バリュエンスでは、社員の可能性を引き出し、より強い組織をつくっていくことを目的に、マネジメント力の強化に取り組んでいます。このコーナーでは、エンゲージメントが高い組織やメンバーの育成に力を入れているマネージャー層にフォーカスして、参考になるマネジメントスキルやアイデアを共有していきたいと思います。
バリュエンス的ナイス・マネジメント
バリュエンスホールディングス株式会社 執行役員 兼 人事部 部長の大西 剣之介が、思わず「それイイね!」と口にしてしまうマネジメントをしているマネージャー層にインタビュー。人事の立場から、皆さんにも参考にしてほしいマネジメント手法を解説していきます。また、バリュエンスが推奨する「伴走型マネジメント」と、社員の成長を支援する職場風土についても紹介します。第三弾は、販売本部 オークション事業部の溝口さんにお話を伺います。
溝口さんプロフィール
バリュエンスジャパン株式会社 販売本部 オークション事業部 部長 溝口 麻友
キャリア :2014年1月入社
バリュエンスの好きなところ :常にチャレンジをさせてくれるところ
さまざまな意見を取り入れてくれるところ
「相手の立場に立って考える」オークション事業部長が語るマネジメントの心得
大西:はじめに、溝口さんの部署 オークション事業部について教えてください。
溝口:オークション事業部には、国内販売課、オークション推進課、プレミアム事業課の3つの課があります。30人以上のメンバーが所属しており、各課で役割は異なりますが、オークションの企画・運営・営業を担っています。
大西:オークション事業部の部長として、大きな組織をまとめる上で、特に心がけていることはありますか?
溝口:一番意識しているのは、相手の立場に立って考えることです。もうそれに尽きると思っています。以前は、自分の意見や考えだけで突っ走る傾向がありました。しかし、それでは組織がうまく機能しないことに気づき、「自分が相手の立場だったらどう思うか」を考え、一度相手の意見を受け入れる姿勢を持つようにしています。
大西:どのようなタイミングで、そのような意識の転換をされたのですか?
溝口:私は昇格するのにけっこう時間がかかったタイプで、マネージャーになる前からいろいろと試行錯誤をする中で気づきました。事業への深い理解と成果を出す事への自信はありましたが、組織をどうしたら良くしていけるのかという部分では、課題を感じていました。分かりやすく言うと、業績評価はいいけれど、行動評価は悪かったんです。どうしたらより良い組織にしていけるか、徹底的に考え抜いた結果、「相手の立場に立って考える」というところにたどり着きました。そしてそれを実行していくうちに、自然と評価され、キャリアも前進していったという感じです。
大西:行動が評価されていなかった時代があったというのは意外でした。そこにご自身で気づかれて、行動が変わり、役職が上がり、今があるということなんですね。
溝口:そうですね。行動の軸を明確にすることで、自分自身の成長にもつながりましたが、各メンバーの意識と組織の方向性を一致させられることにも気づきました。会社全体の行動評価軸も、昨年、バリュエンサー※1の皆さんが頑張ってくれて、バリューマインド※2に合わせて刷新されましたよね。社員にどんな行動が求められているのか、非常に分かりやすく明文化されているので、メンバーとMBO面談するときにも活用しています。
※1 バリュエンスを“理念で動く会社”にするために、全社横断プロジェクト発足
参考記事:https://www.wantedly.com/companies/valuenceinc/post_articles/906383
※2 企業が進化し続けるために必要な「組織文化」とは?社員と共に創った理念体系
参考記事:https://www.wantedly.com/companies/valuenceinc/post_articles/885407
大西:理想的な使い方をしてくださって、ありがとうございます!
メンバーとのギャップを埋める鍵は「行動評価軸」
大西:頑張っているのに評価されていないと悩んでいるメンバーもいると思うのですが、そんな時は、どのようにアプローチされていますか?
溝口:モチベーションが低下しているときは、思考の在り方がネックになっていることが多いのではないかと思っています。できない理由を考えてしまい、成長が鈍化してしまっている。ありきたりかもしれませんが、できない理由ではなくて、「どうしたらできるか」の方を考える、それだけで結果が全く変わってくるので、そういう気づきを与えられたらと思ってコミュニケーションをしています。それこそ、行動評価軸を丁寧に紐解きながら話すこともあります。自身の評価とマネージャーからの評価にギャップが生まれたときには、そのギャップが何かを話し合い、率直に向き合います。目線を合わせ、認識のずれを埋めていくことで、メンバー自身が自らの課題や成長の方向性を見出せるようサポートしています。
大西:メンバーとの目線合わせを大事にされているんですね。評価やフィードバックはメンバーのモチベーションに直接影響するのでマネージャーにとっては最重要業務といっても過言ではありません。そのうえで、意識されていることはありますか?
溝口:配慮が大事だと思っています。例えば、評価面談の際に、上長からの評価は必ずMBO面談の時に対面でお話するようにしています。システム上で先に評価を保存しておくこともできるのですが、そうしてしまうと、結果を知ってから説明を受けるまでの間にタイムラグが生まれてしまいます。自己評価と上長評価に差があると、面談までの間にメンバーが不安を募らせ、負のスパイラルに陥る可能性があると思います。そのため、評価は面談の場で直接フィードバックし、間違った受け取り方にならないよう心がけています。
大西:言葉が足りないと誤解を招くこともありますよね。そうならないように、丁寧にケアされているのは素晴らしいです。「思いやり」とか「配慮」がキーワードですね。 溝口:そうですね、そうありたいと思っています。でもまだまだ、日々反省しながらやっています。メンバーとの1on1を定期的に行っていますが、「あの言い方は控えるべきだった」など日々振り返って、次回は表現を工夫しようとか、常に模索しています。マネジメントにゴールはないと思うので、日々学びの連続ですね。
シゴトを任せることで生まれる、「メンバーが成長するチャンス」
大西:マネジメントには業績、組織、人材という大きく3つの側面がありますよね。多くのマネージャーは業績管理に追われ、メンバーのメンタルやパフォーマンス向上のためのフォローが十分にできないことで悩んでいる人が多いと思います。溝口さんのお話を聞いていると、人材のマネジメントに力を入れられているように感じますが、このバランスをどのように取られていますか?
溝口:私自身、マイクロマネジメント※の傾向があると思っており、それを自分の弱点と認識しているので、意識的に「介入しない」ということを心がけています。※部下の行動を細かく管理し、業務や計画を厳しく統制するマネジメント手法
大西:前回のナイス・マネジメントインタビュー※3で武川さんがおっしゃっていたことにもつながる部分がありますね。
※3伴走型マネジメントの醍醐味はメンバーの“成長”
参考記事:https://www.wantedly.com/companies/valuenceinc/post_articles/912085
現場のことを良く分かっているからこそ、難しい部分もあるのではないかと思いますが、マイクロマネジメントにならないようにどんな工夫をされているのでしょうか?
溝口:そうなんです、現場経験が長いので、業務の詳細がわかります。そのため、シゴトを振ろうとしても、相手がつまずきそうになる点を想像してしまい、うまく任せられない時期がありました。一人でシゴトを抱え込みすぎて身動きが取れなくなっている時に、本部長に「メンバーの成長するチャンスを奪っている」と言われて、はっとしました。今は、シゴトを任せることで、メンバーが新しいことにチャレンジできる機会になると考えるようにしています。メンバーにも「これはあなたの成長のチャンスになる」と伝えながら、大変かもしれませんが頑張ってもらっています。
大西: 「任せる」というのも一筋縄ではいかないですよね。下手をすると丸投げになってしまいます。相手の成長につながる任せ方のコツはありますか?
溝口: 私も完璧にできているわけではないので、自信を持って言えるわけではありませんが、しっかりと進捗確認をすることを意識しています。もし、煮詰まっている点があれば、すぐに答えを出すのではなく、「どうやったらいいと思う?」と問いかけ、コーチング的なアプローチを心掛けています。遠回りに見えても、それが結局は近道になると思っています。
大西: 単にシゴトを振るだけでなく、その後のフォローの仕方や関わり方で、丸投げされた感を与えないようにしているということですね。業績を意識すると具体的な指示を出して、いつまでによろしく、というようなコミュニケーションが効率的に感じるかもしれないですが、しっかりとメンバーの成長を促すことを意識されていて、高度なテクニックですね。
メンバーの「可能性を広げる」任せ方
大西:メンバーの能力を引き出す手法の一つに「ピグマリオン効果」を活用したコミュニケーションもありますね。周囲から高い期待を受けることで、結果として期待に沿った成果を出すことにつながる心理効果を利用したものです。溝口さんのお話を聞いていると、「期待」というよりは「可能性を広げる」という方が近いのかもしれませんが、どのような意識を持って関わり、フォローされていますか?
溝口:そうですね、期待はしすぎちゃいけないと思っています。「期待」には自分の都合とか思いが入ってしまうので、それよりは「相手の可能性」、潜在的な能力をどうしたら引き出せるかという考え方にしています。
また、あえて「任せるね!」と言うようにしています。この判断は自分に任せられていると分かれば、私が信頼していることが伝わると思いますし、そのシゴトへの責任感も強くなると思います。少し懸念材料がある時でも、あえて「任せる」と言ってみて、相手がどのように取り組んでいるかを見守りながらサポートしていくというやり方をしています。
大西:なるほど。可能性を広げるために「任せる」というところがキーワードなんですね。
溝口:思い切って任せることが非常に重要ですね。失敗も成功への糧になりますから。一方で、困ったことがあったらいつでも相談できる存在でいることも意識しています。それは、私の上長にあたる本部長がまさにそうで、常にフラットに相談させてもらえる環境にあり、そのおかげで安心して自分自身の役割に専念できていると感じているからです。私もそういう環境を課長・メンバーに提供していきたいと思っていますし、それが課長とチーフも同じように伝わっていっていると思います。密に相談し合って共通認識ができているので、シゴトを任せやすいですし、何かあってもリカバリーしやすい状況になっているという感じです。
大西:溝口さんと課長の立ち位置が、上下関係というよりも、横並びに近いスタンスなんですね。まさに伴走型マネジメントを体現されているという印象を受けました。
相手へのリスペクトが円滑なコミュニケーションを生む
溝口:ありがとうございます。オークション事業部のマネージャーやメンバーは本当に頑張ってくれているので!一方で、マネジメントをする人に対するマネジメントの難しさを感じています。
大西:そこは課長から部長になると皆さん悩まれるところですよね。課長から部長になると、マネージャーをマネージすることになるので、視座がもう一つ上がります。「具体的に何をすればいいのか分からない」とか、「メンバーマネジメントがうまくいかない」、「任せたいけど任せられず自分でやってしまう」といった悩みを抱える方が多いです。溝口さんは、何か意識されていることはありますか?
溝口:そうですね、やっぱり人と人との関係というところは変わらないと思うので、お互いを受け入れることがとても重要だと考えています。議論しているときでも「なぜこの人は分からないんだろう」と思ってしまうことがあると思います。その時に、分かり合えないと放置するのではなく、その「なぜ」をちゃんと考えることが大切だと思うんです。相手には相手の立場や事情があるので、そこまで考えを巡らせてみると、相手の言動が理解でき、コミュニケーション自体がより良くなっていくと思います。これは『他者と働く』という本から学んだことで、今、社内でも広めているところです。(参考:他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論 単行本 – 宇田川 元一 (著))
大西:相手の立場や役割を尊重することで、コミュニケーション自体もより円滑になっていくということですね。具体的に、相手に伝えることもあるんですか?
溝口:はい、伝えることもあります。例えば、オークション事業部でいうと、オークションの運営は私たちがしていますが、実際の商品準備などはSCM(サプライチェーン・マネジメント)本部の皆さんが担当しています。私たちは業務を通してパートナーの声を直接聞くことができますが、SCM本部の皆さんにはその声が届かないんです。でも、トラブルがあったときは対応する必要があるので伝えられる。単に業務としてシゴトをしているとネガティブな情報だけが届くという状況になりかねません。SCM本部の皆さんが頑張ってくれているからこそオークションが成立しているので、良かった部分やプラスの意見があったことも意識的に伝えるようにしています。相手へのリスペクトの気持ちがあれば自然とできるようになってくると思います。
大西:部署間を超えて、相手の立場になって考え配慮する。さらにそれだけではなく、それを意識的に言語化して伝えている。だからこそ、良いチームワークが生まれ、良いシゴトができるんですね。
思い通りにいかない時こそ、成長のチャンス
大西:最後になりますが、 溝口さんから、マネジメント職を担うメンバーに向けてメッセージをお願いします。
溝口:業務やシゴトを頑張っていく中で、自分の思い通りにいかないことも多々あると思います。ただ、そこには必ず何かしらの理由があるはずなので、その理由を考え抜いてみてください。こういう時こそ、自分自身の成長のチャンスです。ちゃんと向き合えば、何かしらのヒントが見えてきます。また、周りにしっかり頼ることも大切です。自分の考えだけでなく、いろいろな角度から意見をもらうと、より考えがブラッシュアップされてクリアになっていきます。私は、敢えて自分とは全く違う視点を持った人の意見を求めて、部門を超えて、SCMの本部長にも1on1をお願いしています。そういった関係性を広げていけたらいいなと思います。ちょうど今年の3月からメンター制度が導入されましたよね。私も部門を超えて、お役に立てればと思っています。
大西:ありがとうございます。どうすればより良くなるかを徹底的に考えることが大事で、さらに、一人で行き詰った時に頼れる先輩や違った視点をくれる同僚がいるということも非常に大切ですね。
溝口さんのように、これまでやってきたやり方や考え方が通用しなくなった時に、楽しみながら工夫して、変化を進化に変えていくことができる人が、大きくキャリアを前進させていくんだということを再認識させてもらいました。今回は溝口さん流ナイス・マネジメントをご紹介しました。本記事を読んでくださったみなさまのマネジメントスタイルを見つける参考になれば幸いです。
溝口さん、ありがとうございました!