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10年に一度の学習指導要領改訂により、教育業界はいま大きな変革の時を迎えています。未来の社会を担う子どもたちに、私たちができることは何でしょうか。今回は、ライフイズテック執行役員の丸本に、ライフイズテックが目指す未来、そして中高生向けプログラミング学習教材「ライフイズテックレッスン」のカスタマーサクセスについて聞きました。
Profile
執行役員 事業開発Div 事業部長
丸本 徳之(Noriyuki Marumoto)
慶応義塾大学文学部卒業後、株式会社リンクアンドモチベーション入社。人事制度の設計やビジョン策定〜風土改革など、組織人事領域でのコンサルティングに従事。ライフイズテック株式会社にジョイン後は、キャンプやスクールなどtoC事業を統括後、2020年に自治体・学校向けの新規事業を立ち上げ、SaaS型プログラミング教材「ライフイズテック レッスン」を提供。30万人以上が学ぶシェアNo.1の状態を実現。
プログラミング経験のない先生をサポートしたい
ー まず、ライフイズテックとはどのような会社でしょうか。
ライフイズテック(LiT)は、2010年に「中学・高校生の可能性を最大限伸ばす」ことを目的に創業し、IT・プログラミング教育サービスを提供している会社です。今でこそ若年層向けのプログラミング教育サービスも増えてきましたが、当時は先駆け的な存在だったと思います。
当初は「大学生が子どもたちにアプリやゲームの作り方を『直接』教える」というサービスからスタートしました。しかし、地域格差を超えてサービスを届けたいと考え、ディズニーさんとともにディズニーキャラクターがプログラミングを教えてくれる学習教材「テクノロジア魔法学校」を作り、全国の子どもたちにプログラミング学習の機会をお届けできるようにしました。
そして2020年、50年に1度とも言われる学習指導要領の大幅改訂により、『学校の中』でプログラミングを学ぶ必要が出てきました。小・中・高と段階的にプログラミングやデータサイエンスの知識・スキルを学び、2025年からは大学共通テストにも「情報」が加わることになりました。一方で、こうしたプログラミング教育に習熟した先生方は、全国的に圧倒的に不足しているのが実情です。そこで、プログラミング教育の経験に乏しい先生方をサポートし、全国の子どもたちが十分にプログラミングを学べる機会をお届けしたいと考え、私たちがこの10年間で培った「子どもたちがプログラミングを楽しく学べるノウハウ」をプロダクトに詰め込みました。それが中高生向けプログラミング学習教材「ライフイズテック レッスン」です。
ー 文部科学省も大きな予算をつけて、学習環境のIT化やプログラミング教育の導入を推進しているそうですね。
私たち大人が、仕事やプライベートで一人一台パソコンを使うのは当たり前ですよね。その状態を、これからの社会で働く子どもにも届けようというのが「GIGA スクール構想(※1)」です。4,000億円ほどの予算がついており、国の本気度を感じさせます。
※1 GIGAスクール構想:2019年に開始された、小中高等学校など全国の教育現場で、生徒1人に1台のコンピューターと高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組み。「GIGA」は「Global and Innovation Gateway for All(全ての児童・生徒のための世界につながる革新的な扉)」の略。
情報活用能力を鍛えるためにプログラミングを中心としたITスキルを学習したり、それを活用した問題解決力を育むのが目標です。
このように、教育環境にも学習内容にも一気に変化が押し寄せ、加えて2020年からはコロナ禍への対応も重なってしまった。先生方はやるべきことが山積で、非常に困っています。私たちも少しでも力になりたいという思いで教材を提供しています。
ー 「プログラミングを教えるためにプログラミングの先生を採用」とはならず、今いる先生で何とかプログラミングを教えようとしているんですね。
皆さんは中学生の頃、「技術」という科目があったのを覚えているでしょうか。私たちの頃はハンダゴテやノコギリを使った授業を担当していた先生が、今はプログラミングも教えることになっています。これが難しいのは一目瞭然ですよね。一方、「これからの社会で活躍する人財を育成していくためにも、小中学生からテクノロジーを学ぶべき」という国の方針は非常に理解できます。
しかし、技術の先生が不安を抱きながら教えても、子どもたちの理解も浅いままになってしまうかもしれません。それどころか、プログラミングやITについて苦手意識を持つ子どもが増える恐れさえある。それは非常にもったいないですよね。
「ライフイズテック レッスン」は、『自学自習型』のEdTech教材になっています。ネコの姿をしたAIティーチャーが、順を追ってお題や手順を解説してくれ、それに沿って子どもたちが『作りながら学べる』仕組みになっています。先生方はリアルタイムに生徒一人ひとりの進捗を確認でき、必要に応じて声がけやサポートを行いながら授業を進めて頂きます。つまり、これまでのような、先生が全てを理解・習熟した上で一斉授業を行う形式ではなく、いわば『コーチ・メンター』としての立ち位置で、生徒一人ひとりの学習に寄り添い、生徒同士の学び合いも見守りながら、必要な知識やスキルの習得を目指す授業スタイルになります。 こうしたEdTech教材を用いれば、先生もゼロから授業を組み立てる必要はなく、また、生徒一人ひとりと向き合う時間が増えることにも繋がります。何より、子どもたちがそれぞれのペースで学習を進められます。
また、私たちが提供するのは「効率的なプログラミング知識のインプット」にとどまりません。学んだプログラミングスキルを活かし、「身の回りの問題を解決する体験」をお届けしています。私たちは、年に2回プログラミングスキルを問題解決に活かすコンテストを開催していますが、母親が作ったキルトの販売サイトや、地元・八丈島の名所をドローンで空撮した動画を掲載したサイトなど、大人でも驚くようなクオリティの作品が出てきます。
このように、子どもたちがただ知識としてプログラミングを学ぶのでなく、それを使って何か作り出せたり、社会に働きかけられる。そんな体験を届けたいと考えて、教材を提供しています。
現在、小学校ではScratchなどを用いたノーコードのビジュアルプログラミングが主流ですが、高校ではPythonなどの言語を用いたテキストコーディングによるプログラミングが必履修になっています。小・中・高での学びの階段がうまく設計されています。一方で、これまで先生方ご自身がそういった段階的な学びをされてきたわけではありません。Pythonに触れたことのない先生が教えるのはさすがに難易度が高い。私たちは、その部分を学習コンテンツでサポートし、プログラミングの概念を学ぶことはもちろん、問題解決につながるプロダクトを作り出せる人材を育てていきたいと思っています。
「半径50cmの問題解決」から、世界で活躍できる大人へ
ー 丸本さんがLiTにジョインされた経緯を教えてください。
今でこそテクノロジー教育の世界にいますが、大学はド文系で文学部でした。当時から「教育に携わりたい」という思いがあり、新卒で組織コンサルティング会社のリンクアンドモチベーションに入社しました。そこで社会人向けの研修やトレーニングを担当したのですが、経験を積めば積むほど「もっと早く知りたかった」と思うことが多くなりました。モチベーションアップに効果的な再現性あるロジックや、チームをより推進するためのフレームワークなどに触れ、もっと早くに知っておけば人生が変わったのではないかと感じたのです。
LiTと出会ったのはその頃でした。教育は、これからの社会で活躍し、社会をより良くできる人材を育成すること。つまり、今後の社会から逆算して設計する必要があると思うのですが、社会の変化に比べて、日本の教育システムはこの戦後70年で大きく変わってきませんでした。
「社会は大きく変化している。今後を見据えて必要な力を育成する教育事業に携わりたい」と思っていた時に、LiTに出会いました。プログラミングそのものを学ぶことを目的とせず、これからの社会で求められる問題解決の手段としてプログラミングを学ぶというコンセプトに大変共感しました。また、それを押し付けがましく教えるのでなく、子どもたちが「楽しい」と思える学習体験にこだわっているアプローチ方法にも大変共感しました。
そして何より、コンセプトに終わらずに実際にそういった場やサービス・プロダクトを形にしている実装力に感銘を受けました。
今、教育環境が大きく変わる中で新しい教育の必要性が叫ばれ、たくさんの議論がされています。しかし、私としては議論も大切ですが、何よりもその議論をプログラムやプロダクトとして形にすることが大切だと思っています。議論だけでなく形を作る。それを真似したり、参考にして別のものを作ることを繰り返すことで、業界全体が底上げされると考えています。私たちも社内で議論はしますが、常に評論家でなく『体現者』でありたいと考えています。
ー ただプログラミングスキルを教えるのでも、市場があるからやるのでもなく、プログラミングを通して問題解決できる次世代の人材や社会を育みたいということですね。
プログラミングを、「自分の思いやアイディアを形にできるツール」として習得してほしいと考えています。
たとえば、学校の席替えアプリを作った小学6年生がいました。先生が決めた席だと生徒の不満が出る。でも自分達で席替えをしようとすると、その決め方で揉めてしまう。
そんな状況にあった自分のクラスの席替え問題を解決するために、出席番号をランダムに座席表に振り分ける席替えができるシステムを作ったのです。プログラミングは問題解決のツールであり、自分には世界を変える力があることを実感してほしい。そのきっかけを届けていきたいと思っています。
しかも、アプリは広く公開もできる。自分が欲しくて作ったアプリを誰かが使い、その人の周りも変えられる。私たちは「半径50cmの問題解決」と呼んでいますが、身近な問題を解決できることが一度わかると、段々とその半径を拡げていって、家族の、学校の、日本の、そして世界の問題を考えるようになります。それがアントレプレナーシップやイノベーションと呼ばれるものの源泉であり、その思考を伝えることが事業の目的です。これまではITキャンプやスクールという学校外の場でサービス提供してきましたが、ライフイズテック レッスンを通してやっと学校内でもサービス提供できるようになった。これは非常に大きなインパクトに繋がると思っています。
先生と向き合い、プロダクトをブラッシュアップ
ー 非常に大きな展望があると思いますが、その中でカスタマーサクセスはどんなことをするポジションですか?
「ライフイズテック レッスン」は授業を行う先生向けのサービスです。プログラミング・問題解決・PCを使いながらの授業と、初めてづくしの環境で、先生がうまく授業ができるよう導くのがカスタマーサクセスの役割です。先生方に信頼いただくことが「来年も使いたい」との継続性につながり、事業が成長し、サービスを拡充できる。その起点となるカスタマーサクセスは非常に重要なポジションです。
現在は10名弱で対応していますが、導入校数が増える中で、体制の強化が必要になってきています。全国の中学・高校約15,000校に対し、昨年度時点でシェア17%に至ってますが、今年度はシェア35%を目指しています。
カスタマーサクセスは大きく2つの部署に分かれます。1つ目が、大きな流れを決める企画部。各学校の状況をしっかりモニタリングし、つまづきやすいポイントを把握したうえで適切な施策を企画し、全国の学校に展開します。もう1つは、その大きな流れの中で一つ一つのペインポイントを解消するカスタマーマーケティング部です。授業準備・実施・評価など、各フェーズにおけるペインポイントを乗り越える施策を推進します。先生へのトレーニングや、資材を提供するのもカスタマーマーケティング部が担っています。
最近は自治体単位でも導入いただくことが増えてきたため、個別の学校のみならず、県や市レベルでの『地域』単位でのサポートも求められています。例えば福岡市を担当するカスタマーサクセスは、各校の状況を把握し施策を進行しつつ、地域全体の取り組み状況をまとめて自治体にレポートしています。市内のある学校で出てきたベストプラクティスを、60〜70校ある市内の全中学校に広げていく活動も担っています。
ー Saasプロダクトなので、データを見てペインポイントやサクセス施策を探ることもあるのでしょうか?
まだまだプロダクトの中だけで完結するものではなく、プロダクトとカスタマーサクセスはセットです。プロダクト上の数字で子どもたちの進捗はわかりますが、先生がうまく授業ができているかは、現状のデータだけでは把握しきれません。今後、こうしたデータをいかに取得するかの探究も進めていきたいですね。
今は非常に引き合いが多く、導入が加速しています。どの学校も定型的に導入いただくのではなく、自治体や学校ごとに考えながら対応しています。一方でお客様が1,600校いらっしゃいますので、なるべくレバレッジが効くサポート施策や、テックタッチの強化など、仕組みの強化も考えています。
ー カスタマーサクセスを担うには、どのようなスキルが必要でしょうか?
まず論理的思考力(構造化力)が必要です。現場の一次情報が非常に大切なので、各学校の先生がどのように教材を使っているかを細かい解像度で見て、それを抽象化・構造化し、すべての学校に使える施策に落とし込む。そんな具体と抽象を往復できる思考力が求められます。
また、顧客志向は欠かせません。教育業界や学校には独特の慣習やそれぞれの教育方針があるので、そのルールや思いをしっかり理解した上で探究心を発揮し、走りながら最適解を作っていくことを楽しめる方が合っていると思います。
プロジェクトマネジメントを経験されているとなお良いですね。コンサルとして顧客の整理されていない課題を構造化し、アプローチを提案されていた方、業務改善に向けて現状の課題を把握したうえでソリューションを提供されていた方などは、間違いなくご活躍いただけると思います。
ー 会社のカルチャーはいかがですか?
オープンでフランクな雰囲気です。私たちは戦後70年間大きく変わってこなかった教育を変革しようとしているので、逆にいうと誰も正解を知っているわけではありません。だからこそ、決まった答えに向かうのではなく、みんなで正解を作っていこうとしています。誰が正しいかではなく、何が正しいかの議論をしないと、事業は推進できません。だからこそ、オープンでフランクな風土を大切にしています。
会社で約100名、事業部では30名弱のまだまだスタートアップなので、フラットな組織の中でそれぞれの役割をはたしつつ、コトに向かって仕事をしいたいという方がご活躍いただけると思います。逆に、曖昧なテーマを抱えながら進むことが多いので、「走りながら考え、作っていく」という状態が楽しめない方には苦しいかもしれません。
教育現場から次の社会を変えていく
ー LiTのカスタマーサクセスのやりがいはなんでしょうか。
まずは、一点の曇りもなく「自分たちは良いことをしている」、と言える点ではないでしょうか。
日々、ユーザーからの嬉しい声に接することができます。
先生からは、「一人ひとりの状況に合わせた声がけや指導ができるようになった。ライフイズテック レッスンのおかげで教師になってずっとやりたかった授業ができました」「子どもたちに知識だけではなく、自分にも出来るという成功体験を届けられた」という声。
生徒からは、「難しいイメージのプログラミングが分かるようになった」「自分にもWebサイトやプロダクトが作れるなんて思ってなかったのでとても自信になった」「今後の進路の考え方が変わった」
などの声を直接いただきます。
学校の先生たちを通じて新しい学びを提供できれば、その向こう側に1クラス40人、学年で200人の生徒さんがいる。その先生が30年勤続されたら、約6,000人の中高生にインパクトを与えられることになります。現在、32万人の子どもたちが、先生を通して、ライフイズテックレッスンを使い、プログラミングを活用した問題解決を学んでいます。松下村塾で吉田松陰に学んだ人々がこの国を動かしたように、先生のマインドやスキルが少し変わると、非常に大きなインパクトに繋がるのが面白いところです。
先生方が変われば、その先にいる子どもたちに良い学習体験が届けられる。
だからこそ、1校1校に寄り添い、N=1の声を大切にしながら、そこから集まった声や状況を元にプロダクトやサービスに活かし、よりインパクトが出る施策に展開していく。そうすることで学校の先生を通して、これからの社会で必要な力が子どもたちに広く届いていく、教育のインパクトを発揮するのがLiTのカスタマーサクセスです。
また、文部科学省や経済産業省が、これからの時代に向けた教育を作ろうと様々な議論を重ねていますが、我々からも情報提供できる機会をいただけるようになってきました。日本の新しい教育を作っているという喜びと、我々の一挙手一投足が次の国の教育のあり方を変えていくという緊張感もあります。そうしたポジションで、次のイノベーティブな世界を作っていけるのは大変やりがいを感じる点です。
ー 最後に、応募を検討されている方にメッセージをお願いします。
教育は非常に面白く、大きな可能性があります。そしてまさに今、大きく環境が変わり、困っている先生方がたくさんいます。
一方で、「教育は大事」という考えを持つ優秀な方がたくさんいながら、これまであまりビジネスフィールドから教育の世界に参入される方は少なかったように感じています。あまりビジネスとしてのスケーラビリティを感じられないのが原因かもしれません。しかし今、教育を取り巻く環境は大きく変わってきています。国も、民間の知恵や力を取り込みながら、大きく教育を変えようとしています。
私は「ライフイズテック レッスン」をさらに大きく育てて、良い学びを届けることはもちろんですが、教育がビジネスとして成立することを証明することで、優秀な人が教育の世界にもっと流れ込んで来るようなく世界を作りたいと思っています。
面白いフィールドを約束します。ぜひ話だけでも聞きに来ていただけると嬉しいです。