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【そねせん!第6回】「ネクタイ事件」で学んだ、本当の問題解決 -ポジティブ思考でいこう-

こんにちは。ランサーズの曽根です。「そねせん」シリーズの第6回目、今週からビジネス・ノウハウ編に入ります(ビジネス・ノウハウ編→事業・戦略編、経営・組織編と続きます)。

キャリア・働き方編をコンプリートしてここまでリピートしてくださった皆さん、ありがとうございます。ノウハウ編から読むという方、はじめまして。「難しいことを易しく、易しいことを面白く、面白いことを深く」という感じのコンテンツを目指しています(そうなっているかどうかは別として・・・)。

ではでは、ビジネス・ノウハウ編、はじめていきたいと思います。

すべての問題解決は、問題の認識から。正しく問題を特定することが何よりも大事。

何から書いていこうかと考えて、やっぱりここから始めようと思います。

問題解決。

懐かしい響きと、原点としての奥深さと、プロフェッショナルとしての矜持と。個人的には、いろいろな感傷が同居するビッグワードです。

そもそも、「問題」ってなんでしょう?

禅問答みたいに聞こえますが、ビジネスの世界では、問題(=Problem)とは「理想(あるべき姿)と現実(現在時点)とのギャップ」と定義できます。

一方で、「そのギャップをどのようにして埋めるか」という意思を伴うものが課題(=Issue)。「問題」というと客観的かつ批判的に聞こえますが、「課題」というと自分ごと化されてグッと主体的になりますね。

この課題を因数分解して、優先順位をつけて、その中で重要な課題に対して仮説を考え、施策に落として実行する。(さらにいうと、実行した施策の効果をみて仮説の是非を検証して、よければそれを仕組みにする)

これ、言葉で説明すると、とても簡単に聞こえますね。

でも、実はこのステップには無数の落とし穴が存在します。

その一つが、「そもそも問題は正しく認識されているのか?」ということ。

たとえば、以下の記事なんかによく書かれていますが、どうしても、「目の前の問題(らしくもの)」という現象に目がいってしまう。

http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/1310/29/news017.html

「この企業の問題は長時間労働にある!」とメンバーが言っていたとします。 本当ですか? それだけですか? そもそもなぜ長時間労働になっているのですか?

「この商品の問題は競合に比べて機能が劣っていることにある!」と言っている商品設計担当者がいたとします。 本当ですか? 機能が良ければ売れるのでしょうか? そもそもなぜ競合に比べて機能が劣ってしまっているのでしょうか?

最初に認識・特定された問題が間違ってしまうと、その後のすべての活動・取り組みは無駄になってしまいます。

これからのAI時代において、おそらく、意思決定とならんで、もっとも人間の本質的な洞察が試されるところ。それが「問題の特定」です。


良い課題とは?「本質的選択肢×深い仮説×答えが出せる」課題は全体の約1%

これ、安宅和人さんの『イシューからはじめよ』でも繰り返し言われていることですね。(ちなみにこの本、すべてのビジネスパーソンにとって必読の書だと思っています。ここからの話は、ほぼ、安宅さんの著作に書かれている内容のまとめです)

安宅さんがおっしゃっているのは、問題(=Problem)の特定を見間違い、そこから設定した課題(=Issue)を見極めずに、ただひたすら作業(=Task)をこなすのは、「犬の道」であると。

では、良い課題とは何でしょうか?

まず前提として、課題を設定するときの表現方法から。

問題を解決するためのものなので、「なぜxxが悪いのか?」「●●の市場規模はどうなっているのか?」は良い課題とは言えません。

「どちらにいくべきか?」「何を行うべきか?」「どう進めるべきか?」といった、WHERE, WHAT, HOWといった質問形式にすると、グッと課題としての「迫ってくる感」がかわってきます。

どうでしょう? 批判的にならず、主体的に自分ごと化して問題が解決できそうな感じがしませんか?

前提をふまえたうえで、さらに応用編。良い課題の共通点は何か?

結論からいうと、①本質的な選択肢である、②深い仮説がある、③答えが出せる、の3つになります。

①本質的な選択肢である:その答えを出すことが、先の方向性に大きく影響を与える
②深い仮説がある:「常識を覆すような気づき」「新しい観点での説明」がある
③答えを出せる:いまの自分の状況・手段で答えを導き出すことができる

これ、さらっと読み流してしまうかもしれませんが、少しでもじっくり考えたことがある人は、深くうなずくことがあったりするんじゃないでしょうか。

たとえば、こんなイメージです。

「いやぁ、まさにそれ、どうしようか議論してたんだよ。3年後にうちの事業部の営業利益率を10%から15%にするために、あたらしい料金体系にするべきかどうかって。ここ3か月で競合もどんどん新プラン導入してきているしね」(=①本質的な選択肢である)

「え?変動的な従量課金モデルから固定的な会員制モデルに変えるべき?でもそれって短期的には利益率下がらない? え?試算すると翌年度には営業利益率はいったん8%に下がるけど、3年後には15%まであがる?そうなの?」(=②深い仮説がある)

「でもいくらなんでも変更しすぎじゃない? え?海外ではカテゴリー特化型でこのモデルが流行ってる?そうなの? うちで最近ローンチした新カテゴリーだけ切り出してユーザーテストできるって?開発部長がそう言ってたの? いいね、じゃあすぐやろう!」(=③答えが出せる)

ちなみに、安宅さんいわく、世の中の「問題といわれているもの」の98%は単に「気になる問題」であり、「本当に解くべき問題」は2%。そのうち、「答えが出せる」問題はさらにその半分、つまり全体の1%であると。

目をそむけたくなる厳しい内容です。。が、頭にたたきこんでおきたい事実だと思います。


問題解決に必要な心得・技術・方法。もっとも重要なのは心得=”So What?”と”Why So?”

では続いて、問題の解決に必要な要素について説明していきたいと思います。

問題解決のステップ(問題の特定→課題への分解→課題の優先順位づけ→課題に対する仮説の設計→仮説にもとづく施策の実行→施策の効果検証→施策の仕組み化)についてはすでに述べた通りですが、どうやったらそれができるようになるのか。

ここからは、スライドのオンパレードです。

これまでのキャリアの中でたぶん15回くらいプチセミナーみたいなものをやってきていますが、たぶん一番説明してきた内容です。実際、この内容だけで、演習コミで2時間くらいのトレーニングやったりしたこともありますw

簡潔に、問題解決の①心得(Mindsets)、②技術(Skillsets)、③方法(Toolsets)、という形で説明していきます。

まずは、①の心得(Mindsets)から。

重要な心得は、”So What?”と”Why So?”です。英語で恰好つけてんじゃねえ!という方には、「それで?」と「なんで?」と言い換えましょう。ただし、日本語にした瞬間に、他人から嫌われる確率が跳ね上がります(いや、そもそも英語で言わないでしょ、というツッコミはなしで・・・)

スライドの通りなんですが、たぶん、問題解決においてはこの心得がもっとも重要だと思います。

特に、“SoWhat?”。たとえば、ある企業での新サービス企画の部署での会話。「インスタ、ほんと最近はやってきてるよね」「で?」「リア充アピールからのインスタ疲れとか出てくるんだろうね」「で?」「じゃあさ、リア充代行サービスとかどう?あ、それか、毎日のご飯をただアップする機能に特化したインスタっぽいやつとかどう?」。それぞれ、全然トーンが違いますよね。つまり、未来を予測して自分ごと化するということです。

次に、②の技術(Skillsets)です。

重要な技術は、MECEとフレームワークです。いやぁ、個人的にはもう相当なこそばゆい感じです。MECEって言葉、昔使ってたなぁ(=もう使わなくなったなぁ)、と。

MECEについてよく伝えているコツは、「粒度をそろえる=同じレベルのものを並べる」ということ。「フルーツとミカン、どっちが好きですか?」とか聞かないこと。困っちゃいますよね? でも、ビジネスの現場でこれをやっている人、結構いるんです。

フレームワークのコツは、「踊らされない」ことです。カッコよく聞こえる分、試しにつかってそれで満足しちゃうんですよね。使ってなんぼ、でも使われたらダメ(孤独みたいなもんですね。孤独を恐れるな、でも孤独に溺れるな、的な)。フレームワークは修行です。武器にできたら強いので、しっかり味方にしましょう。

最後に、③の方法(Toolsets)です。

ロジックツリーとピラミッドストラチャ、もしかすると、一度は耳にしたことがあるかもしれません。

これ、特にロジックツリーについては、社内で研修的にトレーニングやるときは、必ず演習でお題を出して、「うちのxxのサービスの事業KPI書いてみてください」って言って10分くらいで書いてもらって、2人1組で見せあいながらコメントしあう、というのを必ずやっています。練習あるのみです。筋トレみたいなもんです。このロジックツリーを書くときに、まさにMECEとかフレームワークがいきるんですが、紙面の関係上、詳細なコツは省きます。

あと、ピラミッドストラクチャ。コツは、「エレベーターテスト」をたくさんやることです。エレベータに乗り込もうとしたら社長とたまたま2人になってしまったと想定して、「今あなたの部署の重要な課題とそれに対する仮説は?」と聞かれて、30秒以内で答える。それをやり続ける。ピラミッドストラクチャもいろいろと方法論があるんですが、ここもなくなく詳細なものは省きます。鍛えるのみ!(我ながら雑・・・)


問題解決に向けて。「前向きな思考」で、日々ただ実践すること。それが一番の近道

あー、今回は長くなってしまっている(汗)。これでもかなり絞って削っているつもりですが、きっとこのあたりですでにかなりの人が離脱しているんだろうな。。

と思いながら、それでもめげずに続けます。だって、ここからが一番重要だと思うこと、伝えたいなので。

何を伝えたいか。問題解決をするためには、「問題解決をするんだ」という前向きな思考を持つこと。

当たり前ですよね。でも、この当たり前が重要なんです。

最初にマッキンゼーに入社して、入社後の5週間の座学で洪水のようにいろいろなインプットをされて、最後の最後に言われたのは、「PMA=Positive Mental Attitude(めげない気持ち)」が大事ということ。

楽天で叩き込まれた成功のコンセプトでいうと「常に改善、常に前進」。Lancers wayでいうと「ポジティブ思考」(=できない理由ではなく、できる方法を考える)ですね。

ここで、自分の実体験、というか社会人になって最初の大きな(今から見ると小さいこと極まりないですが)失敗体験をご紹介します。

とあるクライアントの新規サービスのコンセプトを考えるプロジェクト。僕にとっての実質的に最初のプロジェクトでした。ユーザーニーズを深く知るべく、地方で富裕層向けのインタビュー、特に地場の企業の社長の方々へのインタビューをしていました。

インタビュー場所に向かうタクシーの車中。耳鳴りがするほど暑い、夏の昼さがりのこと。

マネージャー(以下、M)「おい曽根、そろそろ到着するし、ネクタイしめろ」

そね(以下、S)「え、あ!ネクタイ!!」

M「お前、その様子、、まさか、忘れたのか?!」

S「はい、すみません!ホテルに忘れました!」

M「お前、どうするんだ!」

S「本当にすみません!帰ります!」

M「・・・」

しばし、沈黙。やがて、マネージャーは語りだします。

M「お前、入社後の研修で、問題解決って習ったよな?」

S「はい、習いました」

M「お前、今言っていることわかってんのか?」

S「・・・」

M「お前が言っていることは、お前が仮にとある会社の社長だったとして、『売上下がりました!すみません!会社辞めます!』と言っているのと同じことだぞ」

S「・・・」

M「何のために研修受けてたんだ!いまからが問題解決だろ!」

S「・・・」

M「タクシーの中でネクタイを忘れたことに気づいたという現実。でも社長インタビューを実行したいという理想。さぁ、どうする?今から解決しろ!」

笑えるくらい何も言えず、とにかくタクシーから放り出されて、あたりを駆けずり回りました。

ネクタイを調達しなきゃ。。 どこかで買おう。コンビニで買えるか? (行ってみたら)売ってない。どうしよう?! うーん、、、仕方ない、そうだ、買えないならどこかで借りよう! どこか借りられる場所ないだろうか・・・まわりに店が・・・あった! でもラーメン屋。ネクタイなんてないか・・・ん、店長がネクタイしてる! いいや、なんでもいいからもう、借りよう!!

そうです、僕なりにひねり出した解決策は、「ラーメン店長から、ナルトの柄の入ったネクタイを借りる」というものでした。

必死すぎてよく覚えていませんが、マネージャーは、息を切らせてナルト柄のネクタイを握りしめてタクシーに戻ってきた僕を見て、ちょっとゆがんだ笑顔を見せたと思います。

あとで聞いたのですが、マネージャーは、ポンコツすぎるぼくがネクタイをきっと調達できないことまで想定して、「ランチで新米(=ぼく)がスープをこぼしてネクタイを汚してしまったので、新米はインタビューをネクタイなしで同席させてもらう」という口実を考えていました。

ぼくが設定した課題が「いかに自分がネクタイを調達するか」だったのに対して、マネージャーが設定した課題は「いかに曽根を同席させる形でインタビューを実施するか」。見えている問題もそこから導く課題も違っていた。

この話にはさらに後日談があります(ラーメン店の店長にどうやってネクタイを返したのか、というウブな話もあるのですが、ここでは割愛)。

翌日、マネージャーと、先輩のS氏と、ぼくの3人でまた別のインタビューに向かうタクシーの中でのこと。

M「S、今日、インタビュー対象はAさんだよな?」

S「はい、そうです」

M「たしか、手土産買っておいたよな?」

S「あ、ホテルに忘れました!」

S「(いっさいの間髪入れずに)到着までにまだ時間があるはずなので、近くのデパートで別のものを買います!タクシーの運転手さん、xxまで向かってください!」

M「(満足そうにうなずいてちらっと僕の方を見ている・・・)」

ネクタイ事件(と呼ぶことにします)がなければ、僕にとっては意識することもない、なんてことのない普通の会話だったと思います。

ところが、僕にとって、この一連の流れは、5週間の座学での研修とはまるで異なる、しびれるくらいの衝撃が走りました。ああ、これが問題解決か、と。

マジメに受けていた研修で「これで問題解決できる!」と勘違いしていた自分。

いざプロジェクトに入ってみて、こんな小さい問題で解決をあきらめってしまった自分。

より広い俯瞰的な視野で問題をとらえて解決策を考えていたマネージャー。

もはや反射神経に近い形で、瞬時に問題解決をするマインドがしみついていた先輩。

問題解決は、あらゆる場面で必要となります。でも、多くの場合、多くの人は、「問題解決しよう」というマインドにはなっていない。もっと言うと、思考停止していることもある。

マッキンゼーの入社研修で安宅さんがおっしゃっていた、「ビジネスにおいて『悩み』などない。あるのは『課題』だけである」という言葉。

「悩む」というのは答えが出ないという前提のもとに考えるフリをふる、「考える」というのは答えが出るという前提のもとに建設的に考えを組み立てる、ということ。

耳をふさぎなる厳しい内容です。。が、心にきざみこんでおきたい言葉だと思います。


今回のポイント

というわけで今回のまとめです。

すべての問題解決は、問題の認識から。正しく問題を特定することが何よりも大事。
良い課題とは?「本質的選択肢×深い仮説×答えが出せる」課題は全体の約1%
問題解決に必要な心得・技術・方法。もっとも重要なのは心得=”So What?”と”Why So?”
問題解決に向けて。「前向きな思考」で、日々ただ実践すること。それが一番の近道

最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。ビジネス・ノウハウ編、しょっぱなから過去最長の分量になってしまいました。。反省いたします。次回は、今回の話ともつながる部分ありますが、プレゼンについて書きます。正直、次回も長くなるんじゃないか、という不安がありますが。。お付き合いください。

また、ここまで読んでくださった方で、まだフォローいただいていない方は、良ければぜひフォローしてください!


これまでのバックナンバー

【キャリア編】
第1回:キャリアを「えらぶ」のではなく「つくる」方法―キャリアの「タグ化」のすすめ
第2回:市場価値の磨き方―ステージ×役割でとらえるキャリア論
第3回(前編):1億総デザイン社会の未来―モデルなき時代に、働き方をハックする
第3回(後編):1億総デザイン社会の未来―働き方は、よりフリーに、スマートに、クリエイティブに
第4回:成長は失敗を糧に―非連続な成長は、アンラーニングと意識の変革から
第5回:「乾けない世代」と「好き嫌い経営」―働く「個人的大義」を大切にせよ


【ノウハウ編】
第6回:「ネクタイ事件」で学んだ、本当の問題解決―ポジティブ思考でいこう
第7回:「伝わる」プレゼン―聞き手が「自分ごと化」できるストーリーをつくる
第8回:ブレストはアイデアをひきだす脳内スパーク―「ブレスト筋」を鍛えよう
第9回:SMARTなゴール設定と早めのトレードオフ決断でプロマネを成功させる
第10回:知的生産性の上げ方―時間の使い方を設計し、会議をプロデュースする


【事業編】
第11回:「4次元チェス」的戦略―不確実な未来のシナリオに、骨太な仮説をそえて
第12回:『新規事業のつくり方―アセットを活用するか、リーンに立ち上げるか』
第13回:予算計画のつくり方―楽観と悲観、経営と現場を反復横跳びする
第14回:本質的なKPIをモニタリングし、計画と予測の「ギャップを埋める」
第15回:M&A、それは究極の意思決定。PMI、なんて深淵な人間ドラマ


【経営/組織編】
第16回:ユーザーに学び、社会に訴えかけ、組織を動かすミッション・ビジョン
第17回:強い言葉で行動指針をつくり、模倣困難なカルチャーづくりに投資する
第18回:安心感×成長実感でエンゲージメント・ドリブンな組織をつくる
第19回:マネジメントに必要なのは、矛盾に向き合い、乗り越えるための真摯さ
第20回:「開き直り」の境地で51/49の意思決定し、自らの人生の主権を握る


【番外・総集編】
番外編①:エン・ジャパン主催の「ワーク&プライベート・シナジー勉強会」での登壇
番外編②:ランサーズ勉強会(L-Academy)の「戦略ケーススタディ」のレポート
総集編(前半):「一億総デザイン社会」を生きるためのキャリアと仕事の考え方
総集編(後半):「VUCA時代」を勝ち抜くための事業と組織の考え方

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