スパイスファクトリーでは「1ピクセルずつ世界をより良いものにする。」というパーパスを掲げており、その実現のためのミッションとして 「革新の触媒 ”The Spice Of Innovation”」 を掲げています。このミッションに込めた想い、そして具体的にどのようにビジネスへ落とし込んでいるのか。代表取締役CEOの高木さんへインタビューいたしました。
スパイスファクトリー株式会社 代表取締役CEO 高木広之介
「変化を許容する」から始まった “革新の触媒”の原点 ーまず、「革新の触媒 ”The Spice Of Innovation”」とはどういう状態を指すのでしょうか?
高木:この言葉を考えた背景には、2016年の創業時から大切にしてきた「アジャイル開発」の価値観があります。アジャイル開発やスクラムイベントに触れる中で強く感じていたのは、それが単なるフローやプロセスの設計手法ではなく、“働くとは何か”という価値観そのものに深く関わっているということです。例えば、仕事のなかで「チームの生産性を高めていこう」という姿勢が育まれたり、定期的なスクラムイベントによって、立ち止まりながら改善を重ねる文化が根づいていく。こうした実践を通じて、仕事の進め方そのものが変わっていくのを実感してきました。 それは単なる効率化の話ではなく、組織の価値観を揺さぶり、ビジネスマインドそのものを変える力がある。私たちは、「変化を許容していこう」「まずは見えるところからやってみよう」といったアジャイル的なマインドセットを大切にしているのです。そしてその根底には、「この国や社会を少しでも良くしたい」という信念がある。それこそが、私たちが掲げるミッション「革新の触媒 ”The Spice Of Innovation”」の核心です。
さらに私たちは、UI/UXデザインにも強いこだわりを持っています。特にUXデザインにおいては、“ユーザーがどう感じるか”という体験にこそ価値があると信じています。これまでのビジネスは、「どう利益を出すか」といった企業の論理から語られることが多かったと思いますが、私たちは常に“ユーザーの体験”を出発点にしたい。その姿勢もまた、アジャイルマインドに通じていると考えています。
ー確かに、アジャイルマインドは全社的に育ってきた価値観ですね。実際に驚くほどのスピード感を持ち、ステークホルダーのことを考えて、UI/UXも、システム開発も実施しているプロジェクトしか無い、と感じます。そうした価値観が、どのようにクライアント側にも伝播していくと考えていますか?
高木:そうですね。そういったユーザーのことを考えたマインドセットについては、今の日本のビジネスにおいて軽視されがちな部分であります。私たちの考えるアジャイルマインドを通じて、ビジネスの根本の価値観から変えていかなければならない、変化させる必要があると強く感じます。私たちのプロジェクトを通して、クライアントに何かパラダイムシフトのようなことを起こすことができれば、そこで生まれた新しい価値観がさらに周囲へと広がっていく。その伝播こそが、「革新の触媒 ”The Spice Of Innovation”」というミッションに込めた意味なのです。
クライアントの価値観を変える「革新の触媒」という存在
ー実際にクライアントにアジャイルマインドが伝播し、変化が生まれた事例はありますか?
高木:いくつもあります。アジャイル開発をやったことがない、初めてだというクライアントに対して、丁寧にマインドセットを行うことで、変化を起こすことができていると思います。 例としていくつか挙げると、まず東京都と行ったアジャイル開発型のプレイブック策定やプロトタイプ開発は良い事例だと思います。東京都にとって初めてのアジャイル開発で担当職員も含め不安もありましたが、システム開発を通じて価値を感じていただき、都庁内でアジャイル開発の良さを広めていただいたというのは非常に大きな変化でした。 また、佐川ヒューモニー様の基幹システム刷新プロジェクトでは、当初はウォーターフォール開発の要望があったところ、「アジャイル開発でやらせてほしい」と提案し、アジャイル開発で構築することを意思決定してくださった。クライアントには当時アジャイル開発の経験はなかったですが、担当者の方が一緒に開発をするうちに研修を受けスクラムマスターの資格を取得されました。これも大きな価値観の変化の事例だと思います。
~佐川ヒューモニー様の事例インタビューはこちら~
~東京都様の事例紹介はこちら~
ー担当者の方がスクラムやアジャイル開発の良さを分かってくださって、一緒に取り組んでくださるのは本当にいい事例ですよね。
高木:本当にそうですね。他にも印象的な事例があります。あるクライアントでは、それまでウォーターフォール開発しか経験がなかったのですが、過去にそれがうまくいかなかった背景がありました。そんな中で、社内で「今うまくいっているプロジェクトはどれか?」と見直した際に、それが私たちと開発しているアジャイル開発のPoC(概念実証)だったんです。そして驚いたのはその流れから、 アジャイル開発についての講演をしてほしいという依頼が入りました。 普段から真摯に寄り添い開発やプロジェクトを進めてくれるメンバーの姿から、プロジェクトが評価されたと思いますし、こうやって経営層にも興味を持っていただけたことに驚きました。
ーまずは愚直に現場で信頼を勝ち得て、アジャイル開発でより良いものづくりを提供し、プロジェクトが少しずつでも前進することに価値向上を感じていただけたことが、どの事例にも共通すると思いました。そういう変化を起こすことで、講演してほしい、本開発に進みたいなどのお声も広がっている様子を肌で感じます。
日本に漂う閉塞感を、1ピクセル変えていくという意志 ー「革新の触媒 ”The Spice Of Innovation”」というミッションを、どう今後の事業に活かしていきたいと考えていらっしゃいますか?
高木:究極的には、“今の日本に漂う閉塞感”を打破したいんです。 「やったことがないから難しい」「経営層が保守的だからどうせ通らない」 そんな諦めの空気が、あまりにも当たり前のように社会に広がってしまっている。それは、いわゆる経済成長の停滞が続いた“失われた30年”がつくり出した空気感でもあると感じています。 様々な場面で「おっしゃることは正論ですが、それって簡単じゃないんですよね」と言われて終わってしまうこともあると感じていて。そういう価値観を打破して戦いたいんです。 「どうせ無理」で終わらせるのではなく、「まずは、1ピクセルから始めてみよう」と伝えたいんです。小さなチャレンジの積み重ねが、やがて大きな変化につながる。それが、私たちが掲げる「革新の触媒 ”The Spice Of Innovation”」という言葉に込めた意志です。クライアントの現場担当者にとって、私たちは絶対的な味方でありたい。その人が本気で組織を変えたいと願っているのなら、私たちはともに悩み、考え、愚直に進める伴走者であり続けます。
ー確かにそういう諦めてしまう場面は日常に溢れていますね。私自身も経験がありますし、2024年にIMD(国際経営開発研究所)が発表した「世界デジタル競争力ランキング」でも「ビジネスアジリティ」において、日本は58位と課題が浮き彫りになっています*。それを打破して変えていくのは大変な道のりだと思います。
高木:確かに一筋縄では行かないです。このように巨大な壁を目の前にしたときにまず諦めてしまうことこそが日本の病だと思うんです。 だからこそ、「1ピクセルずつ、世界をより良いものにする。」というパーパスはその壁に立ち向かう意思表明でもあります。
例えば、先ほどの講演を依頼いただいた企業のように、クライアントの現場から少しずつ変化が起きていく。それは、まさに「革新の触媒 ”The Spice Of Innovation”」というミッションを体現した象徴的な出来事だったと感じています。私たちは、最初は小さくてもいいから、プロジェクトとして手応えのある結果を出し、愚直に取り組む。その積み重ねこそが、空気を変える力になると信じています。
そして、「革新の触媒 ”The Spice Of Innovation”」というのは、そのクライアントの現場の担当者に対して 絶対的な味方になる という意思表示でもあります。担当者はその会社をより良くしたいと思っていて開発をしたいはずなんです。しかし、反対されたり承認が通らなかったり、社内で孤立しがちだと思います。そこで私たちが味方になって、「一緒にやりましょうよ!」と強い意志のある楽観を伝播させていくことで、変えていけると信じています。その積み重ねで足元から一歩ずつ打破していきたい、そう強く思います。
ーその信念はとても共感しますし、日本社会の未来を考え、閉塞感を打破して楽観を伝播させるのはとても難しいです。でも、だからこそ私も「スパイスの一員として挑戦していきたい」と熱くなりました。
高木:今、日本のことを考えたときに、少子化や物価高など、さまざまな課題が山積しています。そして、それらの問題をなんとかしようと、日々取り組んでいる人たちも確かに存在しています。
私はそうした大きな社会課題に対しても、結局のところ、目の前の課題に対して一歩ずつ取り組んでいくことしか無いと考えています。たとえば、政治の世界ではこういう課題、医療の現場ではこういう課題、物流業界ではまた別の課題……と、領域ごとに無数の「1ピクセル」があると思うんです。だからこそ、私たちはスパイスファクトリーとして、それぞれの現場にあるリアルな課題に対して、DXの力を通じて愚直に向き合っていきたい。 一足飛びではなく、小さな実装や変化を積み重ねることで、社会全体を少しずつでも動かしていけたらと思っています。
*参考: World Digital Competitiveness Ranking 2024
「コップの水が半分もある」と捉える価値観でいたい ー最後に、どういった方と「革新の触媒 ”The Spice Of Innovation”」を1ピクセルずつ実践していきたいですか?
高木:「コップに水が半分ある」ときに、「もう半分しかない」と捉えるのではなく、「まだ半分もある」と希望を見出し、前向きに受け止められる人と一緒に変化を楽しんでいきたいです。 「半分もある」と希望を見出して前に進む人がスパイスには必要で、どんな中でも希望を見出して戦っていける人と一緒に働いていきたいです。
ー楽観を伝播させる、という考え方にも通じる部分ですね。自分のやらなければならないことを愚直に見定めて、事実を認めたうえで、どう変化させようか、楽しもうか、と考えていける人はどんな環境でも活躍できると思いました。
高木:もちろん、ただの楽観主義者でもだめで、事実をきちんと理解して把握して、そのうえで悲観せずに変化を楽しむことが重要なマインドです。その姿勢とアジャイルマインドがあれば、必ず日本の閉塞感も一緒に打破していくことができると信じています。そんなマインドを持ったメンバーが沢山いる会社になりたいですし、マインドを持ったメンバーと仕事することで 「アジアを代表するデジタルインテグレーター」になるというビジョンも実現していきたいです。
ーアジャイルマインドを持ったメンバーと私も熱量をもって働きたいですし、自分自身もクライアントや関わる人たちの「革新の触媒 ”The Spice Of Innovation”」でありたいと強く感じた時間でした。ありがとうございました。
高木さんのインタビューはいかがでしたか。 私たちが掲げるミッション「革新の触媒 ”The Spice Of Innovation”」とは、テクノロジーとデザイン、そして柔軟なアジャイル思考によって、組織や社会に持続的な変化をもたらす存在をイメージしています。派手な成果ではなく、現場に根差した実践を重ねることで、クライアントやパートナーと共に新たな価値を創り出していく。それが、私たちの考えるプロフェッショナリズムです。
スパイスファクトリーでは、そうした価値観に共感し、自ら考えて動ける方と共にチームをつくっていきたいと考えています。
「1ピクセルずつ、世界をより良いものにする。」というパーパスのもと、日々の仕事を通して小さな変化を積み重ね、組織の中から変革を支援する。そのプロセスに主体的に取り組める方と出会えればと思っています。