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【代表インタビュー】UDSのこれまでとこれから。

UDS株式会社 代表取締役社長である黒田 哲二が語る、UDSのこれまでとこれから。UDSの事業や強み、今後の取り組みや組織について深掘りしていきます。


◼️プロフィール
東京大学工学部建築学科卒業後、隈研吾建築都市設計事務所を経て、2005年に株式会社都市デザインシステム(現UDS)入社。その後森ビル株式会社を経て、2015年10月にUDS株式会社へ復帰。2020年4月より現職。



運営まで手がける理由


──はじめに、UDSの事業について教えてください。


UDSでは様々な場の企画から設計、運営までおこなっています。企画では、土地から建物の事業性を検証しコンセプトまで考案。建築設計・施工ではそれを実際の形に落とし込み、出来上がった後も運営を続けていきます。

そのスタイルで「住む」「働く」「食べる」「学ぶ」など幅広い事業カテゴリーを手がけています。



──企画から設計、運営まで手がける強みはなんですか。


そのホテルを企画、設計したメンバーと運営メンバーが同じ会社の仲間なので、ホテルのコンセプトを理解し、ホテルに愛着を持った運営メンバーがお客様に接しています。


僕は個人オーナーのお店が好きで、よく行きます。オーナーが考えて、オーナーがサービスしてくれる。もうお店がオーナーそのものじゃないですか。お店を選ぶときには、Aさんという人を目的にしたり、その人が生み出す空気感を求めて行ったりする。愛想は良いけど機械的に接客しているお店に比べると、親近感が湧きますよね。なので運営している人のその場への理解や愛着は大事だと思っています。


またホテルを企画、設計した人とその運営の場に立っている人が近いので、運営の場で日々受け取るお客様の声を企画や設計に届け、それが次のより良い企画、設計ににつながっていくという、良い循環を生むことができます。



──UDSの運営拠点は、コミュニティがキーワードになっていますね。


コミュニティはつくるものじゃなくて、結果として生まれてくる景色です。そのために、お客様をお迎えする運営メンバーが重要な要素であることは間違いないと思っています。


──企画、設計、運営を一体で手がける組織は珍しいと思いますが。


空間ができていない状態で運営の人たちが関わるのは、その分運営前のコストが増えるので普通はなかなか難しいです。運営はずっと続くので手間もかかりますし。

でも、他が運営までやらないからこそ、UDSではそこが強みになると考えて取り組んできました。その仕組みと、そこに共感している人たちが集まってくれたことで独自性を築いて、成長してこれたと思っています。



企画、設計の強み


──企画、設計におけるUDSの強みはどこにありますか。


事業性を踏まえた企画、設計ができることです。自分たちで運営を手がけているので、開業後の運営まで考えた事業収支の組み立てができます。


客室が広ければ広いほどお客さんは満足するかもしれないけど、事業収支を踏まえた時にちょうどいい大きさはどれぐらいなのか。運営がしやすい設計、デザインはなんなのか。UDSは企画・設計・運営をいったりきたりして、ちょうどいい空間を追求しています。


設計の仕事をしている人にはよく「賢い設計だね」と言われます。それは「これくらいの空間だけどちゃんと機能を満たせているんだ」という意味で、とても光栄です。



──企画や設計において重視していることはなんですか。


一番意識しているのは、自分が欲しいかどうか。想定しているお客さまがこういう人だからこういうものつくろうと考えるということだけでなく、自分がエンドユーザーとして欲しいと思えるかをまず考えることを意識しています。


どの施設も担当者の「こんな場が欲しい」という気持ちが柱になっています。由縁は都心型の温泉旅館でありながら、土地の由縁というテーマのもと、土地に合わせて担当者がそれぞれのあったらいいなを考えて形にしているので、同じブランドで共通点は感じつつも、行ってみると全く違う宿泊体験ができるようになっています。



──展開できる事業性もありつつ、つくり手側の余白もあるし、それがユーザー側の楽しみにもなる。


ブランドが目指す方向性など、ある程度のレギュレーションがあった方がより深く考えられる面もあると思います。そういう意味では由縁やSOKIなど、それぞれのブランドコンセプトのもと、各地で展開していくことは面白いなと思っています。



カルチャー


──先ほどの「エンドユーザー目線」という言葉は、社内で一番よく聞きます。どういうカルチャーなのか、実例も含めて聞きたいです。


エンドユーザー目線は、自分がお金を払ってでも行きたいかどうか。例えばONSEN RYOKAN 由縁 新宿で大浴場をつくるか考えた時に、コストをかけてまで温泉を運んできて提供した方がいいのか、議論がありました。



そこでエンドユーザー目線に立った時に、同じような価格帯で同じような客室のホテルだったら、自分だったら箱根から運んできた温泉があるホテルを選ぶよねと。事業性を計算しても、部屋単価でプラス数百円の違いで実現できることもわかりました。


これがもし企画と設計と運営とが別々の会社のプロジェクトだったら企画者が提案しても実現することはかなり難しかったと思います。エンドユーザー目線を追求し、そして企画と設計と運営が一体であることで実現した事例だと思っています。


──クライアントワークでエンドユーザー目線を実現し続けるのは難しくないですか。


クライアントの意向を尊重しながらそれを実現するために、全く新しい方向からの提案をすることもあります。そして、自分たちが「こうしたい」と言うよりクライアントにも「あなたがエンドユーザーだったらどう思いますか」と、一緒に考えていくスタンスをとっています。運営までやっているので説得力があり、UDSがそう提案するならと言ってもらえることも多いです。



──カルチャー浸透の文脈で、今後取り組みたいことがあれば教えてほしいです。


エンドユーザー目線を培う意味でも、みんなにもっといろんなものを見て、体験してもらえる仕組みをつくりたいですね。企画や設計のメンバーだけでなく、運営メンバーも含めてたくさんいろんなところに視察に行ってほしい。


一人一人の引き出しが増えるだけでなく、視察をオープンに共有して、会社のナレッジにもなっていくような仕組みをつくりたいです。


──組織文化の課題はありますか?


以前と比べて「こんなビジネスをつくるぞ」という発想が起こりにくくなっていることでしょうか。実現を後押しする会社であり続けたいと思っているので、「自分が欲しいもの」を実現する仕組みも含めてどんどん追求して提案していってもらえればと考えています。



新たな取り組み


──今後に向けた新たな取り組みはありますか。


最近は、都心部や観光立地にインターナショナルブランドのホテルが増えてきているので、地方での宿泊事業について考えています。都心から1〜2時間ほど離れると良い風景や美味しいものも多い。そういう場所は日本にたくさんあるけれど、観光立地でないと集客が難しいのが現状です。もし地域に良い宿泊施設があれば人が訪れるきっかけにもなります。また同時に地域の課題にもアプローチできるのではないか、と考えています。


まずは由縁やSOKIなど、UDS hotelsを増やしていきたい。そのうえで、新たな仕組みを生み出せないか考え、シニアレジデンスとホテルが複合した事業を構想しています。



事業性の観点で言うとホテルは100室程度の規模が理想ですが、観光立地ではない地方で100室のホテルを成立させるのは難しいところがあります。一方で、若い世代の都市への流出や核家族化が進む中で、地方での高齢者の暮らしの問題はどんどん大きくなっています。高齢化は地方に限らない日本全体の課題ですので、シニア層がよりよく暮らしていける社会を考えて場所について考えていくことの必要性が高まっています。


シニアレジデンスもホテルもどちらも食事も出すしリネンも扱うということで、共通項もあるので、複合させて新しい仕組みとして提案していけないかと考えています。


──具体的な利用イメージはありますか。


いいホテルが併設していたら入居した方の家族や友達も来やすいし、同じ空間で1〜2泊一緒に過ごせる。現状だとおじいちゃんおばあちゃんを介護施設に訪ねていっても、少し話して「また来るね」で帰ってしまうことが多いんです。2泊して同じご飯を食べれば、孫の遊ぶ姿も見れたり、話さなきゃいけないことも忘れずに伝えられる。そういう新しいシニアのための施設のあり方をつくれたらなと思っています。


──未来のエンドユーザー目線ですね。


建物は長く残るので、未来のことも考えないといけない。子供が大きくなった時にも残したいとか、何世代にも渡って残したい環境かどうかを考えながら仕事をしたいと思っています。



──事業における課題はありますか。


事業領域の幅広さを活かし切れていないと思っています。一つのエリアにホテルをつくったら、シェアハウスや学生寮、食堂なども展開できるはず。そこにはまだまだチャンスがあります。そして、その際には、拠点メンバーの生活を具体的にイメージして検討したいと思っています。住むまちとつながって、まちに関わっている実感が持てるようなエリアづくりをしたい。


例えばシェアハウスをつくり、そのエリアで働くメンバーが住めるようにする。一階のオープンキッチンには地元の食材を扱っているお店が来てくれ、調理の仕方を教わりながら、働く拠点で朝食を提供する際にその話をしたりする。


まちとの接点がなく住まいと職場の行き来しかしていないのと、そういった生活では施設の体温の違いが絶対に出てくると思います。



──接客、そして施設がさらにアップデートされていきそうです。


さらに社員が結婚して子供が生まれた時のことを考えると、よい教育環境も用意したい。それは僕らだけでなく、行政を巻き込んでいきながら。親の介護が必要になった時に、仕事をやめなくて済むようにするには、介護や医療機関との連携も必要になります。そうした取り組みをやっていくことで、まちがさらに豊かになっていくと考えています。


ホテルをつくって外から人が来てお金を落としていくことは、地域の経済循環の一つにはなりますが、それだけでは足りません。働く人が働き続けられる環境を整える視点から、よりまちづくりに寄与できる取り組みを展開していきたいと思っています。



組織と採用


──目指す組織の姿はありますか。


自分の拠点や自分の事業を話す時に、嬉しそうにしている人が多いと素敵ですよね。誰かに伝えたくなる話が溢れている会社だといい会社だと思えるし、そういう話をどれだけ増やせるかが大事だと思っています。



──UDSから独立したOB•OGは多い。独立についてはどう考えていますか。


UDSはキャリアのゴールではない。会社で独立を支援していく形があってもいいですし、事業領域を広げる際に独立という選択肢があっても良いと思っています。


──採用ではどんな方に応募してほしいですか。


挫折を経験している人に魅力を感じます。新しいことをやりたかったけどできなかったとか、今までいた場所に疑問を持っている人達は何かしら挫折を経験している。その経験をUDSに来てどう活かすか考えている状態は、すごいパワーになると思っています。


ただおしゃれだからという理由ではなく、自分がどんなチャレンジしたいかが見えていると嬉しいです。



──挫折を経験している人に来てほしいなと思った理由はあるんですか。


自分自身がそうだからです。


建築家になろうと思って設計の仕事をしていたけれど、自分は建築家になるのは難しいなと気づいた。それでも建築に関わりたいと考えるなかで、都市デザインシステム(現UDS)を知って入社し、企画の仕事をスタートしました。


建築をあきらめても、建築に携われる役割を知ったことで救われました。私自身のそうした背景もあり、常に新しい挑戦を応援する会社でありたいと思っています。



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