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ペット先進国といわれるイギリスに長期滞在してみて

皆さんこんにちは!

TYLで長期インターンをさせてもらっているホワイトヘッド ニコラです。

先日の記事で留学中のオンライン業務について詳しく書かせていただいたので、今回はペット先進国といわれているイギリスに長期間滞在してみて感じたこと、気づいたことに関して詳しく書いていこうと思います。

イギリスのペット保険・医療面に関して日本との違いを感じた部分に焦点を当ててご紹介します。人間に必要な「衣・食・住」は、ペットでは「医・食・住」と置き換えられるほどペット医療は重要で、TYLも注力している分野です。

イギリスでは服を着ているわんちゃんが少ない、肌感として大型犬を飼育している方が多い、犬連れで入れる飲食店が多くそこにいることに気がつかないほど静かな子が多い、などなど、、、日常的に感じる些細な違いもたくさんありました。

ご紹介したい点はたくさんあるのですが、すべて書くとかなり長くなってしまうため、今回はTYLも参入しているペット医療とその関連サービスにおいて、イギリスで生活しているなかで気になった制度やサービスがどのように運用されているのかを中心にまとめました。

最後まで読んでくださったら嬉しいです。

前回の記事:

長期インターンを通して学んだこと、担当していた業務について | 特集記事
お久しぶりです! TYLで長期インターンをさせてもらっているホワイトヘッド ニコラです。昨年の7月から父の実家がある イギリスのロンドンに留学 していたのですが、3月の初めに帰国しました。イギリス滞在中もオンラインでTYLの業務を継続させていただいていたので、その業務内容と、オンライン期間を含めると1年が経ったTYLでの長期インターンを通して学んだことを書いていきたいと思います。 ...
https://www.wantedly.com/companies/pet-tyl/post_articles/495608


充実の会社数からきっと最適なプランが見つかる、イギリスのペット保険

イギリス(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドすべてを含めて)の人口は2021年時点で6700万人と、日本の約半分です。にも関わらず、飼育されている犬は約900万頭、猫が800万頭と、日本で飼育されている犬900万頭弱、猫約950万頭(※1)という数値と近く、ペットを飼育している人の割合でみるとなんと日本の約2倍あるのです。

ペットとして飼育される動物として不動の人気といえる犬・猫に次いで3番目に多いのがウサギで、約150万羽が飼育されています。次いで、4番目が室内飼育の鳥(インコなど)、5番目がモルモット、6番目がハムスター、7番目がカメ(※2)です。

(参考)

※1:https://news.yahoo.co.jp/byline/ishiimasumi/20221119-00324322

※2:https://1001carpetcare.co.uk/articles/top-pets-best-pet-safe-carpet-cleaner/

日本に多い、展示型のペットショップにおける生体販売は法律で禁止されているため、新しくペットを迎え入れるとなった場合は、

①ブリーダーから購入する

➁動物愛護・保護団体から引き取る

➂個人的に動物を保護、飼育している人からサイト等を経由して引き取る

という方法が主流になります。

以前の記事(https://www.wantedly.com/companies/pet-tyl/post_articles/423009)でご紹介したRSCPA(英国王立動物虐待防止協会)は、英国内の各地域に支部を持っており、その支部ごとにもTwitterやInstagramを運用し、それらのSNS上で保護した動物の写真とともに状態を記載し、里親を募っています。

日本国内でも里親募集掲載サイトおよびアプリの「ペットのおうち」もInstagramを運営し里親を募っており、こんな風にペットを「購入する」以外の選択肢が増え、もっともっと身近になっていくといいなと思います。

話が少しそれましたが、ペット飼育世帯率が高いイギリスではペット保険がかなり充実しているのも特徴です。私が調べたものだけで24のペット保険が存在し、それぞれ他の保険と異なる差別化できるポイントを有しているのが印象的でした。

たとえば、銀行の運営も手掛ける英国最大手スーパーの保険は、Bankカードの所持者に割引が適用されます。ペットに健康面等で何か問題が発生したとき、獣医師や動物看護スタッフと24時間いつでもテレビ電話ができるサービスが含まれている保険、ノミ・ダニの予防薬のオンライン処方サービスを50%割引で利用できる特典付きなど、保険会社ごとにさまざな特徴があるのです。

また、プランも細分化されている保険が多く、病気・怪我のみの保障のプランと、スタンダードプラン、プレミアプランと補償内容、補償額が順々に上がっていき、さらにその上のプランまである場合など、多くの会社で平均3~4段階のプランがありました。保険会社選びに加え、プランの選択まで踏まえるとかなり多くの選択肢から、自分とペットに合ったプランを選ぶことができるでしょう。保険適用対象の動物は、主流の犬と猫に加えウサギまで取り扱っているところもかなり多く、なかには馬(乗馬のための)用のプランまで提供している会社もありました。

ペットの治療は思ったより高額になることも多いため、そんなときに備えて飼い主さんが納得できるプランの保険に入っていることは、ペットへの適切な獣医療の提供という面で非常に重要だと感じます。

現在、ながつたペットクリニックで受付等のアルバイトをさせてもらっているのですが、ペット保険に加入されている方は体感として多くはなく、事実として、日本のペット保険加入率は約16%(※3)と低い水準に留まっています。

(参考)

※3:https://www.au-sonpo.co.jp/pc/pet_nashitype/?CAMP_CD=DR1D003255&utm_source=google&utm_medium=cpc&utm_campaign=B00079_Bycle_CA_G_S&utm_content=Big&argument=y6cIIp1f&dmai=a62bbf8ec662f3&gclid=CjwKCAjwoIqhBhAGEiwArXT7Kw4MZZU7HePgyoy2oA4XK9HAZvCo_qUb5vl48PyRhF9oZePbKIM8dhoCyPEQAvD_BwE

こんなことを書いている私自身、家で飼育しているウサギをペット保険に加入させておらず…イギリスのペット保険だけじゃなく、日本のペット保険も調べないとです💦

自宅に届く、オンラインの薬処方サービス

イギリスにいる間、私は祖父母の家と叔母の家に滞在しており、叔母の家には犬2匹と猫2匹がいました。

犬は2匹とも叔母と叔父の犬として飼育されているのですが、猫はそれぞれ長女(私のいとこにあたります)の猫、末っ子の猫というように所有者たる飼い主が明確に決まっていて、それぞれの部屋に猫のトイレ、エサ入れ、寝床があり基本的には飼い主がすべて面倒を見ると決まっていました。世話をする割合に違いはあれど、家族みんなのペットとして飼育することが多い日本とは、この点でも異なっているなと感じました。もちろん、イギリス国内においても家族ごとに違いはありこのような飼育方法だけではありませんが、一例として興味深く思います。

そんな、叔母の家の犬と猫の名前が書かれた小さな箱が届いていたことがありました。4匹それぞれの名前が書かれていて、中には小さな塗り薬が入っていました。

叔母に何かを尋ねると、「Vets4Pets」という名前のサービスで、月々定額を払うと年間の必要なワクチンに加え、ノミ・ダニ予防の薬を定期的に自宅に送ってくれるんだそうです。叔母が飼育しているラブラドールレトリバーとイタリアン・グレーハウンドは1匹あたり月々およそ15ポンド(2,400円程)、猫は1匹あたり月々12ポンド(1,920円程)で年間にわたって使用する薬が送られてくるのは非常に便利なサービスだと感じました。

日本では獣医師法の決まりで、一度も診察したことがない動物に対して医薬品を送ることは不可能で、似たようなサービスが普及する可能性は現状高くないため、そんなサービスもあるんだ!と、知識として留めておいていただけたらと思います。

新型コロナウイルスの影響で、一定期間外出できない状況が続いたことで「家にいながら享受できるサービス」が世界的に拡大したのではないでしょうか。

前段で紹介した保険に特典として付いている獣医師への質問・相談サービスも完全にオンラインのもので、オンラインであっても事足りる、むしろ通院がストレスになるような場合においてはオンラインの方が適していることもあり、社会の変化に伴って柔軟に変化しているペット医療サービスのこれからの変化を期待しつつ、私自身もTYLでの業務を通してペット関連サービスの変革に少しでも関わっていきたいです。

▲叔母の家の猫(ウィスカス)


▲叔母の家の猫(パッチ)

イギリスでも起き続けているペット遺棄の問題

ここまで、イギリスの充実したペット保険や医療についてを説明していきましたが、私が見たイギリスのペット事情はよいものだけではありませんでした。

私が滞在していたのは2022年7月から2023年3月までの間なのですが、なんと2022年前半は遺棄されたペットの数が前年比で25%も増加(※4)していた年だったのです。RSCPA(英国王立動物虐待防止協会)の報告レポートによると、1月~7月の間で22,908匹ものペットが捨てられていて、その数は2020年、2021年の同期間の数を大幅に上回っていたのです。

(参考)

※4:https://www.bbc.com/news/uk-england-63121411

その理由として、生活費の急激な高騰が挙げられていました。事実、イギリスでは昨年に電気代やガス代、食料品と値段等が軒並み上昇し、生活にかかるコストが全体で増加していました。

以前から労働者による賃金引き上げのストライキが起こっているイギリスですが、昨年はもっとも頻繁にストライキが起こるバス、電車の運行を皮切りに、看護師、救急車の乗組員、空港スタッフ、教師までもがストライキを起こしていたほどでした。経済情勢に翻弄された飼い主が生活費の削減のためにやむを得ず、ペットを手放す選択を取ってしまったことは容易に想像でき、その結果がこの数字なのだと感じました。

ペットを一度家族として迎え入れた以上、最期まで面倒を見ることは飼い主にとって当たり前かつもっとも重要な責任であり、それを途中で放棄することはあってはならないのは言うまでもありません。しかし、これは机上の空論ともいえ、飼い主本人の努力ではどうにもできない事情によって、途中で飼うことができなくなってしまうことは現実では起こり得ます。

イギリスにおいて起きた物価上昇など、何らかの経済的理由、飼ってからアレルギーが発症してしまった、飼い主が何らかの病によって闘病を余儀なくされた、などさまざまな原因で飼育を継続することが困難になってしまうことは容易に起こるのです。

そんなとき、外に捨てるというもっとも最悪な選択を飼い主が下さないような環境を作っていくことも非常に重要であると感じています。里親募集サイト、サービスや各種保護団体に引き取ってもらうなど「捨てる」以外の選択肢を取りやすくしていくこともまた、ペット遺棄の問題において必要不可欠だと思うのです。

これは「ペットを手放しやすく」という意味ではなく、「犬は人について、猫は家につく」といわれるペット(犬猫に限らず)はできることなら飼育者、生活場所が大幅に変わることなく生涯を終えるのが理想です。しかし、十分な餌や住環境が整っていない、飼い主がそのペットの世話をすることが非常な困難な状況においては飼育を継続することは動物福祉(医学的根拠に基づいた動物の精神・肉体に健康が保たれ、かつ幸福であり、環境とも調和している状態を指し、動物愛護とは似ているが少し異なる)の観点から見て、よいとは言えません。

飼われているペットと飼い主の事情、状況を鑑み、そのとき取れるもっとも適切な方法を探しやすく、そして選択しやすくしていく必要があるでしょう。「遺棄」はそれら選択肢には含めないものとし、他の譲渡制度の普及が進んでいけば、不適切な生体販売の抑制にも繋がっていくのではないかと思います。

ペット先進国というのは制度や法律の規則の充足率から見た指標であり、もちろんそれ自体は非常に重要ですが、ペットを愛し大切な存在としてともに生活する飼い主の気持ちには、国によって大きな差はないのではと思います。

私が関わった日本の飼い主も、イギリスの飼い主も、きっとそれ以外の国でも、自分のペットに思うのは1日でも長く健やかに、そして幸せに生きていてほしいという願いだと強く感じました。

誰かに愛されているペットたち、そしていまはそうではなくて新しい出会いを探しているペットたちも、そのすべてができる限り満たされた一生を過ごせるよう祈るだけじゃなく、自分ができる関わり方でいまのペットにまつわる社会の構図を変えていけたらと、この滞在を通し改めて思いました。

▲安価で獣医療を提供している団体のショップの写真(イギリス)

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