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プレックスが物流領域で事業を立ち上げた背景
—はじめに、黒崎さんが物流領域で事業を立ち上げた背景について教えてください。
プレックスを創業する以前は、エス・エム・エスという会社で医療・介護業界向け事業のマーケティングや新規事業開発に携わっていました。そこで3年ほど経験を積み、独立することを決め、プレックスを創業しました。
ゼロから事業を創るのであれば、大きな市場に挑みたいと考え、どの市場規模が大きく、競合が少なくて、より高い成長ポテンシャルが見込めるのかを調査していたところ、日本で一番大きな製造に次いで、建設、医療、外食や保険などが続き、7番目に25兆円規模の物流がありました。 最初に物流の領域で事業を立ち上げた理由は、大きく2つあります。一つは、業務構造が比較的シンプルで、プラットフォーム化しやすいと考えたため。もう一つは、EC化率の高まりとともに物流量が増加する一方で、それを運ぶドライバーの担い手は減少傾向にあり、将来的に需要と供給のギャップが拡大していくと見込まれたためです。 そうしてドライバーの人材紹介を始めたところ、2年目で事業が少しずつ回りだし、3年目にはマーケティング、セールス、マッチングなど組織の体制が整ってきました。 そのタイミングで色々と次の展開を模索したのですが、同じビジネスモデルを隣接領域で展開する方がメリットが大きいと判断し、エネルギー領域の人材紹介をスタートしました。当時、米国内で再生エネルギー関連の法案に動きがあり、日本でも同様に関連法案の議論がなされ、エネルギー産業の資格制度や法規制が変更になったことも、参入を決めた理由です。 また、同じく3年目くらいに、人材紹介のマッチングの精度を高めて自動化していけるように、ダイレクトリクルーティングの仕組み作りを始めました。
ミッションを刷新し、拡張した領域とビジネスモデル
—「日本を動かす仕組みをつくる」というミッションにしたのも、2021年12月頃ですよね。
物流とエネルギーの領域で事業に取り組む中で、人手不足や生産性が向上しないという課題は、建設や製造、エネルギーなどの古くからあるインフラ産業で、かつ資格制度や厳しい法規制が存在する領域において共通の課題だとわかり、領域の拡張を見据えて、「日本を動かす仕組みをつくる」というミッションに刷新しました。 日本を動かす仕組みとは、物流や建設、製造、エネルギーなどのインフラ産業と、それらの領域に対して当社が提供する事業やプロダクトの両方を意味しています。 ミッションを再定義した後は、インフラ産業やそこで働くエッセンシャルワーカーを支援するため、物流やエネルギーに加えて、建設や製造などにも領域を拡張しました。 同時に、1人当たりの生産性を高めていくことも、当社が提供する価値の源泉だと考え、インフラ産業の生産性向上を支援するSaaSを展開するなど、ビジネスモデルの拡張にも取り組んできました。
—SaaS以外にも、新たにビジネスモデルの拡張に取り組まれていることはありますか?
今後も人材紹介やダイレクトリクルーティング、SaaSの展開に注力していきますが、それだけでは当社が実現したい成長スピードには及ばないので、産業をより良くするアプローチとして、新たにM&A仲介事業にも取り組み始めています。 近年、物流や建設の領域では後継者不足や人手不足による倒産が増えていますが、倒産により人・モノ・金・情報などの経営資源が産業から流出してしまうと、大きな損失です。当社がM&A仲介を通じて、能力と意欲の高い経営者に経営資源を適切に引き継ぐことができれば、経営資源の流出を避けて、中長期で生産性の向上や業界再編に貢献できると考えています。
成果を最大化する組織の強みと特徴
—創業から複数の領域やビジネスモデルの拡張に取り組む中で、培ってきた強みは何でしょうか?
BtoC、BtoB問わず、会いたい人材や企業にどうすれば会えるのかを突き詰めて考えて作り込んできたマーケティング力と、人材と企業をしっかりと繋ぎ込み適切にマッチングする営業力が当社の強みです。
さらに組織全体で情報の連携を図り、事業の基盤となる無駄のない効率的なオペレーションを設計することも得意としています。
マーケティング、営業、オペレーションの3つがそれぞれ機能し、そこに事業を推進するエンジニアリングが組み合わさることで、高い生産性を実現でき、既存のオペレーションはかなり強固になってきました。
今後はデータとITを駆使して、インフラ産業におけるマーケティングやオペレーションをさらに強化していき、当社の強みや特殊性を磨いていく予定です。
—プレックスの組織における特徴についても教えてください。
「日本を動かす仕組みをつくる」というミッションのもと、日本のインフラ産業全体の課題を解決していくために、人手不足の解決、生産性の向上、業界再編といった大きなテーマの上に事業が成り立っているので、戦略に一貫性があり、組織全体が迷うことなく目標に向かっていけるというのは一つの特徴です。 また、プレックスではあくまでも個々のアウトプットを重視した評価にこだわっていて、プロセスが評価に大きく影響しないというのも組織の特徴だと思います。 特に高い成果を生み出す人たちは、それぞれのやり方を尊重した方が自分の能力を最大限発揮しやすいと考えているので、一人ひとりが「どうすれば成果を最大化できるのか」を考えて行動できるように、余白を残したオペレーションを設計しています。
—個々が能力を最大限発揮できるような工夫があるのでしょうか?
例えば、顧客との対話に集中するためのオペレーションや仕組みの改善、無駄な時間や動きを減らすためのエンジニアリングの提供、業務をサポートするメンバーの適切なアサインなど、生産性をあげるために必要な仕組みやリソースの提供にはかなり柔軟に対応しています。
あわせて、個々の得意な仕事や成果を上げやすい業務について的確に把握し、本人の意向と能力を考慮した業務アサインと、ストレッチな目標設定により、最大限の力を発揮することができるように工夫しています。
そうしたバランスの取れた環境を提供することができれば、一人ひとりがモチベーションを維持でき、成長実感を得やすく、人と組織の成長において理想的な状態を築けると考えているからです。
実際に1人当たりの生産性は飛躍的に向上していて、それが収益率に直接跳ね返るビジネスモデルなので、アウトプットに応じた高い報酬を支払うことができ、年間離職率も4%〜5%程度で推移しています。
需要と供給のギャップに着目して成長を続けるプレックスの戦略
—プレックスの今後の戦略について教えてください。
プレックスは2026年度までにエッセンシャルワーカーのNo.1プラットフォームに、2027年度以降はインフラ産業の経営プラットフォームになることを目指しています。 これまで当社が資金調達をおこなわずに、領域やビジネスモデルを拡張して成長を続けてこれたのは、単に労働需要が増加する領域ではなく、労働需要と労働供給のギャップが拡大する領域に着目したことが大きな要因です。 例えば、物流業界が今まさに直面している2024年問題も、これまで働き方改革が遅れていた物流業界に新たな法律が施行されることで、ドライバー1人当たりの労働時間が制限され、需給ギャップが拡大することで深刻な人手不足に陥ることが懸念されています。 今後、企業は人に向き合った経営をしていかなければ、事業そのものが成り立たなくなる可能性があるので、当社がそうした課題に向き合いながら社会の基盤となる産業の採用を支援していくことは、非常に社会的価値が高いことだと考えています。まずはしっかりとインフラ産業を支えて、エッセンシャルワーカーのNo1プラットフォームとなり、祖業で売上高100億円を達成することが目標です。
—将来的に、他の領域でも需給ギャップが拡大していく可能性がありそうですね。
リクルートワークス研究所の「Works Report 2023」によると、2040年には1100万人の労働供給不足に陥るとの予測があり、労働需要が増加する一方で労働供給は減り続け、労働供給制約によるパラダイムシフトが始まると書かれています。 なかでも最も労働供給不足が顕著なのが輸送・機械運転・運搬などの物流で、次いで建設、生産工程と続きます。医療や介護のように今後も需要が伸び続けて、供給が横ばいで推移する領域もありますが、多くの領域では需要が微増で推移し、供給が下がり続けることで需給ギャップが拡大し、課題がさらに深刻になっていくという見通しです。 このような労働供給制約社会がいきなり訪れるわけではありませんが、その流れにどれだけ抗うことができるかがプレックスの介在価値になるので、そうした社会を前提としたビジネス基盤をしっかりと構築していくことが重要だと考えています。
—さらに、他の領域にまで拡張していく可能性もあるのでしょうか。
これまでも物流領域のドライバーの人材紹介を足掛かりに、エネルギーや建設、製造など、隣接するエッセンシャルワーカーを抱える領域へと拡張してきたので、同様に他の領域に拡張する可能性も十分あるでしょう。また、業界についての理解や顧客との信頼関係をベースに、新たなビジネスモデルにも取り組みやすい立ち位置なので、スピーディーに事業を動かすことができる優位性を活かしていければと思います。
目指すのは日本を動かすインフラ産業の経営プラットフォーム
—売上高100億円に向けて、現時点ではどれくらいのペースで進捗していますか?
前期は売上高が3.9倍になり、10億円を大きく上回るまでに成長しました。今期も3倍程度の成長を見込んでおり、売上高は30億円を大きく超える予定です。その後はCAGR(年平均成長率)50%の想定で、2026年度までには売上高100億円を超える計画です。ただ、ここ数年の成長率と比べるとだいぶ緩やかな想定なので、現状のまま推移すれば2026年度よりも前に100億円に到達する可能性も十分にあります。当社は売上と売上総利益がほぼイコールになる事業構造なので、そこで得た収益を次の成長のために積極的に投資していく予定です。
—2027年度以降に目指している、インフラ産業の経営プラットフォームについても教えてください。
経営に必要な人・金・情報にアクセスできる経営プラットフォームとして、当社が複数の角度からインフラ産業を担う企業の支援をおこない、産業の未来にとって効果的なアプローチをしていくというのが基本的な構想です。 具体的には、人手不足など人材の課題解決はPlex JOB、SaaSの提供による生産性向上はサクミル、企業の将来の方向性や資金調達の支援はM&A支援機構というように、それぞれ独立したサービスを提供し、プレックスに相談すれば複数の経営課題を解決できる状態をつくることを目指しています。 そうして新たな仕組みや武器となるツールを提供するなど、日本を動かす重要なインフラ産業をエンパワーメントし、企業の悩みにより深く寄り添いながら、将来的には経営面や金銭面の支援にも取り組んでいきたいと考えています。
事業成長にともなう、組織拡大と今後の採用方針
—事業の成長にともない、この2、3年で組織規模をどれくらいまで拡大していく計画ですか?
今後はさらに採用を強化し、2024年度までに現在(2023年6月時点)の130名から300名規模にまで拡大していこうと考えています。そのために採用と組織マネジメントの両方がきちんと機能し、300名規模に耐えられるだけのマネージメントラインを整えていく必要があります。事業の成長スピードや組織体制、マネジメントやオペレーションの状況などと照らし合わせながら、適切に人材を採用していく方針です。
—あらためて、プレックスの組織の魅力はどのようなところでしょうか?
圧倒的なマーケティング力と、効率的なオペレーションやシステム設計により、セールスやマッチングにおける1人当たりの生産性や収益性が高い状態をつくってきました。成果を上げやすく働きやすい環境で、業界最高水準の報酬制度が整っています。 マーケティングやオペレーション、高効率なシステムの作り込みと、それによる働きやすさや成果の上げやすさ、収益性の高さが全て連動し、報酬制度が整い採用を強化できる。そうしてさらに将来への様々な投資ができるという循環こそプレックスの強さであり、組織の魅力だと思います。
—今後の成長のために、プレックスが求める人物像について教えてください。
エッセンシャルワーカーのNo.1プラットフォームやインフラ産業の経営プラットフォームを目指すためには、プレーヤーとして活躍したい人、組織を束ねて事業を伸ばしていきたい人、企画をして大きな変数を動かしていきたい人など、様々な役割を担う人材が必要です。
またSaaSやM&Aなど新しい領域においては、社内に揃ってきた人・モノ・金・情報などの経営資源を活用して、社会課題や不満を解決し、収益を生み出す座組を共につくっていってもらうことを期待しています。そのために自ら仮説を組み立てて、物事を仕立て、それを動かしながら最後まで検証できる人材が良いですね。
プレックスの社名の由来は、Play(遊)・Experiment(試)・Output(実)です。そのため全てを与えられて設計された環境で動くのではなく、余白部分を自分なりに思考して、試行錯誤を重ねながら意思決定し、「遊んで、試して、実現する。」を体現できるような人が当社に向いていると思います。
何かを達成・実現したいという意欲があり、自分が何をしたいのか、どうなりたいのかをきちんと持ち合わせている人や、自分の意思で物事に取り組んでいきたいけど、それを実現できる環境が見つからないという人、課題感が多く今後の成長が見込める領域で、社会の役に立ちながら自己成長やチャレンジをしていきたいという人に、ぜひ興味を持っていただけたら嬉しいです。
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