見通しが立たないからこそ、のめり込める
リクロマのミッションは「人間社会の共創と自然環境の温室効果ガス削減を通して急激な気候変動時代に貢献する」です。
日本をはじめ、120カ国以上の国・地域が2050年までのカーボンニュートラル実現を表明していますので、私たちのミッションも100年先を見据えつつ、2050年を照準に考えています。
私たちは、このミッションに時間軸を入れたものをビジョンと捉えています。いまのところ、2030年の時点での、提供するサービスの数や顧客数、ステークホルダー数、組織状態などのビジョンは決めてあります。
2030年までにステークホルダーの数を増やし、温室効果ガス削減のための協働の輪を広げていきたいですし、海外にも進出していなければならないと考えています。
気候変動の領域は前提が常に変化しますし、ゴールもまだ見えません。しかし、先にお伝えしたように転勤族だった私は前提が揺らぐことに慣れているからか、むしろのめり込み楽しめる感覚さえあります。
また壮大なミッション達成に向けて取り組むのは気が遠くならないかと言われることもあるのですが、結果的に私自身の気質を活かして思い切り取り組むことができています。
あとはこのミッションを達成するためにどうするかを、ひたすらマクロとミクロの視点から考え具体的に詰めて取り組んでいくだけです。
一方で不確実性が高い領域に取り組んでいるからこそ、バランスをとるように安心・安全な場を求める側面もあります。
私にとってはそれが会社組織であり、社内のチームやメンバー一人ひとりなので、気持ち良く働ける組織であることは常に意識しています。
100年先を見据えた社内外の人材育成
現在リクロマのメンバーは20名程度。育成面では、気候変動の領域で産業を創ることのできる人を育成することをKPIにして、早い段階から取り組んでいます。
そのために大事にしていることは、産業創造において重要だと思うことをインプットしてもらうです。大きなテーマにアプローチしているため、多少なりとも自分自身を変えないといけないことがあるため、自我変容の方法などもサポートしています。
この課題は100年スパンで捉えるべきものだと思っているので、私だけで終わることは絶対にありません。次の人がこの会社で産業を大きく成長させてほしいと思っています。
また、ミッション達成にはリクロマだけでやるのではなく、社外の人材育成も欠かせません。今後は外部機関やパートナーとの協働がキーになると考えています。
企業へのコンサルやイベント、コミュニティ活動をして出会ってきた人のなかでも、気候変動の産業化というミッションに興味はあるけど関係ない会社で働いていたり、転職できる状況ではなかったりする人たちは多いと感じています。
ですから直近のアプローチとしては、すでにある気候変動の産業化というミッションに興味を持っている企業のサステナビリティ担当の方、大学教授や学生さんなどのコミュニティでディスカッションを交わしながら、その輪を広げているところです。
独自のポジションと価値を作ることができた理由
事業としては、冒頭にもお伝えしたように現時点では気候変動・温室効果ガス算定に関する課題を抱える企業へのコンサルティングと研修を軸にしています。
コンサルティング事業では、企業に対して気候変動が起こることによる事業上のリスクやチャンスを整理して情報開示する支援が多いです。気候変動がチャンスになる企業には、どんなサービスを提供するかを支援しています。
たとえば、リユース市場におけるBtoBの会員制オンラインオークションを中心に事業を展開する株式会社オークネットは、「価値あるモノを必要な人のもとへ循環させる循環型流通」を掲げる企業です。この理念に紐づくコンセプトとして、モノをリアルからオンライン上で取引することによる温室効果ガスの削減貢献量を可視化するまでの道筋をリクロマでは支援しました。
研修事業では、脱炭素について社員全体に周知を図りたい、といったニーズのある企業にeラーニングを含めた研修を提供しています。
会社の売上は順調に伸びており、昨年度は前期比400%の成長率でした。今期も同じくらいいくのではないかと考えています。
私たちが独自のポジションを築くことができた大きな理由としては、環境領域に取り組むスタート時期が早かったことに加え、CDPで気候変動について知ることができたことが挙げられます。あとは、「やり続ける力」ですね。
「次はESGが来る」と1つのトレンドととらえてやろうとした人はたくさんいますが、やり続ける人がいなかったので、このポジションを得ることができたと思っています。
気候変動の領域では、当社のほかにコンサルティングファームや温室効果ガスの排出量を可視化するSaaS事業者がありますが、私たちはいずれとも競合していません。
コンサルティングファームが重視しているのは、顧客接点をいかに保つかです。そのために気候変動以外にも事業のラインアップを増やさなければなりません。
リクロマはコンサルティングファームのようにほかの領域に広げることはせず、気候変動に特化し、専門性を深め、提案にとどまらず実行まで担う点に大きな違いがあります。またSaaS事業者は、データの収集・整理・計算ができるシステムを提供しますが、私たちはそのデータ処理の前提となる内容の理解までを支援します。
そもそもミッションがまったく違います。短期的な目標を掲げる会社はあっても、長期的に取り組もうとしている会社はほかにありません。
気候変動の産業化を実現するために直近やるべき6つのこと
2050年までのミッション達成に向けて、事業としてコンサルや研修に取り組み、社内外の人材育成に取り組むなかで、直近でどうしても解決しなければならない課題は主に6つあります。
①2030年までに10の事業創出
②温室効果ガスを減らす技術の開発支援
③自我や欲にこだわらず、構造理解をし続ける
④ステークホルダーのインセンティブを変える
⑤地方・中小企業・自治体を動かす
⑥イノベーションの創出
順番に説明していきましょう。
①2030年までに10の事業創出
2030年までに気候変動の産業化を実現するためには、キャッシュフローを生み出す事業が10、さらに探索中の事業が20くらい必要だと考えています。そのため、毎年新たな事業をスタートさせるくらいの勢いで事業を増やしていくつもりです。
もちろん組織も拡大していきます。今年も十数名の採用を予定しています。求めているのは、何よりもまず領域に興味を持っていただける可能性のある人です。
②温室効果ガスを減らす技術の開発支援
温室効果ガスの排出量を単に減らすだけでなく、最終的には世の中にある温室効果ガスをなくなさければなりません。そのためには、温室効果ガスを削減する技術が不可欠です。
ですから今後は温室効果ガスを削減する技術を自前で持つか、あるいはその技術を持つ企業に投資するか、いずれかをやらなければならないと考えています。
現在、自然環境をより良い状態に再生させるという「リジェネラティブ」の実装をはじめ、さまざまな新しい技術が生まれつつありますが、実現までにはまだまだ時間がかかります。ビル・ゲイツ氏や東大のファンドなども脱炭素技術への投資を宣言していますが、私たちも新技術への投資は大いにあり得ると思っています。
同時に、気候変動に関わるステークホルダーの数を増やし、温室効果ガスを削減するための共創の機会を増やしていきたいと考えています。
③自我や欲にこだわらず、構造理解をし続ける
経営者が長期的な課題に取り組む上で、大切なことがあると思っています。それは、自我や私利私欲にとらわれずに、構造理解をし続けていくことです。
短期的な目標であれば、複雑な部分をいったん排除して、「とりあえずこの数字を取りにいく」というかたちで、割と単純に突っ走ることで短期的な成果は得られます。
しかし長期的な課題の場合は、時間軸とともに捉えるべき変数やプレイヤーが増え、複雑になっていきます。それらを売上のために無視するではなく、それぞれの変数やプレイヤーが10年後にどうなっているのかを頭の中でシミュレーションすることがとても大事だと思っています。
私自身、構造理解のために週に一度は他分野のプロの方と会い、その領域でどのように習熟していったか、また業界はどのようになっているのか、といった話を聞く時間は起業時からこれまで常に確保するようにしています。
④ステークホルダーのインセンティブを変える
気候変動の産業化を困難にしていることの1つが、ステークホルダーごとにインセンティブや見ている時間軸が全くバラバラなことです。産業化のためには、それらを揃えることが必要です。
一度にすべてを揃えるのは現実的ではないので、一部を2030年、その後2050年を見据えて段階的に実現したいと考えています。それに向けて現在は、各ステークホルダーのインセンティブや時間軸などを事細かにリストアップして整理している段階です。
気候変動に対するわが国の基本スタンスは悪くないと思います。問題は、それを実際に進めるだけの能力が民間に不足していることです。気候変動に対して何ができるのか、一般の人たちの理解や関心をより高めるためのアプローチも必要でしょう。
大企業の場合、温室効果ガスの削減目標が役員報酬と連動することはありますが、担当者レベルでは、温室効果ガスを下げることが業務目標ではあっても、自身のインセンティブが変わるわけではないので、なかなか動きが加速しません。
温室効果ガスを大量に排出している業界において、影響力の大きな企業には個別にアプローチして働きかけを行っているところです。
⑤地方・中小企業・自治体を動かす
日本全体で考えると、大企業だけでなく、中小企業や自治体にも取り組みを進めてもらう必要があるため、自治体へのアプローチもスタートしています。
「気候危機宣言」などを表明している市町村がけっこうありますので、まずはそういった自治体と関係を築きたいと考えています。また、地方の金融機関とその地域の脱炭素を進めるためのディスカッションなども行っています。
⑥イノベーションの創出
いまのまま突き進めば、温室効果ガスが増えて温暖化が進むことは確実です。そのため、温室効果ガスを回収・吸収する革新的な技術の創出が不可欠です。
実は、脱炭素技術を持ちながらも予算がないために開発を凍結している企業が結構あります。そうした企業に働きかけを行っていきます。
また、気候変動の問題は、次代を担う若い世代が取り組み続けなければならない課題です。大学で行われている脱炭素の研究へのサポートなどを通じて、若い世代を支援していきます。
短期ではなく長期で社会貢献する意義とやりがい
私自身、やりたいのは産業づくりですが、そのために企業へのコンサルや研修といった事業で喫緊の課題を解決することをいまは行なっているため、歯がゆさを感じることもあります。
未来と目の前の課題、両方から目をそむけず、それぞれ取り組んでいくことがこれからますます大事になると考えています。
また気候変動に関して正しい実情を伝える情報発信も足りていないと思うので、このnoteやコラムやを皮切りに情報発信して、研究機関になっていきたいという思いもあります。
気候変動は人類にとって大きな脅威であり、短期的な利益に走るのではなく、長期的に取り組むべき課題です。だからこそ、この事業にはものすごいやりがいと意義を感じています。
私の代にとどまらず、会社としてこの問題に100年タームで取り組んでいきたいと考えています。
最後に
将来必ず求められる課題に対して産業を創造することで貢献していくことに少しでもご興味を持っていただける方はぜひお話しさせてください。
現在リクロマではセールス、Webマーケ、コンサルタントなど幅広い職種を募集しています。
ご興味がある方は是非お気軽にご応募ください^^!