株式会社アイエスエイプラン 執行役員 HR & Strategy
坂爪 昭
■ビジネスモデルの当たり前
学生が社会人になるとき、つまり就職活動の時に、必ず学ぶものとして「ビジネスモデル」というものがあります。世の中の企業には、顧客にする相手を企業として設定する「BtoB(Business to Business)モデル」と顧客にする相手を消費者として設定する「BtoC(Business to Consumer)モデル」があり、それぞれのプロコン(Pros/Cons)をまとめてみると以下の表1のようになります。
表1 BtoBとBtoCのプロコン分析結果
就職活動時には、学生たちも自分の知っている企業から説明会やインターシップに参加してみたりするのが定石になっているので、就職活動初期にはBtoC企業は圧倒的に有利に採用エントリーを稼ぎ、就職活動が進むにつれて学生も業界分析や企業分析も進んでいき、BtoB企業へと採用エントリー数が移行していきます。
これを逆手に取ったSCSK株式会社は、「無いぞ知名度。SCSK / あるぞITの可能性。SCSK」という自虐的なキャッチコピーを作成し、就職活動を行う学生たちへ深い印象を与えるTVCMまでを実施したところが記憶に新しいところです。※1
SCSK株式会社は、住友商事グループのシステムインテグレーターであって、「IT業界新卒就職 人気企業ランキング」※2では、NTTデータ、楽天、富士通に並んで4位に入るくらいの超人気企業なはずですが、BtoBのシステムインテグレーター(SI)企業であるがゆえに、敢えてBtoC企業との知名度比較を話題にし、就職活動中の学生に刺激を与えるマーケティング戦略は見事でした。
※1 SCSK株式会社 23卒向け採用サイト https://www.scsk.jp/pr/cm
※2 Rakuten みん就 2022卒 「IT業界新卒就職 人気企業ランキング」
https://www.nikki.ne.jp/event/20210513/
■新たなビジネスモデルのCtoCが登場
世の就職活動とともに働くひとの頭の中が基本的な2つのビジネスモデルに分断される中で、近年、CtoC(Consumer to Consumer)モデルという消費者が消費者を顧客にするビジネスモデルが話題になっています。
よくよく考えてみると、もともと私たちは「メルカリ※3」や「ヤフオク!※4」のように消費者間でモノをやり取りして、その手数料として企業に支払うビジネスモデルを自然と使っていましたが、これが今回注目をするCtoCモデルです。
企業は顧客である消費者と直接的な関わりがないため、商品やサービスを用意する必要がなくビジネスが始められます。また、ビジネスに実店舗を持たないため、オフィスを構えたり、土地を購入したりすることもないところもポイントです。ビジネスをスタートさせる際に必要なものは、基本的にシステムやサイトなどだけで、初期費用が抑えられるのは大きなメリットになっています。
※3 メルカリ https://jp.mercari.com/
※4 ヤフオク! https://auctions.yahoo.co.jp/
■ビジネスモデルCtoC体験「ココナラ」を利用してみる
百聞は一見に如かずということで、ケーススタディとして今回は「知識・スキル・経験」をCtoCモデルにて、売り買いできるスキルマーケット「ココナラ※5」を利用してみることとします。
「ココナラ」は、簡単に言うと「メルカリ」の無形財版のイメージにて、上場時はCtoCモデルの「占い実施」が人気コンテンツとして売り買いされていました。収益構造としては、ココナラプラットフォームを利用する手数料として購入者は支払額の5%、出品者は販売額の約20%を支払い手数料収益として運営されています。※6
以上を踏まえて、さっそく利用してみました。
注文したものは「似顔絵」作成です。
購入者は出品者とのやり取りはチャット機能にて行い、チャット内にて素材となる写真を送付した後にメッセージを交わし、成果物を受け取っていきます。基本は文字ベースのやり取りになるので、ただでさえ難しい絵の雰囲気などを伝えるには更に難しくなっているところなどもありますが、そのあたりはCtoCモデルの醍醐味として過不足を味わう寛大な心が必要になってくるかもしれません。
結果としては、とても自己の能力としては実現できない似顔絵が安価で作成できました。
図1 チャット会話例
図2 成果物提供イメージ
※5 ココナラ https://coconala.com/
※6 ココナラ「販売時の手数料について」 https://coconala-support.zendesk.com/hc/ja/articles/230180287
手数料額はしばしば改定されるため利用の際は金額設定の確認を実施してください。
■これらを踏まえて
このようにして「CtoCモデル」という第3のビジネスモデルを実体験を持って自らに追加することを実施してみました。どのようなビジネスが社会の中で、どのようなユーザーにどのように役に立っているかを調査する際には、先ずはビジネスモデルの分析から実施してみることがセオリーかと思います。
そんなビジネスモデルにアップデートを加えてみてはいかがでしょうか。