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こんにちは、人財成長戦略チームの三浦です。株式会社GA technologiesで人事をしています。
今回は、首都大学東京との共同研究発表や理化学研究所のセンター長である杉山氏を技術顧問に迎え、アナログな不動産業界において初の取り組みとして注目されている「AI戦略室」の現在の取り組みと今後の展望について、3名に話を聞きました。
【プロフィール】
AI 戦略室 室長 小林賢一郎 (こばやし けんいちろう)
東芝およびソニーの研究所において自然言語処理、人工知能、ロボット(AIBO、QRIO)、データ解析の研究やCE 機器の研究開発に従事。2007 年よりソニーの主任研究員に就任。電子情報産業協会(JEITA) 委員などを歴任。2015 年クーロン株式会社フェロー。現在、TIS(株)シニアエキスパートであり、三菱鉛筆株式会社顧問他、複数のベンチャー企業アドバイザー。人工知能学会、情報処理学会、言語処理学会、日本言語学会各会員。
AI戦略室ゼネラルマネージャー 橋本 武彦 (はしもと たけひこ)
株式会社ブレインパッドにてシニアデータサイエンティストとして、主にマーケティング領域のデータ分析、ならびにデータサイエンティスト育成に従事。一般社団法人データサイエンティスト協会の立ち上げに参画し、2015 年〜2017年データサイエンティスト協会事務局長に就任。慶應義塾大学SFC、電気通信大学、立教大学、滋賀大学などでの講義を担当。著書:「統計学ガイダンス」(日本評論社/共著)、他。
AI戦略室ゼネラルマネージャー 稲本 浩久 (いなもと ひろひさ)
株式会社リコーにおいて画像処理技術者として、スキャナ向けの画像自動分類技術や、マーケティング用の携帯電話カメラ画像認識技術、インクジェットプリンタの画質シミュレーション技術などの研究開発に従事。その後、360度カメラRICOH THETAを活用した不動産向けVRソリューションサービスであるtheta360.bizの立ち上げに企画者として携わり、GA technologiesへジョイン。
ーーはじめに、ここ半年間のAI戦略室の取り組みを教えてください。
昨年4月の発足当初から3つの柱を軸にしていて、まずAI活用を通じて不動産ビジネスや社内のプロダクトにいかに貢献するか(RPAやマイソクの自動読み取り等)、次に最先端の技術をいかに導入していくかというビジネスツールシーズの開発、最後が育成や啓蒙などによっていかにGAやAI戦略室の社外へのプレゼンスを向上させるかです。特に最先端技術の導入においては、先月首都大学東京と連名で共同発表が行われ、各種メディアに取り上げられる大きな成果になりました(海外の人工知能学会で論文も発表)。横浜国大との共同研究では、情報処理学会の全国大会で謝辞としてGAの名前が出る予定です。
また、プレゼンス向上を目的とした定期的なインターンの開催や滋賀大や電通大での講義を実施し、AI戦略室のメンバーそれぞれがアカデミックな場での立ち位置ができてきて、GAの名のもとに対外的な活動が出来るようになりました。インターン参加者のほぼ100%が満足しているという結果も得られていて、その結果採用にも繋がり、この半年間でプレゼンスが大きく向上できたと実感しています。
発足時に思い描いていた今までの不動産の形態とは大きく異なった不動産という形に段々と近づいてきたこと、アカデミックな知名度が上がってきたことが大きく変わってきたことだと思います。
ーー不動産の会社が論文検索すると出てくるというのは、業界初の取り組みですね!大学との共同研究はどういうきっかけで実現できたんですか?
実は、社長のアイディアが始まりです。他社とどういう風に差別化していくか、AIをどう推進していくかと考えた時に、自分たちの技術だけで進めていくものとアカデミックが持っている技術にはギャップが当然あるため、それを取り入れることができれば、GAという会社のバリューを上げることができるという発想です。GAの考えに共感してくれる良い先生に出会うことができて、共同研究を実現することが出来ました。実現の一番のカギは、現場社員の理解や協力であり、セールスを始めとした他部署のみなさんに感謝しています。
首都大学東京との共同発表時の写真
ーー横浜国大との共同研究の内容はどういったものになるんですか?
リノベーションの間取り案の自動生成です。リノベーションを検討している段階であってもプロのプランナーに相談しなければならなかったものを、Webのプラットフォーム上で手軽に間取り変更してくれることを目指しています。例えば、4LDKを2LDKに間取りを変えるとなった時に「リビングを広めにして、和室を無しにして、ウォークインクローゼット作って、寝室は南向きにして」等の特定の条件を入力するだけでレイアウトしてくれるものですね。ゆくゆくは、PCやスマホのアプリケーションで3Dで見れるようにして、家具も配置できるようにしたいと考えています。4月以降は海外の大学ともその研究を進めたいという野望を持っています。
ーー実際に業務で使用されている技術を教えてください。
GAではアナログな従来の不動産業務を自社システムを使って徹底的な業務効率化を図っていて、現在4つの業務で使われています。(下記画像参照:①画像認識によるマイソクの自動読み取り、②仕入れの優良物件スクリーニング、③営業担当による物件レコメンド、④契約書などのデータ入力業務効率化)
仲介業者から毎日数100枚の仕入れ物件の情報(マイソク)がFAXで届き、一つ一つの紙の情報を確認し、仕入れ担当者の知識や経験で仕入れる物件を判断していたところを、画像認識で自動読み取りし、優良物件のスクリーニングをして順位を付けることで価値の高い物件から仕入れ、良質な物件をいち早く顧客へ提供できる流れを実現しています。業務の効率化が図れるだけではなく、たくさんの情報から良い物件を見逃してしまうリスクも防ぐことが出来ます。また、契約書等データ化されていない情報を元々手で転記しいていたものを、GAでは現在全てのデータがデータベースに保管されているため、契約書等の各文書の入力が自動で出来るようになっています。更に、営業担当が顧客に物件を紹介する時のAIによる物件レコメンドは、数多くある物件の検索結果の中で今まで仕入れ担当が売れるだろうと仕入れていた物件を予測してランキングをつけ、表示の並びを変えてくれる機能です。従来のやり方だと、条件に合致する物件が200件になってしまう等、膨大な数になってしまい、知識、経験や人脈に頼らないとどれが売れる物件なのか分からないとい課題がありました。
GAは仕入れから販売・賃貸管理までを一気通貫して担当をしているので、どういう顧客がどういう物件を買って、どういう物件を提案して買わなかったか等のデータが全て残っていて、よりリアルな情報にアプローチ出来るのが強みだと思います。他の不動産ポータルは広告ビジネスが主体のため、どの不動産会社に送客したかの記録は残るものの、顧客がその物件を買ったかや実際に買った物件も分からないので、顧客データをもとにより精度の高い物件を顧客に提案できることが、GAが他社と大きく差別化出来ている点ですね。
ーー競合他社とは一線を越えた取り組みをしていますよね。それを成し遂げるまでに苦労したことはありましたか?
担当者に実際に使ってもらう苦労とデータ化する苦労がありました。(笑) 現場と密にコミュニケーションを取り、我々が良かれと思ってシステムをつくり、その時は現場や社長がいいねと言ってくれていても実際は全然使われていないことがありましたね。常にウォッチングして定期的に打合せして、なぜ使われていないのかを一つ一つ紐解いて障壁を取り除かないと使ってもらえないのは大変ですが、そこをブラッシュアップして使ってもらうように改善していくことはやりがいも大きいです。現場に要望が満たされていて、一緒に作っているツールだなと思ってくれていれば、ありがたいなと思っています。例えば、自社の仕入れシステムである“Tech Supplier”の優良物件のスクリーニングはマイソクの物件情報を自動で読み取って毎日お勧めの物件をレコメンドしていて、最初は物珍しさから、積極的に使ってもらえ売り上げを押し上げる効果を出すことが出来ました。しかし良くない物件の提案から、徐々に信用を失って使ってもらえなくなりつつあるため、現在はスクリーニング機能の精度向上に取り組んでいます。ユーザーの上がっていく期待の部分とアウトプットの部分にギャップが生じると使うか使わないかの判断になってしまうので、そこは今後も意識していきたい点です。
前提として、機械学習は(キレイな)大量データがあることがやりやすさに繋がっているのですが、不動産のデータは全く逆で、少量の汚い様々なデータの集合体のイメージです。不動産は何回も買い物しない高額商材なのでデータが少ない、同じマンションでも間取りや方角が異なるなど一品物であること、内見等のリアルが必ず関わりデジタルだけで完結しないので情報が正確でない場合があること、各社でマイソクの規格もバラバラであることなどなど情報管理やデータ化においては、現在進行形で戦っている課題になります。
社内から改善要望がたくさん寄せられるようになり、我々の取り組みの認知が醸成されてきたことに非常にうれしく思っています。
ーーAI戦略室の今後の目標を教えてください。
まず目先の目標として、GAが顧客と向き合っている領域で顧客にとってのGAの価値をどれだけ上げれるか、言い換えると、GAの持っている商品やプロダクトの価値をより上げる事で、ユーザーエクスペリエンスの価値の向上を目指していきたいと思っています。それを通じて、不動産業界全体の課題である情報の非対称性を解消していきたいですね。自分たちの不動産業をうまく回して、次の展開として、同じような課題をたくさん抱えているはずの不動産業界全体に貢献していくことが我々の使命だと感じています。現在使用している社内システムをエンジニアリングとしてto B向けの販売に結び付けることを徐々に進めていて、先駆けとして他社に自社の仕入れシステムである“Tech Suppler”の機能の一部を販売して、ソフトウェア会社がアプリケーションを展開するのと同じような形で不動産業界全体の業務効率化を実現したいです。その後、不動産業界だけではなく、建設業や金融業、スポーツ業界(※代表の樋口は元J2選手)など、アナログが多く残っている領域にいかに入り込んでいくかを考えています。
また、新たにプロトタイプアプリケーションを共有し、社内で使ってもらう“Tech Labo”というプラットフォームを作りました。アプリケーションの第一弾は、類似物件から、瞬時に適正な家賃推定ができる検索エンジンですが、社内から高い評価を得られています。ラボは実験室の意味で、これから新しい種になるようなものや芽が出てきているようなものを出していて、社内のみんなに使ってもらって意見を聞いて一緒に育てて行きましょうというものです。その中で我々が提供する新しいシーズとみんなのニーズをうまく結び付けていきたいと思っています。プロトタイプとして、まず動くものを見せるとみんなの発言が増えるので、そういう活動を加速させたいなと思っていて、まさに「百聞は一見に如かず」と言いますが、文字や言葉で説明しても、動くものを触ってもらって実感してもらうのでは全然違うのでそれをみんなに体感してもらっています。
不動産のビジネスは物件、人(お客さまや担当営業)、エリアなどが複雑に絡みあって成り立っています。現在は物件のデータを中心に扱っていますが、他社との差別化をより進めていくために、今後は地域や人にどれだけ入り込んでビジネスに貢献できるかが大事だと感じています。不動産の情報のデータ化の難しさもあり、現在は物件を優先していますが、社内外の物件のデータは業界でもトップクラスに充実しつつあると自負しています。
4月にAI戦略室が開設してもうすぐ1年のタイミングで設立時のメンバーから既に2倍の人数になっていることは感慨深いですね。理化学研究所「革新知能統合研究センター」のセンター長である杉山先生が技術顧問に、元SONY COOの久夛良木さんが社外取締役に就任頂くなど、社内外の環境も整ってきたため、これからより活動を加速させていきたいと思っています。
AI戦略室ではヴィジョンを共有できるメンバーを絶賛募集中ですので、少しでもご興味がある方、ご応募をお待ちしています。