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GX人材育成の挑戦と展望

株式会社スキルアップNeXtの田原です。今回は、私たちが取り組んでいる「GX人材育成」について取り上げたいと思います。

近年、気候変動問題が世界的なテーマとなり、日本も2050年のカーボンニュートラルを目指して動き出しています。その実現の鍵を握るのがGX(グリーントランスフォーメーション)であり、それを支える人材の育成が急務です。私たちスキルアップNeXtは、このニーズに応えるため、GX人材育成に力を注いでいます。

GX実現に向けた日本の現状

日本は2050年のカーボンニュートラル達成を目指し、GX(グリーントランスフォーメーション)を推進しています。この取り組みは、脱炭素化と経済成長を同時に実現するために、産官学が連携していますが、政府が中心となって政策や戦略を策定し、国際競争力の強化を目指しています。

例えば、成長志向型カーボンプライシング構想はその一つで、10年間で官民合わせて150兆円以上の投資を実現していくとしています。これにより、GXへの取り組みが容易になり、新たな市場の創出にも寄与することが期待されています。

日本がGXを成功させるには、例えば、産業界のビジネスモデル変革、技術革新とインフラ整備、政策と規制の整備、社会的意識の変革が必要です。どれ一つとっても、一筋縄ではいかないテーマで、これらに、国際競争力を落とさずに向き合っていく必要があります。

そして、いずれのテーマでも取り組んでいくと当たる壁が”人材”です。産官学全てにおいて、GX関連の専門知識とスキルを持つ人材が不足しており、これが推進の障害となりつつあります。人材不足を解消するためには、教育プログラムや研修の整備が急務です。企業の場合、従業員のリスキリング・意識改革を進め、必要なスキルを身につけてもらい、GXに向き合っていくことが重要です。

こうした現状において、こちらの特集やこちらの記事でも取り上げられているように、今、GX人材のニーズが高まっています。2024年に入ってからは、企業の規模やGX推進フェーズに関わらず、GXスキルを身に付けようとする動きが加速しているように感じます。

GX人材育成事業をはじめた背景

このように、日本においてGXが加速する中、スキルアップNeXtは2021年の8月からGX人材育成事業を開始しています。ここでは、事業を開始した背景をご紹介します。

元々、スキルアップNeXtはDX人材育成からスタートした会社で、多くのDX講座が経済産業省の認定を受けて第四次産業革命スキル習得講座(Reスキル講座)としても展開していました。その関係で、今後の展開について経済産業省の方とお話しする中で、デジタルだけでなく、グリーン(脱炭素)にも国として力を入れていくという話を伺いました。

当初は、自分たちのドメインは「AI/DXの人材育成」と考えており、認定を受けているAI/DX入門講座の中で、グリーンについて少し触れる程度で良いかと考えていたのですが、俯瞰して世の中の動きを見た時に、DXの中でというより、「DX/AI人材育成事業」と並ぶ形で「GX人材育成事業」を立ち上げるべきとなりました。

しかし、綿密なビジネス計画を持っていたわけではなく、私自身のバックグラウンドが自然環境学で、役員の中には、エネルギー管理士やLCAを研究していたものもおり「できるだろう!」という、今振り返ると、よく分かっていなかったからスタートできたというのが実際です。やる必要があると感じたことと、タイミングとしてもこれは逃せないと感じたのが大きかったと思います。

GX人材育成事業立ち上げ当初の課題

まず最初の課題は、「何を学べば(教えれば)良いのか?」というものでした。GX(グリーントランスフォーメーション)は、新しい概念であり、その範囲や内容が広範囲にわたるため、具体的に求められるスキルや知識を明確にするのは困難でした。

例えば、脱炭素化に向けた排出量算定の知識や、脱炭素の技術的な知識だけであれば、すでにある程度体系化されており、既存の内容のお化粧直しだけでよかったかもしれません。しかし、それでは特定の業界や職種に限定された内容になり、GXのほんの一部しかカバーできないと感じました。しっかり脱炭素・GXの背景を理解し、世界の動向、政策、ファイナンス、大きな技術トレンドなどの知識も必要で、さらにこれを今の事業戦略・ビジネスモデルにどのようにアラインさせるのかということが真に重要だと、様々な企業の方と話す中で感じました。

GX人材がどのような知識を身につけるべきかが見えてきたあとの課題は、カリキュラムの設計と教育コンテンツの専門的な知識でした。カリキュラムの設計については、受講者の多様な背景・モチベーションを考慮・理解する必要があり、多くの受講候補者にヒアリング・トライアルを実施しました。教育コンテンツの専門的な知識については、各領域の第一人者、有識者にサポートしていただき、企業として知るべき知識の体系化を実施しました。

特に教育コンテンツの専門的な知識のインプットには、実質1年近くの時間を要しました。その期間に感じたのは、白書や各省庁の議事録・レポートには、企業にとっても価値のある内容がたくさんあるのに、企業がGXに取り組もうとした時に、咀嚼しづらいものになっているということでした。また、多くの企業が個社それぞれに、点在しているこれらの情報にアクセスして自社ビジネスに取り込んでいくのは、ものすごい非効率だと感じました。

今後必要なGX人材の全体像

GX人材育成事業に当初大きな壁を感じながらも、多くの企業の人材育成をサポートする中で見えてきた「企業に必要なGX人材」がこちらです。GX人材を単に”CO2削減を推進する人材”と定義すると、②だけになってしまいますが、既存のビジネスモデルにGXをどのようにアラインさせるのか(織り込んでいくのか)という観点で捉えると、②だけでなく、①経営層、③攻めのGX人材、④全社員の人材も重要であることが理解いただけると思います。


特に重要なGX人材類型

特に鍵となるのが③攻めのGX人材です。足元の削減策で着実な成果を上げるという観点では、②守りのGX人材が重要ですが、この取り組みだけでは、どんなに頑張ってもGXを実現することはできません(排出量0にはならない)。GXの実現には、中長期での抜本的な取り組みとして、事業ポートフォリオの見直し、革新的な低炭素技術の開発、サプライチェーン全体でのCO2削減、CNな新事業の立ち上げなどが必要で、これらを実務レベルでリードする人材が③攻めのGX人材です。個人的には、2030年までに社内で一定レベルの攻めのGX人材がいることが重要だと思っています。この話は次回以降に話したいと思います。

企業も攻めのGX人材を生み出すための教育プログラムや研修の整備を進めています。例えば、NTT ドコモグループは、2040 年までにサプライチェーンも含めた温室効果ガス排出量を実質ゼロとする 「2040 年ネットゼロ」の実現に向け、自社やサプライチェーンの温室効果ガス排出量削減を牽引できる GXスキルを持つ人材(GX人材)の育成に取り組んでいます。攻めのGXスキル習得として、法人営業担当者を対象に実践的なプログラムを実施しています。今後は、自社の事業戦略にアラインした教育プログラムの整備が各社進んでいくと考えられます。


おわりに

スキルアップNeXtのGX人材育成の挑戦と展望というお話でした。スキルアップNeXtは、今後もGX人材の育成を通じて、持続可能な未来の構築に貢献していきます。

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