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こんにちは!ソーシャルチーム・リードキュレーターの杉山裕美です。
よく面談の際に「キュレーターのお仕事について具体的に教えてください」という質問をいただきます。
キュレーターのお仕事は、クラウドファンディングのプロジェクトを、立ち上がりから資金調達完了まで、一貫してお手伝いします。
プロジェクトの見せ方、伝え方、効果的な広報……プロジェクト達成のために必要なことは何でも一緒に考え、動きます。
具体的にイメージできるように、今日は、その中でも「プロジェクトページ作成」にフォーカスしたいと思います。
事例としてケニアでストリートチルドレンの子どもたちの支援をされている“モヨ・チルドレン・センター(M.C.C) ”さんのプロジェクトをご紹介しつつ、「プロジェクトページ作成の裏側」を追ってみたいと思います。
事例PJ概要:
モヨ・チルドレン・センター(M.C.C) 代表の松下照美さんは、アフリカでストリートチルドレンと呼ばれる子どもたちと23年間寄り添い、生活をしています。ケニアの首都ナイロビから45kmのティカという町で、帰る場所がなく路上で生活をする子どもたちにとっての「家」となるモヨ・チルドレンセンターを運営しています。
そこで子どもたちの自立支援を行っているのですが、リハビリをする上で一番問題になるのが”薬物中毒”です。職業訓練をするためには、まず薬を抜かなければいけません。そこで、農園で子どもたちが自給自足をして暮らすドラッグ・リハビリセンターを完成させるプロジェクトを立ち上げました。
このリハビリセンターが完成すれば、まずは薬を抜くことに集中して向き合い、改善後は、モヨ・チルドレン・センターで暮らしながら、徐々に職業訓練へと移っていくことができるようになるのです。
この松下さん、クラウドファンディングのプロジェクトを立ち上げた時点で、71歳。インターネットを通して、広く呼びかけていくことは、新しい大きな挑戦でした。
(「居場所を失ったケニアの子どもたちに、寄り添い生きる71歳の挑戦」プロジェクトページより 引用;https://readyfor.jp/projects/moyo )
Point.1:このプロジェクトの背骨はなにか
私は、プロジェクトページの構成を作り始める前に、このプロジェクトが他のプロジェクトと違うところ、尖っているところ、軸となる部分は何なのかを見出していく作業をします。プロジェクトを多くの人に応援されるプロジェクトへと育てていくための“背骨”を見つけるのです。
その中で、誰を語り部として、ページを作っていくかも大切です。当初は、モヨ・チルドレン・センターのSNSなどを担当されている男性の方を語り部とすることも検討していました。クラウドファンディングのプロジェクトの拡散の軸はSNSであるので、普段SNSを頻繁にお使いの方を語り部として登場させた方が、知っている方のお顔が見えて、拡散やご支援につながりやすかったりします。広報する際のことも考えながらページ構成を考えます。
しかし、テレビ番組の“世界ナゼそこに?日本人〜知られざる波瀾万丈伝〜 「大切な人の死を乗り越えた日本人」”でモヨ・チルドレン・センター代表の松下さんが取り上げられている回のDVDを見た時、私は衝撃を受け、松下さんを語り部としてページを作ることに決めました。
私が、一番に感じたことは、“今回のプロジェクトは、松下さんのこれまでの人生の延長線上にある”ということです。
松下さんは、かつて、都会での生活に限界を感じ、旦那さまと故郷の山奥での暮らしをはじめました。その中で突然、仕事中の事故で旦那さまを亡くされ、松下さんは、気力を失っていきました。
見かねた友人からアフリカ旅行へと誘われ、たまたま訪れたウガンダの孤児院で親を亡くした子どもたちと出会ったことが、原点にあることを知りました。
悲しみを分かち合うのに言葉はいらず、一緒に泣きながらただただ子どもたちを抱きしめた松下さんは、「なんとかしなければ」との気持ちが芽生えたそうです。
そして、チルドレンセンターの建設をし、路上で薬物に手を出して親が育てることができない状況の子どもたちと一緒に住み、寄り添い生きて、23年。そして今回、クラウドファンディングに挑戦をして、自立支援の一歩としてまずは薬を抜く必要性からドラッグ・リハビリセンターの設立を決意されたのです。
そこは、自然の中で農業をしながら一緒に自給自足で暮らす施設。私は、どこか、それが亡くなられた愛する旦那さまとの故郷の山奥での暮らしと重なっているようにも感じられました。
また、このセンターを作ることが、ドラッグを抜くことに繋がるのか、正解なのかは、松下さんにも分からない。0から1の挑戦を当時71歳の今、やることの意味を感じました。
松下さんは、これから何年間、子どもたちと一緒に居られるのかという思いがある中で、有機農法を取り入れたリハビリセンターで、一人でも多くの子どもたちに笑顔を取り戻すための挑戦をされるのだと知った時、このストーリーは、松下さんを語り部として、描くしかない!と確信しました。
(「居場所を失ったケニアの子どもたちに、寄り添い生きる71歳の挑戦」プロジェクトページより 引用;https://readyfor.jp/projects/moyo )
Point.2:ストーリーの構成
プロジェクトページの軸となるコンセプトは、「アフリカで活動して23年。松下照美さんの0から1を生む新しい挑戦」と決まり、そこから、より共感を生むページにしていくため構成をつくっていきます。
大きく以下の4つの構成でつくっていきました。
▶︎パラグラフ①:松下さんの人物像をイメージさせる
松下さんが子どもたちと寄り添い暮らしていることを印象づける。文章だけでなく、写真を通してビジュアルでも見せていきます。
▶︎パラグラフ②:現状の課題をリアルに描写
路上で、松下さんが出会った子どもたちの状況をエピソードを通して具体的に描きます。自立支援をする上で一番問題になるのは、薬物中毒であることを読み手にも実感させるパートです。
▶︎パラグラフ③:ドラッグ・リハビリセンターで行うこと
有機農法を通じてどのようにリハビリをするのか、また、皆様のご支援で何が実現するのかを伝えるパートです。
▶︎パラグラフ④:未来の展望
松下照美さんが、今、このプロジェクトをやる想いや意味。「何のため」なのかを伝えるパート。抽象度が高くなりますが、実行者さんの心の中が見え、共感できるようなパートにしました。
このように構成が決まれば、後は、そこに肉付けしていく事実のストーリーやエピソード、写真などの素材を集め、まとめていきます。
(「居場所を失ったケニアの子どもたちに、寄り添い生きる71歳の挑戦」プロジェクトページより 引用;https://readyfor.jp/projects/moyo )
Point.3:リターン構成
ご支援いただいた方へのお返し=リターン構成を考える際に大事なのは、「どんな人が」「どんな気持ちで」、お金というかたちで応援してくださるかをイメージすることです実行者さんが用意できるものをリターンとしておくのではなく、まず支援者さまとなり得る“ターゲット層”をイメージすることが大切です。
今回のターゲット層:
・松下さんのことをすでに知っていて、新しい挑戦を応援したい!という人
・ケニアと縁のある人
・国際協力の活動に携わっている人
・初めて知ったが、松下さんの今回の挑戦の背景にある想いを知って、応援したくなる人
そして、上記のターゲット層の支援動機に合わせてリターン内容を考えます。今回の場合は、ご支援のお返しとして何か物が送られてくるよりも、出来る限り、ご支援は「ドラッグ・リハビリセンターのために使ってほしい」と思われる方が多数であると仮説を立てました。
そして、自分のご支援で、ドラッグ・リハビリセンターが建ったんだと実感できることが一番喜ばれると思い、以下のようなリターン案を挙げていきました。
♦モヨ・チルドレン・センターから感謝の気持ちを込めたサンクスメール
♦ドラッグ・リハビリセンター完成の様子をショートムービーにおさめ、支援者様のお名前をエンドロールに掲載
♦ドラッグ・リハビリセンターの家にお名前を掲載。
そして、ご支援単価(3千円/1万円/3万円/5万円/10万円)ごとに、リターン内容をどのように構成していくかを検討していた際、松下さんからこのようなお話がありました。
「みなさんのご支援への感謝は、金額ではかることができません。みなさんの全てのご支援に感謝を込めてお返しをしたい」
通常は、単価ごとにリターンの内容に差をつけることが多いですが、今回は、松下さんの想いを聞き、松下さんの誠実さが表れていると感じました。そのため、背景の説明を記載した上で、全ての金額でのご支援でリターン内容を同一のものにしました。
どのようなご支援が集まったか:
このように、プロジェクトページの軸となる部分を見出し、追加素材を集めて肉付けをしたり、ターゲット層をイメージしてリターン構成をつくり、プロジェクトを公開。共感・応援してくださる方々と実行者さんをつないでいきます。
主な支援者さまの層は、以下のような方々でした。
・アジア、アフリカの国で活動をしたことのある人
・松下さんの講演を聴いたことのある人(募集期間中に松下さんが来日講演中)
・モヨ・チルドレン・センターの会員さま
・松下さんと大学が同じという方
・ケニア在住の日本人
・初めて知った方が、松下さんの誠実さや、熱い想い、行動を尊いと感じご支援
支援者さまからの応援コメント▶https://readyfor.jp/projects/moyo/comments
そして、結果として、第一目標を大きく超えて、160%達成でクラウドファンディングのプロジェクトは幕を閉じました。
今回事例としてご紹介したモヨ・チルドレン・センターさまのプロジェクトページはこちら
▶https://readyfor.jp/projects/moyo
クラウドファンディングは、インターネットを通して呼びかけるしくみではありますが、プロジェクトを立ち上げた実行者さんの熱とエネルギー、そして誠実さを感じたとき、人はその想いを受け取って応援したくなるものだと感じています。
「ありがとう」「がんばってください」という想いが乗った、温度を感じるお金が世の中を流れていき、今日もプロジェクトが実現していっています。
私たちは、ひとつひとつのプロジェクトと向き合い、「何がこのプロジェクトの軸なのか」を見出し、見せ方、伝え方を追求します。
実行者さんが大切にしていることや、メッセージをより多くの方に伝えていき、共感をつなぎ、夢を“かなえる”一歩を応援します。