年7月にLegalOn Technologies参画。Product Engineering Manager(PEM)、バックエンドエンジニアを兼務。
プロジェクトにコアメンバーとして抜擢された渡辺(写真左)と黒田(写真右)
OpenAIがChatGPT公開から3ヶ月後、CEOの即断で動き出したプロジェクト
― 2023年5月30日、AI契約審査プラットフォーム『LegalForce』で条文修正アシスト機能のオープンβ版がリリースされました。
まずはその機能の概要を教えてください。
渡辺 『LegalForce』は、契約書を読み込ませるだけで、瞬時にAIが見落としや抜け漏れなど、契約書に潜むリスクの発見を支援してくれるプロダクトです。
今回の条文修正アシスト機能では、大規模言語モデル(LLM)を活用することで、『LegalForce』に読み込ませた契約書の内容を一定程度反映した文案を表示することができます。
― プロジェクトの発端はどのようなものだったのでしょうか?
渡辺 もともと米国の子会社でChatGPTをプロダクトに搭載することを検討しているという動きがあって。
CEOから「リーガルテックのリーディングカンパニーとして、われわれがいちばん最初にプロダクトに搭載しよう」と迅速な機能搭載の意思決定がなされました。
それからすぐに当時の『LegalForce』開発責任者から、「二人にこのプロジェクトを頼みたい」と、僕と黒田さんがアサインされたという流れです。
黒田 さらにその後のキックオフで、「ChatGPTを活用して条文の修正案を提案してくれるような機能を作りたい」というざっくりした構想を聞きました。
2月半ばのことだったと思います。
― なぜお二人がアサインされたのですか?
渡辺 当社には 「We Take Ownership.(オーナーシップを持ち、変化を楽しむ。)」 というバリューがありますが、主体的に動くことを期待されていたのかもしれません。
二人とも、ハードスキルだけでなく、ソフトスキルも兼ね備えていてマルチで動けるので、その点の信頼はアサイン当時から高かった印象です。
そのような雰囲気のお言葉をアサイン当時にいただいたのも覚えています。
― 今回の機能開発における、二人の役割を教えていただけますか?
渡辺 私はフロントエンドとPdMを担当しました。
とはいえ、最終的にはロールに縛られずにプロダクトに対して全方位で向き合うかたちになりました。
顧客ヒアリングにも行きましたし、Figmaでモックアップも作りましたし、合間にコードも書きました。
さらに関係各所との橋渡しもしました。プレスリリース関係は広報、特許関連は知財、その他社外の弁護士先生ともやり取りを重ねましたね。
黒田 私はバックエンドとPEMを担当しました。 バックエンドとしては要件定義から設計、実装まで一通り。
PEMとしては仕様策定からリリースまで、顧客に価値を届けるための工程である「デリバリー」全般に関わりました。
OpenAIの検証用アカウントの準備、インフラやバックエンドのリードエンジニアとのプロダクションレディネスレビュー※、障害発生を事前に防ぐためのプリモーテムの実施、セキュリティホワイトペーパーの更新などです。
※プロダクトが運用可能な品質を保っているかを評価するプロセス。
― プロジェクトメンバーの全体像を教えてください。
黒田 コアメンバーは私と渡辺さんの2名で、フロントエンドエンジニア、デザイナー、QAエンジニアの3名を他の機能開発と兼務で加え、総勢5名で開発を行いました。
渡辺 エンジニアではありませんが、生成されたアウトプットを確認してもらうために、社内の弁護士の方にも手伝っていただきました。
設計から実装までわずか2週間強。超短期間でなぜ開発できたのか?
― キックオフ後のおおまかな流れを教えてください。
黒田 リリース日から逆算し、まずはスケジュールを確認し仮説検証から始めました。
条文修正アシスト機能のいちばんの肝は修正案の妥当性と正確性なので、開発初期から弁護士の方に入ってもらい、徹底的に検証しました。
お客様に利用いただける機能として提供ができそうだというめどがたったところでプロジェクトメンバーをアサインし開発を進行。お客様のニーズをいちばん把握している営業への相談も並行して行いました。
― 実質、機能開発をしていたのはどのくらいの期間ですか? だいぶ短かったと思うのですが……
渡辺 3月中旬から4月中旬くらいまでなので4週間くらいでしょうか。かなりの爆速ですね(笑)。
黒田 設計が2週間くらい。実装が2週間ちょっとくらいでしたよね。
― そこまでの早さで開発を実現できた理由はなんだと思いますか?
黒田 いちばんは組織力だと思います。最初の意思決定からの進行がものすごく早かったです。
動き出してからも、社内の各専門家の方々とスムーズに連携できたことも要因です。
みなさん忙しい中、タイトなスケジュールの依頼にも本当に快く力を貸してくれました。
渡辺 CEOや開発責任者が「最重要プロジェクト」だと明言して、それが各部署に伝わったのも大きかったですね。
僕が各所に相談に行った時も、「ChatGPTの件ね」とすごく話が早かったです。
後はとにかく毎日2人でコミュニケーションを取り続けたことです。
毎日同じ時間に黒田さんと、「今何が問題か」「何に時間を費やすべきか」など、現段階における課題と優先事項を常に明確にしていました。
― 振り返ると、コアメンバーがお二人だけというのはよかったと思いますか?
黒田 そうだと思います。
時間的制約がある中で関わる人の数が多くなると、いい面もある一方でコミュニケーションコストがかさんでしまうこともあります。
最小限のメンバーで素早く意思決定をしたことが、早期のリリースにつながったと思います。
渡辺さんにすごく助けてもらったことも大きかったですが。
渡辺 他のプロジェクトも並行して走っていたため、このプロジェクトにリソースをあまり割けなかったという社内事情もありますが、結果的にアサインも良かったと思います。
正直、黒田さんとだからやり遂げられたな、という思いもあります。
初めて一緒に働くことになったのですが、ものすごく息があって。
コミュニケーションがボトルネックにならず、しっかりとこのプロジェクトに向き合えました。
情報を常に二人のどちらかが把握している状態だったので、別の部署への返答も早いですし、コアメンバー外とのコミュニケーションもスムーズでした。
ChatGPTのAPIを活用した開発。そこで得た大きな自信
― 一般的に、ジェネレーティブAIは正確性が担保できない点が課題として挙げられますが、プロダクトに組み込むに当たって特に対応した点はありますか?
渡辺 そうですね、どうやって正解に近い回答を引き出すか、というのは開発を進める上でも大きな課題でした。
ですから社内の弁護士の方に見ていただいて、提示される修正案が法務実務上で使えるクオリティのものなのか、徹底的に評価してもらいました。
社内の弁護士5、6名くらいで総出で評価してもらったと思います。
黒田 実際にお客様に使っていただく際には、ChatGPTの特性をご理解いただいた上で使っていただけるよう、同意書にサインをいただいた方のみ利用できるようにしています。
さらに使用時には、
「AIを用いて条文の修正案を作成できます。修正案の内容はお客様による判断が必要です。修正前の条文をもとに作成します」
と表示させ、生成された文章は人間の判断が必要である旨を入れています。
― ジェネレーティブAIを組み込んだ機能開発で、他の開発と異なる苦労はありましたか?
渡辺 自分たちでコントロールできない部分がある点ですね。
ChatGPTに質問した際に中で何が行われているのかは、こちらでは把握できません。
得られる結果のコントロールも難しいです。
こちら側でできることは、良い回答が表示されるように質問(プロンプト)の精度を上げていくこと。
ここについてはかなり社内でも工夫しました。
黒田 新しい技術なので、開発に関する情報が世の中に少ないという点で苦労しました。中でもセキュリティに関する情報で公開されているものはほとんどなく、調べても情報が出てこない。
セキュリティの専門家に相談もしましたが、やはり新しい領域ということで専門家の方も苦労されているようでした。
ジェネレーティブAIに対して、プロンプトインジェクションというAIの脆弱性をつく攻撃があります。
機能搭載を考える上で、その攻撃への対策を立てなければいけません。
探しても対策がないなら自分たちで見つけるしかないと、試行錯誤を重ねセキュリティ対策しました。
具体的には、自分たちでプロンプトインジェクションのテストケースを作って実行し、攻撃が成功しないことを確認する。それを繰り返しました。
後日談ですが、自分たちで考案したのと同じセキュリティ対策が、「Learn Prompting」という海外のプロンプトエンジニアリングの学習サイトに後から掲載されました。
― 機能が出来上がっての第一印象はいかがでしたか?
黒田・渡辺 生成された修正案が良いものなのかわからなかったというのが正直な感想です(笑)。
渡辺 でも社内の弁護士の方々に見ていただいたら、「これは使えそう」と言われて。
これ以上うれしい言葉はないなと、そこで初めて良い機能が開発できたという実感がもてました。
黒田 弁護士の方々は、みなさん高度な専門知識を有するプロフェッショナルです。
そういった方々が使えると感じたのなら、これはもう間違いないな、本当に使えるものができたんだなと思えました。
― 条文修正アシスト機能の開発を通して学んだこと、得られた気づきなどを教えてください。
渡辺 今回、本当に社内全部署と関わったなと思うくらい多くの方とコミュニケーションを取らせていただきました。
「こんな短い期間でこんないい機能が開発できるなんて、われわれはプロフェッショナルの集団だな、いい会社だな」と実感しました。
到底二人では成し得なかったことなので、関わってくださった多くの方々へ感謝しています。
黒田 抽象度の高い状態でアサインされたプロジェクトをリリースまでもっていけたことが、大きな自信になりました。
次々に発生するタスクに対応しながら開発を進めていくのは困難なことでしたが、それでも短期間でお客様に価値をお届けするところまでたどり着けたのは、大変貴重な経験でした。
― 条文修正アシスト機能をどんな方に使ってもらいたいですか?
渡辺 法務に携わるプロフェッショナルの方々に活用していただけたらいいなと思っています。
そういった方々であれば、忙しい中で、最新技術を活用した契約審査業務の効率化と品質の両立をさらに感じてもらえるのではと考えています。
使っていただいて、反応を伺えるのが今から楽しみです。
― 今後国内の法務領域でChatGPTの活用が広がっていくと予想されます。今後の動向にも目が離せませんね。本日はありがとうございました!
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