どうも、インビジョンCCO(最高顧客責任者)の石井です。
こう見えて人材業界は23年目。求人募集や採用マーケティング、コンサル・組織づくりなどなど、、7000社くらいの企業さんのご支援をしてきましたので、採用についてはそれなりに自信があります。社内では、鍵屋(一般的には経営企画)・勘情屋(一般的には財務・経理)・扇屋(一般的にはマーケティング)といった部門をメインにメンバーマネジメントをしていますので、ひととおり育成についても経験してきました。
ウチのメンバーはみんな優秀なので1人でも業務を進められるはずなのですが、1on1では毎回何かしらの相談を用意してきます。そして後日、「アドバイスのおかげで上手くいきました!」と報告をしてくれます。これは、秀吉が毛利軍の備中高松城を水攻めしている際、あえて信長に華を持たせるために援軍を要請したのと同じ作戦だと思っています。
そんなこんなでひととおり採用やら育成をやってきた中での永遠の命題。
採用が先か?育成が先か?について考えてみましたので、コラムとしてご紹介します。
青い鳥探しの採用神話
自分は求人広告の営業をずっとやってきたので、いろいろなケースを目撃してきました。わかりやすくイメージを持ってもらうために、極端な例を2つご紹介しますね。
社員を総入れ替えしたい社長
これは、15年ほど前の話。従業員数十数名のある会社の社長さんに求人媒体の提案で訪問した時の話。営業のセオリーに沿ってヒアリングから入ります。
石井:「社長、いつまでにどのポジションを何人採用したいのですか?
社長:「あのさ、社員全員入れ替えたいんだよ。」
予想外過ぎる返答に驚きつつ、その理由を詳しくうかがうと、メンバーが”使えない”ので、全員辞めさせて新規で採用したいとのこと。
(”使えない”のは、御社内の育成の問題では?)
という言葉をグッとおさえて、モヤモヤした気持ちを抱えながら求人の提案をしたのを覚えています。
この社長さんの考えでは、「採用が先」ということになるわけですね。
いつまで経っても”受け入れ準備中”の社長
2つ目のエピソード。ホームページからお問い合わせをいただいて訪問したある会社の社長さんのお話。
採用を考えているということで、いくつかの求人プランをご提案。ご検討いただくことに。しばらく経ってご連絡を入れると、「まずは、今いる従業員を先に戦力化しないと」ということでもう少し待ちます。それからさらに数週間後、社長はまだ「受け入れ準備中」とのことで求人掲載は始まりません。結局、「育成に専念する」ということで、採用は見送ることに。
こちらの社長さんの考えでは、「育成が先」ということになるわけですね。どちらの社長さんの気持ちもわかります。インビジョンでも同じようなことは何度も経験してきました。
採用か?育成か?のドッチボール
インビジョンは2024年4月で設立から16年を迎えました。当然今まで採用か育成か、二転三転しながらやってきたわけです。詳しいエピソードはこちらの書籍でも紹介されているので、気になる方はお読みいただけますと幸いです。
採用 ●<<< 育成
火起屋(一般的な会社でいう人事)を筆頭に採用ブランディングを強化。ホームページもリニューアルして世界観を全面に打ち出します。採用基準としてビジョンや価値観への共感を重要視。価値観のあう仲間が増えれば、きっと自走してくれて成果は出るはず。
そう考えて、採用したメンバーを現場に配属。そしてOJTをメインとした育成へ。ただ、今振り返ればOJTという名の丸投げ。。。各自が作ったメモのようなマニュアルを見ながら、「やりながら覚えてね♪」
というムチャブリ具合。当然安定した成果も出るはずもなく、残念ながら離脱してしまったメンバーもいます。ここから、採用か?育成か?のドッチボールがはじまります。
採用 >>>● 育成
せっかく入社してくれたメンバーには活躍してほしい。自走してもらうまでには伴走期間が大切だ。ということで、入社後のオンボーディングプロセスを整えて育成ロードマップも作成。これだけ万全の体制を整えれば、どんな人でも一人前になれるはず。
そんな期待を込めて研修や育成に力を入れるけど、そこで新たな問題が発生。
自信を持って用意した研修。だけど、受けているメンバーがなんだか浮かない表情。1on1の時間にそれとなく理由を聞いてみると、
「・・・すみません、正直こういう仕事だと思っていませんでした。。。」
そう。価値観を重視しすぎた採用をしてしまったため、実際の仕事内容の説明が甘かったり、スキル面でのミスマッチが起こります。採用基準がバグっているんじゃないか?価値観への共感も大事だけど、もっとビジネスリテラシーの高い人を採用しないと!
そして、再びボールは育成から採用へ。
再び、採用 ●<<< 育成
スキルと仕事理解を深めた採用をおこなうために、入社前のインターン(職場体験)期間を設けることに。
この取り組みはとても上手くいきました。既存のメンバーと同じ職場で、数ヶ月一緒に仕事してもらうことで仕事理解と価値観理解は深まり、そして実際にやってみて「合わない」とわかった人は、お互い納得した上で入社を見送ります。
もちろん、入社後のオンボーディングも継続。育成ロードマップもこなしながら現場へ配属。入社前からすでに業務経験があるので、ある程度の成果はスグに出ました。良かった、と思ったのも束の間。新たな違和感が生まれます。
それは、一定レベルまで達すると伸び悩むメンバーが続出します。その要因を追求した結果、社会人として重要な「基礎スキル」の不足ではないか?という話に進みます。
そこで、またまたボールは育成へと戻されます。
またまた、採用 >>>● 育成
「基礎スキル」とは何か?聞いたことある方も多いと思いますが、経済産業省がまとめた12個のスキルのことです。
インビジョンではこの社会人基礎力に近い考え方で、3つのテーマ・5つの基礎意識・60個のスキルを定義しました。
各メンバーごとに、目標とは別に基礎スキルを高めるための取り組みを設定してもらうという目標としました。
やっとこれで一巡。長きに渡った、採用⇔育成のドッチボールも終わりつつあります。
採用も育成もどっちも大事だね、と。しかし、結局、「採用が先か?育成が先か?」という疑問の結論は出ていません。社内での経験を踏まえ、もう少し考えてみる必要がありそうです。
人事戦略の要件定義
採用か?育成か?というのは、タマゴが先か?ニワトリが先か?という議論と同じ。結局、時と場合によって優先順位は変わります。じゃあ、明確な順番はないのか?というと、そんなことはないはず。
となると、考えられるのは・・・前提が違うのではないか?
つまり、問いの立て方が間違っているのではないか?
そこで、今までとは違った角度から3つの問いを立ててみます。
会社のど真ん中とは何か?
多くの人は「会社のど真ん中」なんて考えたこともないと思います。ど真ん中とは中心、コアとなる部分。
ということは、ど真ん中こそ会社で一番”先”に取り組むべき課題である可能性が高いわけです。
では、「会社のど真ん中」とはいったい何か?
この問いに対して考えてみます。わたしたちインビジョンは、企業や地域のおダシ屋。おダシとは、自然とにじみ出てしまう”らしさ”のこと。近い言葉で表現すると、会社の価値観とも言えます。そこで、インビジョンでは、会社のど真ん中は”おダシ”=価値観であると定義します。
チームの心技体は何か?
そして、2つめの問い。育成の場面で活用している心技体のフレームワークをチームに当てはめて考えてみます。
「チームの”心技体”とは何か?」
まず、心。心とは会社の”ど真ん中”、すなわちおダシ=価値観ですね。
次に、技。技とは、わたし石井がCCO(最高顧客責任者)として担当している領域、つまり顧客戦略。
最後に、体。体とは、チームをつくるための人事戦略。
リクルートでも人事戦略と経営戦略がリンクしていることが重要であると言われています。
▼【参考】シートX:1枚で語り切る経営戦略と人材・組織戦略
https://www.works-i.com/project/kpi.html
そこに、インビジョンが大切にする”価値観”を加え、3つのバランスがとれているチーム・組織が、良いチームであると考えます。
チームの心技体というフレームワークを踏まえたうえで、最後の問いへ。
人事戦略の要件定義は何か?
3つめの問い。
「人事戦略の要件定義は何か?」
要件定義は主にシステム開発などで使われる言葉。求められる条件(要件)の内容や意味を、他と区別できるように明らかにする(定義)という意味を持ちます。そして、要件定義した内容をメンバーで共有するために”要件定義書”があるわけです。
では、チームの心技体、それぞれの要件定義書とは何か?
心=価値観の要件定義書は・・・ブランド方針書
技=顧客戦略の要件定義書は・・・経営計画書
体=人事戦略の要件定義書は・・・人材ポリシー
この3つの要件定義書がそろえば、どのような順番で何をおこなえば良いか全社的な共通認識を持つことができます。要件定義さえできてしまえば、あとは基本設計→詳細設計→実装→テスト運用→保守と順番に進めていくのみ。
採用でも育成でもない。まず価値観から始めよう!
ここまでお読みいただき、「採用が先か?育成が先か?」問題に結論を出したいと思います。ずばり・・・
採用でも育成でもない。まず価値観から始めよう!
ということ。
採用か?育成か?どっちつかずになってしまっている会社さんは、自社のど真ん中=価値観があいまいであったり、あるいは価値観が社内に浸透していなかったり、なんてことはありませんか?
インビジョンでは自社の要件定義から始めて、人事戦略をイチから見直すお手伝いをしています。そして、このダシトレはそんな価値観を社内に言語化して浸透していくことを伴走するツールでもあります。
少しでも興味をお持ちいただけた方は、お話できることを楽しみにしています。
最後までお読みいただきありがとうございました。