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製造業に関わるとあるスタートアップが在宅勤務に至るまでの二週間とこれから

ずっと息を止めていたような二週間だった。ようやく少し息をつくことができたので備忘録を書こうと思う。

この二週間ほどは日本(そして世界)の多くの人がてんやわんやだったと思うので、自分だけ・うちの会社(キャディ)だけが特別大変といった話では別にない。

ただ、在宅化によって一層考えてることが伝わりにくくなってるので意識的に表に出さないとなと思ったのと記録に残したいなと思って書いた。長いうえに取り留め無くなってしまったが、Discordの音声ダダ漏れと同じように思考ダダ漏れということで許してほしい。

なお、リモートワークを圧倒的に生産性高く行う10の方法みたいな内容ではない。ふと思い立って書いているだけなので、事前に写真・キャプチャは全く撮っておらず、Slackを遡って拾えるものくらい。ほとんどテキストのみなので悪しからず。

ガラッと組織体制を変えた先週

3月はキャディの四半期末。次Q(4-6月)の目標策定に向けた議論を3月半ばから本格化した。ビジネスサイドでは3/13のリーダー陣での議論を経て、3/16の週に個別論点の整理を進め、3/19と週末に再度議論。結果的にビジネスサイドの組織体制を大きく変えることに決めた(対外的に出してる話でもないので詳細は割愛)。

決めた以上早い方が良いということで突貫で資料をまとめ(中原さんに大感謝!)、週明け月曜3/23の朝から臨時MTGを行い全社に発表。その日のうちに既存業務を進めながら必要な引き継ぎを開始し、デスクの引っ越しや部署名もだいぶ変わったのでSlackのチャンネル整理など一気に行った。

各部署において、既存業務での知見を活かしつつ、そこから染み出して新しい役割を担うことを求める今回の組織変更。それぞれ自身の役割の課題構造を実地で吸収しながら、新体制下での戦略策定・目標設定も同時並行。

みんなかなり大変だったはずだが、各部署内や部署間で早速活き活きとした動き・連携が生まれ、明らかに事業推進力が上がった手応えがあった。「みんな流石や…!」と改めてキャディの仲間たちの強さに感嘆した。そして、結果的にこのタイミングで切り替えられて本当に良かった。

ぶっちゃけ自分は新しい役割のキャッチアップでひたすらバタついていただけだったが、優秀なチームメンバー達が課題の深堀りや業務の引き継ぎを進めてくれた。ありがたい限りである。

手応えの一方で高まる不安、悩みに悩む

良い方向の変化にワクワクしながら一方で別の不安が高まっていった一週間でもあった。もちろんCOVID-19の感染拡大である。

1月終わり頃からその存在を認識し、2月の段階では、リサーチをしたうえで「日常的な対策はしつつも過剰反応するべきではない」と自分としては考えていた。キャディにおいても社内で意見の幅はありつつも、社としては同様のスタンスだった。

まだまだ成長初期という事業フェーズや事業特性、事業ドメインの観点からも「とにかく保守的な方に振ってフルリモート…」とはパッと決められない段階でもあった。

しかし、3月に入り欧米での感染がみるみるうちに拡大していくのを見るにつけ緊張感は高まり、より具体的にどういった対応がありえるかを考えることが自身としても増えていった。

これまで社としてどういうスタンスで対応するかの周知は全社向けに行われていたが、3/25から26にかけての国内の実態や空気感の顕著な変化、そして都知事の在宅勤務要請を経て、社内の意見を集めつつ改めて対応を議論。在宅勤務を前提とした事業運営の方針を固めていった。

とはいえ、製造業というモノを扱う領域で事業を営む中でどうしてもリモートとはいかない役割もあったり、顧客・サプライパートナーへの影響も含めて考えると簡単には決め切れないことも多い。

自身の管掌する部署においても、そもそも在宅勤務が難しい業務があったり、在宅でできる業務でもコミュニケーションを含めた仕組み・フローの設計をちゃんとしないと瓦解するリスクが結構ある。

しかも不況の足音が聞こえつつあり、製造業にもその影響は現れ始めている。急成長の求められるスタートアップにおいて事業が伸びなければ当然いつか立ち行かなくなってしまう。その意味するところは言うまでもない。

また、製造業では(他の業界でも)生産現場の方を中心に、在宅勤務どころの話ではなく、社会を支えるために必死で踏ん張ってくださっている方々が多数いる。社内でもリモートが難しい業務があるのは先述の通り。あまり論理的でないのは自覚しているが、製造業を支えようとする身で、こういった中さらっと在宅として良いのかという葛藤も個人的にはあった。

しかし、事業や個人的感情を優先して感染防止に協力しないことは愚の骨頂。感染拡大防止へのコミットは社会的責任である。そして、もちろん家族や周りの人たちを守らなければいけない。

事業、経済、家族、社会への影響…。キャディのバリューのひとつ「至誠」を拠り所に考えるわけだが、これらの中でバランスを取るのはとても悩ましかったし、今も悩ましい。

日々変わる状況を受けて、対策としてどこまでやるか、それによって起こる課題の抽出、対策も週末かけて議論をしたが、細かい点を詰めていくのは思ったよりも時間がかかった。

ちなみに政府に対してもいろいろな意見を目にするが、もっともっと難しいバランスの中で四苦八苦しているはずである。

命に関わる感染拡大の防止は必須の一方で、経済活動を止めてしまうと大不況となり生活困窮、さらには別の形で命を絶たれ得る人たちが大量に生まれてしまう。それを抑えるために経済支援策が打たれているわけだが、財源に余裕があるわけはないので支援を強めた結果は将来の税負担となって降り掛かってくる。

この八方塞がりの鬼トレードオフ状態で、日々刻々と変わる状況の中、昼も夜もなく働かれている方々がたくさんいるはずである。今がベストかといえば分からないが、感謝こそすれ頭ごなしに批判する気にはとてもなれない。

原則在宅勤務化と産業・社会への貢献と

話を戻すと、キャディとしても3/31から全社的に原則在宅勤務とした。もっと早く動いていた会社はあるし、足元ではもはや普通の対応ではあるが。

在宅勤務がどうしても難しい役割は対象外とし、超特別な対策があるわけではないものの対策備品の配備など感染対策のサポートを可能な限り実施という方針。これは製造業に限らず、物流など生活インフラに直接関わる多くの業界で苦慮しているところだと思う。

方針の発表のため、2週連続だが臨時の全社MTG開催。もちろん政府・自治体の要請を受けてという面はあるものの、それだけじゃないと伝えないといけない。

代表含め複数人でまとめた方針だが個人的には「経済・産業・事業を止めず、社員とその家族を守り、社会的な感染拡大の防止に貢献する」という骨子にこだわった。そして、顧客・パートナー問わず製造業の方々と一緒にこの苦境を乗り越えるという姿勢を大事にしたかった。

幸いにも「キャディの事業を通して最適な受発注を実現し、顧客への部材供給とサプライパートナーへの需要供給を最大化すること」、つまり事業目標にまっすぐ向かうことが産業への貢献にも繋がるという構造にある。

実際、今週は代表のリーダーシップのもと、世界的に不足が問題になっている人工呼吸器やマスク製造機の生産を支援していこうという動きが立ち上がり、パートナーの加工会社さんも超速で協力表明くださり、一週間立たずにこの関係の部品供給が決まった。

手前味噌だが、さすが我らが代表。そして多数のメンバーの「卓越」がいかんなく発揮されていて、先週に続き感嘆した。あ、そうそう、勇志郎さん誕生日おめでとうございます。

人工呼吸器やマスクのメーカーはどこも数倍から十倍を超える増産を求められている。増産に必要な部品の調達を急にそんな規模で拡張することは相当に難しい。

通常生産の部品調達だってそもそも大変で、だからこそ自分たちはこの事業をやっている。いわんやという話である。しかし、キャパシティの制約が相対的に少ないキャディであれば、こういった急激な増産にもかなり貢献できると考えている。

在宅勤務に切り替えた一週間の様子

話が前後したが、そんなこんなで急遽3/30月曜日中にリモートワークに切り替えるための準備をし切ることにした。先週引っ越しや引き継ぎをしたと思ったら、今度はオフィスから出ることに。

・モニターを梱包して自宅に送付
・自宅の通信環境が心もとない人はポケットWifiを手配
・電話の受け取りができるよう通信アプリを導入・設定(チャットやクラウドツールに対応してくれる会社も全然あるものの電話もまだまだ多い業界)
・間もなく入社される方にPC・備品を急遽送付

このほか、先にリモート化の準備を始めていた開発チームにならって、なるべくオフィスと同じように密なコミュニケーションが取れるようDiscordを導入して、各部署や集中時用のボイスチャンネルを作成。

東京と大阪の2拠点なので元々HangoutでのWeb会議に慣れていたキャディだが大人数でのMTG用にZoomも導入。あと、どうしても業務進捗が見えにくくなるので日報などでの情報共有を強化。

今振り返るともっとスムーズにやれたなと思うことはあるが、とにもかくにも3/31には多少のバタバタはありつつもおおむね普通に業務を行い、4/1にはすっかり在宅勤務が定着していた。急遽降ってきた諸々の準備を特急で進めてくれた管理部のみんなに心より感謝。

と思っていたら、一番大変だったはずの管理部リーダー伊藤さんから先に感謝の声をもらってしまい恐縮だった。(この後お返しのお礼投稿しました)

業務に致命的な支障が生じないか検討したうえで実施はしたものの、やってみないと分からない面はどうしてもある。正直今週はずっとハラハラしていた。

たとえば、通常であればほとんど心配のない新規スタッフの受け入れも、連絡が繋がらなかったらどうしよう、相手も超不安だろうし、アカウントのセットアップだけでも苦労するかも…等、とにかく気を使うことばかりだった。

繰り返しになるが、みんなが新体制への適応と次Qの戦略・目標の最終化を並行してやりながらの在宅勤務化である。全社員・スタッフの適応の速さと協力姿勢に会社としても推進者のひとりとしても本当に助けられた。

我が家はこの4月から小3と小1の子どもがいるが比較的落ち着いていて、妻の理解もあり、自分は寝室(たまたま小さい机があった)に引きこもって仕事をさせてもらえている。しかも一日中モニターに張り付いていると、妻がコーヒーやおやつ、時にお昼ごはんまで持ってきてくれたりして感涙もの。この恵まれた環境のおかげだが、個人的には通勤がなくなったこともあり生産性はむしろ上がっているくらいである。

ただ、ご家庭の事情や自宅環境はそれぞれ。お子さんが小さくてなかなか家の中で仕事環境を作るのが大変な人や机がないなど家で仕事をしやすい状態じゃなかった人もいる。会社として必要な支援はしつつも、一定程度は自分で整えてもらうしかない面があり、みんな余裕で在宅勤務できるよね、というわけではないのは事実。

自分の耳に入っていないだけで、他にもいろんな場面で苦労しているメンバーはいるんじゃないかと思うし、今後在宅勤務が長引くことで顕在化する問題もあるだろう。

たとえば、音声で繋いでいるとはいえ、横で様子を見ながら気づいたらさっと仕事をサポートしたり、他の人の仕事ぶりから学んだりすることは難しくなる。

それを理解して積極的に学びを共有しようという動きが出ていて素晴らしいわけだが、以前よりも更にパワーをかけ続けないとマネジメントや育成の問題はどんどん増え得る。(👇は幸松さんがDiscordであまりミュートせずにもっと音声ダダ漏れで行こうと推奨してる様子)

一人で仕事をするのが続くと寂しいねという声もあり、外出も抑制されている中で在宅勤務が長期化した場合のメンバー間の関係性や精神面の影響はまだ未知数。

個人的には少しだけでも朝ベランダに出て日光を浴びるのを意識している。あと、気持ちを切り替えるために、在宅とはいえ寝間着のままで仕事したりせずにちゃんと身支度しようと社内で励行していて結構大事だと思っている。

リモートなりの楽しみ方

課題や懸念に話が寄ってしまったが良い面も全然ある。人にはよるが生産性が上がったという声はまま挙がっている。2週連続での急展開にもかかわらず、一致団結して大きなトラブルなく事業が進められてること自体が相当ポジティブだと思う。

今週金曜には社内で予定していたイベントをオンラインで開催。プログラムの組み換えや準備も一苦労だったはずで、良い会に仕上げてくれたホストのみんなに感謝。いわゆるZoom飲みにも挑戦。まだまだ試行錯誤段階だが新しい盛り上がり方ができそう。Zoomランチの動きも出てきてたりする。

最近はバーチャル背景大喜利の様相を呈しつつあり、GANTZよろしく転送された人とか、社員をスタンド(?)としてまとう人も出てきたが、社内で優勝と認定されたのはコチラ。どこからどこまでが背景かは知らない。

運動不足も心配だが、ヨガマスターによるZoomヨガ教室が始まったりした。これ良いな。そうだ、リモートになる前に何人かがやってたプランクタイム再開すれば良い気がした。やってみよう。

ときどきMTGでお子さんの声が聞こえたり、ついお子さんが出てきちゃったりすることもある。誰も悪くは思っていなく、むしろ微笑ましい、プライベートの様子が垣間見えて良かった、という声が多い。

うちもそうだが、家族にどんな様子で仕事をしているか知ってもらう機会もそんなに無いので、いろんな意味で普段見えてなかった面が見えるというのは良いことなんじゃないかと思った(もちろん好みはあるだろうけど)。

実はインターン生からこの4月に新卒社員として入ってくれたメンバーも2人いる。リモートになる前にみんなが集まっている場で所信表明してもらうことができていて良かった。社会人になり立ての時に大変な状況を経験するのも悪いことばかりではないので、一緒にがんばってこう(社会人1年目から不況入りを経験したリーマン世代より)。

まだまだ正念場は続く

だいぶ長くなってしまった。冒頭で「ようやく少し息をつくことができた」と書いたものの、COVID-19の感染拡大が落ち着いたわけでは全くない。

東京の病床数は逼迫しつつあり、医療機関の対応キャパシティもいよいよ心配になってきている。下記はNYについての記事だが、日本を含めて世界中で医療従事者の方々の置かれている環境は想像を絶するものがある。

新型コロナ、若者が次々に重篤化 NY感染症医の無力感
新型コロナウイルスが世界で猛威を振るう中、欧米で注目が集まるのは、高齢者だけでなく若年層の感染や死亡の報告が増えていることだ。米国では、2020年3月24日にロサンゼルスで17歳の男性が、25日にはサンディエゴの自宅で自主隔離中だった25歳の男性が新型コロナ感染症で死亡しているのが発見された。28日にはイリノイ州で0歳児の死亡も報告されている。 ...
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00119/040200012/

在宅勤務が難しい業務は一部対象外にしていると書いたが、そんなことすら言ってる場合ではなく、(日本では法律の問題もあるとはいえ)自宅から出ることすら強く規制される可能性だってこの先ある。そうなった時に物流など経済活動がどれくらい維持できるのか正確な予想は難しく、対応策をシミュレーションして準備しておくしかない。

経済状況も厳しさを増していくことを覚悟せざるを得ない。リーマンショックの時のような金融システムの崩壊には至っていないというのはその通りだが、景気の落ち込みが続けば、いずれ金融システムにも本格的に火がつく。

かつて株のアナリストという市場や業績の予想を生業としていた身として思うのは、連鎖反応とその時間軸を予想することは本当に難しいということ。事業者としても個人としても、少し先を読みつつ変化の兆候を敏感に察知して適応し、願わくば良い変化を作っていけるよう取り組むしかない。事業の作り方もかつての方法論はあくまで参考にしかならない。自分たちの通った道が後から振り返った時に新しい標準になっているのかもしれない。

やや悲壮感のあるかんじで書いてしまったが、ものすごい危機感を持っているのは確か。でも感染拡大防止、経済、事業いずれも道はある。課題は解決してナンボ。産業・社会のために、発想に限界を作らず、自分たちにできることを粛々とやっていく、前を向いて持ち場を守る。これに尽きる。

最後に、改めて読んで心を打たれたので、ちょっと長いがジョン・F・ケネディの有名な演説の最後のパートを引用させてもらいたい(在日米国大使館のサイトAMERICAN CENTER JAPANより)。米国民向けの演説と思われているかもしれないが世界の人々への訴えかけである。

今、われわれを召集するラッパが再び鳴っている。それは、武器は必要ではあるが、武器を取れとの合図ではない。われわれは闘争の中にあるが、戦闘に参加せよとの呼びかけでもない。それは、年々歳々、「希望に胸躍らせ、苦難に耐えて」長いたそがれの闘いの重荷を引き受けよ、との呼びかけである。その闘争は、人類の共通の敵である圧政、貧困、疾病、そして戦争そのものに対する闘いである。

われわれは、これらの敵に対抗して、より実り多い生活を全人類に確保することのできる、南北の、東西の壮大な世界的同盟を築きあげることができるだろうか。皆さんは、その歴史的な努力に参加してくれるだろうか。

世界の長い歴史の中で、自由が最大の危機にさらされているときに、その自由を守る役割を与えられた世代はごく少ない。私はその責任から尻込みしない。私はそれを歓迎する。われわれの誰一人として、他の国民や他の世代と立場を交換したいと願っていない、と私は信じる。われわれがこの努力にかけるエネルギー、信念、そして献身は、わが国とわが国に奉仕する者すべてを照らし、その炎の輝きは世界を真に照らし出すことができるのである。

だからこそ、米国民の同胞の皆さん、あなたの国があなたのために何ができるかを問わないでほしい。 あなたがあなたの国のために何ができるかを問うてほしい。

世界の市民同胞の皆さん、米国があなたのために何をするかを問うのではなく、われわれが人類の自由のために、一緒に何ができるかを問うてほしい。

最後に、あなたが米国民であれ、世界の市民であれ、今ここにいるわれわれに対して、われわれがあなたに求めるのと同じ力と犠牲の高い基準を求めてほしい。善良な良心を唯一の確かな報奨として、歴史をわれわれの行為に対する最後の審判として、神の祝福と助けを求めながらも、この地球上における神の御業を真にわがものとしなければならないことを知りつつ、われわれの愛するこの土地を導いていこうでは ないか。

Keep Calm, Stay Home and Carry On.

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