アクセンチュアとマイクロソフトの戦略的合弁会社として2000年に米国で生まれたアバナード。「戦略×テクノロジー」の支援により、これまで多くのクライアントのイノベーション創出を支えてきました。
世の中には多くのコンサルティングファームやシステム インテグレーターが存在し、コンサルティングとシステム開発を一手に引き受けている企業も少なくありません。そんな中、なぜアバナードが選ばれクライアントから評価されるのか。
その答えとして、Chief Operating Officer (COO)の工藤は「アバナードならではのチームの強さ」と答えます。一見、競合他社と変わらない組織設計の裏には、アバナードならではの強さの秘密があり、今後もその強みを伸ばしていきたいと語ります。
今回は工藤にチーム作りのポイントと、そこに求められる人物像について語ってもらいました。
フラットな組織で顧客の幅広いニーズをカバー
―まずは工藤さんのキャリアについて聞かせてください。
私は大学卒業後にコンサルティングファームを転々とし、ビッグ4と呼ばれるような会社を経てアバナードのコンサルティング事業の立ち上げにジョインしました。2年前に今の代表である鈴木が社長に就任するのと同時に私も経営をサポートすることとなり、現在はCOOとして日本のビジネス全体の企画・推進を行っています。
―様々なコンサルティングファームを経験している工藤さんにとって、アバナードはどのような特徴のある会社だと思いますか?
最大の特徴はフラットな組織にあります。大手のコンサルティングファームですと、組織がサイロ化し、個人のテリトリーも狭くなってしまいがちです。その結果、派閥や社内政治が発生し、無駄な人間関係にエネルギーを割かなければなりません。
私自身も、過去にはそのような風土の組織に所属しストレスを感じたことがありますし、社内政治が嫌になりアバナードにジョインする方も多いです。アバナードは日本に限らず、グローバルでフラットな組織が構築されているため、どこにいても気持ちよく働けます。
―具体的にどのような組織構造になっているのか教えてください。
組織構造だけを見れば、一般的なコンサルティングファームと変わりません。製造業や金融などの5つのインダストリー領域と、ビジネスアプリケーションやAI、セキュリティなどの5つのソリューションエリアの組み合わせで価値を提供しています。ただし、その組み合わせは単に5×5ではなく、技術同士の組み合わせやインダストリーの組み合わせによって、100にも200にもなります。
他社と異なるのはプロジェクトチームの作り方です。一般的なコンサルティングファームの場合、プロジェクトごとにメンバーをアサインしてチームを組成します。一方で私たちの場合は、固定のチームを作っておきながら、プロジェクトごとにチューニングするのです。
―チームを固定することで、どのようなメリットがあるのでしょうか?
クライアントの要望を予測しながら、業界知識や技術を磨き上げられる点です。今は単一のソリューションでは、顧客の要望をカバーしきれません。たとえば、製造現場のDXを手掛ける場合、その先の物流やECまで支援するケースが増えているのです。複雑な技術や業界知識が求められるプロジェクトに、その都度チームを組成していては質の高いサービスを提供できません。
チームが固定されていれば「製造現場のDXのために、物流やECの勉強をしておこう」とチームで課題を深掘りできます。もちろん、一つのチームで全てをカバーできるとは限らないため、必要に応じて複数のチームでタッグを組むこともあります。それでもチームを固定することで、一つのチームで幅広いニーズに対応できるようになるのです。
「半年で100点よりも3カ月で80点」アバナードが評価される「小回りの良さ」
―クライアントからの評判について聞かせてください。
お客様からはよく「小回りが効くね」と評価されます。そのスピード感を可能にしているのが、アジャイル的なプロジェクト進行です。そもそも、多くのコンサルティング ファームはシステム開発を行いませんし、システム インテグレーターは戦略の立案を行いません。
私たちはコンサルティングからシステム開発までを一気通貫で行い、それも同時進行しているからこそ、スピーディーで質の高いサービスを提供できるのです。事業計画を作りながら、隣のエンジニアチームにプロトタイプを作ってもらい、翌日には何かしら形にして見せる。
半年で100点を目指すのではなく、1カ月で50点、3カ月で80点を目指すのが私たちのやり方です。そして、多くのクライアントが長い時間をかけて100点を出されるよりも、短期間で80点を出すことを望んでいるのです。その結果「小回りが効く」という評価をもらえているのだと思います。
―競合他社の中にも「戦略から開発まで一気通貫で支援します」という企業がいますが、そのような会社との差はどこにあると考えていますか?
稚拙な表現ですがチーム同士の「仲の良さ」が私たちの強みです。たしかに戦略チームと開発チームを内包しているコンサルティング会社はありますが、その内情はチームで分断しているケースも珍しくありません。「ここまでが我々のチームの仕事」と仕事を区切っていたり、逆に仕事を奪い合ったり。
アバナードには、そのような対立構造がありません。立場や所属部署、バックグラウンドや国籍に関係なくフラットな組織を作っているからこそ、よりスピーディーな価値提供ができるのです。
―制度ではなくカルチャーによって強みを生み出しているのですね。いかにしてカルチャーを浸透してきたのですか。
カルチャーの浸透に必要なのは、組織のトップが常に現場で走り続けることだと思います。実は2年前は、組織の規模が今の半分しかありませんでした。この2年で組織が1,500人規模にまで急拡大する過程では、組織がサイロ化しかけたこともあります。
実際に現場からは、風通しが悪くなりつつあるという声も挙がっていました。そのような声が挙がったのは反省していますが、それが直接私や代表の鈴木に届いたことは嬉しく思っています。問題を感じた時に、上司に言える心理的安全性があると感じたからです。
私も鈴木も常に現場主義を掲げてきたからこそ、現場の声が届きますし、私たちの声もメンバーに直接届けます。だからこそ、大事にしたいカルチャーを浸透させられたのだと思います。
VUCAの時代に求められる、幅広い産業に精通したコンサルタント
―アバナードのコンサルタントに求められる考え方があれば聞かせてください。
幅広いインダストリーに精通していることです。たとえば私は「この2年は通信業界を極めよう。今度はそのノウハウを製造業に転用してみよう」という風にキャリアを築いてきました。私に限らず、アバナードには幅広い業界に精通しているコンサルタントが少なくありません。
なぜ、幅広い業界に精通している必要があるのか。それは、一つの企業が多角的に事業を展開する時代だからです。今の時代、AppleやGoogleが車を作ってもおかしくありませんよね。仮にIT業界のクライアントに「今度は車を作ろうと思うんだ」と言われて「製造業のことは全く知らなくて」と答えたら、クライアントは離れてしまいます。
もちろん、社内には各業界のプロがいるので、補完しながら価値を提供していくのですが、幅広い業界で価値を提供していこうという姿勢が必要です。
―5つのインダストリーに分かれているとは言え、特定の産業に固執していてはいけないということですね。ちなみにインダストリーや技術は、具体的にどのような分類をしているのでしょうか。
インダストリーはクライアントグループとして分類されています。通信・メディア・テクノロジーの「Communication, Media & Technology」、製造や流通の「Products」、銀行・保険・証券などの「Financial Services」、ヘルスケアや官公庁/自治体の「Health & Public Sector」、最後は電気やガスといった社会インフラ産業の「Resources」です。
またビジネスグループはシステム開発を行う「Technology」と、コンサルティングを行う「Advisory」、そしてクリエイティブを担う「Avanade X」に分類されています。従業員の8~9割はTechnologyに配属されており、その中でさらに5つのソリューションエリアに分かれています。「Applications and Infrastructure」「Business Applications」「Data & AI」「Security」「Modern Workplace」の5つです。
―縦と横のラインがあると、レポートラインも複雑になると思いますが、マネジメント体制についても聞かせてください。
たしかにインダストリーとビジネスグループそれぞれにリーダーがいますし、各ビジネスグループの中も様々なチームに分かれているため、レポートラインが3つや4つになることはあります。ただし、レポートラインが増えたからと言って、報告などが面倒に感じるという話は聞いたことがありません。
リーダーも事細かな報告を求めていませんし、むしろレポートラインが増えることで、様々なチームと繋がれるとポジティブに捉えている方が多いですね。社内の様々な人と繋がることで、自分の成長を促してくれると感じているメンバーが多いようです。
―レポートラインが複数あると、指揮命令系統に食い違いが起きることはないのでしょうか。
たしかにリーダー同士で異なる指示を出すことはよくあります。ただし、そのような場合は「2人の意見が違うので、明日までに整理してもらっていいですか」と現場のメンバーが各リーダーを突き上げてオーガナイズするケースが多いです。
そこがフラットな組織のよさで、下から意見されることで上の人間も常に気付きを得られます。そういう発言ができるような心理的安全性を作るのが、私たちの仕事だと思っています。
―メンバーは自由に発言ができる一方で、自主性も求められるということですね。
そうですね。時にはメンバーが自己判断で仕事を進めて、上司に事後報告するケースも見られますが、それでも構いません。なぜなら、現場のことを一番理解しているのは現場の人間だからです。
それに対して怒るリーダーもいませんし、むしろ自主的に動くメンバーに感謝すべきです。チームで動くことはもちろん重要ですが、それと同じくらい現場の人間が自分で判断する自主性も尊重しています。部下だから、上司だからと役割で行動するのではなく、自分ができることを考えて動く姿勢が重要ですね。
アバナードのメンバーに求められる3つの素養
―これから組織を拡大していくうえで、どんなメンバーと働きたいか聞かせてください。
一番は技術が好きな人です。いくら仕事とは言え「技術が好き」という軸がなければ、成長しませんから。その上でチャレンジ精神がある人は大歓迎です。私たちは自由な組織ですが、自由には必ず責任が伴います。自分で責任を持ちながらチャレンジを楽しめるマインドが重要です。
そして、チームでの仕事を大事にできること。どうしても一人でできる仕事には限界があるため、社内のみならず社外の人ともチームを組んで仕事に臨めると尚いいですね。
また、英語は必須ではありませんが、英語が話せれば世界中の人とチームを組めるので、仕事の幅も広がるはずです。
―3つ全ての条件が求められるのでしょうか?
いえ、全て条件を満たしているに越したことはありませんが、どれか一つでも当てはまるのであれば、選考プロセスにおいて検討させていただきます。逆にコンサルティングでの経験が長いからと言って、それで採用するということはありません。
上から任せられた仕事をひたすらこなすことが、出世につながる会社もあると思いますが、そのようなキャリアを積みたい方は当社に向かないと思います。自分で意思を持って仕事をしていきたい人にこそ、話を聞きに来てもらいたいですね。