オフィスを縦横無尽にぷーらぷら。
部署や役職に関係なく、いろんな人に話しかける。
しかしタイミングが悪く、声をかけたメンバーにスルーされてしまうことも珍しくない。
自称「チーフスルーされるおじさん」の西田 貴彦(にしだ たかひこ)は、2019年の12月に株式会社wevnal(ウェブナル)へ中途入社。
ジョインから9ヶ月後の2020年9月には、共同創業者の3名以外で初となる、4人目の取締役に任命されました。
監査法人などに務めた前職までの経験を生かして、当初はCFO(最高財務責任者)を担う構想で入社しましたが、現在はDX事業部のビジネス領域にて、セールスやマーケティング、カスタマーサクセスなどを含めた総勢約30人のメンバーを統括しています。
wevnalの経営陣4名に、このたび刷新されたミッション・ビジョン・バリューに込めた意図や、wevnalへの想いなどについてインタビューする連載企画。
第1回はwevnalに新しい風を吹かし続ける異端児が、その号砲を鳴らします。
(聞き手:DX事業部 マーケティング担当 藤本)
このまま組織が拡大したら「組織が崩壊しちゃうからね(笑)」
━━今回のミッション・ビジョン・バリュー(以後、MVV)の刷新は西田さんからの提案だったと聞いているんですけど、そもそも西田さんが以前のMVVを初めて見たときはどんな印象を持ったんですか?
西田:すごく内向きだなって感じました。ぼくがwevnalのMVVを初めて見たのは転職活動のタイミングで、実際に面談や面接などで詳しく話を聞くと、意味としてはとても好きだなと思いました。
ただ、前のミッションの「人の可能性と情熱に投資し、世界を次のスタンダードへ」にしても、ビジョンの「スゲェ会社」にしても、外から文字だけを見たときには、どんな社会を実現したいのかやwevnalの存在意義などは、伝わりにくかったですね。
━━西田さんにとっては最初の印象として、以前のMVVにはそこまで共感しなかったんですね。それにもかかわらず、wevnalへ入社しようと思ったのはどうしてですか?
西田:ぼく自身は「MVVへの共感」よりも「誰と一緒に働くか」を大事にしているからです。あと、入社したもう一つの理由は、入社前に自社のチャットボットプロダクト「BOTCHAN(ボッチャン)」を触って経営陣と話をしたときに、このプロダクトと経営陣の皆さんとであれば、新しいMVVを紡ぎ出すことができると感じたからですね。
wevnal創業者の3名。左から前田、磯山、森元
西田:ただ一方で、働く環境を選ぶにあたって「MVVへの共感」を重要視する人も一定いる事実はあるので、入社した直後から経営陣の3名に対しては「MVVを変えた方がいいと思います」って話はしてました。あと「採用」って観点だけじゃなくて「組織を引っ張る」という観点でも、MVVに対する解釈の幅が広すぎると、事業の推進力が落ちてしまうんですよね。
経営陣の皆さんは「メンバーそれぞれのスゲェがあればいいんだよね」って話をしてくれて、もちろんメンバー間で100%完全に同期する必要はないです。ただ、一定以上みんなが同じ方向を向けるようなMVVに変える必要があるなとは思っていました。
━━入社直後から以前のMVVに対する課題感を抱えていたなかで、今回、実際にMVVを刷新したのはどうしてなんですか?
西田:ひとつの大きな要因は、ぼくたちが将来的な上場を目指すなかで、いまが組織が大きく変わろうとしているフェーズだと感じたからです。上場するということは、要は完全な「社会の公器」になるということなんですよね。
西田:ただ、もし例えば上場した時点でまだMVVが内向きで解釈もバラバラだったら、株主と絶対にケンカしまくるし、社内でもみんなが違うことを言うと思います。そうなると、組織が崩壊しちゃうからね(笑)
パブリックな会社への方向性をより加速させる一手として、MVVを外向き且つ明確なメッセージに変える必要があるなと思いました。
━━MVVを変えることに関して、創業者の3人はどんな反応でしたか?
西田:「まあそうだよね」という反応でした。今回、MVVを刷新したのは「変えるべきタイミング」であったと同時に「変えられるタイミング」でもあったからなんですよね。3年前くらいから提供し始めた「BOTCHAN」の開発や改善を続けるなかで、組織として少しずつ「テクノロジー」に注力する合意形成が図れてきた。
経営陣、特に代表の磯山さんが他の多くの経営者と話をするなかで、「どんどん外を向いていかなきゃね」っていう目線の方向性が合ってきたなと感じていて。「変える必要があったし変えられるタイミングになった」というのは、そういう意味ですね。
「気合で何とかする」からの卒業
━━次はMVVの具体的な中身について聞いていければと思います。今回、新しいミッションが「人とテクノロジーで情報を紡ぎ、日常にワクワクを」、ビジョンが「コミュニケーションをハックし、ワクワクするユーザー体験を実現する」となっていますよね。両方に「ワクワク」という言葉が入っていることが、印象に残りました。
西田:企業が世の中に対して何らかの価値提供をするときの種類って、大きく2つに分けられると思っていて。ひとつが何かを「効率的にできるようにすること」で、そしてもうひとつが何らかの「楽しさを提供すること」。
西田:そう考えたときに、wevnalがこれまで大事にしてきたカルチャーとしては、圧倒的に後者の「楽しさを提供する」だよねとなりました。「ワクワク」という言葉そのものにこだわりがあるというよりは、「楽しさ」という価値観を大事にしていますね。
━━「ワクワク」や「楽しさ」に関して言うと、正直、現状のBOTCHANってユーザーに対して「便利さ」は提供できているものの、「ワクワク」にまでは至ってないと思うんですよね。ビジョンの「ワクワクするユーザー体験を実現する」というのは、具体的にはどのような世界を描いていますか?
西田:一言で言うと、「オンラインとオフラインとの差分をなくす」ってことをやりたいです。現状、オンラインで何かを買い物をするときって、多くの人が「欲しいものを探して探して、ようやくたどり着いた・・・」という感覚だと思っていて。
西田:そこを例えばリアルの店舗で感じられるようなワクワクする体験を、オンラインでも実現したいなと思っています。二次元と三次元の違いがあるので、ハードルが高いのは理解しているんですけど。あと、この「ワクワク」って社会に対してだけじゃなく、いまwevnalで働いているメンバーのみんなにも、大事にしてほしいんですよね。
━━どういうことですか?
西田:大前提、働いている中の人たちがワクワクしていないと、社会や顧客に対してワクワクなんて絶対に提供できないと思っていて。それに仕事って、人生の中で大きな時間の割合を占めるじゃないですか。
西田:もちろん「お金のため」と割り切って働くやり方もあります。ただ、ぼく個人的にはどうせ働くならその時間をワクワクしながら過ごしたいし、皆さんにも過ごしてほしいんです。
もちろん、ここでのワクワクっていうのはいつもヘラヘラしているみたいな意味ではなくて、「大事な場面での踏ん張り」とか「苦しい中でも楽しさを見出す」とかって意味でのワクワクですね。
━━MVVの最後は、バリューについて聞きたいです。新しい4つのバリューがもちろん全部大事なんですけど、その中で西田さんが個人的にこだわったバリューってありますか?
西田:「Professional(プロフェッショナル)」ですね。ぼくがwevnalに対して感じていた課題のひとつは、「気合で何とかする」って文化で。
西田:もちろん課題であると同時にそれはwevnalの良さでもあるんですけど、「気合で何とかする」は課題解決のひとつの手段に過ぎないので、そこに固執し続けるのは良くないのかなと。
これまでの10年で「気合」っていう手段は充分に身についたので、新しい課題解決の方法を増やしていくにあたって「Professional」はひとつの大事な要素になるなと思っています。
「あの3人以外だったら、いまのカルチャーは作れていなかった」
━━ここからは、会社全体の今後の方向性というよりも、もう少し西田さん個人の考えや想いに焦点を当てたお話を伺います。まずはwevnalにジョインするタイミングでのお話に関して、インタビューの前半で「誰と一緒に働くか」を重視すると言っていたんですけど、それはwevnalだと創業者の3人がやっぱり大きかったですか?
西田:そうですね。ぼくがwevnalを好きな理由のひとつに「人が良い」ってことがあって。これだけ人に対して興味があって、これだけ素直で、これだけみんなで協力してやっていこう!ってメンバーがたくさんいる会社は、すごく珍しい。
ぼくはこれまで子会社も含めると7社くらいで働いてきたんですけど、これだけ人が良い会社、なかなかないです。それで、例えばですけど創業者の3人がすごくクソな人たちだったら、人の良さが組織としての強みになるなんてこと、絶対にないと思うんですよね。
━━そうですね。人の良さとその源泉が創業者3人にあるというのは、ぼくもすごく感じます。
西田:3人のうち、1人が全く別の人だったら、もしかしたらいまのwevnalよりも大きな規模とか売り上げとかには、なってたかもしれないです。ただ、いまのこのwevnalのカルチャーはあの3人だからこそ築けたものだし、逆にあの3人以外だったら作れてないなと思いますね。
━━西田さんのwevnal、そして創業者3人への想いがすごく伝わってきました。
西田:めっちゃケンカもするけどね(笑)
━━え、そうなんですか。
西田:ぼくがめっちゃ文句を言ううえに意志が強くて、こだわりのある意見はなかなか曲げないんですけど、経営陣の皆さんも意志が強いので。組織や事業の方向性で価値観が違うところに関しては、めっちゃケンカしますね。月に1回くらいは経営陣の誰かしらと本気のケンカして、その度に会議の空気がすごいことになります(笑)
━━そうだったんですね(笑)。ただ、それくらい会社に対して本気で向き合っている西田さんが去年、入社からたった9ヶ月で取締役になったのは、自然な流れだったのかなと思っていて。では次に、その打診をされた当時の心境について聞きたいです。
西田:言葉に詰まりましたね。「え?」って。その後に「俺?今?」とも思いました。正直に言って、最初は受けるかどうか迷ってましたね。ぼくは基本的に、身軽でありたいんですよ。取締役になったら、いろんな意味で重くなることは簡単に予想できたので。
━━受けるかどうか迷ってた時期があるのは意外でした。
西田:ただ同時に、めちゃくちゃありがたいなあとも思いました。だって冷静に考えて、いままで10年間、3人が中心になって会社を引っ張ってきたのに、そこで入社していきなりいろんな意見をしてくるヤツがいたら、嫌だと思いますよ。ぼくが逆の立場だったら、絶対にムカつくもん(笑)
でもそこで、3人がぼくを取締役として迎え入れてくれた理由って、「西田が異質だったから」だと思っていて。こんな面倒くさいぼくを受け入れてくれる経営陣の3人にはめちゃくちゃ感謝しているし、これからwevnalが成長し続けていくためには、ぼくは組織にとって異質な存在であり続ける必要があるなと思っています。
「マネージャーになりたいです!」「は?」
━━「経営陣にもガンガン意見する」以外で西田さんを異質たらしめる理由のひとつに、「気づいたらオフィスをぷらぷらして、いろんな人と話してる」ってのがあると思います。
西田:ぷらぷら男やってますね。たまにすっごい集中してるメンバーに話しかけてしまって、スルーされることもありますけど(笑)
━━ぷらぷらはどういった目的でやってるんですか?
西田:あえて部署や役職に関係なくいろんな人から話を聞くことで、そこから浮かび上がってくる組織での共通の課題を抽出することを意識してます。
さっきの「身軽でいたい」って話ともつながるんですけど、ぼくは特定の部署や役割に縛られるよりも、組織全体で見渡したときに必要なことに対して、その場でピュッて動いて解決しにいきたいんですよね。
たまに身軽に動きすぎて、社内の人たちから怒られることもあるんですけど(笑)
━━たしかに、怒られていますね。
西田:だから評価面談とか1on1とかで、「マネージャーになるのが目標です!」って言うメンバーがいると、けっこう本気で「は?」って返しちゃう。それは目標じゃなくて手段だろと。「役職は役割」って認識を間違うと、組織として終わってしまうので、そこは強く意識していますね。
━━いまこのお話を聞いて、西田さんが最初CFO候補として入社して管理部の部長まで務めたあと、この2021年の4月からはガラッと変わって事業部サイドでセールスやカスタマーサクセスの統括を担っていることって、実はめちゃくちゃ筋が通っていたんだなと思いました。一番大事なのは、「何が組織にとって最善か」ってことなんですね。
西田:そうですね。だからもし他の経営陣3人が「西田がいない方がwevnalにとって最善だ」と判断したなら、いつでも切ってくださいと伝えてます。「ただし、1ヶ月前には言ってくださいね」っていう言葉とセットで(笑)
━━「組織にとってそれが最善ならwevnalを去る」って覚悟は、入社当時から変わってないんですね。入社直後のインタビューでも「wevnalの成長に自分の成長が追いつかなかったら辞める」と言ってたので。
西田:ああでもね、「自分から辞める」っていうのは止めました。
━━あ、そうなんですか。どうしてですか?
西田:とある尊敬する経営者から言われた言葉が、きっかけですね。ぼくがその経営者の勉強会みたいなものに参加していて、そこでぼくが「自分の描く理想は、10年後にwevnalが成長し過ぎて、もう自分はついていけないので辞める状態です」って話したんです。
そしたらその経営者の人から「10年後に自分がついていけないようになったら辞めるやつが経営陣にいたら、そもそもそんな成長できなくない?経営陣がMVVの達成イメージと、絶対に達成するぞって強い思いを持ち続けないと」と言われて。
「たしかに。組織を引っ張っていかなきゃいけない立場の人間が、そんな考え方じゃダメだよな」って思いました。それ以来、「自分から辞める」という選択肢はなくしましたね。
大変だったことも尊敬しているところも「変わる」こと
━━では最後に、西田さんから見た創業者3名への想いと、今後wevnalの中で担っていきたい役割について伺いたいです。
西田:取締役になって一番大変だったことは、やっぱり経営陣の皆さんに資本市場における競争原理などを念頭に置いた、思考や行動をしてもらうところですかね。
これまで10年、外部の株主を入れずに自己資金と融資だけでやってきて、しかも売り上げ数十億、インターンや外部の業務委託の方も含めると約100人規模の組織にまで成長させるっていう成功を収めている。そういった前提があるなかで、その根底にある思考やマインドを変えることは、3人自身にとってもすごく大変なんです。
━━たしかに、やってきた時間の長さはもちろん、それで成功してきたっていう自信もありますもんね。
西田:でも逆にぼくが3人を強く尊敬しているポイントのひとつが「伝えたら変わる」ってところで。もちろん大前提として、ぼくの言っていることが毎回100%正しいなんてことはないですよ。
そのうえで、ぼくの提案した内容に対して「そうだよね」と判断したら、それまでのやり方や成功体験を捨てて、変わろうとする。ここは本当にすごいなって思いますね。
━━西田さんと創業者3人、そういったお互いの信頼関係が根底にあるからこそ、意見が違うときには本気でぶつかりあえるってことですね。では最後に、西田さんが今後wevnalで担っていきたい役割について教えていただけますか?
西田:その時々で、wevnal全体にとって必要なところへ柔軟に動けるような、異質な存在ではあり続けたいですね。
それが組織や他の経営陣から期待されている役割だと思うし、ぼく自身、他の人と同じところに立って同じ仕事をするってやり方は、つまらないなと感じてしまうので。
組織全体の課題を抽出するためにも「チーフスルーされるおじさん(CTO)」として、これからもぷらぷらしていきます(笑)
wevnalの経営陣4名に、このたび刷新された新しいミッション・ビジョン・バリューに込めた意図や、wevnalへの想いなどについてインタビューする連載企画、第1回はここまでです!
第2回では、常務取締役の森元へのインタビュー記事を公開いたします。
また、wevnalでは現在、様々なポジションで採用を強化中です!
今回インタビューに登場した西田がビジネス領域の先頭を走りながら、自社のチャットボットプロダクト「BOTCHAN」の事業はどんどん拡大しています。
一緒にBOTCHANのプロダクト作り、事業のグロースをしていくことに少しでもご興味のある方は、ぜひ下記の募集をご覧ください!