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こんにちは!GIGのこたそです。今回は「Tech Trend Talk vol.12 社外向け勉強会「電子国家エストニアを通して見る、ブロックチェーンの未来」のイベントレポートをお届けします。
講師を務めてくださったのは、2017年よりエストニアに拠点を移し、ブロックチェーンスタートアップ『blockhive』として事業を展開している日下さん。
日下 光(くさか ひかる):日本にてブロックチェーンの調査及びアプリケーションやプラットフォーム開発を開始し、2016年まで日本で事業展開。2017年よりエストニアに拠点を移し、ブロックチェーンスタートアップ『blockhive』として事業を展開。政府との事業共同開発、資金調達を目的とした、ILPを活用したプラットフォーム事業など、様々プロジェクトを推進。現在もエストニアでブロックチェーン技術を中心に、新たなソリューションの創出に取り組む。
当日使用したスライドは以下からご覧いただけます。
TTT.12 「電子国家エストニアを通してブロックチェーンの未来を見る」
ブロックチェーン分野で世界的に注目されるエストニア
日下さん:「エストニアは世界で初めての電子政府といわれています。一般的にブロックチェーンと呼ばれる「分散型のデータ連携基盤技術」を政府で実用した初めての国家です。実は20年近くも前に導入されました」
日下さん:「エストニアでは、99%の行政サービスがデジタル化されています。国民の98%が電子IDカードを持っていて、あらゆる電子サービス利用時に本人認証をすることができるのです」
日下さん:「たとえば、会社の設立も非常に簡易で効率的です。日本で起業しようと思うと、書類や手続きが多く大変ですが、エストニアでは電子IDカードを持っていれば、会議室にいながらにして会社を設立できます」
電子国家を支える3つの技術
「エストニア政府のデジタル化は、3つの技術で支えられています」と、日下さん。
1. X-road
日下さん:「電子国家を実現する根幹の技術が『X-road』と呼ばれている「分散型のデータベース連携基盤」です。一般的にブロックチェーン技術では、分散しているデータベース上に複製されたデータが、ネットワークに繋がった状態で、常に整合性を保ちながら保管されています」
日下さん:「しかしエストニアの場合は、データを複製しません。各省庁が、個人に紐づくデータを分散して管理しています。この点において、一般的なブロックチェーンとは大きく違う。分散したデータベースでデータを保管しているけれど、人口統計曲が税務当局に個人の情報を求めた場合、一定の権限をもらって閲覧することができます。その権限を誰が持つかというと、個人。「個人の情報は個人のもの」という認識が、エストニアではしっかり共有されています」
2. e-Residency
日下さん:「2014年に始まったe-Residency(エストニア電子住民プログラム)というプログラムがあります。IDを取得すれば、エストニアにいない人でも「電子住民」として登録され、「e-Residencyカード」が付与されます。」
日下さん:「電子住民になると、たとえばエストニア国外にいながらにして、エストニア国内での会社登記が可能です。現在5万人が登録し、6,000社以上が登記しています。半数以上が仮想通貨、ブロックチェーン関連の事業を展開する企業です。」
3. KSIブロックチェーン
日下さん:「もうひとつの要素が『KSIブロックチェーン』といわれる技術です。この技術により、”誰が、いつ、アクセスしたのか”について、改ざんできないログを残せるようになっています」
日下さん:「患者がどの病院に行っても、医者は患者の診察記録を確認可能です。医者は、過去の診断内容や処方した薬を確認した上で診察が始めることができ、患者は薬局に行っても処方箋を出さずとも薬を受け取れます。非常に効率的ですよね」
日下さん:「”医者が勝手に患者のプライバシーを覗き見ることがあるのでは”と思う方もいるかもしれません。結論からいうと見ることは可能ですが、改ざんできないログが残り、誰が閲覧したかを特定できます。さらに、専用のポータルサイトから情報へのアクセス拒否ができます」
「エストコインプロジェクト」に見る起業家精神
日下さん:「もうひとつ、エストニアが注目された理由として、エストコインプロジェクトがあります。これは2017年に8月にe-Residencyのチームが発表した、e-Residencyのためのコミュニティコインなんです。私たちblockhiveもアドバイザーとして検討委員会に参加しており、プロジェクトを共に推進しました」
日下さん:「e-Residencyはボーダレスな起業家コミュニティでもあり、世界各国の起業家が登録しています。エストコインプロジェクトは「このコミュニティで共通通貨があったら便利だよね」「協力を可視化できたら面白いよね」ということで始まりました」
日下さん:「エストニアはEU加盟国であるため、ユーロと互換性のある通貨としては認められていません。現時点で開発計画は縮小していますが、実験的取り組みとして非常に注目されました」
日下さん:「このように、エストニアは国家自体に失敗を恐れずチャレンジするスタートアップマインド・起業家精神があります。”アイデアを試してみよう、世界の反応を見てみよう”とチャレンジをして、もしダメだったら縮小・却下しようというスタンスの国なんです」
デジタルIDとスマートコントラクト
日下さん:「デジタルIDには3種類あります。National IDと呼ばれる国民全員が持つ「National ID」、電子住民の「e-Residency ID」、そして「Resident Permit」です。できることはNational IDが一番多いです。たとえば、ネットから選挙の投票ができます」
日下さん:「エストニアは人口130万人しかおらず、国内市場が小規模なため、選挙権を持つ多くのの若者は海外に出てしまいます。もし電子投票がなければ自国の国政に参加できませんが、エストニアはデジタルIDを使って、選挙における公平性と平等性を担保しているのです。」
日下さん:「また、エストニアはペーパーレス社会といわれています。日本では契約書が承認されるまで、作業が多く時間がかかります。エストニアでは国が提供している専用のアプリケーションを使ってPDFで契約書をアップロードできますし、IDを使った電子署名も可能です。もちろんタイムスタンプが残るので、容易に改ざんできません」
なぜエストニアは電子政府として注目されたのか
日下さん:「エストニアが注目されたのは、これまでお伝えしてきた通り、電子政府の先駆けであることや、先進的な諸サービスを実施したこと、それによって醸成されてきたブランドイメージがあるからです」
日下さん:「そのほか、ICO(仮想通貨を使用した資金調達)によるデジタルトークンの販売が非課税であることも注目された理由です。エストニアでは法人をつくっても、どれだけ売上をあげても、配当がでるまでは税金が0%です。内部留保しているうちは税金がかかりません」
日下さん:「そういった背景から、エストニアの企業では日本のように節税という意識や、年末調整をしようという意識が働きません。そのため、内部留保した資金を新しい事業に投資することが頻繁に行われています。エストニアに国外から会社登記されるのも頷けますね」
懇親会で乾杯!
勉強会のあとは、懇親会!参加者のみなさまと各々お酒やソフトドリンクを手に、乾杯しました!日下さんに質問したり、意見を交換をするなど、社内外関係なく交流できる貴重な場となりました。
社外勉強会を終えて
ブロックチェーンという言葉はもちろん知ってはいるものの、どのくらい活用されているのか、あまりイメージがついていませんでした。しかし、今回勉強会に参加して、エストニアではすでに国家レベルで導入・運用していると知り、その便利さに驚きました。
講義を終えたあとでGIGのメンバーと話すと、みんな日下さんの取り組みとエストニアに興味津々な様子。僕もブロックチェーンについて学びたい!と思い、すぐにAmazonで本を2冊購入してしまいました(笑)。
GIGは定期的に社外のスペシャリストをお招きして、勉強会を開催しています。イベントの詳しい情報は、GIGのconnpassページで発信中。気になる回があれば、お気軽にご参加ください!GIG社員一同お待ちしております。