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「母の背中を押せたように、子どもたちの人生の選択を後押ししたい」複数業界を経験した彼女が、カタリバに至るまで

大学の理系学部卒業後、Web広告代理店、予備校、資格取得…といった20代を過ごし、カタリバへ入職。

現在、カタリバが都内で運営する子どものための居場所にて、高校生向けの学習・進学のサポートやインターンやボランティアの採用業務を担当する柳本千種(やなぎもと・ちえ)にフォーカスし、なぜ今NPOを、そしてカタリバを選んだのか。彼女の真意に迫りたいと思います。

―大学卒業後、Webの広告代理店、予備校とキャリアを積み、カタリバへ。キャリア選択の中でどのようなきっかけや軸がありましたか?

一社目は広告代理店で勤務していました。実家住まいだったのですが、家庭の事情もあり母に精神的な不調が出てしまったことがありました。大晦日に、ぽろっと「ここから飛び降りたらどうなるかな」と口にしたことがあったんです。私は母が大好きだし、兆候に気づいていたのに見過ごしてしまったら一生後悔することになる。なんとかしなければいけないと思い、ひとまずファミレスに連れていきました。

ファミレスではいろんな話をしました。もう必死に。そのなかで「お母さんは制限がないとしたらこの先どんな人生を送りたい?」と聞くと、「もう一回ピアノ教室をやりたい」と答えてきました。「いいね。やるんだったら、どんな教室にしたい?」「じゃあいつまでにやりたい?」と具体的に話を膨らませて、「じゃあ、今どうしたらいいかな?」と。母のなかに答えはしっかりとあったんですよね。「家を出なきゃいけない」と。

幸いなことに、その後母は自分の周りの環境を変えることができました。あの時の私の行動は、今思えばカウンセリングですよね。そして、母との経験をきっかけに自分の人生を見つめ直すようになりました。「母は自分の人生を自分で選べたけど、私はちゃんと選べているのだろうか」と。

Webの広告代理店へ入社した時は「一緒にいてワクワクできる人がいるところで働きたい」という想いがありました。しかし、もっと違う価値観が自分のなかに生まれている気がして、転職を決意しました。

―自分の中で生まれた「新しい価値観」とはどのようなものでしたか?

昔から私と話すことで「スッキリした」「救われた」と言ってくれた人がいたことを思い出したんです。「もっと知識を身につけて、誰かの人生の選択を後押しするような人間になりたい」と思うように。転職エージェントの紹介の中から予備校に転職を決めました。

―思い切った決断ですよね。そこからカタリバに至るまでどのような経緯がありましたか?

予備校勤務時は「キャリア教育」にすごく関心があり、ダイレクトに関われる環境で働きたい気持ちは持ち続けていました。29歳のときに一念発起し、「もっと自分の人生と向き合おう」と予備校を退職。派遣社員として働きながら、国家資格のキャリアコンサルタントを取得しました。資格取得の勉強を通じて、自己分析もはかどるだけではなく、情報収集力も上がっていました。その中でカタリバと出会うことになりました。

ー選考段階で、放課後施設への配属を希望されていましたが、その理由を伺いたいです。

さまざまな事情で予備校に通うことが難しい生徒たちの力になりたかったことが理由です。予備校勤務時代、年間1〜2組の親子が家庭の事情で受験をあきらめる姿を見てきて、彼らはあくまでも一角に過ぎないのだろうなと感じていました。だからこそ、予備校で働いていたことで培った受験対策に関するノウハウを、ここで生かしたいという想いがありました。

ー現在の業務内容を教えてください。

主に2つの業務を担当しています。1つはインターンとボランティアの採用、もう1つは高校生の学習・進学サポートを行っています。

高校生の学習・進学サポートは、2021年にスタート柳本が勤務するカタリバの放課後施設。勉強やおしゃべりなど、子どもたちは思い思いに時間を過ごす。ばかりのプロジェクトで、もともとは現場スタッフの課題感からスタートしました。せっかく第一志望の高校に入学できたのに、たとえば「勉強を頑張ることってダサい」というような周囲の雰囲気にのまれてしまい、「その日が楽しければいい」とある意味刹那的な生活を送る生徒が見られたりすることがありました。私が所属する拠点は元々、中学生向けのプログラムを中心としていたのですが、彼らが中学を卒業した後の様子を見ていたスタッフたちから、サポートしたいという声が上がるようになり、高校生の学習・進学サポートプロジェクトが発足しました。


ーまだまだスタートして間もないプログラム。成果を実感するのはどのような時ですか?

大きく分けて2つのパターンがあります。

ひとつは、やる気はありそうだけど家庭の事情などで進学に消極的になっている生徒に、私が培ってきた受験戦略や奨学金などのサポート情報を提供することで「大学に入学できるかもしれない」と現実感が芽生えたとき。大学進学はゴールではなく、未来のための通過点に過ぎないことを感じてもらえると、すごく嬉しいです。そういった感情の変化によって、その生徒の高校在学中の生活も大きく変わるので。

私が大切にしているのは「言い切る」ということ。「私はどれだけ勉強しても大学には合格できない」と先入観を抱いている生徒に対して「今これだけ成績を残せているなら、あと2年間は入試配点の大きい科目に注力すれば充分に狙える。この団体の奨学金を使って、アルバイトすれば学費も問題ない」とデータなどを使いながら熱量を込めて話します。すると、明らかに目の色が変わる瞬間があるんです。

もうひとつは、将来を迷っている生徒に対して夢中になれるものを提供できたとき。やりたいことがないので進学を含めた将来の選択肢を考えられない生徒も当然います。彼らに対して、日々夢中になれることを提供できた時に成果を感じます。

最近では、将来をぼんやりと考えていた生徒が、別のスタッフが企画したプログラミングの授業に参加したところすごく夢中になったことが。授業が終わるたびに「こんなことをやったよ」と楽しそうに教えてくれました。「プログラミングに関係する仕事に就きたい?」と聞くと「いや、まだわからないけど(笑)」という反応なのですが、夢中になって取り組めるものが見つかったことは大きな出来事だったと思います。

ー嬉しい変化ですね。受験勉強の最中に置かれている生徒との接し方はどのようにされていますか。

できていることに目を向けられない生徒が多いのが現状です。なので、ちゃんと「できているよ」と言葉で伝えるようにしています。

模試の成績が落ちてしまった生徒に対しては単純に全体の数字だけを語るのではなく、教科ごとに原因を究明し、改善策を一緒に導き出します。そしてネクストアクションにまで落とし込むと、「あ、そうか!」と明るい表情に変わります。

受験勉強は孤独だし、しかもこの後の人生を左右するという大きなプレッシャーがあるので冷静に判断しづらい状況。だからこそ、客観的なアドバイスに努めたいと考えています。もしかしたら第一志望に合格できないこともあるかもしれないけれど、最後までモチベーションが途切れずにやり切る経験を積ませてあげたい。のちのち振り返ったときに「あの受験が結果としてよかった」と思ってもらえるような。


ー学習・進学サポートの中で、今後どのような子どもたちを増やしていきたいですか?

自分の人生を自分で選んでいる感覚を持つことができる子供たちを増やしていきたいですね。世の中には多くの選択肢があること、そして自分自身に掴み取る権利があることを伝えていきたい。長い人生、10代のうちにその感覚を得られたら幸せじゃないですか。子供たちが自分の人生と向き合うきっかけをつくっていきたいと思います。

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