荻原 眞也|UXリサーチャー
四年制文系私大卒業後、2020年新卒入社。入社後2年目まではビジネスアーキテクトグループに所属し、未経験ながらシステム運用業務に従事した。3年目から社内で事例の少ないUXリサーチプロジェクトを推進。4年目となった現在、UXリサーチの社内文化醸成をミッションに努めている。
仮説を立て、本質的な解決策を見つける
Q 荻原さんはどのような経緯で未経験からUXリサーチに挑戦するようになったのでしょうか。
A 新卒入社後、ビジネスアーキテクトグループでシステム運用業務を行っていたのですが、漠然と停滞感を感じていました。システム運用業務の世界では「こうすべき」という正解がある程度存在しています。そのため、すでにある正解を知っているかどうかが前提となる仕事内容に、情熱をもって取り組めない自分がいたのです。どうにか状況を変えたいと思っていた頃、社内のUXリサーチャーの募集を知り、「プロダクト改善のため、仮説を立ててユーザー体験を精緻に調査していく仕事」に興味を惹かれました。
仮説を立てて、本質的な解決策を見つけるのが好きです。例えば、高校時代に所属していた野球部で、監督から渡された全員共通のメニューをこなすだけの練習に疑問を持ったことがありました。「自分の苦手なことを克服することが活躍につながるのではないか」と仮説を立て、苦手だった変化球を克服するためのバッティングメニューを練習に取り入れました。そのおかげで、試合で変化球が楽に打ち返せるようになったのです。この経験から、仮説を立てて、本質的な解決策を実行することの大切さを実感しました。
UXリサーチはユーザー調査から本質的な解決策を探る仕事です。自身の特性とUXリサーチの業務内容を照らし合わせると、好奇心を持って取り組めそうだと感じ、立候補したのです。
よりよいプロダクトのためのUXリサーチ
Q これまでにどのようなUXリサーチをされたのでしょうか。また、業務の中でどのようなことを意識されているのでしょうか。
A 最初に取り組んだ業務は、BtoB決済代行サービス「NP掛け払い」のためのリサーチでした。「NP掛け払い」利用者の資金繰りの実態を知ることが「NP掛け払い」で助けるべき人が明らかになると考えました。さまざまなセグメントを検討したうえで注目したのが飲食業界でした。飲食業界は他業界と比べて開業のハードルが低いことが特徴です。そこで、「開業のしやすさが資金繰りの差を生み出しているのではないか」と仮説を立てたのです。
経営者へのインタビューの結果、経営年数が短い方は、ノウハウが蓄積されておらず、資金繰りに苦労していることが分かりました。一方で経営年数が長い方ほど経営ノウハウと人脈が蓄積されていることで、資金繰りの苦労につながりづらいことが明らかになったのです。この結果を経て、NP掛け払いとしての新たな施策のアイデアにつなげることができました。
「リサーチを実施して終了」ではなく、プロダクトの改善実行フェーズまでいくにはどうするとよいのか日々模索しています。UXリサーチはあくまでも判断材料の一種でしかありません。リサーチ結果をプロダクトの改善に活用できてこそ価値のあることですから、常に成果のあるリサーチを心がけていきたいです。
UXリサーチを社内の当たり前に
Q 荻原さんが取り組んでいることや、今後の目標などを教えていただけますか。
A UXリサーチを社内の当たり前にしたいと思っています。UXリサーチを自分の所属チームだけでUXリサーチができても、その影響は限定的なものです。社内の誰もがUXリサーチを業務に反映できるようにUXリサーチ入門書を現在整備しています。UXリサーチを社内に浸透させることで、そこから使いやすいサービスにつながっていくと考えています。
さらに、中長期的には「探索型リサーチ」にも力を入れていきたいと思っています。「探索型リサーチ」は、仮説の検証ではなく、新しい価値観や潜在的なニーズをリサーチする手法です。探索型リサーチは、見慣れない遠くの土地で原石を探すようなものです。難易度の高い方法ですが、これまで見つからなかった大きな発見が得られる可能性があります。探索型リサーチのために意識していることは、「とにかく発見を増やすこと」です。意外なジャンルの物事にも積極的に目を向けることを続けていきたいです。
これからもUXリサーチを通して、本質的なニーズを探求し続けたいです。良いプロダクトは、すでにある正解からではなく、新しい課題から生み出せるものだと考えていますので、常に当たり前を疑い、本質的な課題発見から解決につなげていくことで、プロダクトづくりに貢献していきたいです。