組織が拡大するにつれて、各所で歪みが生じる。成長企業における組織課題は、なにかしら耳にしたり経験したりしたことがある方も多いのではないでしょうか。
2005年に誕生した日本のアバナードも、2017年には400人を超え、2022年には約800人の組織へと拡大しています。
「今のアバナードは伸びしろしかない!」
そう自分の思いと体験を話してくれたのは、2017年にアバナードに入社し、組織拡大をドライブしてきた元採用担当者の三井 麻子さん。23年もの間従事してきた人事・採用担当者としてのキャリアから、現在はビジネスの現場に身を置いています。
一度人材採用の現場から離れて見なければ、と感じた彼女の会社への思い。
そこから、右肩上がりの成長を続けているアバナードの現在地と今後の可能性が見えてきました。
※このインタビューは2022年7月5日に実施されました。
三井 麻子(みつい あさこ)/ビジネス&セールス オペレーションズ グループマネジャー
広告会社のセールスとしてキャリアをスタートした後、外資系電子機器メーカーに転職し採用を担当。以来、外資系消費財、IT、高級ブランド、医療と、いずれも業界大手企業の採用担当者として約20年のキャリアを積む。2017年にアバナードに入社し、約3年で組織拡大に大きく貢献。2020年よりビジネス&セールス オペレーションズへと異動し、ビジネス現場のマネジメントおよび業務改善に務めている。
「何か」変わらないといけないのでは。23年の採用キャリアをチェンジ、決断したビジネス現場への異動
——採用現場を離れる。三井さんにとってそれは大きな意思決定だったと思います。なぜその決断をしたのでしょうか?
私がアバナードに入社したのは2017年。当時はまだ、約400名の組織でした。
採用強化を図るため、採用プロセスの改善、面接官のトレーニング、エンプロイー・マーケティングなど、さまざまな改善や施策に取り組んできました。
嬉しいことにそうした取り組みが実って、採用人数は3年で約1.5倍にまで拡大することができました。しかしながらその後は、1.5倍の壁をどうしても越えられなくなり、採用担当者としての自分が限界を感じるようになりました。
その原因はどこにあるのか。私なりに突き詰めていくと、従業員が入社してから退職までどんな体験をしてどれだけ幸せだったのか、いわゆるエンプロイー・エクスペリエンスの観点に辿り着きました。
実際、社員や元社員からの“採用後の幸せ度”の評価は、組織を良くしていこうとどんどん変化しているけれど、確実に上がっているという確信が持てませんでした。
仮にエンプロイー・エクスペリエンスに課題があるのであれば、従業員の器となる、会社そのものやビジネスが変わっていく必要があるのではないかと思ったんです。
——ビジネスとはどういうことでしょうか?
アバナードのビジネスは、テクノロジーやビジネスソリューションをお客様に提供することですから、アバナードに入社する人の大半は、お客様の案件となるプロジェクトに配属されます。つまり、従業員のほとんどが、そのプロジェクトの中で大半の時間を過ごすことになるんです。
プロジェクトに配属される皆さんが、自分はなぜこのプロジェクトにいるのか、このプロジェクトは会社にとってどういう意義があるのか、会社がどこに向かっていくのかという意図を理解するためには、営業がなぜこの案件を受注したのか、またそこに会社の戦略がどう浸透しているのかが大切だと考えました。
また、会社で今後どういうプロジェクトが出てくるのか、どういった業界の案件があるのかなどが見えると、プロジェクト内でもキャリアについて話すきっかけとなり、社員の人達も将来が見えやすいと思いました。
そういったことを総合的に考え理解できると、プロジェクトへの取り組み方やモチベーションが変わっていくはずですから、エンプロイー・エクスペリエンスにも影響を及ぼすはずだと考えたんです。
——採用を通してエンプロイー・エクスペリエンスを改善するというのは容易ではなかったのですね。
そうですね。もちろん募集しているポジションに対して正しいスキルセットを持った人、目指しているキャリアとアバナードが同じ方向を向いている人などを採用できれば、必然とより良いエンプロイー・エクスペリエンスになると思います。それを、採用側からだけではなく、受け皿であるビジネス側からも改善できれば、相乗効果が望めるのではないかと考えました。
でも、誰かが変化を及ぼしてくれるだろうなんて、ただ待つだけでは何も変わりません。だったらもう自分自身が動いて、違う角度から働きかけよう。それがいい方向に進めば、採用もより良くなるはずと思っていました。
たまたまなのですが、当時セールスオペレーションというポジションを新たに募集していたのですが、採用が難航していました。
会社の事を理解していて、変化をドライブしていく力が必要な上に、海外とのやり取りが多いため英語力も必要で、なかなか適切な応募者がいなかったのです。
私が採用担当だったのですが、技術者ではない私は現場には異動できないけれど、このポジションならできるんじゃないか?ここからビジネスに関わって、自分の目指している社員のエンプロイーエクスペリエンスの向上に貢献できるのでは?と思いました。そして「私がやります」と手を挙げたのが、ビジネス側へと異動した背景です。
立場と視点の変化。ビジネス現場から新たに見えること
——ビジネス側に移ってみて、実際にはいかがでしょうか?
第一に、大きな反省がありましたね。
それまで私自身、「ビジネスを理解している採用担当者」であることを自負していましたが、実際のビジネス現場に身を置いてみると、本当の意味では理解できていなかったことを痛感しました。
プロジェクト一つとっても、営業の方たちの案件獲得のための苦労やそれにまつわる業務量、プロジェクトのアサイメントまでの長い道のり、必要とされるスキル、本人の希望、会社の都合と様々な要素があるなか、誰もが絶対ハッピーになる状況を作り出すことがどれだけ大変な事か。
プロジェクトのデリバリーもそうです。やりがいももちろんありますが、様々な課題も出てきます。そしてそれを全部請け負っているマネージャの方たちは、忙しいとはわかっていましたが、正直想像を超えていて…。採用面接を断られた時にイライラしたことを、今となってはお詫びしたいです(笑)
これらは今の部門に異動して、はじめて解像度高く理解できたことです。それと同時に、もっとよくできるのではと思う点もたくさん見えてきました。
そしてもう一つの反省は、より正しく会社の現実を候補者の方に伝えるべきだという事でした。
当たり前ですが、それまでも美化して話していたわけじゃないのです。良い面も悪い面も伝えるのが採用担当の使命だと思ってたものの、それでもビジネスをよりよく知った今、十分に伝えきれていなかったのではないかと思う所があります。なので、この側面でも色々と変化が必要です。
アバナードの伸びしろと、今後の可能性
——日本のアバナードは今、変化していくタイミングにあるのでしょうか。
そういう気がしています。
この5年で、組織規模は約2倍です。会社が大きくなって人も増えたけれど、そのプロセスや会社としてのインフラは同じスピードで成長できていないのかなと思う時があります。前向きに会社を良くしていこうと思う現場のマネージャなどもたくさんいて、会社として課題意識を持った人たちが多いので、これからだと思っています。
今私たちが感じているのは、まさに成長痛。この成長痛の最中に原因をきちんと探って対処するかしないかで、この先のアバナードのあり方は変わってくると思います。
——拡大を続ける企業ならではの悩みですね。
そうですね。個人的には、アバナードはもっともっと力を発揮できると思うのですが、それが出しきれていない気がして、本当にもったいなく感じています。
以前は採用担当として「成長している企業」とお伝えしていましたが、ビジネスを理解した今となっては、「伸びしろのある企業」だと思っています。
——成長ではなく、伸びしろ、ですか。
成長と伸びしろとでは、意味が違いますよね。成長は、1を10にする感覚ですが、伸びしろは90を100にするイメージ。一度は採用の現場で行き詰まりを感じましたが、これからまだまだ発展できる「可能性」を、そこに秘めている感覚なんです。
今までノンストップで拡大を続けてきた会社なので、立ち止まる時間はほとんどなかったと思います。だからこそ今ここで変化をしていけば、もっと良い会社に、そして本当の意味で人に幸せをもたらす会社に近づけるんだろうなと思っています。
——三井さんの根底にあるのは「人」への思い。そこはずっと変わらないのですね。
もちろんです。一人ひとりが幸せになる採用なのか、その人の人生がどう良くなるのか。採用担当者時代から、根底にあるパッションは変わっていません。
今はビジネス側から、数字などの管理やリーガルやファイナンス、グローバル拠点との橋渡し、営業にまつわるオペレーション改善などを通して、そこに働きかける意識で仕事をしています。
私はビジネス側からアバナードを見たことで、会社の伸びしろがより鮮明になりました。
これからが本当の意味でアバナードが変わっていく事を期待したいと思っています。