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【教育対談】FoundingBaseが考える、"教育のあり方"とは?

新免 琢弥(Shinmen Takuya)/ Education Div. Producer(写真:左)

高校受験対策をメインとした塾「類塾」で子どもたちの指導を行いながら、教室長や生徒 25,000人が使用する教育カリキュラムの統括を担当。並行して数百人単位のスタッフ採用の企画実行を経験。その後、通常の学習スタイルとは異なる様々な切り口で、子どもたちの「学ぶ喜び」を引き出す東京の著名な塾「探究学舎」で 新教室の運営や授業開発を行い、出張親子教室の立ち上げを経験。2016年10月にFoundingBaseへ入社。以来、岡山県吉備中央町の町営塾「kii+」の塾長として公営塾の運営や高校魅力化事業の統括を担当。現在は福井と共にFoundingBase教育事業を牽引。

福井 健(Fukui Ken)/ 探究学舎(写真:右)

高校時代にスウェーデンへ留学後、国際基督教大学に入学。FoundingBaseプログラムを通じて、島根県津和野町の町長付に就任を機に、同大学を退学。島根県立津和野高校の魅力化プログラムの立ち上げを行い、廃校危機にあった同校を復活させる。
町長付職員任期終了後、株式会社FoundingBaseに正式にジョイン。人事として年間300人程の学生や第二新卒層の若者との面談、イベント運営を担当。現在はManagerとして、FoundingBase教育事業の責任者を務める。2017年より探究学舎に出向し、メインファシリテーターも兼務。2020年4月より、探究学舎に転籍。

※記事は2019年12月時点のものであり、福井が在職中の話しになります。

ー まずは、おふたりの主な役割について教えてください。

新免)岡山県吉備中央町で、中学生向けの公営塾の運営責任者を務めています。他にも、福島県国見町で町全体をフィールドとした学びの仕組みである国見ホイスコーレ作りや、高知県四万十町の高校魅力化事業にも携わっています。主にFoundingBaseが各地で活動している教育事業に、現場の統括という立場で携わっています。

Kunimi hojskole
■「ホイスコーレ」とは? ...
https://kunimi-hojskole.jimdofree.com/kunimi-hojskole/

福井)僕は東京チームで採用やメンバー育成に関わりながら、2年前から小学生向けの塾である探究学舎にも週2-3日ほど出向しています。新免さんが昔いたところですね。

探究学舎 - 受験も勉強も教えない教室 ~
子どもたちに驚きと感動の種をまき、ひとりひとりの探究心に火をつける、興味開発型の学び舎です。
https://tanqgakusha.jp/

ー 主に公教育をベースとして地方教育に携わる新免さんと、私塾である探究学舎に関わる福井さんの二人に、FoundingBaseの教育事業のこの先について語ってもらいたいと思います。

福井)よろしくお願いします。まず、最初に単刀直入に聞いてみたいのは、新免さん自身は類塾でキャリアをスタートさせ、探究学舎にジョインし、その後FoundingBaseの一員になりましたよね?ある種、民間のいろんな種類の塾に身を置きながら経験を積んできた訳ですが、その視座からみたときにFoundingBaseで教育事業に携わる面白さってどの辺にあると考えていますか?

新免)類塾や、僕がいた頃の探究学舎との対比で言えば、受験スキルだけにフォーカスするでもなく、興味開発にのみフォーカスするでもなく、コミュニティの中で一人一人の子どもたちの小さな変化に寄り添える環境だというのが面白さの一つ。その子が奮い立つ瞬間、頑張るぜって決めた瞬間に立ち会えるのが面白み。

福井)でもそういった場面を作っていくのって、新免さんくらい経験値とスキルがあれば自分で塾を立ち上げてやる形でもできると思うんですよね。なんでわざわざ地方に行ってまでやろうと思ったんですか?

新免)あまり考えたことがなかったけど、「誰とやるか」「どんな風にやるか」を考えたときに、FoundingBaseで教育事業に携わることに価値を感じている自分はいる。例えば、福井とかはまさになんだけど、教育スタンスや思想の違う教育機関で働いた経験がある仲間がいて、様々な観点から議論しつくし、思考をUpdateできる仲間がいるというのは、会社にとっても自分にとっても大きな価値になっていますね。

福井)照れくさいですね。ありがとうございます。

新免)他にも、複雑な調整が必要な教育委員会や町・市の執行部との関係構築をしてくれている仲間、色々な立場や考え方、役割を担っている町民・市民と繋がり、運営の支援や新しい取り組みを企画してくれる仲間。そういう多様なメンバーで構成されるチームでコトに当たれるっていうのは、大きな魅力の一つ。もともと教育に興味があり、教育畑で働いてきた人たちだけじゃないからこそ作っていける生態系が面白い。

福井)「生態系」って言葉が出ましたが、FoundingBaseの教育事業はまさに「生態系づくり」とも言えますよね。個別具体の教育的な方法論が云々ではなく、その地域の現状を踏まえ、仕事として教育に関係している人だけでなく、多様な人を巻き込み、小さなものから仕組みを変える大きなものまで、大小様々な取り組みを作っていく。

新免)まさにそうですね。高校のあり方を変えていくような大上段の取り組みもあれば、自分たちの「やりたい」という熱量から練り上げられる小さな取り組みもある。この前、イングリッシュキャンプという取り組みを実施したんですね。現地メンバーが「もっと楽しんで英語を学んでほしい」という想いがあって、仲間を仲間を巻き込み、ゲーミフィケーションを取り入れ、探究しながら英語にどっぷり浸かれる合宿型の取り組み。こういうのって、「探究学習」とか「プロジェクトベースドラーニング」「ゲーミフィケーション」といった方法論から着想して作ったのではなく、自分が考える「こういう学びの場を作りたい」という想いを起点にしてアジャイルで作っているもの。

実際にこの合宿に参加した中学生の女の子で、普段は英語が苦手で、すぐにできない理由を言いがちな子だったんだけど、合宿に参加した後に海外の先生からもらった手紙を真剣に読んで、我々スタッフにも心のこもったメッセージを送ってくれて。こういう変化って、大したことないかもしれないけど、自分たちが地域に入り、主体者で作っていくから起こせる変化だよね、と思っている。「わかりやすい成果」で見ると何も起きてないように見えるけど、この小さな変化の連続で地方は変わっていけると思うし、どれだけ継続性のある変化を生み続けられるかが、僕らのミッションだと思っている。

※イングリッシュキャンプの一コマ

福井)ある種、「生態系」を作ることで「インフラを作っている」のがFoundingBaseの教育事業の根本だと思うんですよね。別の表現で言えば、自分たちにとって必要な仕組みを自発的に生み出していけるCommunityづくり。Communityソリューションの考え方にかなり近い。そうした世界観においては、「フォルケホイスコーレ」や「モンテッソーリ」「国際バカロレア」なんていう個別具体の方法論が大事というよりは、どんな方法論であっても積極果敢にトライしながら自分たちなりの解決法を見つけ出そうとする姿勢や文化を共有していくことこそが大事。そういう観点で捉えたときに、吉備中央の公営塾は表層的には「普通の塾」かもしれないんだけど、そうじゃない面白さがある、もっと言うと、それ以上の面白さをつくれるCommunityである、と捉えられると思うんですよね。

新免)最近、吉備中央に視察に来た人から「吉備がCommunityに見えた」というフィードバックをもらったんですよね。様々な学年の子どもたちがいて、運営メンバーの年齢やバックグラウンドも多様で、イベントなどを通して親御さんや多くの町の方々が来てくれていて。結果的に、Communityが作られている。思想や姿勢に共感して、多くの人が集う場所になっている。”新しいことにトライしてみよう”という風土だったり、”子どものためになるなら既存のルールにも挑んでいこう”という根本にある姿勢が、新しい関係性や生態系の構築に繋がっていく。僕らのベースにあるのは、そういった思想だよね。

新免)でも、あらためて「生態系づくり」の観点で考えると、面白い取り組みだよね。逆に最近の探究学舎はどう?


福井)情熱大陸で取り上げられた効果もあって繁盛してますよ(笑) 個人的には教育手法としての「探究授業」は好きではあるけど、それそのものが全てを変えるものではないと思っている。探究学舎の価値の本質って、実は「探究授業」という方法論ではない。むしろ「探究授業という方法論」が価値って言い始めたら、それは一番「探究」から遠いものになってる気もする。じゃあどこが価値の本質なんだよっていうと「こういうのって良いよね」って感覚や価値観を共有した人が集って、共に創る立場で毎日過ごしていることだと思うんです。

例えば「好きなことを仕事にするって良いよね」とか「授業って静かに座って聞くんじゃなくて、熱狂して驚きと感動があって良いよね」とか、既存の何かに対するアンチテーゼではなくて、まっすぐ前向きな「こういうのがあっても良いよね」っていう感覚や価値観。そういった感覚や価値観が、「こうすれば成り立つ」っていうやり方を社員や顧客の垣根なく作っていく光景。ある種、サービスの提供者と受給者という枠を超えてミームのようなもの、文化そのものを作っていることこそ、価値の本質だと思うんです。

新免)もう少し噛み砕いて良い?笑 それって、前に言ってた保護者が学びの場を提供して子どもたちの学びを担保してるっていう話とかと繋がっている?

福井)そうですね。「子どもたちが、自分の好きなことでお金を稼いでみるっていう体験をするっていいよね」っていう感覚があったとき、探究学舎という組織の人間だけでその仕組みを創るのではなく、探究学舎に通っている保護者の方にも自発的に一緒に作る側に回ってもらう。例えば、コインランドリーを経営している方が、ご自身のコインランドリーを子どもたちの商売のために解放してくれたり。こういう、「子どもの興味関心や探究のために立場にとらわれずに大人たちも熱中する」という文化が育まれているところこそが価値だと思うんですよ。

新免)なるほどね。FoundingBaseでは島根県津和野町の高校魅力化事業を立ち上げて、探究学舎にも出向していて、複眼で「教育」を捉えたときに、見えてくるものってある?

福井)FoundingBaseと探究学舎の共通点として余白があるというところが挙げられると思う。FoundingBaseで言えば、役場とがっぷり四つに組むことで、何かと予算に制限がつきがちな教育領域に「自由」な予算を流し込み、教師や教育委員会とは違う立ち位置から事業づくりを行なっていける。探究学舎も稼ぎを立てる柱としての事業があり、そこで原資を安定して稼げるからこそ、新しい事業に注力したり、一人一人の小さな変化に向き合える余白がある。

大義は「教育という分野で稼ぐこと」ではなく「自分たちの余白から生まれる何かを通じて、教育というものをUpdateしていく」というものだからこそ、作っていく過程に面白さがあると思う。加えて、地域の面白いポイントは単一の会社経営じゃないところ。ガンガン周りの手を借りる。思想や文化、つまりあるミームを核にした諸々によって成り立っていること。こういう意味で言えば、FoundingBaseが取り組んでいる「生態系作り」と個人的に探究学舎の価値の本質だと捉えている「ミームを生み出し、伝承していく」ことは通じている部分が多い。

新免)確かに吉備中央町では、役場だとか、教育委員会だとか、学校だとか、保護者だとか、そういう立場にこだわって動く人よりも、地域にいる気のいいおっちゃんとかっていう立ち位置で事業づくりに携わってくれている人がたくさんいる。

福井)ですよね。FoundingBaseの教育事業の無二性ってそこにあると思っていて。つまり、教育の当事者にならなそうな人が当事者になりうる場を作れることだと思うんです。農家のおっちゃんとか、寺の住職とか、林業家、漁師、役場職員。ありとあらゆる人たちが関わって作られていくもの。

新免)教育に興味がない人でも関わってほしい。なんならプレーヤーになってほしいという思いもある。子どもが好き、教育に興味があるっていう人だけだと、同質化している分、ある種議論が生まれにくくなる可能性もある。近視眼になるというか。そうなると、個別具体の方法論にばかり目がいく。そうではなくて、”教育に興味ないけど来ちゃいました”みたいな人もいたら良い。ワードとしての「教育」に興味はないっていう人も、僕らの思想と合致していれば立派な教育適任者だと思うよね。

福井)そういう意味で、個人的には「教育」って、他の「農業」や「観光」というような社会で語られる分野の中では、単体で存在しうるものじゃないと思うんですよね。単体で存在する分野を繋ぐギアのような役割のイメージ。猿から人間へ進化する中に存在するミッシングリンクっていう考え方があるんです。進化論の話で、本来連続性があるものなのに、それらを繋ぐ証拠が見つからない状況を捉えて、それらを繋ぐ証拠のことをミッシングリンク(失われた環)と呼ぶ。教育って、社会におけるミッシングリンクの存在する物事を繋ぐギアなんじゃないかと思います。

本来、人の学びと、ありとあらゆる仕事や生き方は接続して然るべき。けれども現実を見たときに、社会から切り離された存在として学校が存在し、いつ使うのかもわからない知識をトークアンドチョークで伝達されている光景がある。一方で、社会で働く人たちは本業で教育に関わらない限り、保護者としての側面でしか子どもたちの学びに関わらない状況がある。ここにミッシングリンクが存在しているわけです。この二つを接続するギアこそ、教育のもつ役割。

※ミッシングリンク:生物の進化過程を連なる鎖として見た時に、連続性が欠けた部分(間隙)を指し、祖先群と子孫群の間にいるであろう進化の中間期にあたる生物・化石が見つかっていない状況を指す語。失われた環とも。(出典:Wikipedia)

新免)それは確かにそうだ。「教育」という単一のものだけやるんじゃなくて、社会や地域、事業や世の中の仕事を両にらみにしながら「コトとコト、ヒトとヒトとをつなぐギア」だね。

でも、いわゆる公教育の教育事業を作りながら、どうやってこういった思想を表現していくの?という問いがある。僕が大事にしているのは、携わる人の所作振る舞い。取り組む分野としての教育ではなく、所作としての教育に面白さがある。「教育」というと敷居が高いように感じる人が多いが、もっとフランクで等身大であるべきだと思う。

福井)そうですね。「教育事業に携わる」ではなく「教育的所作やミームを持っている人が事業を作る」というところに、関わり方の本質がありそうです。個人的にはこの辺りの言語化がされたことが、自分のキャリアを捉え直すときに一役買いましたね。自分が興味があり、熱を持って取り組みたい矛先は「教育」ではない。むしろ、矛先はなんであれ「教育的所作」を持って取り組みたいな、と思ってますね。

新免)そうだね。FoundingBaseとして自分たちの想いを信じて立ち上げてきた教育事業も、徐々に解像度高く言語化できてきたフェーズだと思う。ただ、当然正解は無いし、もっともっとUpdateしていかないとね!

福井)これからも、しっかりタッグ組んで頑張っていきましょう!想いを形にするには、もっともっと仲間も必要ですね!笑

新免)まさに!笑 少しでも興味を持って頂けた方、もっと聞いてみたい!と思ってくれた方、ぜひざっくばらんに話しましょう!

■会社概要

Corporate Profile|株式会社FoundingBase
■ Founder ■ MISSION MISSIONとは、FoundingBaseの目的地であり、FoundingBaseが存在する理由です。 全ての事業活動の目的は、「自由」をUpdateするためです。 私たちの考える「自由」とは、自らの意志で未来を創っていくこと。 他の人や他のコトに由って今があり、未来が創られるのではなく、 自らの意志に由って今があり、自らの意志が未来を創る。 自ら選択した今を愉しみ、今に没頭し、未来の可能性を開拓する。 それこそが、「自由」の源泉だと考えています。 ■ Value
https://foundingbase.jp/n/n35b67e8ca907

■社員インタビュー 一覧

FoundingBase 社員インタビュー一覧 | 株式会社FoundingBase
■ 坂和 貴之(Community Manager / 津和野町・吉備中央町) ■ 夏川戸 大智(Community Manager / 豊後高田市) ■ 大脇 政人(Community Manager / 三条市) ■ 新免 琢弥(Learning Experience Designer / 教育事業リーダー) ■ 添田 瑠璃(Local Coordinator / 東京) ■ 松岡 亮(Contents Director / 安平町) ■ 高橋 沙希(Learning Experience Desig
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