インヴァスト株式会社でグループを率いる川路猛代表取締役社長に事業や展望、それに会社の特徴や求める人材についてお話を伺いました。
インヴァストグループの事業や将来像、自身の役割について語る前編と、経営陣やスタッフなど「人」について述べている後編から構成されています。
後編はこちらからご覧ください。
1,000万人利用者を見据え新規事業開発を加速させるグループへの進化
ーインヴァスト株式会社、インヴァスト証券株式会社、Invast Financial Services Pty Ltd.そしてインヴァスト キャピタル マネジメント株式会社から構成されているグループについて、それぞれの役割分担をお話いただけますか。
私たちは、東京証券取引所に上場しているインヴァスト株式会社を親会社として、その傘下に国内金融事業としてインヴァスト証券とインヴァストキャピタルマネジメント(ICM)、海外金融事業として、シドニーのInvast Financial Service Pty Ltd.(IFS)、その欧州拠点としてキプロス共和国のInvast Financial Services (EU) Ltd.で構成されており、お客様からお預かりしている資産額は、グループ全体で1000億円弱に上る、グローバル金融サービス機関です。
もともとはインヴァスト証券が、上場企業の親会社で、その傘下にIFSやICMがあったのですが、我々のミッションである「世界をもっと、良い場所にする」、そしてビジョンである「2025年までに全世界で1,000万人の利用者を持つ金融ソリューションを生み出す」の達成を加速させる為に、今の形になりました。
グローバル1,000万人ユーザーを抱えるような新しいサービスを作るという事は、次々と、さまざまな新規事業に挑戦していく必要があります。しかし、金融業の規制を受けるインヴァスト証券では、色々と配慮しなければならないこともある。そのため、インヴァスト株式会社という事業会社を、親会社としてインヴァスト証券の上に作ったんです。そして、インヴァスト株式会社を上場会社とすることで金融商品取引以外の事業領域における新規事業開発を加速させていきたいという想いをこめてグループを構成しています。
仲間探しという観点からも、金融と言った瞬間に、ちょっと堅いとか、敷居が高いとお感じになられる方も多いものですから(笑)、一般事業会社で子会社に金融機関がある、というような形のほうが多種多様な能力やご経験をお持ちの方が仕事しやすいだろう、と考えました。
グループの概要としては国内金融事業として100%子会社のインヴァスト証券があり、オンライン為替証拠金取引のFXを個人投資家向けにサービスとして提供しています。
もうひとつが不動産プロジェクトファイナンス。マンションなどの不動産開発プロジェクトへの資金融資事業を行っているインヴァストキャピタルマネジメントです。
この2社が国内金融事業会社となります。
そして海外金融事業として、シドニーに本社を置くInvast Financial Services Pty Ltd.があります。世界50ヶ国以上に法人顧客を持ち、主に証券会社やヘッジファンドへの価格流動性を提供するサービスを提供しております。今年は欧州地域で活動できる金融ライセンス取得のために、キプロス共和国にInvast Financial Services (EU)Ltd.という子会社を設立しました。
これらが現在、インヴァスト株式会社の連結子会社でグループを構成する企業となっています。
世界的な金融大都市に拠点を構えるグローバル企業に
ー2022年3月期の第三四半期に当たる2021年10-12月期は増収増益を記録するなど業績が非常に好調です。インヴァスト株式会社では2022年までを育成期間、そして2025年までの3年間を収穫期間とした中期計画に取り組んでいますが、育成期間の目標であるグループシナジーの効果が出始めたということでしょうか?
2017年~2019年 投資期間:既存事業の収益力向上・新規事業の創出
2020年~2022年 育成期間:事業の継続的成長・グループシナジーの追求
2023年~2025年 収穫期間:全世界で1,000万人の利用者を持つグローバル企業へ
はい、今期の業績は大変好調に推移しております。きちんと足元の業績を上げながら、新規事業を立ち上げようというのが目標なんですが、そういう意味では業績を高めながらMAiMATEという新しいサービスを今年リリースできたりと、非常に充実した1年になっていると思っています。
注:MAiMATEはインヴァスト証券が提供している、AIを活用したソーシャルアルゴトレーディングサービス。MAiMATEについてはこちら
ー今年がSTAGE2である育成期間の最後の年ということになりますね。2023年からの収穫期間にあたる3年間に向けた、グローバル企業に向かっていく上での新たな取組みはありますか?
インヴァスト株式会社を親会社とする体制になりましたから、新規事業については既に複数のプロジェクトが走っています。これらのうち、いくつかをリリースしていきたいと思っています。
また、既存事業ではグループ間シナジーの効果が大きく発揮されるのが第3フェーズですので、実際にシドニーのInvast Financial Services Pty Ltd.や欧州を拠点とするキプロス子会社、これらと日本のインヴァスト証券の事業効率性を高めるためのシナジーについて具体的な検討に入っています。
海外では地理的拡大を掲げています。まだ具体的な発表はできませんが、世界的な金融大都市に拠点を構えていきたいので、2023年3月期において具体化していきたいと考えています。
ーグローバル企業へ、全世界で1,000万人の利用者を持つというマニフェストに対する取り組みは着実に進んでいるんですね。
新規事業はお金の問題を解決するソリューションの展開
ー新規事業開発についてお伺いしたいと思います。3月1日に「1日5分、パーソナライズした『お金と投資』の本要約配信アプリ」であるBibroをリリースされました。新規事業は複数のリリースを計画されているということですが、それぞれ単体でマネタイズ可能な構造になっているんですか?
注:Bibroは1日5分で知識を得られるパーソナライズしたお金と投資の本要約配信アプリで、自分に合った投資手段の発見サポートサービス。Bibroについてはこちら
いえいえ、なっていません。なぜならば、Bibroも、他の新規事業やサービスも、インヴァスト全体としてのミッションである「世界をもっと、良い場所にする」ための1つの取り組みであるからです。
「世界をもっと、良い場所にする」というミッションは、お金に関する課題を解決するためのソリューション、商品、プロダクトを作っていき、それを使ってもらえば、今までお金に関して困っていたことを解決できて、必要な人が必要なお金を手にすることができるようになって、その結果として世界が少しでも良い場所になればいいな、ということなんです。
まだ具体的な事業としては用意できていませんけれども、例えば奨学金問題。ひとりあたり250万とか270万円の借金を背負って大学を卒業する、そのうちの4人にひとりは非正規雇用の為、収入が不安定でお金を返せないこともある。この問題を、新しい手法によって解決できれば、お金に関する課題を解決するソリューションになりますよね。
実はこれを解決するための事業を社内の新規事業プレゼンで出したところ「全然ムリ」ってはねられてしまってペンディングになっているんですけれど(笑)。そんなことをやっていきたいというのが「世界をもっと良い場所にする」ための新規事業なんです。
ちなみに、インヴァスト証券には独自のミッションがあって、「デリバティブとテクノロジーで資産運用の未来を創る」となっています。自動売買とかテクノロジーを駆使した資産運用の先駆者になろうという想いです。
インヴァスト株式会社の新規事業であるBibroは、その先が資産運用につながっているんです。勉強しなきゃと思っていても、自分で本を買ってきて金融知識を勉強するのはハードルが高い、という人々に金融知識が身につく本をレコメンドしながら、その先には実際に運用してみたい場合に対応する別の新規事業を用意していく。
そこまでを含めて事業を考えているので、Bibro単体でのマネタイズは考えていません。
Bibroのようなサービスが必要だという私たちの考えの根底には、既にこの世界は、特に若い人たちにとって、貯金しているだけではどうにもならない世界になってしまっているという点があります。
かといって、FXにはハイリスク・ハイリターンな面がありますよね。そこで、インヴァスト証券ではレバレッジを抑えた自動売買システムを発展させてきたんです。ですから、Bibroによって興味を持った方が自分なりのリスク・リターンで資産運用出来るサービスに導かれれば、お金の問題を解決する道につながるかな、と考えています。
インヴァスト証券のMAiMATEはAIのFX取引サービスですけれども、その売買対象は、株価指数になってもいいですし、債券でもいいんですね。そこにつながっていくひとつの入り口がBibroになるかもしれません。現在、複数のサービスをパラレルに計画しており、徐々にリリースしていく予定です。シドニーの方でも新規事業・新サービスを考えていますので、楽しみにしていて下さい。
ボストン、ロンドンを経てインヴァスト証券の前身に入社
ー川路社長のご経歴についてお話頂いてもよろしいでしょうか。
はい。私は1974年に、福岡県の博多で生まれまして、幼稚園の時に東京に家族ごと引っ越してきました。15歳でアメリカのボストンの高校に留学しまして、寄宿舎というか寮に入って、そこから大学を卒業するまでの9年間ボストンにいました。
大学はバブソン大学という、起業家教育に力を入れている大学を出ました。一般教育40%、ビジネス教育60%という触れ込みでしたが、実際に入学すると、ほぼ100%ビジネス教育一色だった気がします。数学の授業では、雨の日に小売業の売上がどうなるかの確率計算をやったり、化学の授業では電気代の計算をしたりと、なんか無理やりビジネス感を出していた気もしますが。
バブソン大学(英語:Babson College)は、米国マサチューセッツ州ウェルズリー市にあるアメリカ合衆国の私立大学である。起業家教育に特化した大学であり、アントレプレナーシップの分野で世界的に高い評価を得ており、また、ファミリービジネス出身者が多く、卒業生・在校生を跨いだ繋がりにも強みを持つ。Enter Money Magazineが2014年に発表した「教育の質、投資価値、卒業生の年収」を元にした大学ランキングでは全米655の大学中1位とされたほか、2016年にはForbesが選ぶ「留学生が選ぶべき大学ランキング」で1位に選ばれた。トヨタの豊田章男社長やイオンの岡田社長もバブソン大学(MBA)の卒業生である。【Wikipedia】バブソン大学
僕は修士コースで、その後ロンドンの証券会社に就職したんですが、少ししてからインヴァスト証券の前身であるこうべ証券を父親が買収したんですね。丸起証券という兵庫銀行の子会社をこうべ証券に名称変更したんですけれども、そこに来ないかと父から誘われて戻ってきたのが25歳の時でした。
伝統的な対面の証券会社で、法人営業や個人資産運用などが中心でした。そのうち公開引受業務、いわゆるIPO、新規上場をサポートする部署を経て、総合企画部長としてこうべ証券の上場責任者を務めました。色々苦労はありましたが、何とか2006年に大阪証券取引所のニッポン・ニュー・マーケット・ヘラクレス、いまの東証スタンダード市場に上場し、公募売出合計で、100億円の調達を達成しました。
2010年1月からインヴァスト証券の社長を務め、2020年10月にインヴァスト株式会社を設立し、社長就任。2021年6月に、インヴァスト証券の方は会長となりました。
「うばい合えば足らぬ わけ合えばあまる」
ーグループ事業全体で川路社長はどんな役割を担ってらっしゃるんでしょうか?
そうですね、グループにおける僕の役割は、想いとか考え方を共有できる経営層や幹部、仲間をまず探したり出会うことだと思っています。そして世界中から人が集まってくる魅力的な会社にしていくこと。
自由度や裁量を持って自分が情熱を傾けられる事業を手掛ける環境を用意していく。もちろん報酬体制まで含めてですけれども、情熱を持って事業を推進していけるような仲間に世界中から集ってもらえるような会社にしていくのがひとつの大きな役割だと思っています。
例えば、インヴァストグループの中で最も能力が高いのは、僕ではありません。ですから、僕には全くできないすごい経験やスキルを持った人たちがたくさんいて、尊敬できる仲間たちとワイワイ笑いながら世の中に役立つサービスを作り上げていける環境なんです。
その結果、自分でもやりがいを感じられ、意義ある事業を生み出しているなと思いながら会社の業績が上がって、報酬も増えていく組織を目指しています。
根底に流れる文化は、時代とともに皆で議論しながら変化や進化させていかないといけませんが、経営人材がこの文化に合うのか合わないのかを見極める、というと選んでいるみたいですけれども、この会社に合う方に、仲間になっていただくのが僕の役割だと考えています。
ーインヴァストに合う方を見極める上で条件としている点はありますか?
一番大切なのは誠実であること、だと考えています。相田みつをさんの詩に「うばい合えば足らぬ わけ合えばあまる」というのがあるんですが、これにはすごく重要で大切な知恵が含まれていると思っているんです。
他の人をリスペクトできたり、自分より能力のある人から素直に教えを乞える人であれば逆に自分の得意分野では周囲から頼られて、それぞれが100%以上の能力を気持ちよく発揮できるような会社になるからです。
そうなるように確認し、維持しながら、変えていくのもグループの中における僕の仕事かなと思うんですよね。
後編はこちらからご覧ください。
(取材日:2022年3月7日 聞き手:垣本陸)