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Wantedly Journal | 仕事でココロオドルってなんだろう?

Special

進路に悩む学生たちに、「キャリアのつまみ食い」という選択肢を。

ロバート キャンベル×仲暁子「令和の就活」対談(前篇)

2019/10/21

「シゴトでココロオドルひとをふやす」をミッションに掲げるウォンテッドリーが、雑誌『Pen+』への全面的企画・編集協力のもと制作した学生向け就活・キャリアムック、『1冊まるごと、令和の就活』。その巻頭を飾る対談では、日本文学者であり国文学研究資料館長を務めるかたわら、様々なメディアで活躍中のロバート キャンベル氏と、ビジネスSNS「Wantedly」を運営するウォンテッドリー株式会社のCEO、仲暁子による対談が実現しました。

20代というかけがいのない時間をどう過ごし、どのように仕事と向き合っていくのか。就活ルールの撤廃で早期化する就活戦線を、学生たちはどのように戦い抜くべきか。親世代に聞いてもわからない「令和の就活」のあるべき姿について両者がじっくりと意見を交わした対談を、『Pen+』編集部の転載許可のもと2回にわたってお届けします。

仕事は辛いもの? それとも楽しいもの?

仲:本日はお忙しい中、対談を引き受けていただきありがとうございます。

キャンベル:こちらこそ。この本は、就職活動中の学生に読んでいただくための本なんですよね。

仲:はい。「令和の就活」というのが大きなテーマで、ベンチャーや大手企業で活躍している先輩社員へのインタビューを通じて、いざ社会に出る前に自分の中のキャリアのものさしについて見つめ直してもらうための内容になっています。巻頭を飾るこの対談では、これから仕事の世界へと飛び出す学生へのメッセージをお伺いできればと思っています。

キャンベル:責任重大ですね(笑)。

仲:私自身、研究者である両親の背中を見ながら仕事観を培ってきたので、日本文学の研究者であるキャンベル先生からもきっと貴重なご意見をたくさん聞けるのではと期待しています。

キャンベル先生は、研究者のお仕事以外にもテレビやラジオなど、メディアでのお仕事もされていますよね。私は、アカデミックな世界の中と外では仕事というものに対する捉え方が大きく異なるのではないかと思っているのですが、実際に、異なるフィールドを行き来しながらお仕事をされるのは大変ではないですか?

キャンベル:僕の一日、一週間というものはもともとオンとオフの切れ目がはっきりしていないんですね。たとえば文部科学省で会議があり、そのままテレビ局に行って生放送に出演して、研究所に戻ってスタッフを集めてブレインストーミングをしたり作業をしたりします。これは研究者に共通する仕事のリズムだと思いますが、何時に出社して何時に帰るというパンチカードのような仕組みがなくて、喜怒哀楽のサイクルもだいたい仕事の中にある。だから、仕事は私にとって呼吸をしているような状態ですね。

ときに仲さんは、エチオピア料理をお召しになったことはありますか?

仲:エチオピア料理はちょっと記憶にないですね。

キャンベル:そば粉で作った大きなクレープのようなものの上に、いろんな素材、肉や野菜を置くんですね。その下に敷いてあるクレープを手でちぎりながらくるんで食べるんです。僕の仕事はちょうどそんな感じです。

仲:いくつかの仕事にわかれている、ということでしょうか。

キャンベル:わかれてはいるけれどひとつで、テレビ局で大事なことと大学で大切なことは同じ社会ですから基本には一緒です。でも微妙なところがやはり違っています。僕は、別の場所を行ったり来たりするのが資質としてそんなにストレスにならないということにある時点で気付いて、そこからは少し意識して、みんなにとってそれが良い方向に向かうように仕事をしています。

仲:ストレスにならないというお話だったんですけれど、仕事が充実していると、それが傍目にはどれだけ忙しく映ったとしても苦しいとは感じないものだったりもしませんか?

キャンベル:そうですね、仕事終わりのタクシー内で一人になるときに思わずぐたっとするようなこともありますが、苦しいかと言われればそうではなくて、むしろ楽しい。そもそも、仕事が楽しいか苦しいかという問いかけは欧米的な発想であるとも言えます。

産業革命以降、労働と余暇の時間が切り離されていくにつれ、欧米社会では苦と楽が分離していきます。でも元々日本には苦楽という言葉があるように、苦と楽はメビウスの輪のようにつながっていると考えられてきました。楽しさの中に常に苦痛が頭を出そうとして待ち伏せしている。だからそれに備えて自己啓発をする、自己研鑽をするという考えが明治までの日本にはあったんです。

仲:ある意味、これからはテクノロジーの発展によって「仕事は辛いもの」という産業革命以降の発想自体がなくなっていくのかもしれませんね。人間がやらなくてもいい仕事は機械が代わりにやってくれる時代になることで、人は純粋にクリエイティブな仕事に打ち込めるようになる。つまり、そう遠くない未来において、仕事をすること自体がラグジュアリーになると私は考えています。

キャンベル:そうですね。私たちが慣れ親しんだ「労働」のイメージは過去のある特殊な状況において成立したもので、これからの時代には適さないものになっていくでしょう。働き方にまつわる議論が盛んになっている今だからこそ、学生のうちから働くことについてより広い文脈の中で捉えてみるのも面白そうです。

仕事のやりがい、どう見つける?

キャンベル:この間、パーソル総合研究所の調査結果を見て驚いたのですが、日本では管理職を目指したいという人の割合が2割程度で、アジア14カ国では最下位です。自己研鑽の意欲も職場への満足度も最下位で、それなのに「何歳まで働きたいか」という質問への答は63.2歳で、日本が一番高い。働くということに対する非常に興味深い調査結果だと思うのですが、仲さんはこの数字をどのようにご覧になりますか?

仲:ここ数年の働き方改革で日本人の意識がめまぐるしく変わってきているので一概には言えませんが、日本人の仕事への期待値を示しているという意味では興味深いデータだと思います。日本はガラパゴス化しているというステレオタイプ的な見方がありますが、実際のところ他国と比べて大きな差はないだろうと思っていた中、やはり仕事にまつわる捉え方ではかなりユニークなのだなと。

キャンベル:個々の事項については、いろいろな社会的要因を絡めて考えることはできますが、トータルで見ると、職というか働くことに幸福とか自己実現を見出そうとしていない、あるいは見出せないでいる人たちが特に若年層で多いと感じます。管理職になること自体を仕事に対する目的にするべきだというわけではないですが、自らが意思決定に携わる機会が増えれば増えるほど、仕事は創造性に富んだものになります。ただ与えられたタスクをこなすだけでなく、自らがそのオペレーションを組み立てたり、その改善のために創意工夫を凝らしたりね。

管理職を目指す日本の若者が少ないというデータを改めて見てみますと、仕事の福音というか、仕事というのは突き詰めてみればどこまでも創造的な行為なんだ、そして創造性を発揮するために自己研鑽を重ねる意義のあるものなんだ、という気づきがこの国には足りていないように思えます。

仲:それこそ私がWantedlyというプラットフォームを立ち上げた理由です。私自身、子どもの頃には満員電車にぎゅうぎゅう詰めになって運ばれている大人の姿を見て、自分もいつか同じようになるのかと思うと怖いなと思っていました。ですが、キャンベル先生のおっしゃる通り、仕事は自己実現のための場であるべきです。

ウォンテッドリーは「シゴトでココロオドルひとをふやす」というミッションを掲げていますが、それを言い換えてみれば産業革命以降の「仕事は時間を切り売りするもの」という価値観の中に飼い慣らされることなく、自分の使命を果たすために時には時間を忘れて仕事に没頭するような大人を増やすということでもあります。

キャンベル:没頭するためには何が重要だとお考えですか?

仲:人は結局、自分が情熱を持って取り組むときに一番パフォーマンスを発揮できると思います。しかも現代はイノベーションのサイクルが非常に速いので、いま知っていることが2年後には陳腐になって意味がなくなっているケースも多い。だから最新動向にキャッチアップし続ける能力が大事で、そのためには、のめり込んでいるから人に言われなくてもやる、ということが大事なんですね。

キャンベル:なるほど。ただ、何に情熱を持ってのめり込めるかが、わからないケースもありますね。

仲:そうなんです。突然、野に放たれて「さあ、好きなことを見つけなさい」と言われても、わからない学生もいます。そこで色々と試してみることが大事で、実際に食べてみないとそれが好きか嫌いかがわからないじゃないですか。それでつまみ食いをする期間が必要で、アメリカにはインターンシップという制度があります。日本の場合は学業と就業が断絶していると言われますが、アメリカでは大学1年生の時から毎年、長期休暇にインターンを経験して、自分のキャリアが学業とどう接続するのかを認識することができます。

手前味噌になりますが、私たちのアプリを使っていただいてインターンシップを経験することで、時給いくらのアルバイトではなく、社会人としての働き方を経験することが学業にもフィードバックされます。卒業した後もいろいろとつまみ食いすることで、何が本当に好きなのかがわかる。

キャンベル:大学1年生、2年生の段階でもウォンテッドリーのアプリを使うことはできるのですか?

仲:できます。何よりも今では経団連がルールを変えて、就活をスタートするタイミングが自由になったので、学生のキャリアに対する向き合い方もより欧米に近くなっていくと思います。

<後篇に続く>

『1冊まるごと、令和の就活』について

就活ルール撤廃により、令和の就活・インターン事情はどう変わる? ベンチャー・大手企業で活躍を続ける総勢32名のビジネスパーソンたちが、「1社目とその後」に歩んだキャリアとは?...... 「20代と仕事」にまつわるすべてを総力特集するPen+『1冊まるごと、令和の就活』が、全国の書店、生協や、オンラインで大好評発売中!

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Interviewee Profiles

Akiko Naka
Founder, CEO, ウォンテッドリー株式会社
Akiko Naka is founder and chief executive officer of Wantedly, a social-networking service for professionals. Following its official launch in February 2012, Wantedly grew to 3mil users and 40,000 corporates, and has become the leading professional social-networking service in Japan. Prior to founding Wantedly, Ms Naka was a growth co-ordinator at Facebook Japan, where she contributed to marketing and product development for Facebook in Japan. Before joining Facebook, she worked at Goldman Sachs in equity sales. Ms Naka graduated from Kyoto University in 2008 with a BA in economics. 京都大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。退職後、Facebook Japanに初期メンバーとして参画。その後、現ウォンテッドリーを設立しビジネスSNS『Wantedly』を開発。2012年2月にサービスを公式リリース。ウォンテッドリー設立後、人と人が繋がることにより、個人の可能性を最大限広げるサービス作りに取り組む。
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