※2019年の記事です。当時どういう事を考えていたか、どんな社会背景だったかの記録にはなるかなと。また、過去のIT関連のバブルに関してもこの記事で解説しています。
なお実際には、2020年にコロナが来まして、まったく関係ない理由で本当に大不況になります。
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2020年、オリンピック後に不況がくるぜって話、ありますよね。
しかし、言ってる人は多かれど、いまいち不況に至るメカニズムが伝わってきません。
この手の質問が多くなるワケでありますな。
しかし、都度都度自分のスタンスを説明しようにも、ものっすご長い話になりそうだし。めんどい。
さらにいい加減なこと言って突っ込まれるのも。さらにめんどい。
せや、調べて記事にしたら、なんぼか需要あるやろ。
と言う事で、なんぼかマジメに調べてみることにしたのだった。(ぐぐる。)そしたら、出る出る。お堅そうな記事から怪しげ~なものまで。本フィードでまで専門的な話をして、いまさら需要があるとは思えない。なるべくざっくりやります。
①2020に、不況が来るの?
時期は、誰にもわかりません。
過去に、不況・好況が繰り返されてくる中、そのトレンドを大多数が読みきったと言う事は一度も起こっていないのではないかと思われます。 仮に、2020年の9月に確実に地価・株価が下落するとしましょう。
みなさん、9月の前にその資産を手放すんじゃないでしょうか? と言う事は、価値下落のタイミングは早まる訳です。そんな集団心理によって形成されている集団心理によるトレンド。正確に予言できるワケないですよね?
しかしながら、【オリンピックまでは地価・株価は上がるはず】と言う集団心理トレンドは存在する訳です。その前後で売りに出る人は出るでしょうし、そうなれば、実際に地価・株価は下落します。無限に上がり続ける相場は、存在しないのです。(すぐに回復する可能性もあり、確実な不況の要因ともいえない。チキンレースみたいなもん)
現在の景気の大元をたどると、日銀の金融政策による影響が大きいかと思います。専門的な話はさておくとして【円安】と【カネ貸したい人が多い】状況を作って、維持してる。くらいに理解しとくで、よろしいんじゃないかと思います。
製造業の多い日本にとって【円安】の効果は大きいです。
また【カネ貸したい人が多い】状況も、たとえば『ベンチャーキャピタルからの資本調達が容易になった』『銀行がお金貸してくれやすい』状態を生んでるワケでして、新規ビジネスや、投機的なビジネスモデルが発生、成功して行く土壌を作っています。
これが行き過ぎて、『本来その価値のないモノ』にまで資金が流入しているとすれば、これは【バブル】の状態となります。
②過去のITバブル
・1999~2001くらいの、アメリカのやつ。 .Comと名前がついてたら取り合えず買う。感じでIT関連株が買われた時代。ITバブルとか、ドットコムバブルと呼ばれる。
具体的には、学校卒業して、怪しげなビジネスモデルと、実現できんの?って技術を担いでプレゼンテーションすると資本がもらえる。利益はともかく、みんな買うなら株価は上がる訳でして。
しかし投下資本がまったく利益を生んでいない訳だから、そら、限界は来る。
バブルの発端は、低金利政策によってベンチャー投資資金が容易に調達できたこと。崩壊時の発端はドルの利上げ。多くのIT関連ベンチャーは倒産に追い込まれ、2002年の米国IT関連失業者数は56万人に達したとか。当然、投資ファンドもタダではすまない。ジャブジャブ突っ込んだカネは倒産で回収不能。もしくは株価が落ちて紙切れになる訳だからね。
日本では、特殊で元気な挨拶で有名な某営業会社が、なぜかIT関連株として扱われ、株価は一時24万に。バブル崩壊後に¥800まで落ちたからね。もう大変よ。(その後復活を遂げるあたりがまたすごい)
・ソシャゲバブル
リーマンショック後のどうしようもない時に、【スマートフォン】と言う黒船と、【ガチャ】と言う悪魔の発明によって一気に花開いた世界。ほかに有望な投資先もない為、資金が流れ込み、ソシャゲ運営やベンダーが乱立。一つのゲームが数百万で作れる上、なにがあたるかマジでわからないと言う背景もあって、カスのようなゲームが大量製造された。(絵が重要で、絵師の価値が高騰したりもした。)
タチが悪い事に、他の出資者のカネで運営会社から作るわけで、ベンダー側はその構造下で作って納品するだけでもうかったのである。当時は。なお当然のことながら大半のカスゲームはカネを稼ぐはずもなく【もうからねえなコレ】とバレてしまう。市場幻滅期到来までの時間はとても短かった・・・。
現在は、ゲーム性やさまざまな面でのユーザの要求も厳しくなり、一本のゲーム開発の費用もかなり上がってしまった。技術者に要求されるスキルも、高いものなのだろう(?)
③さて、景気後退はくるのか?
そら来るよ。
日銀の金融政策で、必死に投資先探すファンド(VC)が、成功率の低いWebサービスに出資したり、もうすでに勝負の決まった感のあるAIベンダー界隈に投資したりしてたんだもの。ただのSESの会社が出資を受けて、上場を目指す!した!なんて話も聞くぞ。
この状態から日銀が金融政策見直したら、その時点で景気は後退するわな。過去の例と同じく。
(消費税増税とかもあるから、時期はまだ先だと思うけど。選挙もあるし。)
『投下資本おかわり』ができなくなったタイミングで、【自前で利益を出せているかどうか】が、企業の生き死にを左右する。 高すぎる給与設定や、多すぎる社員数は、黒字化をダイレクトに阻害する訳で、利益出てな(もしくは、出る見込みがない)かったら、資本引き上げますよ。そら。
不気味なのは、【給与が上がってない系の統計結果(企業に利益は出ているのに!)】や、雇用しすぎと思われている会社の株価が下がったりする現象。多くの企業や投資家は、どこかで景気後退期が来ると考えており、それを踏まえた投資活動を意識しているのではないかとも考えられる。
※ろくろまわしで検索したらでた画像
④エンジニアと投下資本の関係性
本題。
私の観測期間はせいぜい10年強だが、その間のIT業界では定期的に【バズワード】が発生。トレンドとなる。そのワードを担いだ企業へ資本が投下される。そのなかの1社か2社が上場してくれればOK!と言った感じ。たとえばWeb2.0と言う言葉などはもはやバズワード界のレジェンドである。(もちろん、本格的な技術革新から発生するトレンドもある。オープン化・仮想化・クラウド・スマホ。などなど)
そんな(期間限定とはいえ)最新トレンド関連技術の経験者がゴロゴロいるはずもなく、かつ、新規創業も相次ぐため、この層のエンジニアは取り合いとなり、採用ハードルが著しく低下する。
この現象が【エンジニアバブル】と言える。
・過去の例(10年程度)
・ERPパッケージ・コンサルブーム
ABAPerの案件参入ハードルがめちゃ低かった。大手の新規導入が一巡し、あとは美味しくないかなーと言う時期であっても、単価の高さや、謎の【SEがんばるとコンサルになる】理論で、転職したいと言う人は多かった。やたらと『〇〇コンサルティング』と言う会社が増えた時期で、実際に採用でプラスの影響があったらしい。
・ガラケー開発
カルテルの様な寡占構造、新機種に乗り換えまくったほうがお得と言う契約内容、キャリア→メーカーと言う発注構造が鉄板だった。とにかく短期で新機種を開発していくのだが、当然人材は枯渇。『組込み人材が不足』(組込みではない)大規模・短納期・高稼働なテンプレイメージの現場にガンガン未経験者が吸い込まれていき、リーマンショックでの悲劇を拡大する。
・Web2.0
バズワードと言う言葉を世に知らしめたワード。『Web2.0やります』と言うと本当にVCからカネを引っ張ることができたらしい。マジで。このあたりからVC目立つようになったかな・・・。個人的な感覚だが。
・Saas・クラウド
運用で客に人貼り付けなくていい。運用をどうやってるか見せなくていい。くらいのノリで、SI事業者がこの界隈に大量参入した時期がある。 そういえば、その後どうなったか聞かない。
・スマートフォン
実際に市場の高成長が期待できる分野で、格好の投資先だった。AndroidのJava、Objective-Cの採用ハードルは【勉強してればOK】と言うレベルまで低下。その後、2~3年くらいで【経験年数3年必須】になった。リーマンショックとも一致している時期でもあり、充足の速度は速かった。
・ソシャゲ
ガチャと言う悪魔の発明により云々。一時期PHPの技術者の採用ハードルは、『経験半年』とかまで下がる。フロントエンドエンジニアが生えたのもこの辺。jQueryできたら70万とか80万とか、なにそれと言う。完全なバブル構造となっており、渋谷の某広告代理店さんなんかは、それを完全に理解した上で回してた。新卒社長の爆誕や、飛び交いまくる新会社への出資のお誘い、新卒社長以外フル外注の開発体制など。完璧すぎて美しさすら感じられた。
・Webサービス
【サービス】が本体で【Web】はその提供手段なはずなのだが、【Web】であればとりあえず金出すよ感があるくらい、やたらと資本調達絡みの新規創業が多かったカテゴリー。2016か2017くらいが調達のピークではないかと思われる。DMMやメルカリのギリギリ感を模倣しようとしたベンチャー社長らの思想があきらかにヤバかった為か、他にもっと成長性の高い市場が生えてきた為か。仮想通貨に道を譲り、採用ハードルが明らかに上昇した感がある。(2016くらいは結構Rubyの仕事も目にしたのだが。)バブルであったが、ソフトランディングした感。
・仮想通貨
ブロックチェーン技術や、マイニング等がいまいちビジネスに転用しづらくて、めっちゃ増えた感はなかったのだが。ビットコイン自体が投機対象になっていき、取引仲介を行う会社が増えていった。海外では自国通貨と仮想通貨の交換を認める国は少なく、日本のみが突っ走ってたイメージ。コインチェック事件で一気に投資が止まり、仮想通貨自体も値を下げていった・・・。
GMOのマイニング事業での355億の特損などは記憶に新しいが、ブロックチェーン技術をビジネスに活かす方法を思いついた会社などもちゃんと存在し、経営は続いているようだ。
・AI
こちらも、取り合えずAIとつけば金が出るらしく、『本当に必要か?』と、思われるものにまでAIが搭載されていく流れに。 こちらも幻滅期が到来していることを指摘する人は多く、実際のところ、後発のベンダーが最前線のベンダーに追いつく事はほとんど不可能となっているようだ。
最前線のサイエンティストの報酬はとても高額であるが、エンジニアは不明(オレが調べてないだけ)採用ハードルが下がったタイミングと言うのもあまり記憶にない。そもそも委託市場にあんまし出てない。
観測範囲に偏りがあるのはご容赦頂くとして、トレンド(と言うかバズワード)に投資が集まり、その際に採用ハードルが低下、人を大量に吸い込む。充足に向かうにつれ、採用ハードルが上昇。同時に市場がレッドオーシャン化していく。市場が幻滅期に至り、資本の流れが滞ると、業績が微妙な会社から破綻・買収となり、エンジニアを吐き出していく。
これだけ業界にいればいい加減わかるが、延々と同じループが繰り返されている。
投資マネーが行き先を求め続ける限り、新しいトレンド(バズワード)が生み出され続けるのではないかと思われ、AI市場の成長が止まったとしても、別のワードに投資が集まる仕組みであると思われるので、今しばらくの心配は無用なはず。
日銀が金融政策を見直すまでは。
今回も被害拡大しうるなー・・・と言う要素としては。
少なからず景気の後退期を意識している人間がおり、それが採用傾向にも現れ出しているのではないかと思われるような状況にあるにもかかわらず、Google検索結果を埋め尽くすアフィリエイトなどなどが、その状況を覆い隠してしまっている。(いろいろな統計で見えるトレンドと乖離して行ってる)結果、市場が幻滅期に入った技術要素に、いまだに人が流れ込み続けていると言う・・・。
市場の実態が覆い隠されてわからんからバブル継続とか。
ここ、中国かよ。
いや、汎用的なスキルですし、既にスキルのベースがある方はぜんぜん被害少ないと思いますよ。ヤバいと感じるのは、おそらく許容量を超えてヒトが流れこんじまってるんじゃないかなーと言う事。
詳しくは次項ですが。
⑤不況になったらどうなるの?
実際に不況期に突入する場合、下記の様なルートを辿る。受託取れば大丈夫とか、自社サービスやれば大丈夫とか、そんな能天気な記事も見るが、まさに構造がよくわかってない人の意見。全部苦しいに決まってんだろ。
・エンドユーザーの投資抑制
不況期には、【広告】→【IT投資】の順に経費を削減してくる。 どちらも切ったらヤバイ物に見えるのだが、過去の例からみても実際にはまずこれを切る。 【運用側の予算は別】で、インフラ運用などに入ってる人たちは生き残りやすい。
・広告の予算が減る。
まず減ります。広告型の収益構造の場合、かなりのダメージを負うことになります。アフィリエイトは成果連動型なので、むしろ残りやすい。ただ、下のくぐり合いになるので物凄い勢いで単価は下がっていくが。広告元にもよる。
・SIerの外部発注抑制
当然、IT投資が減って仕事が減るのはSIer。SIerだって自社の社員が優先である。SES(準委任・派遣)だけがヤバいと言う話ではない。請負も発注元はSIerである。仕事が取れなくなります。また、待機者を抱えたソフトハウスがアホみたいな金額の見積もりで勝負を挑んでくるのもこの時期である。SES(準委任・派遣)も当然ヤバいのだが、元々不景気に成長した業態である。どうヤバいかというと、ピンポイントでロースキル層がヤバい。もう不況が近いと考えるならば、未経験者がSES企業を避けるのは合理的と言えなくもない。なにが正解かは神のみぞ知るだ。
・人材ビジネス業界のダメージ
当然ながら、正社員雇用の抑制が始まり、人材ビジネス業界がかなり痛い目に合います。採用費用をかけなくても採用できちゃう上に、採用必要数も減ります。また、離職も減ります。例外的に、フリーランスのエージェントは儲かりそう。フリーランスの調達が容易になるうえ、彼らのスキルは顧客のハードル上昇した要求に対しても、対応できてしまう。また、派遣会社が成長するのも、実は不景気の時期。『会社は』ね。
・円高になります。
経済学からすると逆の動きなのですが、それでも円は買われてしまうと思っておいたほうがよさそう。円高のタイミングで蔓延るのが、【オフショア】です。マジ激増します。リーマンショックのさなかにもガンガン外に出てました。殺す気か。同様に、国内の工場なども海外に逃げていき、英語を要求される仕事が増えます。
・全体的におこること
案件参画のハードルが上昇します。単価が下がります。
業界の構造は単なる椅子取りゲームです。能力の高いもの・商流が高いものが、その下の者の仕事を奪います。受託では、ハズレ案件が増えます。みな、無理でも受注する為です。赤字であっても、稼動ゼロよりは被害は抑えられます。受注できない場合、SES市場に参入してきます。
ゲームや自社サービスで【自前で利益を出している】ところは、影響は少ないと思います。特にBtoCや、コストダウンに関わるサービスを担いでいる場合は、影響を受けづらいと思います。(プラスの影響もあり得る。ユニクロなどは毎回、不況期に成長する)
【まだ自前で利益出せていない】場合、不況のインパクトによっては出元からの金の供給が止まる可能性があります。この場合、解散・売却・受託/SESへの参入などの手段が必要になります。
【自前で利益を出す事と、技術者を大量に雇用する】事は相反する要素であるため、不況期に自走できない企業が『IT業界全体の何パーセントの技術者を抱えているのか?』は、今回特有のとても不透明で不気味な要素です。この規模感によっては、またしてもリーマンの様な大リストラを引き起こす可能性があると思います。
なんにしても、SES市場や派遣市場に対して一気に人が集中してくる構造になり、椅子取りゲームが熾烈化します。
⑥すべき対処は?準備は?
・そのときにバズってるビジネスに逃げよう戦術
リーマンショック時代のスマホアプリ・ソシャゲの仕事は多くのエンジニアを救ったんじゃないかと思います。その時にどのような技術要素を持てば有利かというのは、現時点ではわかりません。技術者が希少なタイプのものであればこれはありがたい話で、そのビジネスでの採用ハードルは低下し、スキル不一致でも参画できる可能性が高くなります。(すぐに充足していくので、判断に速度は必要)このビジネスは不況の影響を受けにくい(もしくは有利な)性質のものですので、不況期~回復期にかけて大きく伸びます。このビジネスに参入ハードルが低い時期に参入できたとしたら、5年は優位が取れます。これは個人にとっても企業にとっても大きなメリットです。現時点で流行っている技術がどうこうではなく、どういう技術が流行っても即対応できる基礎力のようなものが重要になるのではないかと思います。
・商流は浅くしとく
上記は技術的なアプローチですが、こちらは営業的なアプローチです。
事業会社(エンド)に逃げておく、強い発注者側に逃げておく。関係性を構築しておく。オフショアを行う側も不況期には強いです。
現在は好況期にあたり、ことITでは人材不足感が強いです。取引先を増やすには良いタイミングとなります。今の時期にこういった動きが出来ないと、後々苦しくなるかもしれません。
・ロースキルの採用を控える
こちらは採用計画的なアプローチ。不況期とスキルハードルの観点になります。
不況突入時を見越して、自社のスキルのバランスを取っておくと言ったものです。いずれも、不況期に待機したら解雇する覚悟がある企業は、別かな。
なお、景況感もあって、多くの企業が離職率は高めです。不況怖いから採用数ゼロ!とかやると・・・自然減していきます。ここでもチキンレース的な要素がありますね・・・。
なお、育成する型の会社が未経験採用のハードルを上げたのは、不況以外に踏み台狙いの未経験者に対しての警戒感を高めたと言う背景があるので、今ってなおさら未経験決まりづらいのかも。
今学習中の未経験者にとっては、いい迷惑だったりする。
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