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『all day place shibuya』ができるまで

宿泊ゲストも渋谷で暮らす人も入り混じり、旅の喜びやコミュニティの価値を感じられる、まちの社交場『all day place shibuya』。この稀有なホテルの成り立ちには、ホテルの起源や新型コロナウィルス感染症の拡大、現代の価値観の変化が関わっていました。



《旅の本質的な喜びとはなにか》

『all day place shibuya』は、2019年に企画がスタートしました。渋谷らしい都市型のホテルをつくろうという話が進む中、2020年の新型コロナウィルス感染症により世界中に大きな変化が起きた中で進めていた企画から一旦立ち止まり、あらためて旅の本質的な喜びを捉え直すことにします。もしこの状況が終息して旅が復活したら?それでもしたい旅ってなんなのか?と、考えを巡らせていきました。



まずプロジェクトのチームメンバーで集まり、これまでの旅行で印象に残ったホテルや楽しかったこと、思い出に残っていることを話し合いました。そこで出てきたのは、ホテルのデザインの話でも有名なレストランでの体験の話でもなく、ふらっと入ったまちなかのバーで出会った地元の人に教えてもらったガイドブックには載っていないお店や、そのまま一緒に連れて行ってもらった地元の人が集まるバーとか、予定にはないハプニングのような、そういった体験ばかりでした。


まちの人が集う場所に飛び込み、そこでのそのまちの日常を楽しむ。そんな豊かな体験が旅の本質なんじゃないか。つくりあげられたものではなく、そこに住む人の日常の風景が旅行者にとっての非日常になることを、ホテルを通して見せていきたいと考えるようになります。



《ホテルの起源》  

旅の本質を捉え直すと同時に、ホテルの歴史を調査。ホテルの起源は、イギリス発祥のパブリックハウスと言われています。今はパブという形で世界中に残っていますが、もともとは旅人も地元の人も集まるビアバーが1階にあり、2階以上が客室になっていました。日本で言えば、宿場町にあった旅籠が近いかもしれません。


旅人はパブに滞在しながら土地の文化を感じ、まちの人と交流し多くの情報を得る。今では様々なガイドブックや情報がありますが、それだけだと得られない情報や体験こそが、旅の喜びの一つになる。そんな情報のハブとしての機能を、施設の構成やデザイン、体験に落とし込もうと考えます。



変わらない「旅の本質的な価値」は、パブから始まった宿の「人と情報から生まれるコミュニティの場」を生み出せたら、自分たちが理想とする旅の姿になるんじゃないか。そこから、「これからの時代のパブリックハウスを作ろう」と企画・開発が加速します。



《まちの合間に、いつもある、いつもの居場所》  

普遍的な旅の豊かさと、これからの時代に求められるホテルの姿を見つめ直して、ブランドコンセプトは、「まちの合間に、いつもある、いつもの居場所」。



渋谷のまちには、アートや音楽、ファッションなど魅力あるコンテンツがあふれています。まちが大きく変わる開発が続く渋谷で、多様なホテルが増えていく中でも、30年後に残っているホテルでありたい。長く続くホテルであるために時代とともに変化するまちの中で、「いつもの場所」として愛着を持ってもらえる場所を目指して作られています。


ホテル全体を通じて、きらびやかな装飾や演出ではなく、自然体で気持ちよく過ごせるようなしつらえにしています。日常の延長のような場所であってほしいという想いをもとに、デザインやサービス、アメニティ、そこで人々が交わる仕組みをひとつひとつ作り上げました。



大切にしたのは5つの要素。
・Effortless:ちょうど良い感覚を大切に、肩肘を張らずに頑張りすぎない。
・Standard:渋谷の日常を楽しむ。旅行者・地元の方どちらにとっても非日常にしない。
・Current:現代にあった価値観を持ち、合理化できる部分を合理化していく。
・True:流行を追わず、本質的な旅の喜びを捉え、移り変わりの激しい渋谷で、長く愛される場所をつくる。
・Playful:日常的でちょうどいい中にも、新しい発見や喜びがある。渋谷らしい遊び心をスパイスに。



ホテル名は、いつもの場所という意味を込めて、『all day place shibuya』に決定しました。



《渋谷の“今の”ホテルをデザイン》  

いまの時代ににあった価値観や渋谷らしい居心地の良さを、館内のデザインや体験に落とし込みました。


UDSとしては初めてスマートチェックイン機を導入。コンセプトに基づいて、テクノロジーで解決できることはあえて合理化し、人だからこそできるスタッフとお客様の対応を優先し、気持ち的にも横並びで会話ができるコミュニケーションテーブルを設置しました。



また、ホテルの基幹システムから徹底的に見直し、情報整理や共有を極力テクノロジーで解決したことで生まれた時間で、ホテルで働く人が企画やコミュニケーションに挑戦できる余白を作っています。


部屋のアメニティは環境に配慮したものを選定し、必要なものはフロントで配っています。客室内の竹歯ブラシや歯磨きペーパーは「MiYO ORGANIC」、石鹸やシャンプーはオーガニックブランド「APPELLES」。サンダルは廃棄されたタイヤを再利用したものです。



インテリアデザインは、コンセプトを表現する上で日常のマテリアルを印象的にデザインしてきた実績の豊富なDDAAさんに依頼。時代性を体現できるデザイナーさんと協業することで、新しい視点や発見を見い出しています。



《いろんな角度から渋谷を楽しむ》

地域との繋がりにおいても、渋谷というまちの魅力をより感じてもらえるような工夫も取り入れています。



1階では、クラフトビールブリュワリー「Mikkeller」のビアバーと、「ABOUT LIFE COFFEE BREWERS」によるコーヒースタンドが併設しています。1つの空間に2つのお店が入っていて、客席もわかれておらず、外とも連続した空間になっていて、朝から夕方まではスペシャリティコーヒーを、昼過ぎから深夜までクラフトビールが楽しめることが特徴です。また、1階の階段下にあるイベントスペースでは、様々な方たちのチャレンジの場となるよう不定期でPOP UPのイベントスペースを用意しています。


2階に入っているのは、「GOOD CHEESE GOOD PIZZA」。東京・清瀬の牧場から毎朝届く搾りたて生乳でつくるフレッシュチーズを提供する、ピッツァ・ダイニングです。ホテルの朝食はここで作りたてのフレッシュチーズを楽しむことができ、ランチやディナーではフレッシュチーズの盛り合わせや焼き立てのピッツァを楽しめます。ホテルに滞在するゲストはToGoで購入して部屋で楽しむゲストも多くいらっしゃいます。



店舗のパートナーは、コンセプトに基づいて渋谷のまちの日常の延長線である風景をつくることを目指して、渋谷のまちで活躍しているパートナーに入ってもらうことで、より渋谷の日常の空気感が伝わるようにしました。


そのほかにも、まちの日常を旅人に伝える取り組みとして、ホテルが独自に編集しているローカルガイドメディア「ALL STREETS -shibuya-」を発行。20年以上、渋谷を拠点に「PAPERSKY」などのメディア制作を行うルーカス B.B.氏を編集パートナーに迎え、実際に渋谷を拠点に活動するクリエイターの方々のリアルな日常の風景の中にあるお店を紹介しています。




《あとがき》

コミュニケーションが起点となって、まちの人と旅人が集まっている風景は、パブリックハウスそのものを感じる体験でした。多様なホテルが多い渋谷にありながら、「いつもの場所」としての価値で選ばれているホテル『all day place shibuya』。「これからの時代のパブリックハウス」を象徴する施設として、これからも渋谷のまちに在り続けることでしょう。



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