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コネクティッド技術で日産を新たなステージへ、プロダクトオーナーに聞く開発の裏側

東京の中目黒。昨今メディアでも取り上げられる機会が増えている自動車業界の変革であるが、その変革を表すキーワード「CASE[1]」の一角であるConnected領域の開発において、少なからぬ存在感を放つチームがある。規模は小さいながらも少数精鋭部隊として活動するこのチームでは、国内外を問わずコネクティドカー[2]にまつわるあらゆるプロダクト開発を一手に担っている。

[1] Connected(コネクティド)、Autonomous(自動運転)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の4領域の総称

[2] インターネットに常時接続することにより、従来とは異なる運転体験の提供が可能となる自動車

[3] https://www3.nissan.co.jp/connect.html

はたして、最先端技術のフロンティアはどのように開拓されているのだろうか? コネクティドカーサービスのプロダクトオーナーを担当する佐藤孝明にインタビューを行った。


佐藤孝明
システムエンジニアとして証券会社のバックオフィスシステム開発を8年担当した後に、ITスタートアップへ転職。プロダクトマネージャーとして複数のプロダクトを立ち上げた後、2020年に日産自動車に入社。現在はコネクティドカーサービス関連のプロダクトオーナーとして新機能の開発に携わる。


■最先端のIoTシステムを使って、「安心・安全・快適・ワクワク」を実現する

――はじめに、日産自動車の中目黒オフィスではどのようなプロダクト開発が進められているのでしょうか?

大きく3つのプロダクトがあります。ひとつ目は日産のコネクティドカーサービスである「NissanConnect」です。これはお客さまに対して、日産の自動車に搭載されるネットワーク接続機能を使い、スマートフォンやスマートスピーカーと接続し移動にまつわる体験をシームレスに提供するプロダクトです。

たとえば、家にいながらスマホから目的地/経由地をカーナビに送信し、移動中はカーナビを作動させ、降車後は最終目的地までスマホのマップアプリで誘導する「ドア toドア ナビ」や、アプリで事前に車内のエアコンをONにして、快適な状態でドライブ開始を実現する「乗る前エアコン」などがあります。

ふたつ目に「NissanConnect」の販促用アプリケーションです。これは、日産の自動車を販売してくださっているディーラーさん向けのプロダクトで、販売員の方が「NissanConnect」のサービスを限られた商談時間の中で、魅力を効率的に伝えるために用いられています。

みっつ目のプロダクトが、モビリティサービス領域のPoCプロダクトです。こちらは「ソフトウェア×自動車」という観点から、新たな価値やサービスの創造に挑戦しています。


日産自動車のコーポレートパーパスである「人々の生活を豊かに」を達成するため、「NissanConnect」 は、コネクティドカーという技術を使って「ヒトとクルマ、ヒトと社会をつなげることで、もっと快適、もっと安心、そしてもっとワクワクする移動体験を提供」することをミッションとしたプロダクトです。

そんなNissanConnectにおけるプロダクトオーナーの役割とは一言で言うと、上記ミッション実現のために「何を作るかを考える/決める、それらをお客さまに適切に届ける」ことです。

お客さまからのフィードバックや、アプリ内の行動ログデータをインプットに改善アイテムを作ることはもちろんのこと、自分たちでシチュエーションを設定し実際にドライブに出かけたりすることでお客さまの潜在的なニーズや課題を抽出し、より提供価値の高い機能やサービスを届けるようにしています。

これらの取り組み以外にも最近ではビジネス開発部署と一緒に、我々の提供価値であるコネクティドとそれ以外の価値を掛け合わせたものを他社/他サービスと価値共創し、新しい機能の企画を行っています。

そして解決すべきニーズや課題を抽出したら、解決に必要なソリューションをデザイナーとエンジニアとともに検討し、PRD/SPECとして定義しています。また必要に応じて車両側の開発部署も巻き込みつつこのような業務を推進します。

――チームではどのような人が働いているのでしょうか?

プロダクトオーナーが属するプロダクトマネジメントチームは私を含めて6人が在籍しています。メンバーの経歴は、モビリティ系のスタートアップやメガベンチャーから中途で入社したメンバーと、社内から異動してきたメンバーがいてハイブリッドなチームになっています。社内異動のメンバーの持つ経験/技術とWeb/IT業界出身メンバーの持つ経験/技術が掛け合わさることで、様々な新しいものが生まれる土壌が作られているかと思います。

また中目黒オフィス全体で言うとイギリス、中国、韓国、カナダ、オーストラリア、チェコ出身のメンバーがいたり、海外在住経験のあるメンバーが多かったり、その他のメンバーのバックグラウンドも豊かなので、比較的多様性を理解し受け入れる組織だと思います。


■スタートアップ時代より裁量が広がった、佐藤の口から出た“日産で働く魅力”

――先ほど、プロダクトマネジメントチームには様々な経歴を持つメンバーが所属していると聞きました。そのなかで、なぜ佐藤さんは日産に転職しようと思ったのでしょうか?

経歴を話すと、私は転職組で日産は3社目です。

新卒で大手Slerにシステムエンジニアとして入社しました。証券会社のバックオフィス向けASPサービスおよびSIサービスのステートメントシステムのエンハンスチームとして、NISAの導入プロジェクトや、新会社へのサービス導入プロジェクトを担当していました。

上司やメンバーにも恵まれ約8年間と長い期間在籍してましたが、お客さまにより近いところでプロダクト開発をしたかったことや、国の制度やお客さまによって定められたシステムを納期までに予算内に高品質で届けるだけでなく「何を作るか」の工程から携わりたい、と考えていた頃に元同僚に誘われてスタートアップへの転職を決断しました。その会社は社員数50人くらいの企業で、プロダクトマネージャーとして複数のプロダクトの立ち上げやグロースを経験するだけでなく、エンジニアやプロダクトマネージャーの採用や開発組織の評価制度の設計など組織開発にも注力してきました。

――そこからなぜ日産に転職しようと考えたのでしょうか?

ビジネスSNS経由で日産からスカウトをもらい、その中にプロダクトマネージャーのカンファレンスに日産が参加し登壇していたこと、それ自体が意外というか興味深いものでした(登壇していたのは入社当時の上司)。もともと私はモビリティサービスに興味がありましたし、今の中目黒オフィスは、大企業の中にある若い組織であることも私自身のキャリアを活かせるのではないかと思いました。

――佐藤さんにとって日産は3社目になりますが、転職して働いてみた感触はいかがですか?

我々の組織では、組織としての目的はきちんと定義され共有されているものの、メンバーの行動は各自に委ねられています。

たとえば今なら、「日本以外のリージョンをグローバルに開拓していく」や「スマホアプリだけでなく、車載アプリも作っていく」など、大きな方針はありますが、それを実現するための行動は各メンバーに委ねられています。何か特定のタスクを指示されることはありません。各人が目的達成のために何をしなくてはならないか、を自ら考え推進していく文化があると思います。正直に言えば前職より裁量は大きいと感じています。

――お話を聞いていると、現場に判断が委ねられるので、課題設定能力が問われる仕事だと感じました。

そうですね。待ちの姿勢だと何も成果が出せないかなと思います。プロダクトや組織に対する課題を自分自身で抽出/設定して取り組んでいく姿勢が特に必要だと思います。


■新機能のリリースは1ヶ月に1度、スピード感を持って開発できる理由とは

――ここまで開発内容やチーム構成を聞いてきましたが、より具体的な業務内容も聞かせてください。車両に関わるシステムには高い安全性が求められますが、この課題をどのように解決しているのでしょうか?

まず、車両に関わるリリースとアプリケーションに閉じたリリースでQAプロセスを分けるようにしました。車両に関わるアップデートに対するQAについては、厚木にある既存の実験部に依頼しE2Eテストを実施してもらうことで新規車両開発のプロジェクトと同様の品質担保を行っています。

2021年初までは「NissanConnect」の全てのリリースに関わるQAを実験部に依頼していたため、リソースやスケジュールの調整等が原因で2-3ヶ月に一度しかリリースできていませんでした。

そのため、我々の組織において、ソフトウェアのQAを専門とするチームを立ち上げ、企画、設計、開発、QA、リリースの一連の作業を自組織内で完結できる仕組みを構築することで、新機能リリースを1ヶ月に1度の頻度とすることができました。この結果、お客さまに対する価値提供の頻度をあげただけでなく、副次的な効果として開発のリズムが出来上がったことにより、一度のリリースにおけるリリース規模も向上していると感じています。

このような取り組みの結果、我々の組織に対する社内からの期待値や評価もかなり向上したのではないかと思ってます。

――素早い動きが求められる業務ですが、どのような魅力や面白さや難しさがあるのでしょうか?

自分が携わったプロダクト・サービスを通じて、世界中の人々の生活に影響を与えることが出来ることが魅力の一つです。今まではスマートフォンアプリやスマートデバイスといったオフボードプロダクトを開発していましたが、これからは車に搭載されるAndroid Automotive OS 上のアプリケーション開発も行なっていくので、移動にまつわる全ての体験をデザインできるようになるはずです。

また、これまで日本をメインにプロダクト開発を進めていましたが、最近は日本以外のリージョンにも領域を広げています。日本の「NissanConnect」のアプリ開発がうまくワークしているという事実があり、これを各国で応用できる基礎ができたと思っています。 「NissanConnect」のコンセプトは「もっと安心・安全」「もっと快適」「もっとワクワク」です。「もっと安心・安全」「もっと快適」を実現する機能は世界共通であると考えていて、この部分は日本と同じようなデザインやプロセスを流用し、「もっとワクワク」の部分でリージョンごとの機能差分をつけていければと考えています。たとえば、ハリウッドとインドの映画は両方面白いですけど、演出や構成が違いますよね。国によって好まれるエンターテインメントの要素が異なるので、国による独自色が出てくると考えています。他リージョンのお客さまのニーズを的確に抽出していくことところに難しさがありますが、異なる文化・意見を受け入れ、粘り強く対応していければ、自分のプロダクトで世界中の人々の生活や価値観に変化をもたらしていけると信じています。


■中目黒オフィスでは新しいメンバーを募集中、プロダクトオーナーとして新たな一歩を踏み出してみませんか?

――ここまで業務の内容や構想を聞いてきましたが、日産自動車では新しいプロダクトオーナーを募集していると聞いています。募集にあたってどのようなメンバーを求めているのでしょうか?

Web/IT 業界におけるプロダクトオーナー・プロダクトマネジメント経験はもちろんのこと、グローバルプロダクトの開発経験やコネクティドデバイス/IoT などハードウェアが絡んだプロダクトオーナー・プロダクトマネージメント経験があるとなお良いです。

またサービスのビジネスモデル構築ができる人も求めてます。私たちはPoCでシェアリングサービスやモビリティサービスを開発し、価値検証までは終えることはできていますが、その後のマネタイズやビジネスモデルを定義しきれていません。ビジネスモデルを構築してPoCプロダクトを実際に世に出していける人にはぜひきてほしいです。

――ビジネスアイデアを構築できる人、という話が出ましたが、コンサル出身の人はどうでしょうか?

どちらかというと事業会社におけるプロダクトマネジメントやビジネスデベロップメントを行なってきた人の方が適していると思います。たとえば、開発チームやUXチームを含むプロダクトオーナーとしてのアジャイル開発経験や、他企業との価値共創、海外を含む大規模組織におけるステークホルダーマネジメント経験があると嬉しいです。日産はグローバル企業なので、海外拠点とのやりとりもあります。そのため、異なる文化・意見を受け入れ、他人の意見も冷静に検討しつつ、積極的にコミュニケーションを図れる方であれば活躍できると思います。

――実際に海外メンバーとのコミュニケーションも多いのでしょうか?

ルノー・日産・三菱のアライアンスもあり、バックエンドの開発チームは外国籍のメンバーがほとんどですので、ドキュメントは英語で書かれてますし、英語でのコミュニケーションは一定程度必要になるかと思います。

――ちなみに、チームの皆さんはどのような働き方をしているのでしょうか?

現在は原則リモートで私個人で言うと2週間に1回程度オフィスに行ってます。出社等の働き方のルールの柔軟性はかなり高いと思います。とはいえ車に関わるプロダクトですし、実際に車を使って顧客ニーズの洗い出しをしたり、フィージビリティスタディを行ったりするので、ソフトウェア開発のみをおこなっている会社に比べると出社するケースは多いと思います。

――最後にこの記事を読んで「応募してみようかな」と考えている人へ後押しをお願いします。

日産の中目黒オフィスでは、自分が関わったプロダクトを通じて、世界中の人に影響を与えることができます。さらに今後は新技術の導入も増えていくでしょう。新しいIoT機器との連動や、デジタルキーでリモートでの車の貸し借り、GPSの盗難追跡など、急速に進化していく技術領域に携われます。

影響範囲が大きい仕事ですし、開発者としても貴重な経験になるはずなので、ご興味がある方はぜひお話を聞きにきてください。

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