私たちだからこそ挑める 「あめつちの心」を伝える使命(上) | 株式会社 サン・クレア
自然の循環のように、いつまでも続く強い「カンパニー」を目指して「この森にあそび、この森に学びて、あめつちの心に近づかむ」。愛媛県北宇和郡松野町には、こう刻まれた石碑が残されている。初代町長・岡田...
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「カンパニー」を成す人たちに、細羽さんがもう一つ求めているものがある。はっきりと答えられる、自分が果たしたい「使命」だ。誰にでもきっとある、好きなことや極めたいこと。変えていきたいものや、新たに作り出したいもの。強い思いを持って何かを追いかけ続ける人が秘める力に、細羽さんは期待している。
「僕がスタッフをサポートするというのはおこがましいけれど、力が発揮できるような環境を整えたいと思っています。その人が本来十分なパフォーマンスを持っていることを前提に、余計なものが入らないようにする。僕は自然栽培で野菜やお米を作っていますが、エネルギーは太陽の光と土と水だけ。化学肥料を使わなくてもおいしいものができるのと同じです」
実際に、株式会社サン・クレアではホテルの業務を行いながら、野外教育事業の立ち上げや藍染め事業、マルシェの開催やミカンの栽培などに挑戦するスタッフがいる。自分自身の「好き」と地域が持つ力をかけ合わせ、新たな価値あるものや場所をつくり出している。
入社前からやりたいことが決まっている人はもちろん、入社後に挑戦することを探したい人も歓迎する。チェックインやチェックアウトなど、ホテルの仕事は決まり切った業務になりがち。だからこそ、新たな挑戦に臨もうする姿勢がまぶしく映る。「誰かが好きで一生懸命やることは、間違いないですよ」と細羽さんは笑う。
本来持つ力や個性を存分に発揮してもらうため、株式会社サン・クレアが定めるルールは必要最低限。一般的なホテルなら許されない個性的なヘアスタイルも、藍に染まった青い爪も、ここではコミュニケーションを生む立派な武器になる。許されないのはどうしてか。その要因を払拭するにはどうすればよいのか。現状をプラスに変えていくために思考を止めないという心意気があれば「ご法度はいらないんです」
そして、決まりごとを押し付けるような社員教育も行っていない。ただ、人間は自然の循環の中にいるという「あめつちの心」を知り、気づきを持つ。このアクションがあれば、植物が育ち果実が実るように、企業も地域も循環していくと信じている。
「細羽さんは何でずっと目黒に住んで土を触っているんだろうって、疑問に思われているかもしれません。だから僕は思いを伝えるために、できることを片っ端からやっていきます。丁寧に説明をして、できればここに来て一緒に目黒での生活を知ってもらって、疑問が晴れていくといいですね」
株式会社サン・クレアが運営するホテルは、現在全7軒。それぞれのスタイルや立地はさまざまだが、細羽さんは全てのホテルの柱を「地域にアンカリングする(碇をおろす)」ことだとしている。
広島県広島市と岡山県倉敷市に展開するホテル「NAGI」「LAZULI」のミッションは「インバウンドに日本をアンカリングすること」。街で暮らすように過ごし、スタッフや地域の人とのコミュニケーションを楽しめる滞在を提供する。「海外の予約サイトに行くと英語でたくさんコメントが入っていて、スタッフがのびのびと頑張ってくれているのを感じます」
NAGI Hiroshima Hotel & Lounge
LAZULI Hiroshima Hotel & Lounge
NAGI Kurashiki Hotel & Lounge
「ANCHOR HOTEL FUKUYAMA」は広島県福山市で作られたデニムや鉄を取り入れた内装が特徴の、まさに「地域にアンカリングした」ホテル。「アンカリングというコンセプトを作り出したオリジンのホテル」として、地域の魅力に光を当てるムーブメントの再開を期待している。
ANCHOR HOTEL FUKUYAMA の客室
「福山オリエンタルホテル」「宇和島オリエンタルホテル」には、これまでのビジネスホテルのイメージを変えることが求められている。テレワークが増加し、ビジネス利用の需要は減少していく一方。地域とつながりながら、ビジネスホテルの枠を越えることを目指す。「ハードルは高いですが、だからこそやりがいがあります」
福山オリエンタルホテルの朝食。地産食材を生かしたメニューが並ぶ
宇和島オリエンタルホテルでは不定期でマルシェを開催
そして、目黒集落の「水際のロッジ」。多様な人がホテルを訪れ、自然に囲まれて過ごすうちに、「あめつちの心」をそれぞれに解釈してもらえる場所を目指している。自然の循環がすぐそばにあるからこそ、自然とは、人間とは、といった根源的な問いと向き合える。自分のものとして落とし込んだ価値観を、新しい生活や働き方に結びつけてもらいたいと願っている。
水際のロッジ
株式会社サン・クレアが現在目指しているのは、地方創生。しかし、ホテル事業も変わらず大切なものであり、大きな強みだと細羽さんは考えている。好奇心あふれる人たちが、日常を離れ、新たな土地にやってくる。その土地で、食べて、眠る。地域や人とつながるチャンスが、ホテルにはいくつも隠されているからだ。
「宿泊業は、お客さまの滞在時間が他の業種に比べて圧倒的に長いんです。だからこそ、できることの可能性が広がる。もともとホテルを運営していなければ、きっとこうやってまちづくりを目指すようにはなっていないと思います。ホテルがあったところに、発信すべきものとして“あめつちの心”が加わった。ラッキーなことで、これは僕たちに与えられた使命だと思います」
いつまでも続く企業や、地域を目指して。株式会社サン・クレアだからこそできる方法で、「あめつちの心」を受け継ぎ、伝え続けていくつもりだ。
文/時盛 郁子