成果が止まるチームに足りないのは「Why」か 「How」か
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こんにちは、夏のアドベントカレンダー1日目担当の 執行役員 VPoE の要 (@nory_kaname )です。
開発組織のマネジメントやチーム運営を通じて日々感じていることをもとに記事にしました。リーダーシップとマネジメントの違いは、書籍的な理論にとどまらず、実際の現場でどのように活きるかをまとめています。
リーダーシップとマネジメント。ビジネスシーンで頻繁に登場する言葉ですが、その違いを正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。「リーダーシップが求められる」「マネジメントが甘い」といった表現はよく聞きますが、それぞれが何を指し、どう機能しているのかを正確に説明するのは難しいものです。
現代のビジネス環境では、変化のスピードが早く、チームも多様化しています。その中で成果を出し続けるには、リーダーシップとマネジメントのどちらか一方では足りません。両者の違いと補完関係を理解し、自分の状況に応じてどちらを発揮すべきか判断できる力が重要です。
本記事では、それぞれの定義・特性・役割を解説しながら、現場でどう活かすかのヒントを提示します。
目次
現代のビジネス環境におけるリーダーシップとマネジメントの重要性
リーダーシップとは
マネジメントとは
リーダーシップとマネジメントの違い
リーダーシップとマネジメントの相互補完性
実務におけるリーダーシップとマネジメントの交差点
まとめ
現代のビジネス環境におけるリーダーシップとマネジメントの重要性
VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代と言われるように、今のビジネス環境は非常に複雑で変化に富んでいます。組織の中では新しい方向性が求められる一方で、確実な成果を出すための安定運営も同時に求められます。このような環境下で必要とされるのが、リーダーシップとマネジメントのバランスです。両者はしばしば混同されがちですが、実は役割も機能も異なります。
リーダーシップとは
リーダーシップとは、組織やチームに方向性を示し、メンバーの内発的動機を引き出して共に進んでいく力のことです。その本質は、「なぜこれをやるのか」という意義を言語化し、周囲を巻き込みながら変化を促すことにあります。未来像を描き、そこに至る道筋を提示する力、人の感情や価値観に働きかけ、やる気を引き出す力、そして組織を動かす説得力と信頼感、こうした力が、現代のリーダーには求められます。特にイノベーションや変革、あるいは危機的状況のように、チームの行き先が揺らぐ局面では、「なぜやるのか」を語れる存在が必要です。
ウォンテッドリーにおいても、OKRのObjectiveを設計する際には、単なる目標設定にとどまらず、チームが進むべき方向とその意味づけを明確にし、共有することが重視されています。Objectiveが「目指す姿」であるならば、それをどう伝え、どのようにチームの共感を得るかは、リーダーの役割であり責任でもあります。
共感とは感情的なつながりだけを指すものではありません。リーダーに求められるのは、チームの実情と照らし合わせながらビジョンを語り直し、状況に応じて意味づけを補強し続ける姿勢です。それは単なる意志表示ではなく、「意義を伝える責務」としてのリーダーシップの核心であり、実行されるべき日々の行動なのです。
マネジメントとは
一方、マネジメントとは、決めた方向性を、組織として安定的に実行する力のことです。目標を達成するために計画を立て、役割分担を明確にし、必要なリソースを適切に配分しながら、進捗を管理していく。この一連のプロセスを支える力が、マネジメントの本質です。具体的には、計画力によって目標達成までの道筋を描き、組織化の力でチームに機能的な構造を与え、そして統制力によって進行状況をモニタリングし、必要に応じて軌道修正していく。こうした地道な運営の積み重ねが、確実な成果に直結していきます。日々のプロジェクト運営を担うマネージャーや部門長のように、安定した業務遂行が求められるポジションでは、特にこのマネジメント力が問われます。状況に応じた調整力や、現場のボトルネックを特定する構造化の力もまた、実務上不可欠な要素です。
ウォンテッドリーでは、OKRのKR(Key Result)を活用して、目標に対する進捗を定量的に可視化し、日々のスプリントや定例ミーティングでレビューを重ねることによって、チーム全体の足並みを揃える仕組みを築いています。マネジメントは、こうした日々の「見える化」と「安定運用」の中で、チームの信頼を積み上げていく営みでもあります。
リーダーシップとマネジメントの違い
リーダーシップとマネジメントの違いは、次のように整理できます。
リーダーシップは「Why」に訴え、マネジメントは「How」を支える。この両輪がうまく機能してこそ、組織は目標に向かって前進できます。
リーダーシップとマネジメントの相互補完性
ここで強調したいのは、リーダーシップとマネジメントは対立概念ではなく、補完関係にあるということです。どちらかだけが強くても、組織は健全に機能しません。
例えば、ビジョンを語るリーダーがいても、その道筋を整え、進捗を支えるマネジメントがなければ、絵に描いた餅になります。逆に、管理能力が高くても、進むべき方向が示されていなければ、組織は迷走してしまいます。ウォンテッドリーでは「リーダー」という役割を明確に設けており、Squad Leader や Chapter Leader に対して、マネジメントとリーダーシップの両面が求められています。Objectiveで示された方向性と、KRで管理される進捗をつなぐ中間成果の見極めが、リーダーとマネージャー双方の協働によってなされています。
特にリーダーに求められるのは、方向性を与えることへの責任の自覚です。ただビジョンを語るだけではなく、それがチームの現実と接続されているかを確認し続けること。それが、リーダーとして果たすべき責務のひとつです。
実務におけるリーダーシップとマネジメントの交差点
たとえば、Squad 運営をしていると「ビジョンを語るだけでは動かない」「定例でKRの進捗が空転する」といった状況に何度も直面します。 あるケースでは、KRを定義したものの、その先にある目的や背景をチームと共有しないままスプリントを開始し、メンバーが納得しきれていない状態で進行が続いていました。メンバー自身による意味づけの努力は当然期待されますが、チームとしては、意味を双方向で補い合う設計が不十分なまま進んでいたと言えます。
その結果、スプリントレビューのたびに「何のためにこのタスクをやっているのか?」という問いがチーム内で繰り返され、進捗の検証よりも認識の再確認に時間を割く場面が目立ちました。この状況を受けて、Objectiveの文言や粒度を再定義し直し、KRが指す成果のアウトカムを明確に再設定しました。これにより、メンバーが日々の行動の意味を捉え直し、KRへの納得感と実行力が徐々に回復していきました。
このように、組織が成果を出すためには、形式的に整ったKRや論理的に正しいObjectiveではなく、「意味と行動が接続された状態」を意図的に設計・維持していくことが求められます。
まとめ
本記事では、リーダーシップとマネジメントの違いについて、定義・特性・アプローチの観点から整理してきました。まとめると:
- リーダーシップは変化を起こす力。ビジョンを示し、共感で人を動かす。
- マネジメントは安定して成果を出す力。計画を立て、実行を支える。
- どちらか一方では足りず、状況に応じた使い分けが重要。
あなた自身のチームや業務に照らして、いま自分がどちらを意識的に発揮すべきか、見直してみてはいかがでしょうか。
参考文献・参考資料
- ハーバード・ビジネス・レビュー編集部(2021)『リーダーシップ論文ベスト10』
- ジョン・コッター『リーダーシップ論』
- Mintzberg, H.『マネージャーの仕事』
- スライドショー「リーダーシップとマネジメントの違い」