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【対談|前編】“超アグレッシブな自治体”神戸市と、“場所を持たないプロ集団”K.S.ロジャース 地方スタートアップは、常識のシフトチェンジから!
スタートアップスタジオのK.S.ロジャース株式会社(以下:K.S.ロジャース)は、スタートアップ支援に積極的な神戸市との協働で、スタートアップに関する様々なイベントや取り組みを行っています。
今回の対談インタビューでは、神戸市との官民連携によって見えてきた、地方スタートアップの現状・課題を、前後編の2回にわたって深堀りしていきます!
神戸市 新産業課
中沢 久氏・松山 律子氏
中沢氏は、別の課の職員から持ちかけられた相談がきっかけで、当時よりスタートアップスタジオを考えていた代表の民輪と出会う。
松山氏は民間でのアパレル業界を経て2年前に神戸市に入庁。現在はスタートアップに関する広報を担当している。
神戸市では「神戸=起業しやすいまち」の実現を目指し、2016年よりスタートアップの支援の動きを活発に行っている。
K.S.ロジャース株式会社
代表取締役 民輪一博
エンジニア出身の起業家。コロナ以前からリモートワーク・フルフレックスのK.S.ロジャース株式会社を立ち上げ、副業・業務委託・正社員と多様なワークスタイルのエンジニアを組織化してきた。
行政×民間の連携で、地方のスタートアップが動き出した
__2021年1月にK.S.ロジャース主催・神戸市共催で、オンラインイベント「KOBE INNOVATION ECOSYSTEM」が行われました。まずはイベント趣旨をお伺いできればと思います。
民輪:
今回のステークホルダーは5者。弊社と神戸市さんの2者と、登壇していただいたスタートアップ企業のWOVN Technologiesさん、WiseVineさん。そして、これが密かに重要なんじゃないかと思っているのですが、ベンチャーキャピタルであるBonds Investment Group(以降BIG)さんです。
神戸市や関西を中心とした新規事業への関心が高い方に向けて、スタートアップ企業や事業創出の支援者と接点を作ることが主な目的でした。
神戸市さんにとっては、企業誘致や、登壇いただいたスタートアップとのオープンイノベーションのきっかけ作りができればいいなと考えていました。
また、登壇いただいた2社にとっては、広報となる場のご提供や、神戸市内の企業とも関係構築できたら良いなと思っていたので、本イベントをきっかけに何社かお繋ぎさせていただきました。
BIGさんは、現在地方での動きに注目されていますので、新しいことに積極的な神戸市さんとの関係づくりでこの機会をお役立ていただけたのかなと思います。
__神戸市さんは、イベントを通じて興味深く感じた点はありますか?
中沢・松山(敬称略):
イベントには神戸の中小企業や行政関係者の方々に来ていただいたのですが、登壇されたWOVN Technologiesさん、WiseVineさんのサービスに興味のある方が一定数おられ、神戸の中でもそのようにスタートアップ事業への関心が高まっていることが分かりました。
これは神戸市全体として、スタートアップの市場になり得る環境が整いつつあるのではないかと思い、大きな発見であったと考えています。
__民輪さんはイベントを開かれてみていかがでしたか?
民輪:
一昨年に遡りますが、BIGの細野さんと神戸市さんをお繋ぎしました。そして、本イベントもご一緒した後、細野さんが代表パートナーとして神戸市さんと協働で「ひょうご神戸スタートアップファンド」を作られました。
まだまだファンドの規模は小さいかもしれないですが、第一歩を踏み出せたという点では、イベントも含めて、とても価値があったと思っています。
神戸市の課題は、主要プレイヤーを民間で増やすこと
(上段、右から一番目が中沢氏、四番目が松山氏)
__地方×スタートアップについて、率先して色々な取り組みをされている神戸市ですが、今の課題は何ですか?
中沢・松山:
先ほどの、BIGさんとのファンドにもあるように、支援をされる民間企業の方々が神戸で徐々に増えているのは事実です。ただ、数としては圧倒的に少ないんですね。
ほかにも、神戸市としてオープンイノベーションを行っていますが、まだまだ行政が主体で、行政以外の主要なプレイヤー・支援者が出てきていないというのが大きな課題となります。
今後は、支援者となり得る民間の方々をどれだけ巻き込んでいくか、その方々に活躍しやすい場所を提供していくか、という点に挑戦していきたいです。
__民間サイドを巻き込んでいけるかという点では、その一つにK.S.ロジャースが入ってくると?
中沢・松山:
まさにです。K.S.ロジャースさんが行うスタートアップスタジオ事業は、民間の民間によるスタートアップ支援事業だと理解しています。今後、K.S.ロジャースさんのような企業が成長する、もしくは、それに似たような支援者が出てくることに強く期待しています。
地方スタートアップの課題は、「ヒト・モノ・カネ」+「ノウハウ」
__民輪さんは地方のスタートアップ企業が抱える課題をどう捉えていますか?
民輪:
割とシンプルで、いわゆる“ヒト・モノ・カネ”です。
すべてにおいて、首都圏と比べると桁が違う…本当に一桁は違うくらいの差があります。
加えて、僕が重要視しているのは"ノウハウ”です。
この4つすべてが圧倒的に不足していると感じるので、これらを補完していくのが弊社の役割なのかなと思っています。
スタートアップスタジオ事業としては、スタートアップ、ベンチャーが事業を作る上での支援として、ヒト・モノ・ノウハウを中心に提供し、場合によっては弊社が投資する側に回って、カネという部分も支援させていただいています。
__「ヒト」については一筋縄ではいかないような気がします。
民輪:
いざ採用をフォローするとなると、正直なところそもそも人材の母体が少ないですね。弊社も神戸にありますが、神戸のみでの採用は現状難しくてどうにもできないと割り切っているんです(笑)
この点については、民間では限界があるので行政に期待しているところでもあります。
中沢:(大きく頷く)
民輪:
採用の難しさを感じるものの、弊社がコロナ前からずっと行ってきた取り組みが、フルリモート・フルフレックスです。副業やフリーランスの方々と一緒にネットワークを作り、コミュニティ的に会社として成長してきました。
会社は神戸にありながらも、国内・世界各地にいる人材へアプローチすることができるので、会社として様々な組織を作っていくことは大事なことだと実感しています。
これを実現させる運営ノウハウにはとても価値があると思っているので、このノウハウをしっかりと展開することが大切だと考えています。
昨年末からスタートした弊社のライフスタイルテック事業で行っているSaaSのプラットフォーム(Primal Honey)がまさにこれですね。
__オンラインという形はかなり重要なポイントになってくるんですね。
民輪:
そうですね。フルリモート、フルフレックスで、自由な働き方の人たちをチームマネジメント、チームビルディングしながら組織を作っていけるようサポートするのが弊社のもう一つの役割かなと、今は考えています。
これによって初めて、東京一極集中から地方へという流れが少しずつ生まれてくるのではないでしょうか。
民間も行政も、これまでの文化を破っていく
__現状を踏まえると、地方とスタートアップが共に盛り上がるには、それぞれの立ち位置において何を変えていけば良いのでしょう?
民輪:
すごくシンプルに言うと、「考え方」なのかなという気がします。
DXの話題とも似ているんですが、一朝一夕で成功することはあり得ないと思っていて、試行錯誤を繰り返しPDCAをしっかり回しながら積み重ねていくことが重要だと思うんです。
ですが、地方企業ほど保守的で、「今がいいから新しいことをしなくても大丈夫」という考え方の会社はとても多いと思うんですね。
加えて関西では、よくある商売人文化みたいな部分もあると思っていて・・・例えば、100円の仕入れは110円ですぐに売って利益を作らないといけない、という考えがよく見られます。
__これまでの文化を変えてでも考え方を変えた方がいい?
民輪:
保守的な思考が強いのは間違いなく変えていく必要があると思います。
思考の変革自体も、一朝一夕に変わるのは無理なので、社内政治などの弊害が起こりますが。
しかし、やはり赤字を許容してでもしっかりと掘り下げて投資をするという考え方を当たり前にしていかなければいけないと思っています。
中沢・松山:
行政のスタンスで申し上げると、わかりやすいロールモデルを出すことが大事だと思っています。文化を変えるためにも。
なので、例えばK.S.ロジャースさんのような企業が生まれやすい「コミュニティの密度が担保されるような環境」づくりをしないといけないですね。
行政ができることというのは「この人たちは信頼できますよ」という信用の付加だと考えています。この行為にうまくレバレッジを効かせ、人々が繋がっていける環境をつくったうえで、最終的にロールモデルが生まれるキッカケを生み出したいですね。
オンラインであれば「神戸スタートアップハブ」というポータルサイトであり、オフラインであれば「ANCHOR KOBE」がそのような環境となれば良いなと思います。
__民間との連携を強めたうえで、民間の企業が主体となってロールモデルを作っていく。どちらかというと行政は環境面を下支えしているイメージですね。
★後編は、次世代が地方で起業するための考え方に迫ります!