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『MUJI HOTEL GINZA』ができるまで

銀座の新しいランドマーク『MUJI HOTEL GINZA』。無印良品らしさ、UDSの強み、銀座が持つ地域性、という三つの要素を持つ唯一無二のホテルになっています。企画・開発の背景や、滞在中に感じられる温かみの理由を紐解いていきます。


《1990年代に構想が始まったMUJI HOTEL》

無印良品などを手がける良品計画の金井政明会長とUDS創業者の梶原は、1993年ごろから親交がありました。金井会長が、UDSが手がけていたコーポラティブハウスを見学にきたことがきっかけで交友が始まり、当時からMUJI HOTELの構想を語っていました。


その後UDSは2003年に企画・設計・経営を手がけたホテル「CLASKA」を開業し、「ホテルカンラ 京都」や「アンテルーム 京都」など、ホテルの実績を積み上げていきます。



そういったことを背景に、2016年頃からMUJI HOTELの構想が現実化。北京と銀座のMUJI HOTELを一緒に取り組むことになりました。いずれも無印良品提供のコンセプトと内装デザイン監修の下、UDSが企画・内装設計・運営を行なっています。


《オフィスビルをホテルに》 

無印良品の旗艦店は元々有楽町にありましたが、道路拡張をきっかけに銀座に移動することになります。建物はもともとオフィスビルの計画で、一階に無印良品の旗艦店を入れる予定でした。そこから、上階にオフィスではなくホテルをつくる計画が始まります。


インバウンドゲストが増加する銀座にて、世界で高い評価を受ける無印良品の旗艦店と併設するホテルは、銀座のブランディングに貢献できると考えました。また、銀座の中心で宿泊できる経験は、銀座をぶらつく楽しさをより多くの人に提供し、新しい発見や刺激を得られる、銀座らしい旅の本質を提案できるのではと、企画が進んでいきます。



UDSでは、オフィスビルをどうしたらホテルにできるか、と発想をスタート。オフィス用の設計のため、外観や窓がオフィスらしい造りになっていたり、設備面では給湯器が小さいなど課題もたくさんありました。収支と睨めっこしながら客室割りをしていくなかで、客室が細長く、水回りが隣の部屋に食い込んだ設計を編み出します。


これをなぜ実現できたかでいうと、UDSの特徴でもある企画・設計・運営の知見を組み合わせた結果と言えます。企画では、自ら収支の計算ができるので、客室数を調整して最適解を見つけていきました。設計では、オフィスビルらしい天井の高さに着目し、空間の広さは面積よりも体積で感じられるという建築的な強みを活かしています。運営でも、他店舗において細長い客室で快適な空間作りの実績がありました。


《アンチゴージャス、アンチチープ》

MUJI HOTELのコンセプトは、「アンチゴージャス、アンチチープ」。旅先であっても、いつもの生活の延長の感覚で心地よく過ごせる空間と、宿泊客と土地をつなげるサービスを提供しています。MUJIHOTEL GINZAは、古きと新しきが交わるまち、銀座をより深く味わい、楽しむ旅の拠点となることを目指しました。



無印良品では「木・金・土(もく・きん・ど)」の素材を使用し、お店の環境を作っています。そうした背景を大切にしたうえで、いかにUDSらしさを組み込むか。


エントランスがある6階は、無印のコンセプトである「木・金・土」を推し出して力強さを表現しています。対して客室を含む7階以上は、同じ素材でも柔らかいものを選定し、住宅のような、人を包み込むような居心地よさを表現。木や布をメインに、金としてスチール、土では左官で土壁など、自然素材で構成しています。


また、無印の特徴でもある収納を大切にしました。あるべきものがあるべきところにありつつ、生活する上で邪魔にならないような造りにしています。飲み物などの備品を収納し、引き出しの中もアイテムがきっちりおさまるように設計されています。また、壁はでこぼこがなく、ライトや火災報知器は一直線になっています。



家具やアメニティ、客室の飲料、お菓子は、無印良品のものを使用。サステナビリティを意識していて、スリッパなどの備品は使い捨てではなく、持ち帰って使えるものを用意しています。旗艦店と併設したホテルで、納得するまで無印良品の商品を試してもらい、デザインだけでなく使い心地まで納得したうえで購入できる体験を届けています。


《おもてなしという体験をデザイン》

素材や収納だけでなく、体験にもこだわっているのがMUJI HOTEL GINZAの特徴です。


例えば、客室の照明は、時間によって照度を変えています。銀座という地域を考えた時に、美味しいもの食べたり素敵な体験をした後に帰ってきて、夜にビジネスホテルのような明るさにさらされると「ホテルに帰って来てしまった」となる。それを防ぐために、夕方と夜とでドアを開けた時の客室の明るさを変えました。気づく人に気づいてもらえたらいいくらいの、ささやかなおもてなしとしてデザインしています。



引き出しの上には少し隙間を空けていて、客室に入ってきた時にちらっとグラスが見えて「何かあるな」と思ってもらえるワクワク感を醸成しています。机のコンセントが一つは横向きで一つは縦向きになっているのは、海外製の大きな充電器でも刺せたり、刺したまま閉めれるようにする意図があります。コンセントの隙間も、コードが一本入る幅にしていて、ものがあまり目に触れず、スッキリした印象を与えるための設計となっています。



ものを過剰に置きたくないという想いから、当時としては珍しく客室にタブレットを導入。タブレットからは、照明やエアコン、カーテンの開閉、アラームの設定ができるようになっています。またアラームはカーテンの開閉や照明と連動し、心地よい目覚めをお届けします。


《食・音楽・旅・文化を、銀座と掛け合わせる》

無印良品が掲げるコンセプトや温かみのある素材、UDSが得意とする建築や体験のデザイン。そこに、銀座という“地域性”を織りこむことで、MUJIHOTEL GINZAの新たな魅力が現れます。


そもそも銀座とは、日本の新しい時代を象徴し続けてきたまちです。伝統と現代が織りなす文化的なまちに惹かれ、国内外問わず多くの人々が集う。文化的娯楽や観光、東京を代表する食文化、国内外の有名ブランドや企業など、多種多様な目的で銀座に訪れる人々の受け皿として、「MUJI HOTEL GINZA」はその役割を担っていきます。



銀座の歴史や時間が作り出す風合いを感じていただけるよう、共用部には100年以上前に東京を走っていた路面電車の敷石や、古い船の鉄板を使用しています。フロントに貼られている敷石の裏面には、当時の開業メンバーが込めた思いが書いてあります。


一般的なホテルラウンジを省き、銀座に関わる文学や音楽、まち歩きの本など、文化性のあるメッセージを「MUJI Library」で発信しています。音楽コンテンツとしての「BGM+」では、地域の文化や民族性に軸足を置きながらも、「今」を生きる音楽家の感性が光る作品をリリース。銀座の文化を継承しつつ、「今」の銀座を表現した音楽を、カフェやライブラリーにて楽しむことができます。



「レストラン WA」では定期的に日本の各地を訪れて、それぞれの地域のくらしとともにある味を見つけて、お届けしています。南北に⻑い日本ではそれぞれの気候や風土で育まれ、食べつながれてきた味があります。そしてその味には、その時々の自然の恵みを無駄なく美味しく食べる知恵と工夫がつまっている。日本各地で食べ続けられているふるさとの味に触れ、豊かな日本の風土を、食を通してお楽しみいただけるお店を目指しています。



《あとがき》

開業までのストーリーや背景を知る中で見えてきたのは、「無印良品に感じる心地よさ」「UDSの建築的な強み」「銀座という土地が持つ空気感」の3つそれぞれが、足し算ではなく掛け算で一つの空間「MUJI HOTEL GINZA」を作り上げているということ。


それぞれの要素からもあたたかみを感じられ、言葉や所作ではないおもてなしを受け取ることができる。「アンチゴージャス、アンチチープ」は、体験そのものにもデザインされ、銀座という街にうまく溶け込んでいく。



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